夕陽があまりに美しく「日本の夕陽百選」に選定された京都・丹後半島の夕日ヶ浦海岸。この地に開湯41年を迎える「夕日ヶ浦温泉」があります。泉質は低張性弱アルカリ性高温泉。お肌がツルツルになるとされ、美人の湯とも呼ばれています。そんな温泉と美しい海、山海の幸、海に沈みゆく夕陽など、この地の魅力を存分に味わえるおすすめの宿が「佳松苑(かしょうえん)はなれ櫂(かい)」です。1泊2日の滞在記をお届けします。
オーシャンビュー&ドリンクインクルーシブの宿「佳松苑はなれ櫂」
「佳松苑はなれ櫂」の魅力のひとつは、なんといっても、すぐ目の前が海であること。建物自体が、そのまま海に乗り出せそうな舟の形をしています。
玄関を入ると、なんとゆったりとしたしつらえでしょう。広々とした吹き抜けの空間は木のぬくもりが感じられ、まるで大きな船に乗っているかのような安心感に包まれるのです。この建物は、古い旅館をリノベーションしたそうで、活気に満ちた浜の空気を今に伝えているようです。
まずはチェックイン。「夜も朝も潮騒が聞こえますよ。どうぞおくつろぎくださいね」と声をかけていただき、1泊2日の滞在が始まりました。
もうひとつのこの宿の魅力が、ドリンクインクルーシブなこと。ロビーの一角に設けられたカフェコーナーも、夕食時のドリンクも、客室に用意されているドリンクもすべてフリーです。(一部、別料金あり)
ロビーに隣接するカフェコーナーでは、専用のマシンで作る香り豊かなコーヒーや紅茶を自由に楽しむことができます。ドリンクは、ゆったりとしたソファーを備えたロビーやテラス席のほか、客室などにも持ち込みOKです。
- カフェコーナー 利用時間
- 6:00~24:00
また、館内には宿泊者専用の図書室もあるんです。雑誌や書籍、DVDやCDなどを用意。雑誌はファッション誌からゴルフ雑誌まで、最新号が並びます。京都観光や和菓子の本、丹後を紹介した書籍など、地元愛にあふれたセレクトも魅力。1冊ずつ毎日しっかり消毒をしているそうで、感染症対策も万全です。
図書室の本は、目の前のテラスや客室に持ち出し可能。ロビーからコーヒーを持ってきて、テラスで読書タイムを楽しむのもおすすめです。
露天風呂付きにオーシャンビューまで、贅沢な5タイプの客室
海を眺めながらプライベート温泉を楽しめる露天風呂付き客室
「佳松苑はなれ櫂」には5つの部屋タイプがあるのですが、なかでも人気なのが露天風呂付き客室。1階に5部屋あり、すべての部屋から海を見渡せます。8畳の和室に縁側と濡れ縁、その横に露天風呂が。
露天風呂からも海を望み、温泉に浸かりながら、夕陽が水平線へ溶けていくのを待つのもよいかもしれません。夜の帳が下りた後は、潮騒に耳をかたむけて、ただ湯に身をまかせる。そんな贅沢な時間の使い方もこの客室なら叶えられます。
バスアメニティも充実。シャンプー、コンディショナー、シャワージェルは、タイ生まれのナチュラルスキンケアブランド「THANN(タン)」のものが全室に用意されています。温泉と、ジャスミンやダマスクローズが香るラグジュアリーなアメニティで、最高の癒し時間になること間違いなし!
また、ぜひ体験してほしいのが濡れ縁からの眺め。芝生の緑と海の青とのコントラストが美しく、これが本当に絶景なのです。デッキチェアに体を預け、この景色を独り占め。青い海が間近に迫り、心地よい潮の音色と潮風がたまりません。
そして、客室の冷蔵庫内のドリンクやコーヒー、紅茶も無料です。「丹後七姫サイダー」やクラフトビール「Tango Kingdom Beer マイスター」などのご当地ドリンクが味わえるのもうれしいポイント。宿の心遣いを感じます。
さらに広い海を望む2階の客室
2階に4室ある海側客室からは、より広く海を見渡せます。宿自体が小高い丘に立っているので、窓から見えるのは一面の青! 日本海の風景をアートとして取り込んだようなしつらえが見事です。
この2階の海側客室に露天風呂は付いていませんが、雄大な海をゆっくり楽しむにはおすすめです。窓辺のソファーに腰かけて、いつまでもぼーっと眺めていたくなります。このソファーもまた、夕陽を眺める特等席です。
大海原に漕ぎ出せそうな船首客室
もうひとつ、楽しいのは、船首の形をしたこの宿ならではの客室。2階と3階に1室ずつあり、2階の客室はデッキに出ることができるのです。3階の客室はより高い位置から景色を堪能できます。どちらも大海原に漕ぎ出す舟に乗っている気分を味わえそうです。
海、空、温泉がひと続きに! 自慢のインフィニティ露天風呂
さて。客室からの眺めも美しいのですが、大きなお風呂と絶景を楽しみたいという願いが叶うのが、この宿の名物、インフィニティ露天風呂。海と温泉とがひと続きに見え、雄大な海の中で温泉に入っている気分を味わえます。
空が早朝は曙色に染まり、日中は青一色、夕暮れ時は茜色から紫色へと変化――。この自然が織りなすロマンチックな風景を見ながら温泉に浸かれるとあって人気です。
ちなみに、夕陽が水平線に沈むのは春から9月初旬まで。9月後半から冬にかけては、左手の小山の向こうに沈んでいきます。それでも夕焼けの美しさは格別。また、夏には花火があがるそうで、露天風呂や海側の客室から大迫力の花火を楽しむこともできます。
内風呂は石灯篭を配した旅情あふれる雰囲気。大浴場は2つあり、朝と夜で男女入れ替え制。夜はこちらが女湯に、翌朝は男湯になります。
もうひとつの大浴場は海を望むことはできませんが、どっしりとした岩造りの露天風呂は純和風旅館のよさを感じさせます。
- 大浴場 利用時間
- 15:00~24:00、6:00~9:00
ほかに、無料で利用できる家族風呂も。ご夫婦やカップルにおすすめです。
そして、お風呂上がりにもうれしいサプライズが待っています。それは無料のアイスクリームコーナー! 大浴場の入り口横の冷凍庫に、アイスクリームが種類豊富にたっぷりと入っているのです。温泉であたたまった後の体に冷たいアイスが心地よい! ドリンクだけでなく、アイスクリームも無料なんて、最高のおもてなしですね。
また、客室に浴衣と作務衣が用意されていますが、色浴衣の無料貸出しも。大浴場前のアンティークのたんすに並べられたかわいい色浴衣を前に、どれを着ようか心が踊ります。男性用もあるので、カップル・ご夫婦で一緒に楽しめます。
丹後の食材の豊かさと職人技に圧倒! ボリューム満点の夕食
待ちに待った夕食は、個室のお食事処でゆっくりいただきました。近海で獲れた鮮度抜群の旬の魚介類や但馬牛など、丹後の滋味あふれる食材を存分に味わってほしい。そんな料理人の強い思いが感じられる料理が、次から次へと運ばれてきます。「佳松苑はなれ櫂」は、味はもちろんのこと、見た目やボリュームにおいても、料理に絶対の自信を持つ宿でもあるのです。
夕食は、料理長厳選の食前酒からはじまり、次に登場したのがこの前菜。取材した秋は、ホオズキや稲穂で秋の豊穣を演出した美しいひと皿が。目からもおいしさが伝わってきます。濃厚な味わいの但馬牛の赤味噌煮や、身が締まった〆鯖小袖寿司、果実の甘味を活かした柿の白和えなど、一品ごとに繊細な味が広がります。
続いて驚いたのがこちらの吸物。エビをウサギに、玉子豆腐を満月に見立てた極上の美しさ。食べるのがもったいないほどかわいらしい作り込みに感動しました。
記憶に刻まれる、おいしく美しい料理はまだまだ続きます。焼物は、松茸やホタテなどを自分で備長炭で焼いて、できたてを味わうのです。
ホタテはグツグツと音を立て始めたらバター醤油で味付けし、もうひと焼き。肉厚の松茸は香りと歯ごたえがたまりません。また、皮が弾けて笑ったように見えることから「笑い栗」と名付けられた焼き栗も絶品!
続くは、色鮮やかな伊勢海老のビスク。添えられているのは、煎ったからすみという豪華食材の共演です。伊勢海老の旨味がギュッとつまった、まったりと濃厚なスープ。バゲットに付けて味わい尽くすのもまた贅沢です。ここまででお腹も心も満たされ、大満足ですが、まだまだ続きます。
次に登場したのは、但馬牛リブロースステーキ。お腹いっぱいと言っていた胃袋が、美しいサシの肉厚のお肉を前に完敗です。これも目の前の陶板で焼いて、焼きたてをいただきます。
そのほか、地元産の魚を中心としたお造りや蒸し物、鮭とイクラの親子釜飯、デザートには栗アイスやイチジクのパンナコッタなど、丹後の旬の味覚がどんどん登場しました。ご当地のおいしいものをいろいろと味わう喜びを満たしてくれる、このメニュー構成はさすがです。
今回は秋のメニューを堪能しましたが、11~3月には山陰沖で獲れた松葉ガニづくしのプランや、松葉ガニと但馬牛が一度に味わえる宿泊プランが登場。冬の味覚の王者・カニをお腹いっぱい楽しめます。
また、カニよりもほかの海の幸が好きな方には、伊勢海老やホタテ、イカの海鮮焼きと但馬牛のしゃぶしゃぶという豪華食材目白押しの宿泊プランもおすすめです。
そして、夕食時のドリンクももちろん飲み放題。生ビールや地酒、ワインといったアルコール類もソフトドリンクも、2時間好きなだけ楽しめます。
ビーチの散歩から1日をスタート!
優しい波の音に包まれながら目覚めたら、朝の夕日ヶ浦海岸を散歩するのもおすすめです。ビーチまで宿からは歩いて10分ほど。こんなオブジェやブランコもあるので写真撮影もばっちり! 客室から眺めていた海を間近でしっかり楽しみました。
※ブランコは2022年3~4月頃まで修理中
朝食にはにぎやかなかご盛り料理や釜炊きごはんが
さて、朝食の時間です。注目はかごに盛られた色とりどりの料理。連泊のお客様も多いことから、飽きないようにと、内容は日によって替わるそう。この日は、炭入りの細うどんや茄子のオランダ煮、小松菜の煮びたしなど、丁寧に作られた8品がかごを彩っていました。
また、野菜や鶏肉の旨味がダシに溶けだして、ひと口ごとに「おいしい!」と思わず声をあげてしまったのが鶏つみれ鍋。朝の体に染み入ります。魚の一夜干しも目の前で火を通し、焼きたてをいただきます。
釜で炊いた丹後のコシヒカリにぴったりなのが、作りたてのだし巻き玉子や牛肉とこんにゃくのしぐれ煮。珍しい黒豆の納豆も絶品でした。
味・見た目・ボリュームと3拍子そろった朝食を堪能して、とうとうチェックアウトの時間。「こちらをどうぞ」と手渡してくださったのは…
なんと、竹の皮に包まれたおにぎりとお茶! 1人1個、こぶ塩や梅塩も添えられています。これは帰路も空腹にならないようにとの気遣い。最後まで行き届いた心配りに感動しました。
海がすぐそばにあることだけでも贅沢なのに、スタッフのみなさんのおもてなしに身も心もほっと安らいだ「佳松苑はなれ櫂」での滞在。なんといっても、美しい海と夕陽を望む部屋からの眺め、海と一体になったような体験ができるインフィニティ露天風呂、そして、職人の技が存分に活かされたボリューム満点の料理たち。贅沢な温泉旅館ながら、かしこまらずにくつろげるあたたかみが随所に感じられ、大きな船にゆっくりと身を任せるような安心感に包まれる宿でした。
夕日ヶ浦温泉 佳松苑はなれ櫂
- 住所
- 京都府京丹後市網野町浜詰669
- アクセス
- [電車]京都丹後鉄道「夕日ヶ浦木津温泉」駅から無料送迎バス(要予約)で約5分
[車]山陰近畿自動車道「京丹後大宮」ICから約40分 - 駐車場
- 無料(予約不要)
- チェックイン
- 15:00(最終チェックイン17:00)
- チェックアウト
- 10:00
撮影:大林博之 取材・文:田村のりこ