カメラマンが教える絶景&撮影テクニック~奈良の冬景色を撮る~

葛城山の霧氷

奈良の冬のおすすスポットと撮影法をご紹介

短い秋が終わりに近づき、もうすぐ冬の到来。奈良県でもこの季節にしか見られない夕景や霧氷、雪景色などを堪能できます。そこで、自然が創り出す絶景を撮影できるスポットを、奈良県出身の写真家・高橋良典さんがご紹介。撮影テクニックとともに解説します。

 

写真家
高橋 良典(たかはし よしのり)さん

1970年、奈良県生まれ。2000年にフリーの写真家として独立し、写真事務所「フォト春日」を設立。風景写真を中心とした作品をカレンダー・観光ポスター等へ提供。また、写真雑誌や出版物への写真提供および原稿執筆を行う。生まれ育った奈良県の魅力と、国内各地にて自然の中に潜む「何か」のすみかをテーマに撮影を続けている。
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員

写真家 高橋 良典さん

 

おすすめの絶景スポット【1】大美和の杜展望台からの夕景

大和三山の夕景

日本最古の神社と言われる奈良県桜井市の大神神社(おおみわじんじゃ)。そのすぐ近くにある大美和の杜(おおみわのもり)展望台からは、大和三山の耳成山(みみなしやま)、畝傍山(うねびやま)、香具山(かぐやま)をはじめ、遠くには金剛山(こんごうさん)、大和葛城山(やまとかつらぎさん)、二上山(にじょうさん)などを望むことができます。

昼間の風景も美しいのですが、おすすめは11月下旬~1月上旬頃の夕暮れ時。特に冬至を挟んで前後1カ月くらいは、大和三山の真ん中付近に夕日が沈みます。それ以外の季節だと夕日は大和三山よりずっと北寄りに沈みますので、冬は撮影のチャンス!

夕焼け空と地上風景との間に大きな輝度差があるので、一眼カメラでの撮影ではハーフNDフィルターを使うか、カメラの明暗調整機能を活用しましょう。ちなみに、スマートフォンでの撮影する場合はその明暗を自動調整してくれますので、全体の明るさ調整に気を配るだけで良いでしょう。

 

※明暗調整機能とは…
ハイライト(写真の明るい部分)に対してシャドウ(写真の暗い部分)が落ち込む場合、カメラ内でシャドウ部分を明るくして明暗のバランスを整える機能。カメラメーカーによって異なりますが、オートライティングオプティマイザー、Dレンジオプティマイザー、アクティブDライティングなどの呼び名があります。

 

大美和の杜展望台

住所
奈良県桜井市三輪1422
アクセス
【電車】JR「三輪」駅より徒歩約15分
【車】西名阪自動車道天理ICより約30分
詳細
大美和の杜展望台 | 大神神社(おおみわじんじゃ)

 

おすすめの絶景スポット【2】稲渕の棚田

明日香村の棚田

日本の棚田百選に選ばれている、奈良・明日香村の稲渕の棚田は冬でもフォトジェニック。1~3月の雨上がりは霧が発生しやすく、情緒あふれる写真が撮影できます。棚田のエリアは広いのですが、ポイントは曲線美。曲がりくねったあぜ道をうまく取り入れて、構図を決めましょう。

なお、あぜ道の上や田んぼの中には入らないよう注意が必要です。絞り気味にしてパンフォーカス狙いも良いですし、花を見つけたら絞りを開け気味にして、背景をぼかしつつ棚田の雰囲気を入れても良いでしょう。

 

明日香村の棚田

気温にもよりますが、2月中旬以降になると梅の花や菜の花が咲き始めますので、開花時期に訪れるのもおすすめです。

 

稲渕の棚田

住所
奈良県高市郡明日香村稲渕
アクセス
【電車】近鉄「橿原神宮前」駅よりバス「石舞台」下車後、徒歩約25分
【車】京奈和自動車道「橿原北」ICより約30分
詳細
奈良県景観資産-稲渕の棚田

 

 

おすすめの絶景スポット【3】葛城山の霧氷

葛城山の霧氷

関西で霧氷撮影と言えば山登りが必要、そんなイメージがあるかと思いますが、葛城山(かつらぎさん)は気軽に行ける奈良県の霧氷スポット。葛城登山口駅よりロープウェイを利用し、葛城山上駅下車後、20分ほど登ると山頂エリアへ到着します。

積雪時には足元が滑りやすくなりますので、軽アイゼンや滑り止めが必須。真っ白な雪景色を撮影すると写真が暗めに写ることがあるので、露出をプラス側に補正しながら適正露出を探りましょう。冬の間であればいつでも霧氷が見られるわけではないので、タイミングも重要です。狙い目は、1~2月の冬型の気圧配置が去った直後の晴天。晴れて日差しが届くと霧氷は儚く溶けて落ちていきますので、始発のロープウェイに乗るのがおすすめです。

 

葛城山の霧氷

葛城山上駅から徒歩約15分の場所にある葛城高原ロッジの脇には、兄弟のように並ぶメタセコイアがありますので、ぜひ狙ってみてくださいね。

 

葛城山

住所
奈良県御所市櫛羅
アクセス
【電車】近鉄「御所」駅よりバス約20分「葛城ロープウェイ前」下車、「葛城登山口」駅よりロープウェイに乗車し、「葛城山上」駅下車
【車】南阪奈道路「葛城」ICより約15分、「葛城登山口」駅よりロープウェイに乗車し、「葛城山上」駅下車
詳細
葛城山ロープウェイ

 

 

おすすめの絶景スポット【4】金剛山の霧氷

金剛山の霧氷

奈良県と大阪府にまたがり、葛城山と並んでそびえる金剛山(こんごうさん)も関西屈指の霧氷スポット。1,125mと標高が高い分、葛城山(959m)よりも霧氷がつく確率は高いと言えます。ただし、金剛山は徒歩で登らなければならず、1~2月は中腹から上部に積雪があることが多いため、アイゼンは必携。山頂までは約1時間30分かかりますが、霧氷に出会えた時の感動もその分、大きいです。

登山ルートはいくつかあるのですが、おすすめはずっと階段を登っていく千早本道(ちはやほんどう)ルート。大阪府側から登り始めて、山頂は奈良県になります。山頂付近は金剛山天法輪寺(こんごうさんてんぽうりんじ)や葛木神社を中心に、杉の大木が立ち並ぶ森の中。そこから大阪府民の森・ちはや園地に向かって歩くと、途中から大阪府に入ります。ちはや園地展望台からは、霧氷の木々を高い目線から撮影することが可能。また、ヤマガラがたくさんいますので野鳥の撮影にもおすすめです。

 

金剛山の霧氷

山頂付近で撮影。長老のような杉が並びます。

 

金剛山

住所
奈良県御所市高天
アクセス
【電車】近鉄、南海「河内長野」駅よりバス約30分「金剛山登山口」下車、山頂まで徒歩約1時間30分
【車】南阪奈道路「羽曳野」ICより約30分

 

 

おすすめの絶景スポット【5】千早赤阪村のスイセンの丘

千早赤坂村の水仙

奈良ではありませんが、金剛山の麓にある大阪府唯一の村・千早赤阪村(ちはやあかさかむら)にはスイセンの丘があり、毎年1月上旬~2月中旬頃にかけて水仙が咲き誇ります。

可憐な水仙の花がキラキラと光る、逆光での撮影がおすすめです。ただし、影の部分が多すぎると写真の印象が重くなってしまうので、明暗のバランスが良い部分をズームレンズで切り取って撮影しましょう。もちろん、花のアップ撮影も楽しめますよ。

 

スイセンの丘

住所
大阪府南河内郡千早赤阪村水分27
アクセス
【電車】近鉄、南海「河内長野」駅よりバス30分「金剛山登山口」下車、徒歩1時間30分
【車】南阪奈道路「羽曳野」ICより約25分

 

 

おすすめの絶景スポット【6】吉野山の雲海

吉野山

秋から冬、そして春にかけては雲海が出やすい時期。雲海は「湿度があること」「適度な冷え込み」「風がないこと」などの条件を満たす早朝に出やすいとされていますが、吉野山では昼間でも雨降りや雨上がりに、霧が流れてきて雲海になることも多いです。

吉野山全体を見渡すことのできる上千本(かみせんぼん)、花矢倉展望台からの眺めがおすすめ。吉野山の中心・金峯山寺蔵王堂(きんぷせんじざおうどう)が雲上に浮かぶ様子は、ここが聖域であることを感じさせてくれます。

 

吉野山

住所
奈良県吉野郡吉野町吉野山
アクセス

【電車】近鉄「吉野」駅下車、吉野山内へは徒歩、ロープウェイ、バス利用
※ロープウェイ、バスの運行は事前に公式サイトでご確認ください
【車】京奈和自動車道「御所南」ICより約40分

 

 

吉野山を訪れた際におすすめのお店

中井春風堂

吉野と言えば吉野葛(よしのくず)。金峯山寺蔵王堂(きんぷせんじざおうどう)近くにある「中井春風堂」は葛の専門店です。

 

中井春風堂

センス良くまとめられた明るい店内。大きな窓からは四季の彩りが感じられます。

 

中井春風堂
中井春風堂の「吉野本葛切り」

葛の専門店らしく、イートインのメニューは注文を受けてから作る「吉野本葛切り」と「吉野本葛もち」(ともに820円)の2つ。出来立ての繊細な一品を味わうための賞味期限は、長くて10分と店主の中井孝嘉さんはおっしゃいます。話に花を咲かせる前にまずは一口。そして旬が過ぎないうちに、その滑らかさとやさしい弾力を味わいましょう。

最高級の本葛を甘さ控えめの黒みつでいただくと、体の中が浄化されていくよう。ぜひ、葛の本場吉野で味わいたい一品です。お土産用の葛菓子や葛湯もおすすめです。

 

中井春風堂

住所
奈良県吉野郡吉野町吉野山545
アクセス

【電車】近鉄「吉野」駅下車、吉野山内へは徒歩、ロープウェイ、バス利用
※ロープウェイ、バスの運行は事前に公式サイトでご確認ください
【車】京奈和自動車道「御所南」ICより約30分

 

営業時間
10:00~17:00(L.O16:30)
定休日
水曜日、第2・4木曜日
※4月・11月は無休、冬期は平日休業
公式サイト
中井春風堂

 

 

おすすめの絶景スポット【7】みたらい渓谷の雪景色

天川村の雪景色

奈良県の中でも標高の高い天川村(てんかわむら)は1~2月、積雪の多い地域。公共交通機関でアクセスできるため、雪道の運転に自信のない方や車がない方でも気軽に訪れることができます。中でも、渓谷美の美しいみたらい渓谷は一押し。バス停からは約2km、30分ほど歩きますが、ぜひ訪れてほしい場所です。

川の流れをやわらかく描くため、三脚を使ってスローシャッターで撮影しましょう。

 

みたらい渓谷

住所
奈良県吉野郡天川村北角
アクセス
【電車】近鉄「下市口」駅よりバス45分「天川川合」下車、徒歩約30分
【車】京奈和自動車道「御所南」ICより約60分

 

おすすめの絶景スポット【8】河鹿の滝の冬景色

天川村の雪景色

みたらい渓谷よりさらに標高の高い洞川(どろがわ)地域では、積雪の可能性がより高まります。河鹿(かじか)の滝の雪景色の美しさはもちろんなのですが、滝壺の水の青さも印象的です。PLフィルターを使って水の色を引き出しましょう。撮影の後は冷え切った体を洞川温泉で温めるのがおすすめです。

 

河鹿の滝

住所
奈良県吉野郡天川村洞川
アクセス
【電車】近鉄「下市口」駅よりバス60分「洞川温泉」下車、徒歩約30分
【車】京奈和自動車道「御所南」ICより約60分

 

撮影・文/高橋 良典

 

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