生産者の顔が見えること、新鮮な食材が食べられることなどから注目されている「地産地消」。おいしさや安全性だけでなく、輸送や包装が不要なのでCO2の排出が抑えられるうえ、その土地ならではの食文化にも触れられるという、サステナビリティに欠かせない要素がたくさんあります。
新型コロナ感染症拡大の影響によって、健康への意識が高まったこともあり、旅行好きな人たちの間でも、地産地消の食を楽しめる宿やホテルは人気です。
なかには、敷地内に「自家農園」を持ち、とれたての野菜やフルーツをレストランのメニューに取り入れたり、収穫体験ができたりする宿もあります。そんな「自家農園」のある宿で、環境にも、体にもやさしい滞在を楽しんでみませんか？
目次
北海道の自家農園のある宿・ホテル
日高オーベルジュ ナチュラルリゾート・ハイジア（北海道）
オーベルジュとは、宿泊施設を備えたレストランのこと。北海道・日高山脈のふもとにある「日高オーベルジュ ナチュラルリゾート・ハイジア」は、「楽天トラベル全国オーベルジュランキング2018」で第1位を獲得した宿です。フレンチとイタリアンの料理技法が取り入れられた、人にやさしく、食する感動を追及した料理が提供されています。
広大な敷地の中には自家菜園があり、さまざまな野菜を丹精込めて栽培しています。夏には、プチトマトの「アイコ」や、アスパラなどの野菜がたくさん収穫され、朝食、ランチ、ディナーすべての食事に使われています。そのほかにも、北海道の大自然で育った最高級の日高昆布をはじめ、地元で採れた野菜や海鮮、牛乳など、地産の食材にこだわったメニューを堪能できます。
札幌パークホテル（北海道）
「札幌パークホテル」があるのは、札幌市の中心地。緑豊かで、四季折々に美しい姿を見せる「中島公園」を一望できる場所にあります。1964年の開業以来、著名人も多く宿泊される歴史あるホテルです。「テラスレストラン ピアレ」では、北海道産の旬の食材を使ったイタリアン中心のメニューを味わうことができます。
同ホテルから車で20分ほどの場所には、自社農園「グランビスタファーム サッポロ」があります。ここでは、肥料や農薬を一切使用しない木村式での自然栽培を実践。若手社員が農業を体験し、食の大切さを学べる場となっています。また、ホテルの敷地内にある「ピアレ菜園」ではハーブなども栽培しており、自社農園で収穫した食材とともにレストランで提供されています。
※野菜の収穫時期は、主に7～9月を予定しております。
※野菜の収穫時期、収穫量は変動いたします。
※提供場所は、事前の告知なく変わる可能性があります。
※メニューは、季節・天候等により内容が変更になる場合があります。
東北地方の自家農園のある宿・ホテル
天童温泉 ほほえみの宿 滝の湯（山形県）
山形県の天童市にある「ほほえみの宿 滝の湯」は、「安心・安全・美味しい」農産物を提供したいというオーナーの想いから、約20年前より自家農園での野菜づくりを続けている宿です。宿の夕・朝食では、地元産の肉や野菜に加えて、自家農園で栽培した野菜が使われています。また、有機栽培のぶどう園も有しており、自家製の有機ワインは宿泊客からも人気です。
農場では、宿で出る野菜くずや生ごみなどをたい肥にして使用する「循環型有機農法」が取り入れられています。また、リサイクル粉石けんの使用、電気自動車の導入など、環境保全やカーボンニュートラルへの取り組みにも積極的。「人と自然に優しい宿づくり」をテーマに、自然環境に配慮しながら、快適に過ごせる工夫がされています。
ＳＨＯＮＡＩ ＨＯＴＥＬ ＳＵＩＤＥＮ ＴＥＲＲＡＳＳＥ（山形県）
米づくりが盛んな地域として知られる山形県庄内地方。ここに、水田に浮かんでいるかのような佇まいのホテル「SUIDEN TERRASSE（スイデンテラス）」があります。食のテーマは"Farm to Table（農場から食卓へ）"。庄内地方の食を知り尽くしたシェフが、安心・安全な食材を厳選し、旬の味が楽しめるメニューを提供しています。
自家農場での有機農業にも取り組んでおり、54棟ある農業用ハウスで野菜、敷地内の田んぼで米を生産し、ホテルのレストランの料理に取り入れています。体にも環境にもやさしい農法を実践し、持続可能な農業の普及に力を入れていることも特長です。
温泉山荘だいこんの花（宮城県）
「温泉山荘だいこんの花」は、雄大な蔵王連峰のふもとに広がる約1万坪の自然林の中にあります。地産地消に力を入れている宿であり、食のテーマは「嬉し、里山料理」。敷地内の自家菜園で栽培された野菜や、地元で収穫されたとれたて野菜を主役にしたメニューをたっぷり味わうことができます。肉や魚を使った料理もありますが、あくまで、地元で採れた新鮮な野菜のおいしさを味わうためのメニューなのだとか。好きなだけ野菜を食べられるサラダビュッフェや、自家製トマトジュース、蔵王山産の搾りたてにんじんジュースなどが人気です。
自家菜園では、季節ごとのさまざまな野菜や、ハーブが栽培されています。春は、みずみずしいとれたて野菜を朝食のサラダでいただけます。
中部地方の自家農園のある宿・ホテル
扉温泉 明神館（長野県）
「扉温泉 明神館」は、1931年の開業時から「地産地消」を実践してきた宿です。レストランでは、信州の豊かな自然に育まれた野菜、地元の山で採れる山菜、川魚などが提供され、素材のおいしさが最大限に引き出された料理を満喫できます。
創業から運営している自家農場では、低減農薬で栽培された新鮮な高原野菜が収穫され、レストランの食材として使われています。メニューには、ビーガンやベジタリアンの方も安心して楽しめる料理も。また、宿泊者が参加できる苗植え、田植え、収穫体験もあり。野菜の栽培には、調理で残った生ごみをリサイクルした肥料が使用されています。体にも環境にもやさしい農業を行いながら、地元野菜の魅力を発信している宿です。
八ヶ岳グレイスホテル（長野県）
全客室から八ヶ岳を一望できるリゾートホテル「八ヶ岳グレイスホテル」は、高原の冷涼な気候をいかし、直営農場で約70種類以上の野菜を栽培しています。レタス、キャベツ、トマト、とうもろこし、秋以降はかぼちゃ、白菜、長芋など季節毎に旬の野菜を収穫することができます。
農場の野菜は、豊かな自然の中で、種類ごとに米ぬかや魚の粉末などの有機肥料を使い分けて育てられており、安心、安全で旨みや栄養がたっぷり。
レストランでは、直営農園で収穫した野菜をふんだんに使用したメニューが提供されています。夏季のサラダバイキングや、フロントで販売する朝市の野菜も大人気！不定期で収穫体験イベントも実施しています。
カントリーイン オーチャードハウス（山梨県）
清里駅から徒歩15分。「カントリーイン オーチャードハウス」は、自然豊かな清里高原の中にあり、たくさんの木々や植物に包まれたあたたかい雰囲気のプチホテルです。朝食やディナーで、八ヶ岳野菜や果物、地元の食材、自家農園で育てたブルーベリーやハーブ、自生トリュフなどを取り入れたメニューを堪能できます。
地産地消はもちろん、季節の食材を旬のうちに消費する「旬産旬味」もモットー。心をこめて丁寧につくられた料理にはファンも多く、オーナーファミリーのもてなしに感激するリピーターもたくさんいます。自家農園には四季折々の花が咲き誇っているので、早起きして散歩するのもおすすめ。季節によっては、夏のブルーベリー摘みやトウモロコシ収穫も楽しめます。
近畿地方の自家農園のある宿・ホテル
福井の国宝・明通寺の麓の宿で過ごす静寂の時間 松永六感 藤屋（福井県）
福井県が誇る国宝「明通寺」のふもとにある小さな宿「松永六感 藤屋」。ここでは、動物性たんぱくを使わない、野菜中心の精進料理が提供されています。敷地内にある自社農園「藤屋ファーム」には、長い年月をかけて土づくりをした田畑があり、年間200種類を超えるハーブや野菜を栽培。朝食やディナーには、その日に採れた野菜が使われており、精進料理のイメージを覆される、華やかでおいしい料理を味わうことができます。
自社農園は、山と川に囲まれた自然豊かな場所にあります。季節のハーブや野菜の収穫体験もできますし、収穫したものをその日のディナーで食べることもできます。また、専用ガーデナーのサポートを受けながら、野菜やハーブの苗を植えたり、畝（うね）をつくったりする農作業も体験できます。
料理旅館きぐすりや（京都府）
大正8年創業の「きぐすりや」は、明治時代から薬商を営んできた老舗の宿。京地鶏やジビエなど、地元の食材を使った料理が人気です。サステナブルな取り組みにも力を入れており、宿所有の水田では、農薬や化学肥料ほとんど使わない減農薬栽培での米づくりを行っています。また、古民家再生や脱プラスチック、オフグリッドソーラーシステムの導入、地元住民を積極的に雇用するなど、人にも環境にもやさしい運営をしています。
料理は、宿周辺で採れるふきのとうやゼンマイ、わらびなどを使った山菜会席や、美山川で釣られた天然鮎の会席などをいただけます。また、ブルーベリー摘みやタケノコ掘り、山菜採り、田植え体験など、季節に合わせた農業体験も可能。興味のある方は、予約時に問い合わせてみるのがおすすめです。
九州地方の自家農園のある宿・ホテル
ヴィラリゾートホテル 伝泊 The Beachfront MIJORA ＜奄美大島＞ （鹿児島県）
鹿児島県奄美大島にある「ヴィラリゾートホテル 伝泊 The Beachfront MIJORA」の部屋は、目の前に奄美の美しい海が広がる最高のロケーション。日常の喧騒を忘れ、ゆったりと過ごせるリゾートホテルです。国際的なエコラベル「グリーンキー」を取得しており、奄美の美しい環境を未来に残すための、持続可能な取り組みが行われています。
自社農園では、レストランや宿泊施設から出る生ゴミのほとんどを回収し、肥料として利用。野菜やハーブを育てており、ドリンクや料理に利用しています。また、レストランで使われる食材は、80％以上が地元産。奄美の豊かな大地で育てられた野菜や、新鮮な海の幸をふんだんに使った料理が味わえます。さらに、取引先の農家や畜産・漁業関係者は全て地元の住民や地元企業。地域に利益を還元できる仕組みをつくっています。
沖縄の自家農園のある宿・ホテル
ジ・アッタテラス クラブタワーズ（沖縄県）
「ジ・アッタテラス クラブタワーズ」は、沖縄本島・恩納の森に囲まれたリゾートホテル。「OUR FARM TO TABLE（農園から食卓へ）」のコンセプトのもと、ホテル敷地内にある自家菜園で収穫した四季折々の野菜やハーブ、フルーツなどをレストランの食事やバー＆ラウンジでのドリンクで提供しています。
自家菜園では、農薬や化学肥料を使わない有機農法を採用しています。自家菜園で採れたハーブや島野菜、地元食材を主役としたフレンチベースのディナーをレストランで提供。「ザ・ガーデン」エリアで採集された天然ハチミツや、地元の家畜農家から仕入れた平飼いの卵も堪能できます。また、ホテルのスタッフが自家菜園を案内しながら島野菜やハーブの説明をしてくれる「ガーデンセミナー」も行われています。
ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ（沖縄県）
沖縄県読谷村の自然景観を生かした、全室プール付きのヴィラ「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ」。ホテルに隣接する農園「OUR FARM」では、農薬や化学肥料を使わない自然農法で、四季折々の野菜やハーブ、果実を丹精込めて育てています。スタッフが農園を案内する「農園ツアー」も行われており、バナナやパパイアなど、普段はなかなか見ることのできない熱帯の果樹や、島野菜が育つ様子を見学することができます。
レストラン「ファンダイニング」では、自家菜園でつくられた野菜やハーブ、地域の食材を取り入れたフレンチベースのコンチネンタル料理を味わえます。またエステでも、自家菜園で育てられた花々やハーブが使われたており、植物の恵みを活かしたメニューを満喫できます。
ＥＭウェルネス暮らしの発酵ライフスタイルリゾート（沖縄県）
「ＥＭウェルネス暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」は、地球と人にやさしい、サステナブルをテーマにしたホテルです。発酵の力によって素材そのものの味やおいしさを引き出した、体にやさしい食事を楽しめます。
ホテルから車で約10分の場所にある直営農場「サンシャインファーム」では、農薬、化学肥料、除草剤などを一切使用せず、独自の微生物技術（EM技術）を活用し、野菜の栽培や養鶏を行っています。
ここで採れた新鮮な野菜や卵は、ホテルのレストランで提供。瑞々しい野菜や産みたての卵をたっぷり味わうことができます。またレストランのメニューは、可能な限りの手作り・無添加・オーガニックを追及しており、出汁や豆腐、パンなどもすべて一から作られた自家製のものが提供されています。
レストランで出た生ごみは、EM（有用微生物群）で発酵させ、農場の肥料や鶏舎の床材として利用。肥料や土づくり、虫除け、掃除に至るまで、微生物のはたらきである「発酵」の力が活かされているホテルです。
また、朝の1時間農園を散歩できる「朝の農園散歩」も実施されています（週3回）。
詳しくは公式サイト よりご確認ください。
文／馬渕 祥子
