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ふるさと割

ふるさと割

小野小町の詩から空を見上げて。 小野小町の詩から空を見上げて。

勿来の関公園・詩歌の小径
いにしえの歌人・俳人たちが愛した歌枕

みるめ刈る 海女の往来の 湊路に 
勿来関を われすえなくに
この詩(うた)を詠んだ小野小町をはじめ、
源義家、和泉式部、西行法師から松尾芭蕉と、
平安から江戸時代に至るまで、
「勿来(なこそ)の関」というフレーズは、
歌人・俳人たちにとって、とても大切な歌枕でした。
なこそは、古い日本語で、「こないでください」
という意味とされています。
平安の世、勿来の関は、あちらの世界とこちらの世界の
境界線と考えられていたようです。
東北から北を治めていた勢力と、京を中心とした文化。
ここから先は異世界、つまりここから先は、
お互いに行き来できない。
人の思いだけでは、簡単には乗り越えられない、
という世界観だったのでしょう。

緑の中、ゆっくり歌碑の世界に入り込めます。 緑の中、ゆっくり歌碑の世界に入り込めます。

今の勿来を歩いていると、青く澄み渡った空、
海からの心地よい風、静かで時間が止まったような砂浜が、
旅人を微笑んで迎えてくれるように感じます。
駅前の喫茶店のご夫妻も、女性タクシー運転手さんも、
勿来関文学歴史館の皆さんも、明るい笑顔と快活なお話。
とても、世界を分け隔てたボーダーだったとは思えません。
でも、勿来の関公園・詩歌の小径を歩いていると、
しばしタイムスリップ。
詩が刻まれた石碑と解説文を見ていると、
時代を超えて歌人たちの気持ちと同化してしまいそう。
実は、勿来の関に実際に訪れた歌人は多くはありません。
当時の京(みやこ)からはあまりにも遠い。
伝え聞いた勿来の関は、自分の心情をあぶり出すための、
心の中の風景だったのです。

明るい勿来海岸に、神秘的な鳥居。ここにも平安のロマンが。 明るい勿来海岸に、神秘的な鳥居。ここにも平安のロマンが。

再び、小野小町が詠った詩に戻りましょう。
みるめ刈る 海女の往来の 湊路に 
勿来関を われすえなくに
彼女が詠った勿来の関は
「私たちの間に、勿来の関があるわけでもないのに、
なぜ最近、会いに来てくれないの?」という意味。
勿来の関があるわけでもないのに、なぜ心は通じ合えないの?
そう、勿来の関は、
「平安のJ-POP」の人気フレーズのようなもの。
彼ら彼女らの心情は、今の私たちと変わらないのかも…。
勿来の関がここにあれば、幸せだった季節も
とどまってくれるかもしれない。そんな詩もあります。
少しセンチメンタル、でも、ほんわか可笑しな気分にも。
あのころの歌人たちを身近に感じられる時間がありました。

勿来の関公園・詩歌の小径 勿来関文学歴史館

勿来の関公園・詩歌の小径 勿来関文学歴史館

福島県いわき市勿来町関田長沢6-1 JR勿来駅から車で5分
開館時間:9:00~17:00(16:30までに入館)
休館日:毎月第三水曜日(祝日に当たる場合は翌日)、1月1日
観覧料:320円(一般/個人)
平安から詠みつがれてきた勿来の関の歌の世界を4つのテーマでよみがえらせた常設展示、勿来の関にかかわる歴史的な事件や出来事を楽しく紹介するコーナーなどがある文学歴史館と、詩の石碑を楽しみながら散策できる小径。勿来海岸の散策とあわせてどうぞ。

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