趣のある入り口の構え。背筋が伸びます。
湯之島館
自然とともに贅沢するなら
下呂温泉街のはずれ、山の中腹に、
木に囲われるように建っている趣ある宿が湯之島館です。
昭和6年創業。山をすべて開拓してしまうのではなく、
山と共生しているように建てられました。
ある廊下などは、大きなスギの木が立っているから、
それを避けるように、曲がっているほどです。
客室からも窓の目の前、
手の届く距離にスギが立っているお部屋もあります。
しかもスギの木のかなり上のほう。
だから鳥が飛んでいる姿や、
ムササビが優雅に舞う姿を見ることもできます。
窓から凛としたスギが見える素晴らしい借景。
今上天皇が皇太子時代に食事をした部屋や、
司馬遼太郎に愛された春慶塗の部屋など、
調度品もすばらしいものばかり。
欄間をはじめ、部屋のつくりは
各部屋ですべて仕様が異なっており、
当時の職人のこだわりや遊び心が感じられます。
ついつい他の部屋も覗いてみたくなるほど
(勝手に覗いてはダメですよ)。
昭和20年代には、洋館が増設されました。
こちらもまたすばらしい。特にお風呂。
やはり下呂に来たからには温泉に入りたいもの。
大浴場や露天風呂は、展望がすばらしく、
その借景は山と一体化できます。
貸し切り可能な洋館の家族風呂は、
浴槽も、脱衣所も、レトロな雰囲気。
タイルや籐のイスなど、最近ではみかけなくなったものが、
ていねいに受け継がれています。
どこを切り取っても、絵になる風景です。
館内の伝統あるしつらえを見て回るだけでも楽しいものです。
かなり広いので迷子になりやすいですが…、
それもまた良し(笑)。
ただ優雅なだけではなく、自然とともにあることが、
都会にはない最高の贅沢なのです。
湯之島館
岐阜県下呂市湯之島645
下呂駅より徒歩約20分