日本では北海道でしか見られない流氷。例年1月中旬~3月中旬頃、冷たいオホーツク海を流れる間に大きくなった流氷が、海一面に広がる様子は圧巻です。流氷の最終到着地点であるオホーツク海沿岸には、流氷を楽しむためのさまざまなツアーが用意されていますが、紋別から出航する「ガリンコ号」は、巨大なドリルで流氷をガリガリと砕きながら進むのが特徴。「ガリンコ号」でしか体験できない大迫力のクルーズと、絶景オホーツクタワーの魅力をご紹介します。
目次
一生に一度は見たい「流氷」とは
流氷とは、寒帯地方の海面で凍結してできた氷が流されてきたものです。
海水は塩分濃度が低くなると凍りやすくなります。極東最大のアムール川から流れる大量の淡水がオホーツク海に流れ込み、シベリアからのマイナス40℃以下の寒気にさらされて氷が作られます。アムール川の河口で生まれた氷は、風と海流によって北海道まで運ばれ、やがてオホーツク海は流氷で覆われます。こうして北海道のオホーツク海沿岸に、南極や北極並みの氷原が出現するのです。
オホーツク海は氷で閉ざされていても、氷の下では植物プランクトンの群れが繁殖し、動物プランクトンや魚をはぐくんでくれます。氷の天使と呼ばれるクリオネや、冷たい氷やえさを求めてアザラシが流氷とともに現れることもあり、流氷は海に豊かな恵みを運んでくれる役割も持っているのです。
美しいだけでなく、豊かな海を作ってくれる流氷を存分に味わうなら、紋別の砕氷(さいひょう)船「ガリンコ号」に乗船するのがおすすめです。「ガリンコ号」は紋別に流氷が近づいてくる、1月中旬から3月まで運行しています。
羽田空港から約2時間でガリンコステーションに到着
「ガリンコ号」の乗船場である「海洋交流館(ガリンコステーション)」へのアクセスは、飛行機の場合はオホーツク紋別空港を利用するのが便利です。オホーツク紋別空港は羽田空港からは約1時間45分、さらにオホーツク紋別空港から海洋交流館までは無料送迎バスで約8分。アクセスしやすいのがうれしいですね。
車でアクセスする場合は、札幌から約5時間、旭川からは約3時間。公共交通機関を使用する場合は、札幌駅・旭川駅からバスで紋別バスターミナルへ行き、そこから連絡バス「ガリヤ号」に乗り、約15分で海洋交流館に到着します。
ガリンコ号にスムーズに乗船するためのコツ
「ガリンコ号」に乗船するためには、まず海洋交流館内の中央にある乗船受付カウンターへ。ここで予約確認や乗船料の支払いなど、受付を済ませます。
予約は電話とWEBで受け付けています。当日の空きがある場合は予約なしでも乗船できますが、流氷が見られる期間は短く、団体予約が入っている場合が多いので、事前に予約をしておくと安心です。
電話予約の場合、乗船料は「ガリンコ号Ⅲ IMERU」が4,000円、「ガリンコ号Ⅱ」が3,000円。お得なWEB予約の場合は「ガリンコ号Ⅲ IMERU」が3,600円、「ガリンコ号Ⅱ」が2,700円です。そのほか、ガリンコ号乗船券とオホーツクタワー海底階入場券のセッ券や、「ガリンコ号Ⅲ IMERU」と「ガリンコ号Ⅱ」の2隻に乗船できる券も販売されています。
ちなみに、「ガリンコ号Ⅲ IMERU」は2021年就航の新造船で、「ガリンコ号Ⅱ」よりスピードが出るため、流氷があるエリアまで速く到達できます。「ガリンコ号Ⅱ」は「ガリンコ号Ⅲ IMERU」と比べて船体が小さく、海面との距離が近いため、迫力のある光景を楽しめるというメリットがあります。
受付は乗船の1時間前から開始。「ガリンコ号」は全席自由席ですので、受付を済ませた後に並んだ順番で乗船します。ピーク時には乗船30分前に長蛇の列ができていることもありますので、早めに受付を済ませて乗船列に並ぶことをおすすめします。
「ガリンコ号」に乗船するときの服装は、頭や耳、首、手首、足首などをしっかり防寒するのがポイント。雪が降ってもデッキでは傘をさせないので、フード付きの上着を着ておくと便利です。
ニット帽、手袋、マフラー、風を通さない厚手のコートやフード付ダウンコート、ブーツ、サングラスなどを用意しておくと良いでしょう。
「ガリンコ号Ⅱ」の船内をご紹介
出航時間が近づくと、スタッフの方に誘導されて乗船を開始します。今回は「ガリンコ号Ⅱ」に乗船!
「ガリンコ号Ⅱ」の大きさは約150トンと小型で、2階建て。流氷を砕くためのドリルであるアルキメディアンスクリューは、船首側に2基搭載されています。
乗船してすぐの場所にあるのは、2階の展望デッキ。ここから大迫力の流氷を見ることができます。船首側のデッキからはドリルが流氷を砕く様子を見下ろせるため、人気のスポットになっています。
こちらは2階中央に位置する流氷見学室。空調が効いているため、展望デッキで冷えた体を温めるのにも最適。流氷を眺めやすいよう、客席は窓側を向いています。
2階流氷見学室の前にある階段を下って1階へ。船首側には観察窓が設置されており、アルキメディアンスクリューを間近で見られます。
1階の客席は2階の流氷見学室よりも座席数が多く広々としており、大きな窓から流氷を眺めることができます。売店や自動販売機、トイレなども1階に設置されています。
いざ、幻想的な流氷の海へ出航!
出航してしばらくすると、青々としていた海がやがて真っ白な流氷に覆われていきます。
基本運航時間は約1時間ですが、流氷の状態によって流氷帯への所要時間が変わるため、最大で1時間30分程度になることもあります。
流氷が見えてきたかと思うと、いつの間にかあたり一面が真っ白に。360度どこを見渡しても流氷に囲まれている圧巻の景色が見られるのが、砕氷船クルーズの魅力でしょう。
他の船は流氷に阻まれて冬は出航できないこともありますが、ドリルが搭載された「ガリンコ号」は立ちはだかる流氷をガリガリ砕きながら進みます。
流氷を砕いている間は船体が大きく揺れ、ドリルと流氷がぶつかり合う音がガリガリと響いて迫力満点! 大きな流氷を砕いている姿に圧倒されてしまいます。
砕かれた流氷が船体横から浮き上がってくる様子は感動もの! 流氷の底面に付着している植物プランクトンにより、エメラルド色に輝く流氷が見られることも。神秘の色彩は大自然の壮大さを感じさせてくれます。
1階の客席からは、デッキからとはまた違う流氷が見られます。座席の真横に流氷が広がり、「ガリンコ号」の中では一番近い位置で流氷が動く様子が観察できるのです。
小さなお子さん連れや年配の方でも、安心して暖かい客席に座りながら、ゆっくり流氷を楽しめます。
船尾側のデッキは広く、比較的空いているため写真撮影にも最適。「ガリンコ号」が切り開いてきた航跡のみが青くなり、流氷の白色と織りなす美しいコントラストも見どころです。
約1時間のクルーズは感動の連続で、アッという間に終了。
デッキはかなり寒いので、出航から流氷が見える場所に到着するまでは2階流氷見学室や1階の客席で待機し、流氷が現れてからデッキに出るようにするといいかもしれません。満席の場合でも、乗客同士が声を掛け合ってお互いに良い場所を譲り合い、交代しながら撮影するようにすると、流氷観光をさらに楽しめるでしょう。
ガリンコ号
- 運航期間
- 22024年1月16日(土)~3月31日(日)
※夏期の釣りクルーズなどもあり - 料金
- 【ガリンコ号Ⅲ IMERU】大人4,000円、小学生2,000円、幼児(小学生未満)無料
【ガリンコ号Ⅱ】大人3,000円、小学生1,500円、幼児(小学生未満)無料
※WEB予約の場合は割引あり - 詳細
- ガリンコ号 - 紋別市
流氷クルーズの後は海洋交流館でランチやお土産を
約1時間たっぷり流氷を楽しんだ後は、海洋交流館でお食事やお買い物を。
海洋交流館には「ガリンコ号」乗船受付カウンターのほかに、ラーメンショップ、フードコート、「ガリンコ号」オリジナルグッズや特産品を販売するお土産店、コンビニエンスストアなど、さまざまな施設が集まっています。
フードコートには5店舗が出店。その中でも紋別の海鮮を味わいたいという方におすすめなのは、「海鮮りん食堂」。紋別市のはまなす通りの人気店で、「海鮮ばくだん丼」(1,760円)や「かにめし弁当」(1,500円)、季節限定メニューなどを提供しています。
地元食材を使ったカレーが評判の「ルルコシンプ」も、観光客に人気があります。
オーガニックビーフが贅沢に入った「興部町(おこっぺちょう)HASEKURANCHIほるすたいん種オーガニックビーフカレー」(1,000円)や、下川町のあべ養鶏卵をトッピングした「和風キーマカレー」(900円)、紋別産ホタテを使用した「紋別名産まがり天ぷらカレー」(900円)などのメニューが並びます。ハーフサイズやキッズサイズのカレーも販売していますので、ご家族連れにもおすすめです。
「ガリンコソフト」(420円)を販売しているのは「喜多牧場」。自然豊かなオホーツク紋別で、約1,200頭の牛を飼育する「オホーツクファーム喜多牧場」のアンテナショップです。紋別の搾りたて牛乳と砂糖のみを用いて作られたソフトクリームは、北海道産ならではの濃厚な味わい。手作りプリンやチーズ、牛乳を飲ませて育てた豚のフランクフルトソーセージ、ハンバーガーなども販売しています。
フードコートにはご紹介した3店舗のほかに、「紋別アヒージョ」で有名な紋別市街地の人気イタリアン「dining cafe quattro」の2号店「quattroガリンコ店」や、紋別産のタコを使用している「たこ焼ボス」があり、乗船口付近には紋別で人気の「らーめん 西や」も出店しています。お好みに合わせて、紋別の味を存分にご堪能ください。
お土産は「Cafe de okhotsk(カフェ・ド・オホーツク)」で購入できます。お菓子やオリジナルグッズを多く取りそろえていますが、おすすめは「ガリンコ号Ⅲ IMERUチョロQ」(1,200円)。「ガリンコ号」の細部までこだわって再現されていて、子どもから大人まで喜んでもらえる一品です。
海洋交流館(ガリンコステーション)
- 住所
- 北海道紋別市海洋公園1
- 営業時間
- 8:00~19:00
- 定休日
- 年末年始
- アクセス
- オホーツク紋別空港より無料送迎バスで約8分
- 詳細
- ガリンコ号 - 紋別市
※流氷は自然現象であり、潮や風の流れによって移動を続けるため、シーズンに入り流氷が初観測されていてもガリンコ号から見られない場合もあります。気象庁発表の海氷予想図などで状況を確認できます
絶景カフェのある「オホーツクタワー」へ
海洋交流館の近くにそびえる、絶景の「氷海展望塔 オホーツクタワー」も見どころ満載です。
ここは日本最北端&最大級の海中展望塔。オホーツク海を一望できる地上1階から3階までの建物と、海底階で構成されています。
「氷海展望塔 オホーツクタワー」へは、ガリンコ号乗り場やタワー入り口の駐車場から無料送迎バスを利用できます。紋別港第3防波堤、通称「クリオネプロムナード」を歩いてアクセスすることも可能です。
タワーの入り口である防波堤に到着したら、エレベーターで3階へと上がります。そこから、海の上に造られた渡海橋を歩いてタワーへ。
タワーの3階は360度オホーツク海を見渡せるパノラマビュー! ここには、展望台と「海の上のカフェ companio(カンパニオ)」が併設されています。流氷を眺めながらほっと一息、というステキな時間が過ごせそうですね。
「海の上のカフェ companio」では、オホーツクエリア産の材料を使った焼き立てのワッフルや、1杯ずつ丁寧にハンドドリップでいれるコーヒーなどがいただけます。
中でも、こだわりのワッフルの上にバニラアイスとキャラメルソース、細かなチーズがかけられた「キャラメルチーズ&アイスワッフル」(650円)は絶品。看板商品なのもうなずけます。
カフェのある3階展望台には無料で使用できる望遠鏡も設置されており、運航中の「ガリンコ号」を観察することができます。真っ白な流氷の中にたたずむオレンジ色の「ガリンコ号」を見られるのは、展望台ならでは。
1階にはボールプールやミニガリンコ号(乗り物)が楽しめる絶景のキッズエリア、2階にはオホーツクシアター「4D-KING」や、流氷と記念撮影できるコーナーも設置されています。
クリオネが泳ぐ流氷の下の世界を体感!
タワーの海底階は、オホーツクの海洋生物を展示するミニ水族館。海中に造られているため少しひんやりとしていて薄暗く、神秘的な世界が広がっています。
リアルタイムで海中を観察するための大小11の海中観察窓が至る所にあり、流氷の天使と呼ばれるクリオネも展示されています。運が良ければ、クリオネが目の前で羽ばたく姿を見られることも。かわいらしい姿は必見です。
ガリンコ号へ乗船される際には、「氷海展望塔 オホーツクタワー」へもぜひ訪れてみてください。
氷海展望塔 オホーツクタワー
- 住所
- 北海道紋別市海洋公園1
- 営業時間
- 10:00~17:00(最終入館16:30)
- 定休日
- 12月29日~1月3日
- アクセス
- オホーツク紋別空港より海洋交流館まで無料送迎バスで約8分、
海洋交流館より無料送迎バスで約1分(徒歩約15分) - 料金
- 1階〜3階/入場無料
海底階入場料/大人500円、小人250円、幼児無料
4Dシアター料金/大人・小人300円/回、幼児無料 - 詳細
- 氷海展望塔 オホーツクタワー - 紋別市
アザラシと会える「アザラシランド」&「アザラシシーパラダイス」
海洋交流館の近くには、流氷の時期にオホーツク海沿岸に姿を見せるアザラシと会える施設もあります。そのひとつ「オホーツクとっかりセンター アザラシランド」は、アザラシたちを保護、飼育している日本で唯一の施設。えさの時間にはアザラシたちが広場までやってくるので、飼育員の解説を聞きながら間近にアザラシを観察することができます。
※改修工事のため、2024年12月末までえさの時間は中止。また、園内一部工事区域は立ち入りができません。その間の入館料は無料です
オホーツクとっかりセンター アザラシランド
- 住所
- 北海道紋別市海洋公園2
- 営業時間
- 10:00~16:00
- 定休日
- 年始年末
- アクセス
- オホーツク紋別空港より海洋交流館まで無料送迎バスで約8分、
海洋交流館より徒歩約1分 - 料金
- 大人200円、小人(小中高)100円、幼児無料
- 詳細
- アザラシランド|紋別市 オホーツク・ガリンコタワー株式会社
「アザラシランド」から少し離れた場所にある「アザラシシーパラダイス」では、来館者がアザラシにえさを直接あげることができる「えさやり体験」が好評です。えさの時間は12:00、14:00、15:30の1日3回。定員は各回先着5名で、参加受付(整理券配布)は各回40分前から。
飼育員がアザラシに日頃行っている健康チェックや、手を使って合図を出す体験もできます。
オホーツクとっかりセンター アザラシシーパラダイス
- 住所
- 北海道紋別市海洋公園2
- 営業時間
- 10:00〜16:00
- 定休日
- 年始年末
- アクセス
- オホーツク紋別空港より海洋交流館まで無料送迎バスで約8分、
海洋交流館より徒歩約2分 - 料金
- 大人500円、小人(小中高)300円、幼児無料
- 詳細
- アザラシシーパラダイス - 紋別市
流氷を楽しむなら、砕氷船「ガリンコ号」クルーズへ!
1月下旬〜3月初旬の限られた期間でしか見られない、流氷を楽しめる「ガリンコ号」クルーズはいかがでしたか? ガリガリと流氷を削りながら突き進む大迫力のクルーズ。小型船のため、間近で流氷を見られるのもうれしいですね。
流氷に導かれてやってくるアザラシと触れ合ったり、流氷を眺めながら一息つける「氷海展望塔 オホーツクタワー」を訪れたりすれば、たっぷり流氷の魅力を感じられそうです。
ぜひ「ガリンコ号」へ乗船して、迫力満点の流氷ツアーをお楽しみください!
撮影・取材・文/北川りさ
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