秋田県と青森県をつなぐ「JR五能線(ごのうせん) リゾートしらかみ」は日本海の絶景を楽しめるローカル列車です。駅弁などの名物グルメ、地酒などの他に、なまはげ太鼓演奏、津軽三味線といった観光体験が車内で楽しめます。非日常を感じる鉄道旅へ出かけましょう!
目次
五能線は、秋田県の東能代駅から青森県の川部駅までの約147.2kmをつなぐローカル線。
地域住民を乗せ田園地帯や日本海沿いを走っていますが、快速「リゾートしらかみ」が誕生してからは、雄大な景色や地元タイアップの観光体験が話題となり「旅行好きが選ぶ、おすすめのローカル線ランキングTOP10」で1位にも輝いた人気路線となっています。
観光列車「リゾートしらかみ」
五能線を走る花形車両「リゾートしらかみ」は、全席指定の快速列車。「青池(あおいけ)」、「橅(ぶな)」、「くまげら」と3種類の車両編成があり、大きな窓やボックス席などが装備された観光列車です。
出発駅までのアクセス
「リゾートしらかみ」は、秋田側、青森側の両方から発車しています。
首都圏からは、秋田新幹線「こまち」で秋田駅へ向かい、秋田駅からリゾートしらかみに乗り継ぎます。青森側からは、東北新幹線「はやぶさ」で新青森駅へ向かいそこからリゾートしらかみへ乗り継ぎます。全席指定の人気列車のため、事前予約は必須です。
リゾートしらかみの料金
リゾートしらかみは、乗車券の他に指定席券が必要です。秋田―新青森間では乗車券4,430円に指定席券520円(税込)をプラスすれば乗ることができます。2日間使える「五能線フリーパス」や「青春18きっぷ」を購入してある場合は指定席券を別途購入すれば乗車できます。
乗客を大自然に包まれる旅に案内してくれるのは、自然環境に優しいハイブリッドシステムの車両「橅」編成。暖色が華やかなシートは東北の夏祭りをイメージしたデザインです。
「橅」は、「青池」と「くまげら」より新しい車両で、唯一、車内に売店があります。シンボルツリーのブナの木や秋田杉、青森ヒバが内装に使われ、非日常な空間が演出されています。
先頭車両には展望室とイベントスペース
両端の1号車・4号車には運転席と展望室、イベントスペースが設けられています。運行の途中で進行方向が変わるためどちらも先頭車両になります。
2号車は全てが眺望性の高いボックス席。テーブルには弘前市の工芸品・ブナコのランプが優しく灯ります。家族やグループでの利用にぴったりです。
また、ボックスは座席をスライドさせて広くすることができます。座ってもよし、足を延ばしてもくつろいでもよし。好きな体勢で列車旅を楽しみましょう。
特産品を販売「ORAHOカウンター」
こちらは「橅」編成の3号車にある売店「ORAHOカウンター」。白神山地の自然水で淹れたコーヒーやスナック、ご当地の駅弁やお酒、伝統工芸品も展示・販売されています。駅弁は数に限りがあるので心配な方はホームで購入しておきましょう。
【秋田駅】迫力満点!なまはげ太鼓のお見送り
今回の五能線の旅は、秋田駅から。午前8時20分発のリゾートしらかみ1号「橅(ぶな)」編成の列車で秋田駅を出発しました。日によって、ホームで迫力満点の「なまはげ太鼓」が披露されています。
一見、恐ろしいなまはげですが、お願いすると記念写真に応じてくれます。
最後は包丁を振って見送ってくれた心優しいなまはげ。太鼓披露の開催日は毎年変わるので、詳しくは公式サイトで確認してみてくださいね。
なまはげ太鼓
- 場所
- 秋田駅2番線ホーム※リゾートしらかみ1号と3号の出発時
- 実施日
- 【6月】23・30日【7月】7・14・21・28日【8月】4・12・18・25日【9月】1・15・22・29日
【八郎潟駅】男鹿半島の寒風山を望む景色
秋田駅を出た列車は市街を抜けると、3駅目に「八郎潟(はちろうがた)」を通ります。日本で2番目に大きい湖を干拓して作られた田園地帯と、その向こうには、かすかに「なまはげ」の里・男鹿半島の寒風山が見えます。
八郎潟駅を降りて、男鹿方面へ向かうと、なまはげの伝説を知ることができる資料館「なまはげ館」などで秋田観光を楽しむことができます。
【能代駅】バスケットシュートチャレンジ!
東能代駅から始まる五能線区間に入ってすぐ、列車はバスケの街として知られる「能代(のしろ)駅」へ。停車時間には、ホームに設置されたバスケットゴールでシュートチャレンジが開催されます。
見事シュートが決まれば記念品がもらえます(人数制限あり)。五能線クルージングトレイン(下り)運転時も実施されるので、ぜひ参加してみてくださいね。
リゾートしらかみの楽しみのひとつに、地元の方々が売り子さんとして列車に乗り込み、地元でしか買えない特産品を乗客とコミュニケーションを取りながら販売する「ふれあい販売」があります。
能代駅から深浦駅までは、秋田杉の木工製品などが車内販売されます。この日は、秋田杉のぬくもりある手触りが魅力の木工品。料理用ヘラや鍋敷き、コースターなどお土産にしたくなるものばかり。
十二湖駅-深浦駅間では、マグロ漁獲量青森県1位を誇る深浦のマグロを使ったご当地グルメがやってきます。
また、こちらは秋田駅の出発ホームにやってくるお弁当屋さんから購入した「秋田比内地鶏こだわり鶏めし」。県産比内地鶏のほか、いぶりがっこ、ジュンサイと秋田らしい内容の駅弁です。
販売される商品は、駅弁やお菓子、秋田の工芸品のほかにもお酒のおつまみや五能線写真集などと多種多様。車内以外にもホームで「ふれあい販売」に出会えます。
列車内で売り子さんが登場するのはそれぞれの産地周辺だけで、終点までは乗っていませんので購入はお早めに。販売スケジュールは公式ホームページをチェックしましょう。
8駅目の「岩館(いわだて)駅」を過ぎるといよいよ日本海が姿を現しました!車内に歓声が上がり、カメラを手に撮影タイムが始まります。
絶景ポイントでは速度を落としてゆっくり走ってくれるので、慌てて撮影しなくても大丈夫ですよ。美しい日本海の景色に胸を躍らせながらも、列車はさらに進みます。
車窓から広がる日本海の景色は思わず見惚れる美しさ。日常を離れて、日々の疲れも癒してくれるようです。
寒さ厳しい北の日本海ですが、春から夏には日の光を受けて深いサファイアブルーに輝きます。また、夕方の列車なら日本海に沈む真っ赤な夕日を眺める旅を楽しめます。
海岸沿いを付かず離れず、ときどき小さな集落や港を通り過ぎ、「鰺ヶ沢(あじがさわ)駅」まで、海の景色が楽しめます。
最も近いところでは、まるで海の上を走っているような景色に包まれます。日本海の反対側には世界自然遺産「白神山地」が現れる贅沢なひとときです。
【深浦駅】反対側から来た列車とすれ違う
単線の五能線は、反対方向から来るリゾートしらかみと深浦駅で待ち合わせてすれ違います。「くまげら」編成のリゾートしらかみ2号は、白神山地の野鳥・クマゲラと沿線の夕日をモチーフにした車体です。
【千畳敷駅】停車時間に歩いていける「千畳敷海岸」
「千畳敷(せんじょうじき)駅」から歩いて行ける「千畳敷海岸」は、かつて津軽の殿様が千枚の畳を敷いて宴を催したという言い伝えがあります。太宰治の小説「津軽」にも登場する風光明媚なスポットです。
今回ご紹介している「リゾートしらかみ1号」は停車しませんが、2・3・4・5号は「千畳敷駅」で15分停車します。
千畳敷海岸
- 住所
- 青森県西津軽郡深浦町北金ケ沢(千畳敷駅の目の前)
【鯵ヶ沢駅】力強いバチさばきに酔いしれる「津軽三味線」
「鯵ヶ沢(あじがさわ)駅」を過ぎた列車は津軽平野へと向かいます。車内のイベントスペースでは、プロの津軽三味線奏者による生演奏がスタート。解説を交えながら、「津軽じょんから節」など津軽に伝わる民謡を演奏してくれます。力強い響きと繊細な旋律に酔いしれるひとときです。
津軽弁人形劇 津軽伝統「金多豆蔵人形芝居」
2人の若者「金多」と「豆蔵」が引き起こす喜劇。津軽弁で繰り広げられるのんびりとした掛け合いが魅力です。青森県中泊町の無形民俗文化財。上演は「橅」編成のみです。
車内の観光体験はほかに、リゾートしらかみ3・4号で津軽弁「語り部」実演が開催されます。開催日時が毎年変わるので、公式サイトでご確認ください。
【川部駅】津軽平野のシンボル・岩木山
広大な津軽平野の中心にそびえる岩木山は標高約1,625mと青森県で最も高く、日本百名山のひとつに数えられています。
古くから人々の信仰を集め、現在も愛され続ける津軽のシンボルは、その形から津軽富士とも呼ばれています。列車は水田地帯を抜け、りんご畑が広がるエリアへ。
五能線区間最後の「川部駅」を過ぎると旅も終盤。八甲田連峰の裾野に広がる青森市へ進んでいきます。東北新幹線に乗り換える場合は「新青森駅」で、青森市街地に向かう場合は終点の「青森駅」で下車します。
飲み比べも!?種類豊富な地酒を堪能
「ORAHOカウンター」では地酒も豊富な種類に販売。五能線の沿線は農産物の宝庫。秋田・青森ともにお米の生産地となれば地酒も忘れられない旅の楽しみですよね。
1杯200円〜400円(税込)の地酒が用意されています。いくつかの銘柄から選ぶことができるので、列車の景色を眺めながら味わってみてくださいね。
小物から工芸品まで多彩なお土産も
その他にも、「橅」のオリジナルグッズや沿線のお土産品、工芸品などが販売されています。お土産選びにゆっくり覗いてみましょう。
お土産にぴったりの、リゾートしらかみ「橅」のオリジナルタオルハンカチは「ORAHOカウンター」で購入。ハタハタのモチーフがかわいい手作りの秋田杉箸置きは「ふれあい販売」にて買うことができます。
ORAHOカウンターで買えるグルメ
ORAHOカウンターで駅弁を買うならぜひ味わっていただきたいのが「秋田のんめもの弁当 五能線エリア編」です。
蓋を開けると、あきたこまちのご飯の上に「能代牛」の焼き肉が乗り、薬味には白神ねぎを使用。青森深浦町の「ふかうら雪人参」入りのビーフシチュー、ふじりんごのコンポートなど、沿線地域が誇る「んめもの(おいしいもの)」が詰まっています。
五所川原市特産の「御所川原りんごジュース」は、実の中まで赤い珍しい品種を使ったもの。無添加・無着色のジュースでさっぱりした酸味がおいしく、おすすめです。
【五所川原駅】付近
太宰治の生家「斜陽館」
「五所川原(ごしょがわら)駅」から津軽鉄道で約20分、「金木駅」下車後徒歩7分ほどの場所にある、 太宰治記念館「斜陽館」。太宰が幼少期を過ごした豪邸で、貴重な資料などが展示されています。
国の重要文化財建造物でもあり、明治時代の木造建築を今に伝える貴重な建物です。その豪華さは太宰ファンならずとも一見の価値あり。
太宰治記念館「斜陽館」
- 住所
- 青森県五所川原市金木町朝日山412-1
- 開館時間
- 4~9月:9:00~17:30(最終入館17:00)
10~3月:9:00~17:00(最終入館16:30)
- 休館日
- 12月29日
- 料金
- 一般 500円
【陸奥鶴田駅】付近
CMでもお馴染み「鶴の舞橋」
「陸奥鶴田(むつつるだ)駅」を降りて、車で約10分の場所にある「鶴の舞橋」。JR東日本「大人の休日倶楽部」のCMに登場した橋で、全長300m、木造の三連太鼓橋では日本一の長さを誇ります。青森県産のヒバでつくられており、橋と岩木山の美しさが話題を呼び、観光客が増えている人気スポットです。
鶴の舞橋
- 住所
- 青森県北津軽郡鶴田町廻堰大沢81-150
【弘前駅】付近
天守と桜の絶景「弘前公園」
「弘前(ひろさき)駅」から、車で約10分の場所にある「弘前公園」。春になると約2,600本の桜と弘前城の競演を見に毎年大勢の花見客が訪れます。
弘前公園
- 住所
- 青森県弘前市下白銀町1
【青森駅】付近
青森ねぶた祭り
画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会
青森の夏を彩るねぶた祭り。国の「重要無形民俗文化財」にも指定されており、歌舞伎や歴史などを題材とした「ねぶた」と呼ばれる大きな灯籠が街を練り歩きます。
- 開催期間
- 8月2日~7日※曜日に関わらず毎年同日
- アクセス
- 青森駅から徒歩すぐ
秋田から日本海を通って青森へ。おいしいものに出会ったり、絶景に感動したり。沿線の人や文化にふれて心がほぐされていくような鉄道旅。ローカルの魅力が散りばめられた五能線の旅に一度出かけてみてはいかがでしょうか?
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取材・写真・文/Junko Saito
取材協力/JR東日本旅客鉄道秋田支社
※掲載内容は公開時点のものです。ご利用時と異なることがありますのでご了承ください。