富士山麓の山中湖に生まれた北欧。サウナーの心をくすぐる「富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく」

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

凍てつく寒さが前代未聞の「ととのい」を生み出す着火剤になるかもしれません。富士山を望む山梨県の山中湖は、富士五湖の中でも最も標高の高い場所にあり、冬は白銀に包まれることも。その湖畔沿いに2024年7月に誕生したのが、サウナに特化した全室に個室サウナを備える「富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく」です。

通もうなる極上のサウナと水風呂に加え、本場フィンランドにならったサウナの楽しみ方や食事など、ここでしか味わえない宿泊体験に注目が集まっています。

 

「サウナ」をキーワードに温泉旅館を大改革!

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

別荘地という土地柄、閑静な空気が流れる山中湖。澄み切った湧き水で有名な忍野八海(おしのはっかい)にも近く、標高は約1,000mと高原に位置する環境です。湖の目の前にたたずむ「しずく」は昭和の面影が感じられる外観ですが、重厚感ある門にはポップなデザインがあしらわれ、まるで昔と今が混在しているような印象。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

その特有な雰囲気はエントランス先のロビーにも。吹き抜けの天井は開放感があり、大きな窓の先には日本庭園と、手前にはしずくの「S・Z・K」をかたどった特注のイスが現代アートさながらに置かれています。

 

山中湖

この雄大な湖と緑に囲まれた場所に温泉旅館が建てられたのが30年ほど前。時は流れ、次の時代に向けてリノベーションを行う際、従来にはない宿泊施設にしようと考えを巡らした末に浮かんだのがサウナでした。

 

若旦那の山口哲弘さん

「冬が厳しい山中湖でも楽しめる施設を作りたいと考え、サウナならこの寒さも魅力になると思いました。実際に確かめようと山中湖の1~2月にあたる時期にフィンランドへサウナ修行に訪れましたが、外気浴は寒さが気にならないほど爽快でした。

もともと大浴場にはサウナと水風呂があり、昔からお客さまに好評だったことも踏まえて、それならば全室プライベートサウナ付きの旅館にしようと決めました」と話すのは、若旦那の山口哲弘さん。都内有数のラグジュアリーホテルで働いた経験があり、現在は“サウナ若旦那”として旅館やサウナ活動をSNSにも投稿しています。

 

誰もが気兼ねなく、サウナだけを楽しむ客室

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく
サウナの動線を考えてデザインされた客室

こうしてサウナ旅館として生まれ変わった「しずく」。実は山中湖の気候はフィンランドに似ていることもあり、まさにサウナを堪能するのに絶好の場所だったのかもしれません。部屋数を少なくし、室内には居心地の良い北欧デザインを。そしてサウナにもこだわって、スタイリッシュなエストニア製のサウナ室に、スウェーデンのサウナメーカー「TYLO(ティーロ)」のストーブを設けています。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく
富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

「フィンランドのサウナでは男女が水着を着て一緒に入ります。会話もできるので、カップルでも楽しめる雰囲気がいいなって感じたんですよね。そういった過ごし方を『しずく』でも体験していただきたいと思い、そのためのプライベートサウナです。ロウリュで温度調節したり、脚を伸ばしてリラックスしたり…。ととのいスペースは山中湖の澄んだ空気が感じられるので、サウナと山中湖の両方を満喫していただきたいです」と、山口さん。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

そのサウナ体験を盛り上げるドリンクにも抜かりはありません。クラフトコーラ、ととのうサ活ドリンク、そしてオリジナルクラフトビールが冷えた状態でスタンバイ。特にビールはこちらのオリジナルで、ビール好きな山口さんが地元の富士桜高原麦酒にお願いしてサウナ後に飲みたい味を突き詰めた自信作。同じ山梨県内で採れた富士川町のゆずが使われています。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく
富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

お部屋は全14室で、富士山側か山中湖側のどちらか。どのお部屋も同じデザインはなく、色味も空や山、水や木など自然に由来しています。広さ75平米の「スイートC」は、山中湖を一望できるお部屋。「Ranta(ランタ)」というフィンランド語で水辺を意味する名前を持ち、青のグラデーションに包まれた空間は静寂に満たされ、落ち着いた時間が流れます。

 

サウナ―の理想を形にしたスイートとデラックスの魅力

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

一方の「スイートB」は、フィンランド語で月明かりを意味する「Kuutamo(クータモ)」と名付け、月明かりが反射する水面に自分が浸っているような気分をイメージしたお部屋。半円状のソファや、風になびく仕切りが幻想的な心地へと誘います。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく
画像提供:富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく
富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく
富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

広さは75平米で、富士山を一望できる間取りが特徴的。一日の終わりと始まりを富士山と共に迎えられるようにベッドが配置され、それはサウナも然り。サウナから出たらすぐに水風呂、ととのいスペースとアクセスが良く、そのすべてが富士山に面しています。

 

オリジナルのパッケージのアメニティ

お部屋のカテゴリーはスイート、デラックス、スタンダード、カジュアルの4つに分かれていますが、歯ブラシ、ヘアブラシ、コットンセット、SHOLAYERED(ショーレイヤード)のスキンケアセット(メイク落とし・洗顔料・化粧水・乳液)のアメニティは全室共通。オリジナルのパッケージは眺めるだけで気持ちがワクワクしてきます。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

SZKの文字が入った館内着も全室に用意されています。上着とズボンのセパレートタイプで、レストラン利用時にも着用可能。滞在中は常にゆるりとリラックスしてほしいという旅館ならではの配慮です。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

充実したアメニティに満足してしまいそうですが、スイートとデラックスだけに用意された特典がサウナ好きにはたまりません。まずは露天風呂。わざわざ水栓が2カ所に分かれていますが、それは地下からくみ上げた富士山の天然水をダイレクトに浸れるようにするため。キンキンに冷えた富士山の水は、まるでシルクのようにまろやか。さらに頭から水をかぶれるような配置もサウナ旅館ならではの粋な計らいです。

 

オリジナルのサウナハットとサウナポンチョ

2つ目がオリジナルのサウナハットとサウナポンチョのレンタル。サウナの熱から髪や頭皮を保護するサウナハットは、富士山の見た目がかわいらしく、側面にはロッカーキーを入れるポケットやメッシュ素材の内側には掛けるためのフックが付いているなど機能性もあり、これを購入するために宿を訪れる人もいるのだとか。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

そしてサウナポンチョも吸水性の高いコットンを100%仕様。肌ざわりもよく、ゆったりとしたデザインなので、より外気浴でくつろぐことができます。

 

 

お部屋で一息ついたらショップと高温サウナのある大浴場へ

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

独特なデザインが印象的な「しずく」のオリジナルグッズ。気になったのなら、ぜひ1階のショップへ。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく
富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

代表的なサウナハットとサウナポンチョをはじめ、オリジナルのTシャツやクラフトビール、カラフルなライターなどを購入でき、旅の思い出にもぴったりです。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

「お部屋でプライベートサウナを堪能したら大浴場のサウナに入るのもおすすめですよ。プラベートサウナの温度は70~90℃前後とマイルドですが、大浴場のサウナは高温で110℃前後になります。ぜひ違いを味わってみてください」という山口さんの言葉に押されて大浴場へ。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

リノベーションの影響を受けなかった大浴場は昔ながらの旅館らしさが残る、和の空間。広々とした浴槽に浸かれば日頃の疲れもじんわりと癒やされそうです。

そして、長年サウナ通に支持されてきたサウナの威力は絶大。入室した途端、汗が瞬く間に出てきて、短時間でもスッキリ感が倍増です。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

さらに富士山の地下水がかけ流しで満ちあふれたぜいたくな水風呂は、お部屋よりいっそう冷たさが感じられ、あまりの温度差に一度味わったらクセになってしまいそう。外気浴用のイスが多く用意されているおかげで、快適に自分のセットをこなせます。

 

ととのいの極致へいざなう、地元食材を活かした創作フレンチディナー

シェフの翁長さんと山口さん
シェフの翁長さん(左)、パティシエの多田さん(右)

実はサウナと共に、「しずく」ならではの唯一無二を体験できるのが食事です。シェフの翁長(おなが)さんは山口さんと同じホテルで働き、「しずく」のためにスカウトした逸材。フランス料理をベースに幅広い経験を持ち、現在は山梨の食文化を活かしながらサウナや北欧など、さまざまな要素を取り入れて独自の料理へと昇華させています。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく
富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

コース料理の始まりは、サウナの水風呂をイメージしたグラニテから。続く地鶏とキノコのスープにもサウナらしい演出を。フィンランド流のサウナ後に湖に飛び込む様子から、こちらでは富士山の溶岩石をスープに投入。そうすることで香りがふわっと立ち上り、きのこの風味も染みわたります。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

アミューズには一口サイズの3品を用意。さつまいもを使った郷土料理のあんびんは、甲州富士桜ポークの塩味が味のアクセントに。フィンランドではソーセージを焚火で炙って食べる習慣があることから信玄鶏も同じく薪焼きで。スモーキーな香りにパリッパリな表面が食欲をそそります。そして、ビーツの紫色が目を引く一品には山梨で育てられたオーストリッチ(ダチョウ)が使われているなど、知らなかった特産も発見できるメニューです。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

コース料理に見慣れない単語が使われているのもこちらの特徴。「マッカラやマンネルヘイムなどのフィンランド語をメニューにあえて表記することで、こちらから一方的に説明するだけでなくお客さま同士で『どんな料理だろう?』と想像を膨らませ、会話をしていただくことで夕食の時間をより堪能していただきたいです」と、翁長さん。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

本日の肉料理には、赤身に定評のある富士山麓牛のステーキを。付け合わせも豊富で、山中湖にちなみオーストラリアの湖で精製されたお塩は旨みが強く、山梨ワインの搾りかすを活かしたワイン塩は栄養満点。ピリッと辛いすりだねは山梨発祥の万能調味料で、唐辛子をベースに胡麻やお味噌などを加えた自家製と、どれもが赤身のしっかりした味を引き立ててくれる名脇役。スタッフ全員と吟味しながら選んだペアリングもワインとノンアルコールの両方から選べます。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

食事をしめくくるデザートは、見た目の華やかさに加え、ぶどうのソルベやエルダーフラワーのジュレ、ライムのメレンゲなど彩り豊かな素材を見事に調和させ、上品なパフェへと導いたパティシエの存在感が光るもの。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

小菓子で登場した栗のシュークリームも皮のサクワク感を損なわないよう、食べる直前にクリームを入れるなど最後の最後までおいしさへのこだわりが感じられます。

※季節ごとにメニューが変わります。こちらは11月時点の秋メニューです。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく
富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

「朝食もボリュームたっぷりなので、ぜひ朝サウナを経験してからレストランにお越しくださいね」という楽しみな言葉を聞きながらお部屋へ。静かな夜を鮮やかに彩ってくれるのが気分に合わせて変えられるライトです。タブレットから簡単に操作でき、あたたかな電球色やカラフルな未来光、落ち着いた瞑想光など思わず試したくなるものばかり。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

深い蒼の湖色を選べば、ゆらりゆらりとまるで水の中を浮遊しているような気持ちになり、穏やかに眠りにつきます。

 

宿泊してこそ味わえる「朝サウナ」と「フィンランド朝食」

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

翌朝は目覚めと同時に温もりを求めに再びサウナへ。昨日に引き続き、身体も慣れ始めたのか、短時間でじんわりと汗もかいて、水風呂のおかげで気持ちよく一日を始められます。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

レストランを訪れると昨夜の暗闇に浮かぶロマンチックな雰囲気から一転、窓の先には満々と水をたたえた山中湖が見え、清々しい光景が広がります。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

朝食にはフィンランドで見かけるメニューがずらり。家庭料理に出てくるサーモンのクリームスープは秋らしくカボチャの甘みも加わり、素材本来の味を堪能できるよう味つけは最低限に。ソーセージやヨーグルトはどれも自家製で、特にフィンランドで親しまれているブルーベリージュースは、山口さんがフィンランドを訪れた際に衝撃を受けたもの。そのおいしさを再現しようとパティシエと試行錯誤を重ねて誕生した思い出のドリンクです。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

パンも自家製で、焼き上がったばかりの香ばしい匂いと共にいただけます。フィンランドのシナモンロールことカネルブッレは、カルダモンが効いているのが特徴。シンプルなライ麦パンはコクがあり、スープとの相性が抜群です。マッシュポテトを包んだペルナピーラッカは、食べ進めるとライ麦の素朴な味にポテトの風味が加わって、味に奥行きが生まれます。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

卵料理は自分の好みに合わせて目玉焼き、オムレツ、スクランブルエッグから選択。どのメニューも優しい味つけで、珍しいフィンランド料理に食が進みます。

チェックアウトは11時なので、朝食を食べ終えても時間はまだ十分。ととのいイスでくつろぎながら景色を眺めたり、まどろんだり。最後までゆったりした気持ちで過ごせます。

 

夢は山中湖を日本のサウナの聖地に!逆転の発想で地域の課題を強みに

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

東京から高速バスや車で2時間以内とアクセスが良い「しずく」。山口さんを中心に同年代が働くことから客層も若者カップルを意識していましたが、一所懸命に働く姿を応援しようと何度も訪れる年配の世代もいらっしゃると聞きます。

いずれは「山中湖を『山中湖サウナ村』にして日本のサウナの聖地にしたい」と笑顔で語る山口さん。冬の寒さを長所に変えてしまう取り組みは、旅館の枠を超えて地域と共同しながらサウナイベントやコラボ商品の開発へと拡大中。まるでしずくが落ちて生まれる波紋のように、良い波が山中湖全体に広がっています。

 

富士山の見える全室個室サウナ付旅館 しずく

住所
山梨県南都留郡山中湖村山中172
チェックイン
15:00(最終21:00)
チェックアウト
11:00
総部屋数
14室
駐車場
あり(25台・無料)
アクセス
【車】東京都心から中央自動車道または東名高速道路で約2時間
【バス】「バスタ新宿」から山中湖村行き高速バスで「山中局入口」下車目の前

 

 

取材・写真・文/浅井みら野

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