北海道千歳市の西部にある支笏湖(しこつこ)では、カヌーや遊覧船などでアクティビティを楽しむことができます。湖畔には温泉やキャンプ場などもあり、1日中大自然を満喫できるスポットです。
そんな支笏湖のさまざまなアクティビティや、四季折々の楽しみ方、周辺のおすすめ観光スポットなどをご紹介します。
目次
噴火から生まれた支笏湖の歴史
支笏湖は、約4万年前に支笏火山が噴火してできた陥没地に、水が溜まって形成されたカルデラ湖です。名前は、アイヌ語で「シ・コツ(千歳川のある大きな凹地=千歳川渓谷)」と、その源となる「トウ(水溜まり)」を合わせた「シ・コツ・トウ(支笏湖)」が由来とされています。
大きさは長径13km、短径5kmで、周囲約40km。最大深度は約360mあり、国内で2番目の深度を誇ります。また、環境省による湖沼部門の水質測定で2017年まで11年連続日本一に選ばれるほど、不純物が少ないことも特徴です。
水温が低く、水中の栄養分が少ないことから、プランクトンの発生も少ないため、水の透明度は国内でも有数。この透き通った水は、光に照らされることで「支笏湖ブルー」と呼ばれる独特の青い輝きを放ちます。
近くには、日本三大秘湖のひとつであるオコタンペ湖や、標高1,000mを超える風不死岳(ふっぷしだけ)、恵庭岳(えにわだけ)、樽前山(たるまえさん)などがあり、美しく雄大な景観が広がっています。
札幌、新千歳空港からも近い支笏湖
支笏湖は札幌中心部から車で約60分、新千歳空港から車で約45分と、アクセスしやすい立地にあります。
公共交通機関を利用する場合、新千歳空港からは直通バス(北海道中央バス 空4支笏湖行)に乗り、終点「支笏湖」バス停にて下車(所要時間約55分)。このバスは千歳駅を経由するため、札幌駅から向かう場合は、快速エアポートで千歳駅まで向かい(約30分)、そこからバスに乗り換えましょう(所要時間約45分)。
支笏湖
- 住所
- 北海道千歳市支笏湖
- アクセス
- 【車】札幌駅から約60分、新千歳空港から約45分
【バス】千歳駅から約約45分、新千歳空港から約55分
支笏湖周辺で見られる動植物
周辺の森林では多くの野生動物も見られ、ヒグマやキタキツネ、エゾシカなどが生息。ほかにも、天然記念物のクマゲラをはじめ、ヤマセミやイワツバメなどの森林性の鳥類や、カルガモ、キンクロハジロなどの水鳥にも出会うことができます。
植物は、雪解けの4月下旬から初夏にかけてのシーズンが見頃。フキノトウ、フクジュソウ、エゾエンゴサク、イワブクロなどの花々が辺りを彩ります。
四季それぞれの楽しみ方がある支笏湖
樹木や植物が一斉に芽吹き始める春は、ネイチャーウォッチングに最適。植物観察のほか、小鳥たちのさえずりを聴きながらのバードウォッチング、北海道固有種のエゾサンショウウオの産卵など、多くの動植物を身近に感じることができます。
夏は、カヌーやカヤック、SUPをはじめとしたウォーターアクティビティが盛んです。澄んだ水面に青い空と入道雲が映り込む、この時期だけの特別な景色を味わえます。また、湖畔のキャンプ場もにぎわうシーズンです。
紅葉に染まる秋の支笏湖は、トレッキングにぴったり。湖畔に架かる「山線鉄橋(やませんてっきょう)」と紅葉、周辺の山々のグラデーションは目を引く美しさで、多くの人々が思わず足を止めて見入ってしまうほど。
日本最北の不凍湖(寒冷地にありながら一年中結氷することがない湖)でもある支笏湖は、厳冬期には「しぶき氷」を見ることができます。
これは冬の強い風に吹かれた波しぶきが、付近の木に着氷して彫刻のような造形物になる現象のことで、いくつかの条件が重ならないとなかなかお目にかかれないのだそう。冬に訪れた際はぜひ探してみましょう。
毎年1月下旬から2月中旬にかけては、氷のオブジェとライトアップが美しい「千歳・支笏湖氷濤(ひょうとう)まつり」も開催されるなど、冬も見どころ満載です。
支笏湖で楽しむウォーターアクティビティ
湖水の美しさで知られる支笏湖は、北海道内でも特にウォーターアクティビティが盛ん。カヤックやカヌー、SUP、フィッシングなど、支笏湖で体験できるさまざまなレジャーを紹介します。
泳いでいる魚たちを間近で観賞できる水中遊覧船
まずは、道具や装備などの準備が要らない「水中遊覧船」。水深2mまで潜る船中の窓から、コバルトブルーの空間を体験しましょう。多種多様な淡水魚や「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」と呼ばれる、切り立った崖のような地質も観察することができます。
乗船する前に、湖畔にある「支笏湖観光船」で乗船チケットを購入する必要があります。営業期間は毎年4月中旬から11月上旬まで、営業時間は9:00始発〜17:00最終発(※時季によって変動)。クルージング時間は約30分です。
もっと気軽に湖を楽しみたい人には、ペダルタイプのスワンボートも用意されています。そのほか、高速艇でのクルージングプランも人気です。
支笏湖観光船
- 住所
- 北海道千歳市支笏湖温泉
- 営業期間
- 4月中旬~11月上旬
- 営業時間
- 9:00始発〜17:00最終発 ※時季により変更
- 定休日
- 期間中は無休
- 入場料
- 水中遊覧船(30分)/大人2,000円、小学生以下1,000円
スワンボート(30分)/2,000円(2〜4名用) - 公式サイト
- 支笏湖観光船
ここでしかできない特別なクリアカヤック・SUP体験
湖面上や水中からその美しさを満喫できる体験ツアーも人気です。アクティビティツアーを運営する「オーシャンデイズ」では、ダイビングやシュノーケル、カヌー、カヤック、SUPなど、支笏湖ならではのさまざまな体験プランを楽しむことができます。
特におすすめなのは、船全体やボードが透明になっている「クリアカヤック」と「クリアSUP」。支笏湖ブルーの湖面を眼下に、自分のペースでゆっくりと景色を楽しめます。どのプランも、参加者のレベルに合わせて専属のインストラクターがサポートしてくれるので安心です。
また、「オーシャンデイズ」はツアーの運営だけでなく、支笏湖湖底の清掃活動にも積極的。ゴミが滞留しやすいポイントをデータ化し、地元ダイバーと協力しながら、美しい自然環境を次世代につないでいます。ツアーに参加した際には、ごみなどを出さないように環境保全にも心がけましょう。
株式会社オーシャンデイズ
- 住所
- 北海道千歳市支笏湖温泉番外地
- 営業時間
- 夏季(4〜9月)/8:00~17:00、冬季(10〜3月)/8:30~17:00
- 定休日
- 不定休
- 体験料
- プランによって変動
- 公式サイト
- オーシャンデイズ
天然の釣り堀でフィッシングにチャレンジ!
支笏湖の北側に位置する「ポロピナイ園地」では、フィッシングを楽しめます。釣竿やエサなどのセットはすべてレンタルできるので、手ぶらでも問題ありません。
近くの桟橋から、天然のウグイやアメマス、チチブなどの淡水魚を釣ることができます。
ヒメマスなどの大型魚種を狙う人は、遊漁船やレンタルフィッシングボートに乗って沖合のポイントから豪快なフィッシングを楽しみましょう。釣った魚は持ち帰りも可能です。
敷地内にある「ポロピナイ食堂」では、年間を通して絶品のチップ(ヒメマス)料理が味わえます。
なかでも人気なのは、チップのフライや塩焼き、刺身がセットになった「スペシャルセット」(2,400円)と「チップ寿司」(2貫600円)。
支笏湖で育ったチップは、クセがなく脂分が少ないのに、甘くて濃厚な味わいが魅力。どんな料理でも、その味を十分堪能することができます。6〜8月は生チップを食べられるのだとか。
外のテラス席では、支笏湖を眺めながらコーヒーやスイーツなどのカフェメニューも楽しめます。
すぐ近くの浅瀬には、水遊びやカヤック、SUPなどで遊ぶ人々の楽しそうな姿が。観光客でにぎわう支笏湖を眺めながら一休みするのにぴったりです。
株式会社ポロピナイカンパニー
- 住所
- 北海道千歳市幌美内番外地
- 営業時間
- 10:00〜17:30
- 定休日
- 不定休(冬期間は閉鎖)
- 体験料
- プランによって変動
- 公式サイト
- ポロピナイカンパニー(旧支笏湖観光センター)
美しい湖を眺めながら極上のキャンピングも!
支笏湖周辺には、湖を挟んで向かい合うように2つのキャンプ場があります。それぞれの特徴をご紹介します。
手ぶらでも楽しめる「休暇村支笏湖 モラップキャンプ場」
「休暇村支笏湖 モラップキャンプ場」は、支笏湖に面した砂地にテントを設置することができます。対岸には恵庭岳が見え、開放感抜群で自然豊かなロケーションが広がっています。
車で10分ほどの距離には、宿泊施設「休暇村支笏湖」もあるので、日中はキャンプ場でデイキャンプを楽しんで、夜はここで宿泊してゆっくり過ごすのもおすすめです。
そのほか、キャンプ道具を持っていない初心者キャンパーや旅行者にうれしい「手ぶらでキャンププラン」もあります。常設テントに宿泊する「食材付きプラン」(夕・朝食含む1名8,000円)と「食材なしプラン」(1名6,000円)の2種類があるので、予算や条件に合わせて選ぶことができます。
「休暇村支笏湖」の温泉入浴券も付いているので、お得で手軽に支笏湖キャンプを堪能できるのが魅力です。
広い駐車場や清潔感のあるトイレや炊事場を備えているので、安心感があり、満足感の高いキャンプ場となっています。
休暇村支笏湖 モラップキャンプ場
- 住所
- 北海道千歳市支笏湖温泉
- 営業日
- 2024年は4月26日~10月31日
- 利用時間
- 宿泊/13:00~翌11:00
日帰り/9:00~16:00 - 料金
- 宿泊/大人1,300円、小人1,000円、幼児(4歳~)500円
日帰り/大人700円、小人500円、幼児(4歳~)350円
北海道屈指の人気オートキャンプ場「ちとせ美笛キャンプ場」
「ちとせ美笛(びふえ)キャンプ場」は北海道屈指の人気オートキャンプ場で、大自然を求めて多くのキャンパーたちが全国から訪れます。人気の秘密は、何といってもそのロケーションの良さ。
支笏湖を一望できる湖畔エリアと、巨木の森に囲まれた森林エリアがあり、湖と森の両方を思う存分満喫することができます。
ログハウス風の大きなセンターハウスの中には、レストコーナーのほかに、品ぞろえが充実した売店コーナーやシャワールーム、コインランドリーも完備。
キャンプ場敷地内の各所もログハウス風デザインで統一されており、手入れが行き届いたトイレやゴミ集積場、炊事場が設置されています。
日帰りの場合もチェックアウトが19時なので、ゆっくり過ごすことが可能。湖畔にタープだけを張り、夕日が沈むのを見届けるのも良いかもしれません。
ちとせ美笛キャンプ場
- 住所
- 北海道千歳市美笛
- 営業日
- 4月下旬〜10月下旬
- 利用時間
- 【宿泊】チェックイン/11:00~19:00、チェックアウト/翌7:00~10:00
【日帰り】11:00~19:00 - 料金
- 【宿泊】大人2,000円、小・中学生1,000円、4歳以上400円、4歳未満無料
【日帰り】大人1,000円、小・中学生400円、4歳以上200円、4歳未満無料
そのほかの支笏湖周辺スポットも紹介
歴史や自然について学べる「支笏湖ビジターセンター」
湖畔にある「支笏湖ビジターセンター」は、支笏湖の歴史や周辺の自然などについて楽しく学べる施設です。館内では、「森へ、山へ、湖へ もう一つの支笏湖の旅へ」をテーマに、現在も活動を続ける火山の様子や、支笏湖周辺の生き物の生態、湖の中の世界など、大自然の魅力を模型や大型写真などを用いて紹介しています。
そのほかにも、支笏湖の地史を解説する映像や、野鳥や動物のリアルな剥製(はくせい)展示、支笏湖で暮らす魚たちの様子が観察できる大きな水槽があり、連日多くの観光客が訪れるスポットです。
ここでは、レンタサイクルを利用することもできます。自転車は普通自転車(20インチ 1日1,000円※保証金2,000円)と電動自転車(1日2,000円※保証金3,000円)の2種類。
※保証金は、自転車返却時に返金されます
支笏湖畔と千歳市街を結ぶ全長26.5kmのサイクリングロードは、観光にぴったりのコース。沿道には「名水ふれあい公園」や「千歳さけますの森 さけます情報館」「千歳第一発電所展望地」などのスポットがあります。
支笏湖ビジターセンター
- 住所
- 北海道千歳市支笏湖温泉番外地
- 営業時間
- 4月~11月/9:00~17:30 、12月~3月/9:30~16:30
- 定休日
- 年末年始、12月~3月は火曜日(祝日の場合は翌日)
※氷濤まつり期間中は無休 - 入場料
- 無料
- 公式サイト
- 支笏湖ビジターセンター
産業遺産を今に伝える「山線鉄橋」と「山線湖畔驛」
支笏湖には「山線鉄橋(やませんてっきょう)」と呼ばれる大きな朱色の橋が架かっています。この橋は、1908(明治41)年から1951(昭和26)年まで、大手製紙会社・王子製紙の苫小牧工場と支笏湖畔周辺を結ぶ王子軽便鉄道(おうじけいべんてつどう)に使われていたもので、北海道内に現存する最古の鉄橋と言われています。
支笏湖ブルーと山線鉄橋の朱色のコントラストは、写真映えするのでぜひ色んな角度から撮影して、お気に入りの1枚を見つけましょう。
山線鉄橋
- 住所
- 北海道千歳市支笏湖温泉
- アクセス
- 北海道中央バス(空4)支笏湖行「支笏湖」バス停下車、徒歩約 4分または「新千歳空港」から車で約35分
先ほどご紹介した「支笏湖ビジターセンター」の隣には、この地域の発展に貢献した王子軽便鉄道の歴史を振り返る「王子軽便鉄道ミュージアム 山線湖畔驛(やませんこはんえき)」が建っています。
施設内にはジオラマや鉄道模型、映像でかつての様子が再現されているので、現在と見比べてみるのもおもしろそうですね。
王子軽便鉄道ミュージアム「山線湖畔驛」
- 住所
- 北海道千歳市⽀笏湖温泉番外地
- 営業時間
- 4月〜11月/9:00〜17:00、12月〜3月/9:30〜16:00
- 定休日
- 12月〜3月の火曜日(祝日の場合は翌日休)、年末年始(12月29日〜1月3日)
- 入場料
- 無料
- 公式サイト
- 王子軽便鉄道ミュージアム 山線湖畔驛
グリーンシーズンには、カヤックやSUP、フィッシングにキャンプなど、大自然でのアクティビティが思いきり満喫できる支笏湖。四季折々の楽しみ方ができるため、何度訪れても楽しいスポットです。訪れた際にはその歴史や動植物の生態なども学んでみると、新しい発見があるかもしれません。
湖畔に立ち並ぶ温泉宿に宿泊して、ゆっくり過ごしてみてはいかがでしょうか。
取材・文/柏崎 直人 撮影/加藤ミチロウ