提供:ことりっぷ
新宿西口にある「服飾博物館」は、服のおもしろさや奥深い魅力を紹介する小さな博物館。親しみやすい企画展も多く、入館料もリーズナブルなので、気軽に立ち寄れます。
服飾の教育機関の附属施設だけあり、内容は本格的で見ごたえは十分です。新宿のショッピングエリアから徒歩圏内で、徒歩数分の場所には新宿中央公園も。おさんぽの途中に立ち寄るのもおすすめです。
※2024年3月11日(月)~ 2024年6月22日(土)は展覧会「“オモシロイフク”大図鑑」を開催中
日本では数少ない服飾専門の博物館
甲州街道沿いにある地球儀のオブジェが博物館入口の目印
服飾博物館はJR・京王線・小田急線の新宿駅南口から徒歩7分ほどの場所にある、めずらしい服飾の専門博物館です。服飾の総合教育機関である文化学園が運営をしています。
保管する服や装飾具などはなんと2万点以上。昔のものも多くあるため、24時間温度・湿度を管理する保存庫にたたみじわがつかないよう丁寧に保管しています。そのため、古くてもとても状態のよい服を見学することができます。
ビル1階が入口。館内には無料のコインロッカーもある
ユニークな企画と楽しい展示で服飾の歴史を知る
2階展示室の様子。長い服は天井近くから吊り下げるなど、実際の服の様子が分かる展示
博物館というとまじめなイメージですが、服飾博物館の展覧会は親しみやすいテーマで楽しみながら服飾の世界を紹介してくれます。2024年6月22日まで開催中の展覧会「“オモシロイフク”大図鑑」では、世界各地の服を「ながい」「おもい」「たかい」など、特色ごとに分けて紹介しています。
過去の展覧会には、「紅白 夢の競演!~さまざまな国の赤と白~」「魔除け~見えない敵を服でブロック!~」などユニークなタイトルが並びます。
パンツの着用状態と広げたものを比較。実はこんなに大きい!とびっくり
展示室は1階と2階に分かれ、ゆっくりまわって1時間ほどです。解説も分かりやすく、服の造形のおもしろさだけではなく、その服を着る地域の気候や歴史的背景も知ることができます。入場料も500円とワンコインで気軽に立ち寄れるのも魅力ですね。
憧れドレスからびっくり装身具まで、興味深い服飾の数々
当時流行だった、デイ・ドレス(1865年ごろ)。スカートのふくらんだ優雅なドレスは女子の憧れ
「“オモシロイフク”大図鑑」展覧会では、「どうやって着るの?」と思わず突っ込みたくなる服ばかりですが、それぞれ理由があってその形になっています。
例えば、足の長さより長い日本の「長裃(ながかみしも)」は、裾を引きずって歩くことで立派に見せる目的が。いくつもの布をはぎ合わせギャザーを寄せたパンツ「シャルワール」は、服があたたかい空気を含むので、寒暖差のある地域で快適に過ごす知恵。布はかつて貴重品だったため、たくさんの布を使ったデザインの服は富の象徴にもなりました。
いっぷう変わった服の物語を知ると、気候に対応する人々の努力や、権威に用いようとする社会的な背景が見えてきます。
揺れるビーズが軽やかな印象のイヴニング・ドレス(左・1950年代、右・1920年代)。実はその重さは1.4㎏以上 フォークロアなコート「テレ・トン」とブーツ。それぞれ羊皮とトナカイ皮を使い合計約6㎏(20世紀後半) 中央のポーランドの頭飾り(20世紀末)は未婚女性が祭礼時に使うもの。ちょっとだけならかぶってみたい? 大きく膨らんだ袖は、時代や地域を越えて流行した。左は1835年頃のイギリス、右は1895年頃のアメリカの服
何枚もほしくなるポストカードをお土産に
ファッションの華やかさが1枚になったポストカードは各100円
博物館にカフェやショップはありませんが、受付でポストカードやオリジナルの「糸へん」手ぬぐい、過去の展覧会の図録などを扱っています。所蔵品の服の絵柄などをモチーフにした絵葉書はキュートで、何枚もそろえたくなります。
館内は撮影禁止ですが、入口エントランスは撮影が可能です。壁画は1923年のパリのファッション誌のイラストを再現したもの。描いたのではなく、すべて大理石をはめ込んで作られているのは見事です。記念に撮影してみてはいかがでしょうか。
直線的なデザインが特長の1920年代の服が新鮮。まるで現実の床が絵の中にのびていくように見える
華やかなファッションで目を楽しませてくれ、服飾の歴史を教えてくれる博物館です。新宿さんぽの途中で立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
文:金村朝実 撮影:依田佳子