歴史、美食、カルチャーの最新&穴場スポットが充実!トラベルジャーナリストがおすすめする、魅力あふれる富山旅

五箇山

2024年1月に発生し、甚大な被害をもたらした能登半島地震。復旧・復興が遅れているという話も聞かれますが、北陸応援割の影響もあり、徐々に北陸各県に観光客が戻ってきています。

そんな中、「ホープーツーリズム」という考え方と、いま北陸を観光する意味について寄稿いただいたトラベルジャーナリストの寺田直子さんが、富山県を旅行。実際に目にし、体験した知られざる富山の観光スポットやおすすめのグルメ、ホテルなどを教えてくれました。

 

トラベルジャーナリスト
寺田 直子

トラベルジャーナリスト。東京生まれ。日本およびオーストラリア・シドニーでの旅行会社勤務を経て、フリーライターとして独立。旅歴約40年、訪れた国は約100カ国 。雑誌、Web、新聞などに寄稿するほか、ラジオ出演、講演など多数。山口県観光審議委員2017、青森県の観光アドバイザーを務める。2013年、第13回フランス・ルポルタージュ大賞インターネット部門受賞。JATAツアーグランプリ審査員2018。著書に「ホテルブランド物語」(角川書店)、「ロンドン美食ガイド」(日経BP社 共著)、「泣くために旅に出よう」(実業之日本社)など。現在、東京都・伊豆大島を拠点に執筆業のかたわら、古民家カフェ「Hav Cafe」を運営。2024年、島暮らしの書籍を出版予定。

寺田直子さん

 

脱「オーバーツーリズム」に富山県はぴったり!

「ホープツーリズム」は、訪れる地域への貢献・支援につながる新しい旅のスタイルです。それにあわせて、いかに地元の環境やそこで暮らす人たちの日常に配慮するかも求められます。

最近、「オーバーツーリズム」という言葉をよく聞きますが、人気の観光スポットに観光客が集中することで生まれる混雑・混乱は、旅する側のマナーや行動によって解消できるもの。最も簡単なのは、人気観光地や有名スポットだけを巡るのではなく、まだそれほど注目されてはいないけれど、トップクラスの絶景や美食、観光アクティビティが体験できる場所を先取り感覚で訪れること。時期も行楽シーズンや連休、週末をあえてはずし、平日やオフシーズンを選ぶことで、よりゆったりと旅を楽しむことができます。

新幹線が延伸して話題の北陸。中でも脱オーバーツーリズムの旅先としておすすめなのが、日本海と山岳地帯に囲まれ、バラエティに富んだ観光エリアが点在する富山県。そんな新鮮な楽しみに満ちた、富山の最新&穴場スポットをピックアップします!

 

歴史を感じる観光スポット

五箇山

富山県を代表する歴史的スポットが、合掌造りの集落が点在する五箇山(ごかやま)。40ある集落のうち、相倉(あいのくら) と菅沼(すがぬま)の2つの集落が、岐阜県の白川郷とともに1995年、世界文化遺産に登録されています。

 

五箇山
©Naoko Terada
五箇山
©Naoko Terada

蛇行した庄川沿いに9つの合掌造りの家が集まっているのが菅沼合掌造り集落。日本有数の豪雪地帯という厳しい環境で暮らす知恵が、家の随所に見られます。江戸時代、加賀藩のために火薬の元となる煙硝(えんしょう※加賀藩では「塩硝」と呼んでいた)の一大産地でもあり、「塩硝の館」では当時の様子を知ることが可能です。

 

菅沼合掌造り集落

住所
富山県南砺市菅沼
営業時間
4~11月/8:00~17:00、12~3月/9:00~16:00
※駐車場入場16:00まで(冬季は15:30まで)
定休日
12/31~1/1
アクセス
JR「城端」駅より世界遺産バスで約38分、「菅沼」バス停下車、徒歩約1分
公式サイト
世界遺産 五箇山菅沼合掌造り集落
五箇山
©Naoko Terada

 

五箇山
©Naoko Terada

20棟の合掌造りと4棟の茅葺(かやぶき)屋根、計24棟の家が山間に残るのが相倉合掌造り集落。山を少し歩いた撮影スポットからは全景が撮れるので、ぜひ行ってみてください。

 

相倉合掌造り集落

住所
富山県南砺市相倉
営業時間
8:30~17:00
定休日
無休
アクセス
JR「城端」駅より世界遺産バスで約23分、「相倉口」バス停下車、徒歩約5分
公式サイト
世界文化遺産 相倉合掌造り集落
茶店 まつや
©Naoko Terada

相倉集落のほぼ真ん中にある食事処が「茶店 まつや」。地元の大豆と水で作った名物の五箇山豆腐や、山菜の天ぷらなどが味わえると人気です。

 

茶店 まつや

住所
富山県南砺市相倉445
営業時間
9:00~17:00
定休日
無休
公式サイト
喫茶・おみやげ まつや

 

木彫刻の町・井波

1390(明徳元)年、本願寺五代門主・綽如上人(しゃくにょしょうにん)が井波別院・瑞泉寺を建立したことにより、門前町として発展したのが、南砺市(なんとし)の井波。瑞泉寺本堂の再建のために京都から派遣された宮大工たちが技を伝え、その後、発展を遂げた井波彫刻が伝統工芸品として有名です。

 

井波別院・瑞泉寺
©Naoko Terada
井波別院・瑞泉寺
©Naoko Terada
井波別院・瑞泉寺
©Naoko Terada

井波彫刻は細かな細工が圧巻で、今でも約200人の彫刻師が市内の工房で伝統を受け継ぎ、作品を作っています。また、瑞泉寺には壮麗な井波彫刻が随所に施され、見事です。

 

八日町通り
©Naoko Terada
井波彫刻
©Naoko Terada
井波彫刻
©Naoko Terada

瑞泉寺前の八日町通り沿いには井波彫刻の工房や店舗も多く、趣があります。

 

井波の木彫り猫
©Naoko Terada
井波の木彫り猫
©Naoko Terada
井波の木彫り猫
©Naoko Terada
井波の木彫り猫
©Naoko Terada

八日町通りでは、30ほど点在する猫たちを探す「木彫りにゃんこお散歩マップ」を使った街歩きもおすすめ。最近は古民家や空き家を活用したコーヒー専門店、パン屋、デザイン系宿泊施設なども増え、滞在するのも楽しいエリアです。

 

井波別院 瑞泉寺

住所
富山県南砺市井波3050
時間
9:00~16:30
料金
一般(高校生以上)500円、小・中学生無料
アクセス
あいの風とやま鉄道「高岡」駅よりバスで約55分、「瑞泉寺前」下車、徒歩約2分
公式サイト
真宗大谷派 井波別院瑞泉寺

光徳寺

光徳寺
©Naoko Terada

1471(文明3)年に建立され、500年以上の歴史を持つ南砺市の光徳寺。板画家・棟方志功がここで創作活動を行ったことでも知られ、ふすまを使って大胆に描き上げた「華巌松(けごんまつ)」は見る者の心をゆさぶります。

柳宗悦(やなぎ むねよし)、河井寛次郎(かわい かんじろう)、浜田庄司、富本憲吉といった民藝(民衆的工芸)運動の第一人者たちも足しげく通い、多数の作品を残しました。そのほか、世界各地の民藝コレクションも飾られ、見ごたえがあります。

 

光徳寺

住所
富山県南砺市法林寺308
時間
9:00~17:00
定休日
火・水・木曜日
料金
一般500円
アクセス
JR「福光」駅よりバスで約6分、「華山温泉前」下車、徒歩約5分
詳細
名刹「光徳寺」のご案内

岩瀬エリア

岩瀬エリア
©Naoko Terada
岩瀬エリア
©Naoko Terada

富山駅から富山地鉄富山港線(路面電車)で約30分。富山湾に流れ込む神通川の河口に位置するのが、富山市の岩瀬エリアです。かつて北前船交易で栄え、当時を物語るレトロな家々が並ぶ旧北国街道沿いは、映えスポットとしても人気。そんな歴史を感じる建物を使った宿泊施設、レストラン、土産物店などが多く、のんびり散策するのもおすすめです。

最近はイタリアンやフレンチなどの評価の高い店も増え、「ミシュラン通り」と呼ばれ、グルメな人たちにも注目されています。また、白砂が美しい岩瀬浜海水浴場が近く、夏には海水浴が楽しめるのも魅力です。

 

美食を味わえるお店

農家レストラン大門

農家レストラン大門
©Naoko Terada

富山県西部に位置する広大な砺波(となみ)平野には、水田に囲まれてほどよい距離で民家が点在する「散居村(さんきょそん)」と呼ばれる集落形態が残っています。その散居村の伝統家屋「アズマダチ」を使い、この地域に伝わる独特の手延べ製法で作られた大門素麺(おおかどそうめん)と郷土料理が味わえる人気の食事処が「農家レストラン大門」です。

大門素麺をはじめ、大根の葉などを味噌であえた「よごし」、カボチャやゴボウなどを煮込んだ「いとこ煮」、がんもどきのような「まるやま」など、珍しい郷土料理をセットメニューで味わえます。散居村や季節ごとに色を変える山々など、窓の外に広がる景色も必見です。

 

農家レストラン大門

住所
富山県砺波市大門165
営業時間
昼の部/11:00~14:00、夜の部/17:00~22:00(夜の部はすべて予約)
定休日
12/31~1/3
アクセス
JR「砺波」駅よりタクシーで約8分
公式サイト
農家レストラン大門

サムラップ

サムラップ
©Naoko Terada

「サムラップ」とはタイ語で「ごはん」という意味。また、タイの食文化やおもてなしを表す言葉でもあります。店に来たゲストのために心からのもてなしをしたい、そんなオーナーの思いが伝わるタイ料理店です。

 

サムラップ
©Naoko Terada
サムラップ
©Naoko Terada

地元・南砺市出身で、タイ・バンコクの名門料理学校「ル・コルドン・ブルー」で本格的なタイ料理を学んだオーナーが作る料理は、チリペーストなど調味料も含めすべて手作り。食材に加え辛味、酸味などタイ料理の旨みを最大限に引き出し、本場の味を提供しています。富山県名物ホタルイカや地場産ハーブなど、季節ごとの地産地消も魅力です。完全予約制なので、営業日などは公式Instagramで確認を。

 

サムラップ(Samrup)

住所
富山県南砺市福野1330-7
営業時間
【金曜日】ディナー/18:00~21:00
【土・日曜日】ランチ/11:30~14:00
※完全予約制。ランチ・ディナーともに、カレー・炒め物・サラダ・コーヒーまたは紅茶のセット1種類(1,200円)のみ
定休日
月~木曜日
アクセス
JR「福野」駅より徒歩約6分
公式Instagram
サムラップ Samrup

おすすめの宿泊施設

杜人舎

杜人舎
杜人舎
©Naoko Terada

南砺市城端(じょうはな)に位置する善徳寺は、550年の歴史を持つ浄土真宗信仰の中心的存在。その敷地内にある研修道場を改修し、2024年3月にオープンしたのが「泊まれる民藝館」をコンセプトにした「杜人舎(もりとしゃ)」です。

民藝活動の祖といわれる思想家・美術評論家の柳宗悦は善徳寺に62日間逗留し、民藝思想の集大成となる『美の訪問』を執筆。この地方の自然と共生する精神風土を「土徳(どとく)」と名付けて愛しました。

 

杜人舎
©Naoko Terada

杜人舎」は宿泊施設だけでなく、講堂、カフェ&ショップ、テレワークスペースなど多様な体験ができる複合施設で、随所に一級の民藝作品が配され、ほかにはない個性を放っています。善徳寺の住職に教わる念珠作り、伝統産業や工芸作家との交流など、「土徳」に触れられるアクティビティもあるので、ぜひ体験してみてください。

 

ダブルツリーbyヒルトン富山

ダブルツリーbyヒルトン富山
ダブルツリーbyヒルトン富山
 

2023年1月、富山駅前にオープンした「ダブルツリーbyヒルトン富山」は、ヒルトンホテルグループの北陸初進出で話題になっています。客室は全201室。立山連峰、雨晴(あまはらし)海岸といった富山の自然風景をイメージ&モチーフにしたインテリアが、洗練された中にも落ち着きある雰囲気を生み出しています。

富山は水がおいしい県として知られていますが、各客室にはペットボトルの水の代わりに専用のピッチャーが用意され、各フロアに設置されたウォーターサーバーから県の名水を汲むことができるなど、サステナブルな取り組みも行っています。

 

ダブルツリーbyヒルトン富山

オールデイダイニング「korare WINE AND DINE(コラレ ワイン アンド ダイン)」では、朝食からディナー、アフタヌーンティーまで幅広い食事が楽しめるほか、ロビー横には気軽に軽食やコーヒーがイートイン&テイクアウトできる「GRAB’n’GO Coffee & Deli (グラブ’ン’ゴー コーヒー アンド デリ)」も。

チェックイン時、大きな温かいチョコチップクッキーをゲストにプレゼントするのが世界中のダブルツリーのおもてなし。これを楽しみにするファンも多いですね。

 

取材・文・写真/寺田 直子

 

 

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