「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】

提供:Sitakke

 

2024年、2月中旬。寒さの中にも、春の兆しを感じる日でした。
札幌から北へと走る、特急「宗谷」。雄大な天塩川を眺めながら、列車に揺られ、約5時間。

 

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】

今回訪れたのは、“最北端の温泉郷”のまち・豊富町。
なだらかな丘陵地に牧草地と森林が広がり、約3,500人の町民と、約12,000頭の牛が暮らす、小さなまちです。

 

この記事では、2泊3日の滞在で筆者が出会った、魅力的なヒト・モノについてレポートしていきたいと思います。

 

「最近ちょっとお疲れ気味かも…」というあなたに、ぜひ訪れみてほしい。この町には、なんとも”あずましい”、「湯と人との出会い」がたくさんありました。

 

あずましい:あずまし・い (北海道方言) 落ち着いて心地よい。

前回の記事【PART1】札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた

 

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】
豊富駅前のようす

豊富温泉は、通称「油風呂」とも飛ばれ、世界には二つ、日本にはただ一つともいわれるほど希少な泉質です。その特異な泉質は、火傷や皮膚病に効能が高いとされ、アトピーなどの皮膚病疾患に悩む湯治客が、全国から訪れています。

 

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】

前回の記事では、町営の温泉入浴施設「ふれあいセンター」での温泉体験をレポートしました。

 

豊富温泉独特のツンと鼻を突く灯油のようなにおいと、油が浮いたお湯に一瞬怯んだものの…
ドボンッ!と入ってしまえば、まろやかなお湯に全身を包まれる感覚にすっかり魅了されました。

 

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ちいさな山間にある温泉街も、人通りや建物が少ないようすに、最初はチョット寂しい印象を持ちました。でも、お湯から上がって、散策してみると…とっても清々しくて心地良いッ!

 

湯上りのポカポカした身体で、宿に向かいました。

 

今回のお宿「Toji Stay アズマシーナ」

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今回お世話になったお宿はこちら。

 

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】

宿泊施設「Toji Stay アズマシーナ」。昨年4月にオープンした施設です。「ふれあいセンター」から徒歩3分、温泉街の中心部にあります。

 

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室内の様子はこんな感じ。窓から見える裏山と、木目調の壁がマッチしていて解放感があります!湯治客も長期滞在しやすいようにと、宿泊料金は1泊2日 5,500円~とお手頃価格。1名分の料金で、1室最大2名までの宿泊ができるそうです。

 

お話をしてくれたひと~「Toji Stay アズマシーナ」清掃スタッフのOさん・Aさん

「ようこそ!豊富町で、ゆっくりしていってくださいね!」と明るい笑顔で声をかけてくれたのは、清掃スタッフのOさんとAさん。

 

チェックインは”原則無人”で、スマホひとつで完結することができるのですが、この日は、私たちの取材のため、立ち会ってくださいました。

 

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小樽出身のOさんと、京都出身のAさん。「豊富町のことが大好きになって移住してきた」というお二人。OさんとAさんからみた、豊富町の魅力と、それぞれの移住エピソードについてお話を聞いてみることにしました。(お顔出しは“照れ臭いのでNGで…”とのこと。笑顔がキュートなお二人でした!)

 

「もともとは私も湯治客だったんです」~Oさんから見た豊富町の魅力とは

Oさん

豊富町には、アトピーや乾癬などで悩む、湯治目的のお客さんが、全国からたくさんいらっしゃいます。ここ「Toji Stay アズマシーナ」も、1週間~数カ月の長期滞在先として利用いただくケースが多いんですよ。

 

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】
室内にあるキッチン

長期滞在のお客さんにも心地よく過ごして頂けるよう、キッチンや電子レンジ、冷凍庫、シャワールームを各部屋にご用意しています。旅館のご飯やコンビニのお弁当もいいですが、長期滞在となると、お金もかかりますし、味に飽きてきがちですよね。そういった方にキッチンを利用してもらえるといいなと思っています。

 

実は私も、もともと湯治客としてこの町に来たんです。いまから、7~8年位前かな。新卒で上京してから、アトピーが悪化してしまって。地元の小樽に戻ってきたものの、症状は一向に良くならなくて、ずっと塞ぎこんでいました。あの頃は、人前に出るのも怖くって…身体的にも、精神的にも、動ける状態じゃありませんでした。

 

症状が悪化する中で、「ステロイド(薬)に頼り切った生活はもう嫌だ!」って思って。
いろんな湯治施設に行きましたが、最後の望みとして、選んだのが豊富温泉。小樽から一人で、5時間以上かけて、バスで来ました。

 

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共有スペース

勇気を振り絞って、バスに乗り込んで…この町の温泉に入りました。その瞬間、心からホッとしたのを覚えています。塩素が入っている普通の温泉だと、皮膚が痛い感じがあったんですが、ここのお湯は全く痛みを感じなくて。

 

“受け入れてもらえた”という気がしました。「ああ、私、きっと、もう大丈夫かも」って気持ちになれたんです。そこから、この町に滞在して、毎日2回は湯治をしていました。少しずつ症状も軽くなっていくと同時に、心も軽くなっていくのを自分で感じました。

 

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町営の入浴施設「ふれあいセンター」のお湯

今度は自分が、全国各地から訪れる湯治客のみなさんを、あたたかく迎え入れるような存在になれたらいいなって。そんな気力が湧いてきたんです。

 

それで、「ふれあいセンター」の「コンシェルジュ・デスク」で就職先について情報収集をしている中、「 札幌オーナーズ」という企業の社長さんに偶然出会ったんです。
そのとき、ちょうど社長さんが、湯治客や観光客の方向けに「アズマシーナ」をオープンするって話をしていて…「私もやりたいです!」って立候補しました。

 

それで、今に至ります。塞ぎこんでいた時からは考えられないくらい、積極的な行動でしょう?(笑)

 

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1階には、「無人のアメニティBOX」も。歯ブラシやシャンプー、ボディソープなどのアメニティや、洗濯機洗剤を好きな時に使用することが可能

皮膚の病気を患っている方は、当時の私と同じように「人目に触れるのが怖い」という方が多いんです。だから、この施設も、チェックインやチェックアウトは無人で完結できるような仕組みにしています。安心して、ゆっくりと過ごしていってもらえたらいいな。もちろん、観光目的の方も、大歓迎です!

 

「豊富町の景色に心が癒されて…」~Aさんから見た豊富町の魅力とは

Aさん

私も、この町に来たきっかけは、Oさんと同じような経緯です。もともと京都で暮らしていたんですが、症状に悩んでいて…。人づてに「豊富温泉って効くらしいよ」というウワサを耳にして、最後の、頼みの綱だと思って、この町に移住してきたのが、いまから5年ほど前ですね。

 

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豊富町駅

私にとって、豊富町は、最高の環境です。
いま振り返ると、都会暮らしが長かった私にとっては、人の多さが結構なストレスだったんです。自宅に帰りたいだけなのに、どうしてこんなにも見ず知らずのたくさんの人の中でギュウギュウになりながらバスに乗らないといけないんだろう…って。豊富町はそれが一切ないです。

 

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】
部屋に備え付けられている蛇口。「田舎なので水道水がおいしいです」

それに、温泉の効能はもちろんですが、豊富町の広大な景色が大好きになりました。
日本3大湿原の1つ「サロベツ湿原」をはじめ、大自然がたくさんあって。
新鮮な空気、風の流れ…こんなにも、心から季節の移り変わりを楽しめたことはなかったです。

 

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】
自然あふれる豊富町(Aさん撮影)

私は、湯治の“当事者”でもあるので、湯治関係の仕事に就くことは、しばらく控えていたんです。人のケアまではまだ自分じゃできないと思っていたので。

 

でも、少しずつ、豊富町の景色に心も癒されてきて、チャレンジしてみたいと思ったんです。それで、いまこうしてこの宿泊施設で働いています。

 

湯治客として豊富町にいらっしゃる方って、Oさんや私のようにギリギリの精神状態で、かなり思い詰めて来る方が多いんです。その方々が安心し“あずましく”過ごせるような環境を少しでもご提供できればいいなって思っています。

 

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宿泊施設にはボードゲームや漫画コーナーも充実

この町での滞在を通して、表情がみるみる明るくなってくお客様がすごく多いんです。
最初は言葉数も少なく、顔を隠していらっしゃったお客さんが、少しずつ“隠す”のをやめて、心も解放的になっていくんです。清掃スタッフとして、お客さんのサポートに関わらせていただくこの仕事がとても好きです。

 

もちろん、観光や美容目的でも、豊富町へ来てくださる方は、どなたも大歓迎です!
特に、都会から来たお客さんの中には、「ここにきて人生観が変わった」「人生でこんなにのんびりしたことがない」という方も多いんです。“お疲れ気味”な人たちに、ぜひ豊富町でゆっくりしていってほしいです!

 

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豊富町の豊かな自然(Aさん撮影)

「豊富温泉ならではの灯油のような、お湯の匂い。今となっては、私たちにとってお守りみたいなものです。嗅ぐとホッとするんですよ」と笑顔で話す、OさんとAさん。

 

「ナベ子さん(筆者)、きっと普段からお忙しいんでしょう?せっかく来たんだから、のんびり過ごしていってくださいね。お話できて、とっても楽しかったです!」とあたたかい言葉までかけてくれました。

 

宿を訪れた人を、まるごと包み込んでくれるような、優しい笑顔のお二人。自分の心がじんわりと解けていくのを感じました。Oさん、Aさん、貴重なお話を本当にありがとうございました!

 

この日は、「アズマシーナ」で作業に集中!

お二人の取材を終えたあとは、夕飯の時間まで、客室でPC作業に取り掛かりました。

 

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】

「アズマシーナ」では、ワーケーションでの利用も推進しているとのことで、部屋の中は、Wi-Fiも完備されていました。希望者には電源タップやUSBタップ、デスクライトまで、無料の貸し出しサービスも。清掃スタッフのAさんとOさんが隅々までキレイにキープしてくれている客室は、居心地も抜群!私も友人も集中して仕事をすることができました。

 

夜からは2回目の「ふれあいセンター」へ。

お風呂から上がった後は、「ふれあいセンター」内にある食堂で、AさんとOさんおすすめのジンギスカン鍋をオーダーしてみました。

 

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ラムジンギスカンのライスセット(1,400円)と、エゾシカジンギスカンのライスセット(1,250円)、それぞれ1人前です。ボリュームの多さにビックリ!

 

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そして、じっくり焼いて…口に入れて、さらにビックリ。
これがね…もう、絶品です。めちゃくちゃにおいしい。
今まで食べたジンギスカンの中で一番おいしかったかもしれない。

 

このボリューム感とこのおいしさで、この価格。「東京や札幌の都会だと、なかなか見かけたことのないくらい、コスパ高くない!?激ヤバ!」と、今回、東京から同行している友人もビックリしていました。たしかに、満足感がハンパない。

 

「心も身体も癒されて…」札幌から列車で約5時間かけて…“温泉が苦手”な私が、人生で初めて「日本最北端の温泉郷」に行ってみた【豊富町の“あずましい”日々②】

ご飯をもりもり食べて、フ~ッ……。満腹!!

 

この後は「ふれあいセンター」の温泉に入浴し、「アズマシーナ」に戻り、夜22時には布団に入りました。この日、豊富町で出会った人たちの、優しい笑顔を思い浮かべながら、お腹いっぱい、幸せいっぱいな気持ちで眠りにつくことができました。

 

⇒次の日は、豊富町市内を巡ります。(【PART3】は近日公開予定です)

 

<取材協力>

【町営温泉入浴施設 豊富温泉ふれあいセンター】

【Toji Stay アズマシーナ】

 

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Special Thanks~「Toji Stay アズマシーナ」に滞在中、清掃スタッフのOさん、Aさん、そして管理人の只野洋さんには多大なご支援をいただきました。ありがとうございました!

 

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※2024年2月取材時の情報です。最新の情報は各施設の公式サイトをご確認ください。

 

文:Sitakke編集部 ナベ子

 

※この記事は、2024年3月20日にHBC北海道放送のWEBマガジン「Sitakke」で公開された記事を転載したものです。

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