重要文化財だけが「平安神宮」の魅力じゃない!「ミニ琵琶湖」の神苑にも注目

平安神宮

京都市のなかでも東側に位置する岡崎エリアは、京都市京セラ美術館などの文化施設が集まる一方で、琵琶湖疎水が近くを流れる自然豊かな土地です。平安神宮は、大極殿などの重要文化財に加えて、自然豊かな神苑もある観光スポット。御祭神やお守り、神苑内にあるチンチン電車や映画のロケ撮影にも使われる映えスポット・泰平閣(たいへいかく)まで見どころをご紹介します。

 

平安神宮とは

平安神宮

 平安神宮のはじまりは明治時代の中頃。幕末の動乱のあと、都が東京に移ったことで、京都は寂れていました。そんな状況に危機感を抱いた当時の府民たちは、もう一度京都を盛り上げるために行動を起こしたのです。1895(明治28)年、平安遷都1100年を記念して内国勤業博覧会が開催され、平安遷都当時の大内裏の一部が再現されました。これが平安神宮のはじまりです。

 

平安神宮
大鳥居

御祭神は平安京に遷都した第50代・桓武天皇。1940(昭和15)年には、京都で一生を過ごした最後の天皇である孝明天皇も御祭神として加えられました。今なお、平安時代を思わせる朱色の社殿は雅な美しさがあり、多くの観光客が訪れる神社のひとつです。入口の朱色の大鳥居は遠くからでも目をひきます。

 

京都駅の東側にある平安神宮へは、バスに乗っていくのが便利。京都駅から「岡崎公園 美術館・平安神宮前」行きのバスに乗って約30分ほどです。電車で行く場合の最寄り駅は、京都市営地下鉄東西線「東山」駅。1番出口より約10分ほど歩くと到着します。

 

数多くの重要文化財

平安神宮

平安神宮には数々の重要文化財や登録有形文化財があるため、平安神宮に行ったら見ておきたい建築物を一部ご紹介します。

應天門(おうてんもん)は平安宮の正庁であった朝堂院(ちょうどういん)の南門を模して造られました。現在も平安神宮境内への入り口となっており、重要文化財に指定されています。当時に思いを馳せて門をくぐりましょう。

 

平安神宮

境内に入って1番の見ごたえは、真正面にある建物・大極殿(だいごくでん)。重要文化財であるとともに国宝でもあります。大極殿とは日本の古代おける朝廷の正殿。その荘厳さはずっと眺めていても飽きることはありません。

 

平安神宮
白虎楼
平安神宮
蒼龍楼

 

大極殿を正面からみて左手に見える白虎楼(びゃっころう)は、反対側にある蒼龍楼(そうりゅうろう)と共に重要文化財に指定されています。蒼龍楼は、まるで空に昇っていく竜のよう。

ちなみに蒼龍とは京を護る四神(中国神話に登場する聖獣で東西南北を司る神)、東の蒼龍、西の白虎、北の玄武(げんぶ)、南の朱雀(すざく)のひとつ。蒼龍楼は東側に、白虎楼は西側に建てられており、今も京都を守ってくれているように感じられます。

京都三代祭のひとつ、秋に行われる時代祭

平安神宮

時代祭は毎年10月22日に行われる平安神宮の大祭で、祇園祭、葵祭と並んで京都三代祭のひとつに数えられています。京都御所から平安神宮まで、それぞれの時代の人物に扮した人々が練り歩く様子を見物しに、国内外から毎年およそ9万人の人が集まるそう。

「平安守」など、平安神宮でしか授与されないお守り

平安神宮

平安神宮では、さまざまな御守りが授与されています。お守りは本殿脇で授与されますが、御朱印の授与所は應天門の近くにあるので注意しましょう。

 

平安神宮
(左)橘守り(1,000円)、(右)桜守り(1,000円)

こちらは「桜守り」と「橘(たちばな)守り」。大極殿の東に桜、西に橘が植えられており、ひな人形を飾る花飾り「右近の橘花、左近の桜」をイメージしています。平安神宮に来たからこそのお守りです。

 

平安神宮

無病息災、開運招福を願う「平安守」(3,000円)には、京都を守る四神のモチーフがあしらわれています。スタイリッシュなデザインも印象的です。

神苑のなかにチンチン電車?!

平安神宮

平安神宮を訪れたら、神苑は必ず見ておきたいところ。神苑とは神社の境内に設けられた庭園のこと。ちょうど平安神宮の社殿をぐるっと取り囲むようになっており、面積は約10,000平米と広大です。明治の有名な造園家・7代目小川治兵衛によって造られたもので、神苑は東、南、中、西と4つのエリアに分かれています。

 

平安神宮

南神苑には日本で最も古いとされるチンチン電車がひっそりと展示してありますので、ぜひ見つけてみてください。実は京都市には1895(明治28)年から1978(昭和53)年まで、日本で最初の路面電車が走っていました。

きっかけは、平安神宮と同じく、荒廃した京都の町おこし。琵琶湖から京都に水を送る疏水が造られ、その水の力を利用した発電所の電気が路面電車を動かしていたのです。

 

平安神宮

初期の路面電車は国の重要文化財に指定され、ここに展示されています。電車ファンにとっては聖地であり、まるで御神体のような存在かもしれません。

「ミニ琵琶湖」とも呼ばれる自然豊かな神苑

平安神宮

平安神宮の神苑内には広大な池があり、琵琶湖疏水からひいた水が注がれているのだそう。しかも、特別なシステムでろかしているため、琵琶湖では外来魚に駆逐されてしまったイチモンジタナゴなどの貴重な在来種の魚が生息しています。

神苑は「ミニ琵琶湖」とも呼ばれており、滋賀県にある琵琶湖博物館などとも協力して様々な研究が行われているのだとか。

 

四季折々の花が咲き豊かな自然が魅力の神苑を歩こう!平安時代の雅を感じる平安神宮のすべて

魚だけではなく花や木といった植物も豊富。取材時(5月)は紫色のカキツバタ、池には睡蓮(すいれん)の花が咲いていました。春の桜、秋の紅葉、と四季折々に見どころがあるので、いつ来ても楽しめるのが神苑の魅力です。

 

四季折々の花が咲き豊かな自然が魅力の神苑を歩こう!平安時代の雅を感じる平安神宮のすべて

また、「ここは本当に京都の街中なのかな?」と思うほど自然豊かで静かです。そのため、旅行中には非日常感を存分に味わうことができるでしょう。

 

平安神宮

神苑には、泰平閣という名前の橋があります。普段は「橋殿」と言われる橋ですが、映画のロケなどにも使われるほど有名で美しい橋です。

 

平安神宮

両側が座れるようになっているので、一息つくこともできます。湖で泳ぐ鯉(こい)への餌やり体験も楽しめますよ。

平均1時間弱で回れる!おすすめのまわり方

平安神宮は観光の合間に立ち寄れることもおすすめポイントのひとつ。應天門から入って、本殿(大極殿)に向かいお参りをしたあと、本殿のすぐそばにある授与所でお守りを授かることができます。

そのあと白虎楼のほうに進み、神苑へ。神苑ではまず「チンチン電車」をみるために左に進みましょう。その後は順路に従い、橋殿でひと休みをしたら、神苑を出て、最後に應天門にある御朱印の授与所へ。すべて巡っても所要時間は1時間弱です。

 

平安神宮

参拝時間(3月15日~9月30日)
【境内】6:00~18:00(お守・お札・御朱印は7:30~)
【神苑】8:30~17:30
住所
京都府京都市左京区岡崎西天王町97
アクセス
【車】名神高速道路「京都東」I.C.より約20分
【バス】JR「京都」駅より市バス5・100・110系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車、すぐ
【電車】京都市営地下鉄東西線「東山」駅より徒歩約10分
詳細
平安神宮

おすすめランチスポット「ENFUSE」

平安神宮

平安神宮のある岡崎エリアは、京都の文化ゾーンとも言えるエリアで京都市京セラ美術館や京都府立図書館、動物園などがあります。なかでも京都市京セラ美術館は昭和8年に開館した、公立館では日本で2番目に古いという歴史ある美術館です。とはいえ、2020年には全面リニューアルも行われており、歴史の中にも新しさを感じさせる施設です。

 

カフェ「ENFUSE(エンフューズ)」は京都市京セラ美術館のなかにあり、ランチを食べるのにピッタリの場所。窓が大きく、そこから太陽に光が燦々と注ぎ込み、行き交う人を眺められる開放感のあるつくりになっています。

平安神宮

「青谷城州白梅ソーダ」(750円)は、微炭酸のさっぱりとしたおいしさで歩き疲れた体が癒やされること間違いなし。京都府城陽市にある青谷は有名な梅の産地で、城州白梅と呼ばれています。

 

平安神宮

「京の素材のおかずプレート」(1,750円)はその名の通り、名店の品や京野菜がふんだんに使われています。その数、なんと15種類!そのなかでも、「半兵衛麩 生麩のグリル 赤ワイン田楽味噌」は、京都で有名な麩の専門店の生麩を使った田楽。生麩は普通の麩と違いもっちりとした食感がおいしさの秘密です。

そのほかにも、京都では家庭料理として有名な「鰆の西京焼き」や、箸では摘み上げられないくらい柔らかいお豆腐「南禅寺のおぼろ豆腐」も楽しめます。野菜がたっぷりとれて体にもやさしい京都のおかずプレートをぜひ試してみてください。

 

ENFUSE

営業時間
10:30~19:00
定休日
月曜日(祝日開館)※美術館の営業時間に応ずる
住所
京都市左京区岡崎円勝寺町124京都市京セラ美術館内
アクセス
京都市営地下鉄東西線「東山」駅より徒歩約8分
詳細
ENFUSE

 

京都の復興を祈り、平安遷都を記念して作られた「平安神宮」。平安京を模した大鳥居や大極殿などの建築様式に加えて、四季折々の花々が咲き誇る広大な神苑も散策してみてくださいね。

 

撮影・写真・文/若林佐恵里

 

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