美しい浄土の象徴、蓮の見ごろは午前中。
白水阿弥陀堂
美しい想いと美しい景観の中で
白水阿弥陀堂は、福島県で唯一の国宝建造物。
平安時代末期の永暦元年(1160年)、
藤原清衡の娘・徳姫が建立したものです。
徳姫は、夫であるいわきの国守・岩城太夫則道公亡き後、
剃髪し出家。冥福を祈るために、この地を選びました。
白水という名前は、故郷である平泉の「泉」を
わけて名づけたとの寺伝があります。
平安時代の愛の世界。
どんな気持ちで愛する人の面影を抱いて建立したんだろう…
まず、出迎えてくれるのは、
ピンクと朱がミックスされたような可愛らしい色の欄干。
時代を経たからなのか、それとも、
もともとそういう世界観だったのでしょうか。
最初に感じるのは国宝という威厳よりも、
なんだかロマンティックな物語のはじまり。
現世と浄土の間の架け橋は、なんとも可愛らしい色合いです。
この地を徳姫が選んだ理由。
そのひとつは自然の景観と浄土の世界の一致でした。
美しくたたずむハスが浮かぶ池は、
まさに浄土をそのまま現代に置き換えたような静かで、
心落ち着く風景。
池と阿弥陀堂を囲む山たちは、お釈迦様の合掌した手。
そこからそっと開いた手のひら。
その中に阿弥陀堂と浄土の池がある、というわけです。
阿弥陀堂に入ると、正面に阿弥陀如来の像が安置され、
両隣にはお二人の菩薩、手前には持国天、多聞天の像。
座ってみるとなんだか不思議、
立っていた時には感じなかったのに、座ると眼が合う。
仏様に見つめられている不思議な感覚に包まれます。
見つめ合っていると、厳しく叱るように感じる人もいれば、
励まされているように感じる人もいる。
また、無理しなくてもいいんだよと、
諭されているように感じる人もいるのだそうです。
日本でも数少ない建築様式。藤原家の物語が美しく残るのも阿弥陀堂の魅力。
阿弥陀堂を出て、再び池を眺めていると、
今度は、本当にお釈迦様の手のひらの中に、
包まれているような錯覚に陥ります。
やわらかい風と、静かな時間。
不思議をさぐるなんて野暮な頭の使い方はしなくてもいい。
ただただ、身を任せて…。
紅葉シーズンにはライトアップもされ、
昼とはまた違う荘厳さを見せてくれるという白水阿弥陀堂。
阿弥陀堂と浄土の池と別れて、ピンクと朱色の橋を渡ると、
徳姫さんと静かにお話ししたいな、なんて、また、
不思議な思いが浮かんできてしまいそうです。
願成寺 白水阿弥陀堂
福島県いわき市内郷白水町広畑219 JRいわき駅から川平行きバスにて あみだ堂バス停下車 徒歩5分 JR湯本駅より車で15分
拝観時間:4月~10月 8:30~16:00 11月~3月 8:30~15:30(ともに受付終了15分前) 定休日:毎月第4水曜日 紅葉時期のライトアップなど特別拝観などは公式サイトで確認を。
拝観料:400円(大人)