志庵

瀬戸の器でいただく蕎麦と季節の料理とお酒。

志庵
こだわりの食と器と粋を楽しむ

瀬戸のやきものを見た日には、
やはり瀬戸の器で美味を楽しみたい。
やきものの里の玄関口、尾張瀬戸駅から川沿いに
お土産物やショップ、ノスタルジックな和菓子屋さん、
瀬戸の展示館などをのぞいていると
「手打ち蕎麦　志庵」が見えてきます。
モダンだけれども爽やかで、落ち着く空間。
もちろん器は瀬戸。
店主の中條さんが選んだ瀬戸の逸品で
手打ちのお蕎麦、季節のお料理、
そして銘酒の数々をゆっくりいただきましょう。

瀬戸の窯垣の小路をイメージした壁と優しい日差しの中で。

今回いただいたのは3種の前菜にざる、そして日本酒。
昼下がりのゆるやかな日差しの中でいただくと、
瀬戸の町が微笑んでくれているよう。
お蕎麦はしっかりうまみと香りを感じながらも、爽やか。
お店に入ったときの印象もそうだったけれど
お蕎麦の後味も実に爽やかで心地よいのです。
「味の感じ方はそれぞれお好みがあるかと思いますが
お店の雰囲気は軽やかさを意識していますね。
瀬戸の窯垣の小路をイメージした壁紙も
そんなことを意識しています」
窯垣は、瀬戸の道に見られる塀で
登り窯に製品を詰める際に使われた窯道具を
埋め込んで作られた、いわばやきもののモザイク。
瀬戸本業窯を訪ねるとその周辺で見事な窯垣が見られます。
さらに、
その瀬戸の逸品でお蕎麦をいただくことができます。

器について語る中條さん。なんとも幸せな表情でこちらも楽しくなります。

瀬戸本業窯の器、どのあたりが気に入られているのですか？
という質問に、中條さんの目の輝きが変わります。
「なんといっても、この赤！この色は本当に見事です。
それから、この自然な、たれ具合…いやあ、見事ですよ」
声のトーンも一段階あがります。
さすが瀬戸の生まれ育ち、器も目利き…
と感想を漏らすと、中條さんは意外なことを。
「実はですね、昔は瀬戸のやきもののことなんて
なーんにも知らなかったんですよ。
灯台下暗し、というんでしょうか。
日常の風景すぎて気にも留めなかったですね」
それが、6年目。うどんなども出す料理店だったお店を
蕎麦だけで勝負する店にした際に、陶器の勉強を始めたのだそう。
それがきっかけでどんどん、その魅力にはまりました。
「魅力がある町なんだな…」と改めて思ったと中條さん。
やきものを通して初めて知る、この町の素晴らしさ。
作家さんたちや、通の方もふらっと訪れる。
そんな環境にありながらも、旅人にとっては
決して肩肘を張る雰囲気ではなく、むしろ心地よい。
そんな瀬戸の粋を、肩の力を抜いて楽しめる場所です。