提供:ことりっぷ
創業220年の京菓子司・亀屋良長(かめやよしなが)は、店先に湧く名水「醒ヶ井(さめがい)水」を使って作る新旧の京菓子が愛される人気店。こちらでは、現役で活躍する職人さんから京菓子づくりを学び、できたてを醒ヶ井水で点てた抹茶とともに味わえる、「京菓子手づくり教室」を開催しています。伝統の技と道具を使って、手のひらにのせた小さな丸い玉を季節を映す可憐なかたちへと変えていく――心弾む京菓子づくりを体験してみませんか。
SNSでも話題の京菓子を生み出す名店
醒ヶ井通と四条通が交わる場所に店を構える
創業は1803(享和3)年。当初から受け継がれる銘菓・烏羽玉をはじめとした伝統の京菓子から、食パンにのせる「スライスようかん」といった新しい発想で生まれた逸品まで、多彩な商品がラインアップ。ふだんのおやつ、おみやげ、贈りものなど、シーンに合わせた一品に出合えます。京菓子づくりに使う醒ヶ井水は、まろやかな軟水。小豆や餅米など素材の香りを際立たせてくれるのだそうです。
1階が販売スペース。パッケージデザインも素敵な商品が並ぶ
京菓子の手づくり体験にチャレンジ
椅子の座面には、SOU・SOUのテキスタイルを使用
「京菓子手づくり教室」の会場となる本店4階の部屋は、2023年秋のリニューアルにより、明るくて広々とした空間に。窓辺には、江戸時代後期の1800年代から現代にいたるまでのさまざまな干菓子用木型や、昭和初期ごろまで使われていた菓子帳が展示されています。
木型や菓子箱など展示された品々が、連綿と受け継がれてきた京菓子文化を伝える 木型には、遊び心が光る意匠がたくさん。ぜひじっくり眺めてみて
「練りきり」と「きんとん」2種の生菓子づくり
職人さんによる「さくら」と「菜種」。目指すのはこの形
体験でつくるのは、季節の移ろいを告げる生菓子2種。この日は、練りきり製の「さくら」ときんとん製の「菜種」です。
京菓子職人歴約16年の鎌田さんがわかりやすく教えてくれる
はじめに、職人の鎌田泰光さんによるデモンストレーションを見学。餡(あん)を包んでいく「包餡」や、均一な大きさの花びらを形づくる木べら使いなど、目の前で繰り広げられていく職人技に思わず感嘆の声を上げてしまいます。
しなやかな手つきであっという間に「さくら」が完成 薄紅色の生地を手のひらでまるめる
いよいよ自分の番。あらかじめ用意された生地や餡を手に取り、形づくっていきます。
薄紅色の「練りきり」(餡を炊き上げる際に、お餅を練り込んだ生地)を手でもんで、柔らかくしてからまるめます。まるいくぼみをつけて白色の練りきりを置き、外側に向かってのばします。これは、生地の色を薄紅と白の淡いグラデーションにする「ぼかし」という工程。
中央をくぼませて白色の生地を置き、のばしていく 生地にきれいなぼかしができたら、餡の玉を包み込む(包餡) 三角べらの角を使って花びらの筋をつける
次に、三角べらを手に取ります。真ん中に印をつけてから、へらの角をそっと生地に当てて花びらの筋を付けます。
花びらの部分をやさしく押さえて整え、へらで花びらの切れ込みをつくり、めしべに見立てた小さな黄色い玉をのせれば完成です。
最後の仕上げ。かわいい桜の花ができました♪
きんとん製「菜種」づくり
黄色と黄緑色を重ねた餡と粒餡の2種を使用
「きんとん」もはじめは鎌田さんによる実演を見学してから。竹製の「きんとん通し」に生地を擦り付けて通します。
手のひらにのせた粒餡の玉に、そぼろ状の餡をふんわりとまとわせます。軽すぎるとぽろぽろと落ち、力を入れすぎるとつぶれてしまうので、力加減が難しいところ。
きんとん通しに餡を擦り付ける きんとん通しをトントンとたたくと、そぼろ状の餡が降り積もる 箸を使って粒餡にそぼろ状の餡をふんわりと付けていく
できたての京菓子を名水仕立ての抹茶とともに
自分でつくる京菓子は格別の味わい
でき上がった2個の京菓子のうち、ひとつはその場で抹茶とともに味わい、もうひとつは箱に入れて持ち帰ります。
抹茶と京菓子をいただいている間に、鎌田さんが和三盆製のお干菓子づくりを披露してくれます。木型に和三盆をギュギュッと詰めたら、木の棒で軽く木型をたたくのですが、これは、振動によってお干菓子を浮かし、型から抜けやすくするため。お干菓子を「打ち物」と呼ぶのはこの工程にちなみます。
木型に和三盆を均一に詰めたら、コンコンと木の棒を打ち付ける できたてのお干菓子はほろほろの食感。舌の上でさらさらと溶けていく
自分でつくった京菓子は、格別のおいしさ。ふわっと春の香りが感じられた気がしました。
つくって、味わって、学んで、五感のすべてが満たさる京菓子づくり。ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
<和菓子手づくり教室>
【開催日】公式HP内 予約状況カレンダーを参照
【開催時間】14:00~15:00
【所要時間】約60分
【料金】1名3300円
文:佐藤理菜子 撮影:マツダナオキ