東京都の伊豆諸島にある新島(にいじま)。透明度の高い海や真っ白な断崖絶壁など、南国リゾートのような離島らしい自然の迫力はもちろん、モヤイ像やガラスアートといった文化的な面でも見所があります。今回は、島の魅力を1日で味わうモデルコースをご紹介します。
「新島」ってどんな島?
新島は100ほどある伊豆諸島に属する島の中でも東京都心からのアクセスがよく、近年では南国のような美しい海を背景にしたウェディングフォトツアーで訪れるカップルもいる風光明媚な場所です。
都心からは飛行機か船で渡る方法があり、飛行機の場合は「調布飛行場」から約35分で到着します。船の場合は「竹芝桟橋」から出発し、高速船だと2時間20分、大型船だと10時間35分の旅程となります。
島の気候は都心よりやや温暖で、平均気温が一番低い2月でも9℃なので、「常春の島」と呼ばれることもあります。
島内の人気スポットは島の南部に多く集中していることもあり、移動は自転車でも十分ですが、起伏のある地形ということもあって、レンタカーやレンタルバイクの利用をおすすめします。
美しい海と断崖絶壁の「シークレット」
新島の特徴的な自然景観である「透明度の高い海」と「白い断崖絶壁」を両方楽しむなら、島の南東部に位置している「シークレット」はまず訪れておきたいスポットです。
その名前の通り、農道の奥に隠されたような所にあるため、もともとは地元の人がサーフィンを楽しんでいた場所でした。現在では観光スポットとしても人気となってきています。
階段で海岸まで下りられ、白い砂浜から振り向くと30~50mほどの断崖絶壁が続く海岸線ということがわかります。火山岩の一種である流紋岩を主体とする新島ならではの絶景を楽しむことができますよ。
シークレット
- 住所
- 東京都新島村飯森
- 営業時間
- 散策自由
- アクセス
- 【車】新島港より約12分
渋谷にある「モヤイ像」が新島にも!?
絶景の構成要素としても見応えがありますが、流紋岩は新島の文化的な側面にも大きく関わっています。そのことがよくわかるのが、島の西部の海沿いにある「新島モヤイ像物語」というスポット。いくつもの「モヤイ像」が並んでいます。
この像の素材は、「コーガ石」と呼ばれる黒雲母(くろうんも)流紋岩で、新島の地質があってこそ生まれた島の特産品です。コーガ石は軽石の一種で、イタリアのリパリ島と新島でのみ産出される、世界的に見てもとても珍しい石。軽いものであれば水に浮くほどで、さまざまな形に加工するのに適しています。
モヤイ像は、そんなコーガ石の知名度を高めようと1970年ごろにつくられました。実は渋谷の待ち合わせ場所として知られるモヤイ像も新島でつくられたもの。「モヤイ」というのは、新島の言葉で「助け合う・協力する」という意味があり、島内にはモヤイ像をはじめとするさまざまな石像が立っています。コーガ石のことを知らなければ不思議に思うかもしれませんが、島のシンボルですのでお気に入りの像を見つけてみてください。
新島モヤイ像物語
- 住所
- 東京都新島村本村6-7
- 営業時間
- 散策自由
- アクセス
- 【車】新島港より約1分
「新島親水公園」で石の造形と島のグルメを堪能
島の南部にある「新島親水公園」は、コーガ石と水の調和をテーマにした公園です。園内には、ヨーロッパの建築物を彷彿とさせる大型のオブジェがあります。向山で育まれた自然水を井戸からくみ上げて利用しており、流れる水が癒しを与えてくれるスポットです。
公園内にある石造りの建物は「れすとハウス」という名前のレストランとして営業しています。島の名産品である「明日葉(アシタバ)」や「岩のり」を使ったパスタなどのご当地メニューが揃っています。
新島親水公園
- 住所
- 東京都新島村瀬戸山120
- 営業時間
- 散策自由
- アクセス
- 【車】新島港より約4分
れすとハウス
- 営業時間
- 11:00~16:00(夏季10:00~17:00)
- 定休日
- 不定休
島のお土産は「新島ガラスアートセンター」で
コーガ石を使ってつくられた島の名産品はモヤイ像だけではありません。コーガ石を溶かしてつくられた「新島ガラス」は、世界中を見ても新島だけにしかないガラス製品。オリーブのような薄い緑色が特徴的です。
グラスやプレートなど日常使いのものだけではなく、「突き目」というトゲトゲした出っ張りが特徴的なシリーズは見た目にもユニークな、新島ガラスならではの製品に仕上げられています。「新島ガラスアートセンター」では、食器以外にもリンゴ型の一輪挿しやペーパーウェイトなど、さまざまな商品が取り揃えられています。
新島ガラスアートセンター
- 住所
- 東京都新島村間々下海岸通り
- 営業時間
- 10:00~16:30(昼休み 12:00~13:00)
- 定休日
- 火曜日・年末年始
- アクセス
- 【車】新島港より約2分
- 公式サイト
- Niijima Glass Art Center
ゴロゴロとした岩が並ぶ「間々下海岸」
「間々下海岸(まましたかいがん)」は、新島港から歩いて行くことができるビーチです。海岸線に巨大な岩がゴロゴロと転がっている場所で、シーズンには海水浴場としてにぎわいます。
干潮のタイミングでは石積みの跡が残っている「鳥ケ島」とつながり、その中腹まで階段を上って行くことができます。手すりなどはないので、足元に注意しましょう。
間々下海岸
- 住所
- 東京都新島村瀬戸山113
- 営業時間
- 散策自由
- アクセス
- 【車】新島港より約1分
無料の「湯の浜露天温泉」で海に沈む夕日を見ながら入浴
新島はもともと火山島ということもあり、温泉を楽しむことができます。間々下海岸のすぐそばにある「湯の浜露天温泉」は、そんな火山の力を無料で感じられるスポット。浴場は混浴で、水着の着用が必要になるのでご注意ください。
温泉から海を眺められるので、爽快感は抜群!特に夕日の時間帯では、ちょうど海を望む方角が西となっているので、夕日と開放的な温泉を同時に堪能する贅沢な時間を過ごすことができますよ。
湯の浜露天温泉
- 住所
- 東京都新島村本村間々下
- 営業時間
- 9:30~21:00
- 料金
- 無料
- アクセス
- 【車】新島港より約1分
- 詳細
- 湯の浜露天温泉(新島観光協会)
1日のシメに食べたい島寿司は「なぎさ」で
最後にご紹介するのは、食事処の「魚肴 なぎさ」です。島の中心街に位置している居酒屋さんで、地元客や観光客ともに連日多くの人でにぎわう人気のお店。伊豆諸島では「島寿司」が人気のご当地グルメですが、こちらでも旬の魚を使った島寿司を提供しています。
ネタになるのはメダイやカンパチなどで、お店によって少しずつ特徴が違っているので、食べ比べてみても面白いです。
新島には焼酎もあります。島内唯一の酒造「新島酒蒸溜所」がつくる「嶋自慢」や「羽伏浦(はぶしうら)」などの本格焼酎は、島民にも愛されています。芋や麦と種類もさまざま。後味がすっきりしたタイプの焼酎が多いので、苦手な方でもぜひ試してみてくださいね。
魚肴 なぎさ
- 住所
- 東京都新島村本村1-9-5
- 営業時間
- 17:00~22:00(食事L.O.21:00、ドリンクL.O.21:30)
- 定休日
- 火曜日
- アクセス
- 【車】新島港より約3分
南国のリゾートアイランドというと、沖縄や海外の島をイメージするかもしれませんが、東京にも魅力にあふれた島が多く存在します。新島は美しい自然景観に加えて、ここにしかない食や素敵なお土産も手に入れられる島。一度その魅力を堪能しに旅してみてはいかがでしょうか。
取材・撮影・文/岡本大樹