四条大橋の西のたもとに、テラコッタタイルの壁に個性的な彫刻が施されたクラシカルな洋館が建っています。なんだろう?と気になったことはありませんか? こちらは、「東華菜館」という名の北京料理店で、建築家ヴォーリズが手がけた唯一のレストラン建築です。フロアごとに異なるインテリアデザインとヴォーリズの遊びごころが光る魅惑の空間で、コースやアラカルトの北京料理が楽しめますよ。
四条大橋のランドマーク
スパニッシュ・バロック様式の5階建て。まずは建物正面のデザインに目を凝らしてみて阪急京都河原町駅から東へ、京阪祇園四条駅からなら鴨川に架かる四条大橋を渡ってすぐ。市バスでのアクセスも便利です。
こちらの建物は、1926(大正15)年、全国で1600件もの設計を手がけたアメリカ人建築家ヴォーリズにより、西洋料理を提供するビアレストラン「矢尾政」として建てられました。学校や教会の多いヴォーリズ建築のなかで、唯一のレストラン建築です。戦後、矢尾政のオーナーと親交のあった中国山東省出身の于氏に受け継がれ、北京料理店「東華菜館」となって今に至ります。
敷居の高そうなたたずまいにちょっぴりドキドキしますが、ご安心を。席が空いていれば当日でも入店できますが、事前予約がおすすめです。
1階は、手前が待合室、奥はパントリーです。毎年5月から9月末までの期間は、リバーサイドに鴨川納涼床が設けられます。注目したいのが、格子形の蛇腹式内扉や時計針式のフロアインジケーターなどが見られる日本最古の手動エレベーター。エレベーターの運転手にいざなわれて階上へ。ホテルのような格調高い雰囲気にときめきます。
個性豊かな各フロア
2階の廊下。デコラティブなアーチが目を引く2階は、サイドテーブルや飾り棚などヴォーリズが設計した家具類も残り、建築当時の面影がもっとも感じられるフロア。コース料理(6600円~)を予約すると利用できる個室となっています。鴨川や彼方の東山を望む、通称「ロクナナ」と呼ばれる部屋が人気なのだとか。
エキゾチックな雰囲気の4階大宴会場3階は小・中の宴会場。4階の大宴会場は、宴会で使われていないときは一般客席に。建物は、100年近い年月のなかで幾度か塗り替えなどの補修が行われてきましたが、建築当初のままの梁も残っているので、スタッフに訪ねてみて。
そのほか、地下1階は調理場。屋上は、6月中旬~8月中旬の土・日曜、祝日のみ、団体での貸し切り専用ビアガーデンとして活用されています。
本格派の北京料理に舌鼓
「炸春捲」2200円、「乾焼明蝦(エビのチリソース)」2800円コース料理のほか、一品料理も充実していて、一品料理と一杯のビールを目当てにひとりで訪れるリピーターも多いそう。いちおしは、名物「炸春捲(ヂァーチュンヂュア)」。豚肉、ネギ、タケノコを薄焼きの卵で巻き、薄衣でサクッと揚げた山東風の春巻きで、あっさりとして食べやすく、ひとつ、もうひとつと手が伸びます。
建築やヴォーリズについての予備知識がなくても大丈夫。目を凝らすほどに心が弾む、そんな唯一無二の個性派デザインと、上品な味わいの本格中華を堪能してくださいね。
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文:文:佐藤理菜子 写真:マツダナオキ
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