尾張徳川の歴史をいきいきと伝える名品コレクション。まずは迫力の戦国模様から。
徳川美術館
栄華よりも質実にこそ本質
徳川家康の遺品を中心に、
尾張徳川家伝来、代々の「大名道具」がずらり。
建物自体も国の文化財に登録されていたり、
大名の生活と文化を紹介する展示室は、
尾張藩の役所であり、藩主の居宅でもあった
名古屋城二之丸御殿を再現する場所など、
建物自体、展示室自体も芸術品です。
入ってすぐに登場するのは武具・刀剣。
迫力満点の鎧兜、太刀や名刀に磨き抜かれた火縄銃や弓矢。
戦いの道具でありながら、美しさを纏う品々。
男性はその迫力に、女性はその緻密な美に
しばし魅入られてしまうかもしれません。
当時の空気感まで伝わってくる復元された茶室も館内に。
次の展示室は大名たちの茶室と、茶道具。
戦国武将の間で流行した茶の湯。
政治的な目論見もあったお茶の世界の作法もいつしか洗練。
大名の中には接待行事にとどまらず、
趣味として茶の湯を愛好した者も増え、
新しい道具を生み出していきました。
そこには大名の粋があり、
その粋は伝統を守るためのものもあり、かたや、
伝統を破り新しい風を吹き込むこともあったのでしょう。
さらに能舞台に飾られた
単装束(ひとえしょうぞく)を見ても、伝統と進取、
どちらもちゃんと粋であることが伝わってきます。
名品がコレクションされた展示室は 進んでいくごとに、
武家の表の世界から、”奥”の世界へ。
大名家に嫁いだ姫君たちの婚礼調度品などが慎ましやかに。
華やかというよりも、可愛らしさ。
表舞台では決してあらわすことのなかったであろう、
少女たちのいじらしさ、素直な笑顔が見えるようです。
学芸員の加藤祥平さん。美術の世界を志し、徳川美術館へ。静かな情熱。
歴史のページから見ても、美術の観点から見ても、
工芸品の側面から見ても、機能の美しさから見ても、
そして物語のロマンから見ても。
収蔵された品々から感じるのは、人の営み。
学芸員の加藤祥平さんは茶室、能舞台の前で語ります。
「道具を見ているだけで季節感とその季節を楽しんだ、
そんな様子が伝わってきます。
デザイン、色合い。夏は涼やかに、冬は暖かく。
それは関わる人への思いやりでもあったんでしょうね」。
実用品としての魅力、芸術品としての魅力。
いずれにしてもそこには人の思いがある。
素晴らしいコンディションで保管されたコレクション。
リアルな葵のご紋を見て最初は少し緊張するけれど、
次第に引き込まれていくと、
国宝や重要文化財の展示品にうっとりすると同時に
大名の暮らしから伝わる心の部分が浮き上がります。
そこには私たちの暮らしを上質にする
数々のヒントがあるようでした。
徳川美術館
名古屋市東区徳川町1017
JR中央本線「大曽根」駅南口下車徒歩10分、市営地下鉄名城線「大曽根」駅下車徒歩15分 名古屋駅前から市バスもあり
開館時間:10:00~17:00(16:30までに入館)
休館日:月曜日(祝日・振替休日に当たる場合は直後の平日)、2015年12月14日(月)~2016年1月4日(月)
観覧料:1,200円(一般)700円(高校生)500円(中学生)
11月14日~12月6日まで、美術館開館80周年を記念した特別展『全点一挙公開 国宝 源氏物語絵巻』を開催。敷地隣の水と緑の庭園『徳川園』の秋景とともに。