国内外の参拝客でにぎわう福岡県の「太宰府天満宮」。近年、参道には新しいお店が続々と登場し、人気の観光地に新たな魅力が加わっています。今回は太宰府天満宮の見どころと、参拝後に食べ歩きを楽しめる周辺の飲食店などもあわせてご紹介していきます。
学問やアートの地として知られる「太宰府天満宮」
遥か昔、平安時代から「天神さま」として信仰されている「太宰府天満宮」。菅原道真(すがわらみちざね)公をお祀りしており、道真公の御墓所の上に築かれている神社です。
菅原道真公は、学問の神様として有名ですが、漢詩や和歌にも優れた才能を持っていたことから、文化芸術の神様としても知られています。そのため「太宰府天満宮」とアートは関係が深く、それぞれの時代のアーティストが最先端の作品を奉納してきたそう。境内の宝物殿では、道真公が残した貴重な品々のほか、現代アートの展示も行われています。
2023年には、御本殿改修期間の参拝所として設けられた「仮殿」を、「大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーを務める藤本壮介氏率いる「藤本壮介建築設計事務所」が手がけ、さらに魅力的なスポットが加わりました。
※御本殿の改修期間は約3年間で、2026年頃に改修工事完了の予定です。
「太宰府天満宮案内所」で天満宮情報やかわいいお土産を見つけよう!
太宰府に着いたら、まずは「太宰府天満宮案内所」へ。境内のマップやパンフレットなど参拝に役立つ情報を事前に手に入れましょう。
また、事前にガイドの予約をした方もこの案内所からスタート!「太宰府天満宮」ではボランティアスタッフによる参拝の無料ガイド※を実施しています。英語ガイドにも対応しているので、海外から訪れた友人と一緒に参拝したい方にもおすすめです。
太宰府天満宮ガイド
- 電話
- 092-922-8225 ※ガイド希望の場合は2週間前までに要予約
- 公式サイト
- 太宰府天満宮ガイドサービスの会
案内所では、ご当地ならではのお土産も必見です。造形作家・鹿児島睦(かごしま まこと)氏や、「中川政七商店」「鈴懸(すずかけ)」「MOONSTAR(ムーンスター)× HIGHTIDE(ハイタイド)」などのアーティストやブランドとコラボしたオリジナルアイテムも並んでいます。
流れている音楽は、境内の環境音を取り入れてつくったオリジナルサウンドで、制作を手がけたのは、サカナクションの山口一郎氏が主宰するプロジェクト「NF(エヌエフ)」。見どころがたくさんあるスポットなので、ぜひ立ち寄ってみてください。
牛の頭をなでて学力アップ!?
案内所の目の前にある鳥居をくぐった先には、1985年に彫刻家・冨永朝堂(とみながちょうどう)が手がけた「御神牛像」があります。実は道真公は、乙丑(きのとうし)※生まれで、牛とは深い縁があるそう。道真公の御墓所も、彼の遺骸を運んでいた牛が伏して動かなくなった場所に築かれたのだとか。太宰府にある御神牛像がすべて伏せているのは、これが由来。この場所以外にも、境内には11体の御神牛像があるので、ぜひ探してみてください。
また、この像は頭脳明晰だった道真公のご利益によって「頭をなでると知恵を授かる」と言われており、長年多くの人に親しまれています。
※乙丑…十干と十二支を組み合わせた干支のうちのひとつ。
御神殿までの道にも見どころがたくさん
案内所や御神牛像を過ぎて、すぐの場所にあるのは「心字池(しんじいけ)」です。この橋には「太鼓橋」と言われる3つの橋が架かっており、それぞれ現在・過去・未来を表しているそう。橋を渡って心身を清めてから、御本殿に向かいましょう。
心字池の隣には、紫・白・薄紫など色とりどりの花々が咲き誇る「菖蒲池」が。ここでは毎年6月頃になると約55種・3万本の花菖蒲が見られます。
5月下旬から6月上旬かけては紫陽花(あじさい)も咲いているほか、夜間照明などのイベントが行われることもあるそうです。イベントの詳細は公式SNSをチェックしてください。
太鼓橋を渡ってまっすぐ進むと、2つの像が見えてきます。ひとつは、人徳のある王が現れた際にのみ姿を見せると言われている空想の生物「麒麟(きりん)」の像です。これは、戦時中の金属提供を奇跡的にまぬがれたものなんだそう。
もうひとつは嘘と誠を入れ替え、人々を幸せにすると言われている鳥「鷽(うそ)」の像です。
太宰府天満宮には、神殿の造営中に境内に蜂の巣ができて作業ができなくなったことがあり、その際に鷽の大群が蜂を追い払ったという伝説があります。そのため、鷽は守り鳥として大切にされてきました。
歴史や伝承を知るとより参拝が楽しめそうです。
御本殿に向かう前に、2つの像の少し先にある大きな手水舎で手を清めましょう。1934年に奉納され、中央に大きな神亀が彫り込まれた手水鉢は、宝満山の一枚岩で造られています。
紫陽花の咲く6月頃には、この鉢に紫陽花を浮かべた「花手水(はなてみず)紫陽花」を楽しめるそうです。
朱塗りの美しき「楼門」
楼門は、太鼓橋側からと後述する御本殿側からでは見た目が少しだけ異なります。写真は太鼓橋側から見た姿です。屋根が2層になっていますが、御本殿側から見ると屋根は1層のみ。手の込んだ造りを目で楽しむことができます。
話題の「仮殿」へ参拝
2027年には道真公が薨去(こうきょ)※されて1125年目を迎えます。その大切な節目を迎えるにあたり、現在、重要文化財である「御本殿」の大改修が124年ぶりに行われています。
※薨去:皇族や位の高い人が死去すること
その間の参拝や神事を行なう場所として、2023年5月に「仮殿」が御本殿前に完成しました。
デザインと設計を手がけたのは、日本建築大賞など数多くの受賞経験を持つ藤本壮介氏が率いる「藤本壮介建築設計事務所」。「太宰府天満宮」周辺に広がる杜の木々が御本殿前に飛翔し、仮殿のたたずまいをつくりあげることをコンセプトにデザインされています。
神社の建物の「反り」をイメージした屋根の上には桜、梅、シャクナゲなど60種類の植物が植えられています。時間の経過とともに、鳥や風によっていろいろなものが運ばれ、すでに独自の生態系が出来上がっているそう。
完成した5月にはシャクナゲが咲き、夏はセミの元気な声がBGMとなり、秋はススキが見頃を迎えるなど、参拝する度に季節の移ろいを感じることができるスポット。青々と茂っている屋根の緑は、御本殿完成後に境内の周辺にある「天神の杜」へ還っていく予定となっています。
飛梅伝説など、道真公と縁の深いご神木・梅の木
仮殿の隣にあるのは御神木の「飛梅」です。
道真公は幼いころから梅をこよなく愛していたと言われており、太宰府では、左遷が決まった道真公が京都の梅に語り掛ける歌を詠んだところ、一夜で梅の木が太宰府まで飛んでいったという「飛梅伝説」が語り継がれています。
ここで授かることのできる御朱印やお守りも、梅の花がモチーフになっています。
人生の道を開き、運気上昇を願う「天開稲荷社」
仮殿の奥へと進み、数軒の茶屋を過ぎて山の方へ階段を上って行くと、見えてくるのが「天開稲荷社」です。
鎌倉時代末期に京都にある「伏見稲荷大社」から勧請(かんじょう)された稲荷社で、宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)をお祀り。天に道が開け、運気が上昇する神社として信仰されています。商売繁盛を願う方、人生の道を切り開きたい方はこちらへの参拝もおすすめです。
「天開稲荷社」の御朱印は、太宰府天満宮の朱印所でいただくことができます。
太宰府天満宮
- 住所
- 福岡県太宰府市宰府4-7-1
- 参拝時間
- 楼門内は春分の日~秋分の日の前日は6:00開門、それ以外は6:30開門
[12〜3月]18:30閉門
[4〜5月・9〜11月]19:00閉門
[6〜8月]19:30閉門
※正月三が日は24時間開門 - アクセス
- 【電車】西鉄「太宰府」駅から徒歩約4分
【車】九州自動車道「太宰府」ICから約15分 - 公式サイト
- 太宰府天満宮
太宰府とセットで訪れたい「内山エリア」
内山(うちやま)は、「太宰府天満宮」から徒歩30分ほどの場所にある「竈門(かまど)神社」周辺エリア。宝満山のふもとにあたり、カフェや飲食店、雑貨店、宝満山の登山入口などがあります。
霊峰・宝満山のふもとにある「竈門神社」で良縁を願おう
縁結びの神様として知られている「宝満宮 竈門神社」。
縁結びというと恋愛や結婚を想像しがちですが、竈門神社の神様はそれらに加え、仕事や友人など、あらゆるものとの良いご縁を結んでくれるとのことで広く親しまれています。
白とピンクの石を基調とした授与所には、かわいいお守りがたくさん!どれを選ぼうか迷う時間も、楽しいひとときになりそうです。
授与所の奥には展望舞台があり、ベンチやスツールに腰をかけながら太宰府の街を一望できます。
宝満宮 竈門神社
- 住所
- 福岡県太宰府市内山883
- 参拝時間
- 参拝自由(授与所は8:30~18:00)
- アクセス
- 【電車】西鉄「太宰府」駅前よりコミュニティバス「まほろば号」にて「内山(竈門神社前)」バス停下車後すぐ
【車】九州自動車道「太宰府」ICから約20分 - 公式サイト
- 宝満宮 竈門神社
「KAGURA」の瓦そばを食べてのんびりくつろぐ
「竈門神社」から徒歩約1分の場所にある「鬼焼き瓦そば KAGURA(カグラ)」では、厄除けの意味を込められた瓦そばをいただくことができます。
プレートの「鬼瓦」は、福岡県久留米市城島町の瓦職人が焼いた特注の品。鬼瓦とは、古くから厄除けとして屋根に取り付けられていることから、「KAGURA」では縁起の良い食事として「極彩鬼焼き瓦そば」(1,590円)が提供されています。
野菜や薬味がたっぷりと盛り付けられているのでメインのそばが隠れていますが、こちらのお店では福岡県八女市の高級抹茶を練り込んだ風味豊かな茶そばを採用。
そのまま食べるのはもちろん、一緒に付いてくる鶏ガラベースの付けダレとともに食べるのもおすすめです。
こちらは、2024年から登場した新メニュー「太宰府 赤毛和牛まぶし」(2,300円)。
熊本の名産・あか牛を低温調理した一品で、まずはそのままいただき、次にごはんとお肉を海苔に包みタレを付けて食し、〆はお茶漬けにして堪能。3つの食べ方で楽しめるメニューです。
すぐ満席になってしまうので、席が空いているかを電話で問い合わせてから行くようにしましょう。
鬼焼き瓦そば KAGURA
- 住所
- 福岡県太宰府市内山663-11
- 営業時間
- 月・水~金曜 11:00~16:00(料理L.O.15:00、ドリンクL.O.15:30)
土日祝 11:00~17:00(料理L.O.16:00、ドリンクL.O.16:30) - 電話
- 080-1731-3298
- 定休日
- 火曜、そのほか不定休
- 備考
- 夜の営業時は屋号「酒と肴 KAGURA」となり、平日の17:00以降は3日前までに電話にて完全予約制(「夜の宴会プラン」(3,000円~)
- アクセス
- 【電車】西鉄「太宰府」駅前よりコミュニティバス「まほろば号」にて「内山(竈門神社前)」バス停下車後すぐ
【車】九州自動車道「「太宰府」ICから約20分 - 公式サイト
- 鬼焼き瓦そば KAGURA
太宰府天満宮の参道で食べ歩きグルメ
西鉄「太宰府」駅から「太宰府天満宮」へ向かう参道には、梅ヶ枝餅店やカフェ、土産店、雑貨店などが並んでいます。路地に入ればパン屋さんやレストランなどもたくさんあるので、散策をしながらお気に入りのお店を見つけてくださいね。今回は、参道グルメを4つピックアップしてご紹介します。
太宰府の名物「きくち」の「梅ヶ枝餅」
太宰府と言えば、外せないのが「梅ヶ枝餅」! 参道周辺には梅ヶ枝餅の販売店が30軒以上ありますが、中でも「きくち」は餡子好きの人にぴったり。
「きくち」の餡は創業73年経った今も先代から教わった製法を守り、自社で炊き上げ、手で丁寧に練ってつくり上げているのが特徴です。ひと口食べれば、一粒ひと粒をしっかりと感じる小豆の食感と旨み、やさしい口当たりが口いっぱいに広がります。
梅ヶ枝餅は名前が持つイメージから「梅のお餅なの?」と誤解されることもありますが、梅は入っていません。もち米とうるち米をブレンドした薄いお餅と餡子の素朴な和菓子です。
2階には喫茶コーナーもあるので、座ってゆっくりと過ごすこともできます。
茶房 きくち
- 住所
- 福岡県太宰府市宰府2-7-28
- 営業時間
- 9:00~17:00 ※土日祝は~17:30まで
- 定休日
- 木曜(祝日の場合は営業、前日休み)
- アクセス
- 【電車】西鉄「太宰府」駅から徒歩約4分
【車】九州自動車道「太宰府」ICから約15分 - 公式サイト
- 茶房きくち
「小鳥居茶房」の愛らしい「生プリンアイス」
コロナ渦にオープンしたにも関わらず、瞬く間に行列店となった「小鳥居茶房」。生プリンアイスは「カスタード」(550円)と「抹茶仕立て」(660円)の2種類から選べます。
素朴な甘さで、後口はスッキリとした味わい。シャリシャリとした食感から半生のようななめらかさに変化していく過程も楽しむことができます。テイクアウトとイートイン、どちらでも注文できます。
店内ではランチやスイーツをいただくことができますが、中でも人気なのが「わらびもち」(830円)です。
注文を受ける度に茹でており、口に運んだときの温かさと、黒蜜をかけなくても十分に甘みがあるやさしい味わいに心がホッとします。
添加物を極力使わずに厨房でひとつずつ丁寧につくっているのが、おいしさから伝わってきます。
小鳥居茶房
- 住所
- 福岡県太宰府市宰府3-2-14
- 営業時間
- 11:00~17:00 ※完売次第閉店
- 定休日
- 不定休
- アクセス
- 【電車】西鉄「太宰府」駅から徒歩約4分
【車】九州自動車道「太宰府」ICから約15分
「YAMAYA BASE DAZAIFU」で「焼きたて明太フランス」を買う
福岡の名物である明太子とバケットを組み合わせた名物も参道付近でいただくことができます。
「YAMAYA BASE DAZAIFU(ヤマヤ ベース ダザイフ)」は、辛子明太子の「やまや」が手掛ける明太フランスの専門店。12月1日~3月31日の受験シーズンは合格印が付いた「明太フランス」(500円)を購入することができます。
このお店の「明太フランス」の特徴は、フランスパンの端から端までバター風味の明太フィリングがたっぷり入っていることと、常にリベイクして焼きたてを提供していること。
そしてメインの明太フィリングは、フランスパンと一緒に焼き上げても表面に火が通ることなく、明太子ならではのジューシーな味わいをカリッカリのフランスパンとともに楽しむことができます。明太フランス専門店を開くにあたり、研究を重ねて開発した明太子専門店ならではの技術なのだとか。
併設の店舗で、お持ち帰り用に冷凍の「明太フランス」(400円)を購入することもできます。
“明太フランス専⾨店”YAMAYA BASE DAZAIFU
- 住所
- 福岡県太宰府市宰府3-1-1
- 営業時間
- 9:30〜17:30
- 定休日
- なし
- アクセス
- 西鉄「太宰府」駅から徒歩すぐ
- 公式サイト
- やまやコミュニケーションズ
食べ歩きが楽しくなる!「天山 太宰府本店」で和菓子のテイクアウト
「天山 太宰府本店」は、原材料にこだわった「鬼瓦最中(おにがわらもなか)」がメイン商品のお店ですが、店頭では季節のフルーツを使ったお団子や最中など和スイーツを買うことができます。
冬から春はいちご、夏はわらび餅やいちごの葛バーなどの涼菓、夏の終わりから秋にかけてはマスカット、秋はモンブランと、季節の移り変わりとともに異なる商品を楽しめるのがポイント。味覚で季節を感じることができるお店です。
あまおうを使ったシリーズは他にも最中や大福などがあるので、福岡県が世界に誇るいちごを太宰府で堪能することができます。
天山 太宰府本店
- 住所
- 福岡県太宰府市宰府2-7-12
- 営業時間
- 10:00~17:00
- 定休日
- 不定
- アクセス
- 【電車】西鉄「太宰府」駅から徒歩約2分
【車】九州自動車道「太宰府」ICから約13分 - 公式サイト
- 天山
太宰府駅へのアクセス
天神方面から
西鉄天神大牟田線「福岡(天神)」駅から特急で約15分、急行で約15分の「西鉄二日市」駅へ。西鉄太宰府線に乗り換え、約5分の「太宰府」駅で下車します。
JR博多駅から
電車の場合は、JR鹿児島本線の快速で約15分、普通で約30分のJR「二日市」駅で下車し、徒歩約10分の「西鉄二日市」駅へ。西鉄太宰府線に乗車約5分で「太宰府」駅に到着します。
バスで向かう場合は、JR「博多」駅の横にある「博多バスターミナル」から、太宰府行きの直行バス「旅人」に乗車し約40分で太宰府駅前にたどり着きます。
福岡空港から
電車で向かう場合は、地下鉄「福岡空港」駅から約11分の「天神」駅で下車し、西鉄電車に乗り換え。「福岡(天神)」駅から特急で約15分、急行で約15分の「西鉄二日市」駅へ。西鉄太宰府線に乗り換え、約5分で「太宰府」駅に到着です。
バスを利用する場合は、福岡空港国際線ターミナルから西鉄太宰府駅直行バス「旅人」に乗車し、約25分で太宰府駅前に到着となります。
太宰府駅から「太宰府天満宮」へは、参道を通って徒歩約4分で到着です。
太宰府天満宮を中心に、にぎわう太宰府。門前町周辺のお店も年々増えており、福岡市の中心地・天神から電車で約30分とアクセスも良いので、福岡の滞在中にフラッと出かけることもできます。
また、史跡やグルメだけでなく「九州国立博物館」などアートを楽しめるスポットもいろいろあるので、ぜひこのエリアに宿泊してゆっくり散策を楽しんでみてください。
取材・文/原口可奈子、撮影/井上由紀子