大阪駅から約30分、京都駅から約15分。地理的要所に位置した山崎は、日本ウイスキーのふるさととして知られ、サントリー山崎蒸溜所の「山崎蒸溜所ツアー」が人気。ウイスキーづくりの工程を実際に見学し、テイスティング体験ができます。
2020年NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公・明智光秀のゆかりの地としても注目を浴びる山崎。大人の遠足気分で、ウイスキーを通じて山崎の歴史や自然にふれてみませんか?
山崎は『万葉集』に歌われる名水の里
大阪府と京都府の境の豊かな自然に囲まれた山崎は、桂川と宇治川、木津川の三川が合流する独特の地形上にあります。古代には『万葉集』に歌われた名水の地。安土桃山時代には、茶人・千利休が山崎の名水を使って茶室を構えました。現在でも、日本名水百選(環境省選定)に選ばれた「離宮の水」がこんこんと湧き出しています。
大阪駅からも京都駅からも近くにありながら、名水が湧く山崎で人気のスポットといえば「サントリー山崎蒸溜所」です。特に1日5~6回開催されている工場見学「山崎蒸溜所ツアー」(有料・要予約)は人気で、なかなか予約が取れないほど。普段はウイスキーを飲まない方も、ぜひこの機会にウイスキーの奥深さにふれてみてはいかがでしょうか。
山崎ウイスキー館で「ジャパニーズウイスキー」のこだわりにふれる
サントリー山崎蒸溜所ではまず、「山崎ウイスキー館」を見学します。日本のウイスキーの歴史を知ることができる展示やテイスティングカウンター、限定グッズが揃うショップなど、多彩な楽しみ方が。詳細は後ほどご紹介します。
「山崎ウイスキー館」ではまず、サントリーの創業者・鳥井信治郎(とりいしんじろう)のウイスキーづくりに対する情熱にふれてみてください。「日本人の繊細な味覚にあった、 日本のウイスキーをつくりたい」という情熱からウイスキーづくりが始まりました。
鳥井信治郎は1923年、当時誰も手をつけなかった本格的な国産ウイスキーづくりに着手。これが山崎蒸溜所です。周囲の反対にくじけず、ウイスキーづくりに乗り出しました。サントリーウイスキー、そしてジャパニーズウイスキーの歴史は幕を開けたのです。
山崎蒸溜所ツアーでシングルモルトウイスキー「山崎」を深く知る
山崎ウイスキー館内にいるだけで胸が高鳴ります。そして2階からいよいよ、「山崎蒸溜所ツアー」のスタートです。
ツアーは原料の説明から始まり、仕込、発酵、蒸溜、貯蔵の順に楽しみ、山崎蒸溜所のウイスキーづくりのこだわりを五感を使って体感できます。
山崎ウイスキー館2階の集合場所から、山崎蒸溜所ツアーはスタート。まずは、専門ガイドから全体のスケジュールの説明があります。工場の見学が約50分、テイスティングが約30分の構成。集合場所にあるミニチュア模型の展示を使って、モルトウイスキーの製造工程の一連の流れを学びます。
仕込
山崎ウイスキー館を出て、隣接する「仕込・発酵室」へと移動。建物の中に入るや否や、麦汁の香りが感じられ、ツアー参加者のテンションも一気に上がります。
モルトウイスキーの原料は、水と大麦。厳選された二条大麦を発芽・乾燥させ麦芽にします。その麦芽を細かく砕き、仕込水とともに仕込槽へ。麦芽中の酵素の働きで、デンプンが糖に分解された後、ゆっくりとろ過し、澄んだ麦汁をつくります。この麦汁はなんとメロンと同じくらいの甘みがあるそうです。
仕込・発酵
「仕込・発酵室」には、大きな木の桶(発酵槽)が並んでいます。この発酵槽の中に、ろ過した麦汁を移し、酵母を加えます。酵母は、麦汁の糖を分解してアルコールと炭酸ガスに変え、ウイスキー特有の香味成分が生まれます。この工程でできあがった発酵液を「もろみ」とよび、その特徴は酵母の種類や発酵条件などによって異なります。つまり、様々なタイプの「もろみ」が生み出されます。
山崎蒸溜所では木桶以外にもステンレス製の発酵槽も用いて、もろみのさらなる作り分けを行っています。この「もろみ」のアルコール度数はまだ約7度と低く、次の工程で蒸溜され、度数がぐっと高くなるのです。
蒸溜
「蒸溜室」に入ると一気に室温が上昇し、汗ばむくらいです。蒸溜室内には、蒸溜釜(ポットスチル)が並んでますが、実はどの蒸溜釜も大きさは首の長さ・角度が異なります。タイプの異なる様々な蒸溜釜を使用することで、多彩な味わいのウイスキー原酒を生み出している蒸溜所は、世界でも極めて稀です。
この工程で「もろみ」は2度の蒸溜を通してアルコール度数を高め、無色透明の「ニューポット」が生まれます。このニューポットが熟成し、琥珀色のモルトウイスキー原酒に育っていくのです。
貯蔵(熟成)
ずらりと木樽が並ぶ「貯蔵庫」。山崎蒸溜所では、5種類の樽を使い分けています。木製樽の内側の成分が溶け出すことで、ウイスキーの色や香りに大きな影響を及ぼします。
蒸溜されたばかりのニューポットを樽に詰めて長時間じっくり寝かせ、熟成させます。詰める樽の大きさや形状、材質、貯蔵場所の気候風土や貯蔵庫内の保管位置など、樽醸成の環境によってウイスキーの香味は複雑に変化します。つまり、ウイスキーの香味の組合せは無限にあるのです。
山崎蒸溜所ツアーの締めくくりはテイスティングに挑戦!
仕込から樽熟成に至るまでの工程を通じて、様々なウイスキー原酒に作り分けられています。そしてこの多彩な原酒の熟成状況をチェックし、商品の特徴にあった配合にするのが「ブレンダー」と呼ばれる仕事です。
多い時には1日に200~300種類にも及ぶテイスティングを通じて、樽ごとの原酒のピークを見極めながら、どのタイミングで原酒を使用すべきかを判断しています。
山崎蒸溜所ツアーではブレンダーには会えませんが、実際にツアー参加者がテイスティングに挑戦することができます。約50分の工場見学を終えた後、テイスティング会場へ移動します。
ツアー参加者用に、テイスティングの準備がされたテーブルに着席します。テーブルには4種類のグラスが用意されており、モルトウイスキー原酒やシングルモルトウイスキー「山崎」を、ガイドによる説明に従ってテイスティングしていきます。蒸溜所ならではの「山崎」構成原酒(非売品)など、貴重な原酒をいただくことができます。
ウイスキーのつまみも、サントリー山崎蒸溜所オリジナルです。スナックやチョコレートなど、思わずお酒もすすみますよ。取材時は、ピュアチョコレートと樽燻(ウイスキーの樽材で燻製したおつまみ)、ミックスナッツの組合せでした。
ちなみに、山崎蒸溜所ツアーでは、工場内の見学やテイスティングだけでなく、敷地内にある神社や涼しげな水辺も見学できます。楽しみ方盛りだくさんの「山崎蒸溜所ツアー」は参加費も1,000円とリーズナブル。人気ツアーのため事前予約が必須です。
さらにじっくりとウイスキーについて学びたい場合には、もう1つのツアー「THE STORY OF YAMAZAKI ~シングルモルトウイスキー山崎誕生の物語~」(2,000円・要予約)もおすすめです。土曜、日曜、祝日限定の開催で所要約100分。
▼ツアーの詳細・予約はこちら
サントリー山崎蒸溜所公式ページ
山崎ウイスキー館の楽しみ方
山崎蒸溜所ツアー以外にも、山崎ウイスキー館をじっくり回るとういう楽しみ方もあります。「山崎ウイスキー館見学」(製造工程見学なし)となり、自分自身で自由に見学できますが、予約は必要ですのでご注意ください。
山崎ウイスキー館内には、鳥井信治郎がウイスキーのブレンドの技を磨く際に愛用した机、日本初の本格国産ウイスキー「白札」発売初期のボトルなど、日本のウイスキーの歴史を伝える展示物が数多く並びます。
多彩なウイスキー原酒などが並ぶウイスキーライブラリーは圧巻。実際に使用していたポットスチルや発酵槽も見学できます。
もちろんテイスティングもできます。「山崎」ブランドをはじめ世界のウイスキーや蒸溜所ならではの構成原酒など、約30種類のウイスキーが揃います。15ml(ハーフショット)でウイスキーを飲み比べることで、個性の違いを感じることができます。
サントリー山崎蒸溜所限定グッズを手に入れよう!
サントリー山崎蒸溜所の限定お土産もお見逃しなく。ウイスキーによく合うおつまみも人気です。
クセになる味のパスタスナック(500円)。「燻しベーコン味」と「甘じょっぱい麦芽味」があります。
サントリー山崎蒸溜所のウイスキー製造工程が描かれた、「オリジナルピュアチョコレート」(980円)。イラストは全12種類あり、男女問わず人気のお土産です。
「山崎ハイボールタンブラー(ステンレス)」(1,944円)。ほかにもオリジナルテイスティンググラスやショットグラス、ボールペンなどの文房具も揃います。
※商品の価格は、2019年9月時点の価格です。
種類豊富なお土産をじっくり選びたい方は時間配分にご注意ください。山崎蒸溜所ツアーの最終終了時刻は16時10分、ショップは16時45分までの営業になっています。
サントリー山崎蒸溜所へのアクセスと事前予約
駐車場のないサントリー山崎蒸溜所へは、鉄道でのアクセスが基本になります。最寄り駅は、JR東海道本線「山崎」駅または阪急京都本線「大山崎」駅で、どちらの駅からも徒歩約10分です。
サントリー山崎蒸溜所近くの踏切では、数本の鉄道を待つ場合がありますので、ツアーに参加される場合には、少し余裕をみた行動がおすすめです。
また、名水の地の山崎は、夏は湿度が高いので、暑さ対策も忘れないようにしてください。繰り返しになりますが、サントリー山崎蒸溜所はツアーへの参加の有無を問わず予約が必要です。
2020年NHK大河ドラマ『麒麟がくる』で注目を浴びる明智光秀ゆかりの地と一緒に、サントリー山崎蒸溜所をお楽しみください。
サントリー山崎蒸溜所
- 住所
- 大阪府三島郡島本町山崎5-2-1
- 営業時間
- 10:00~16:45(最終入場は 16:30)
- 定休日
- 年末年始・工場休業日(臨時休業あり)
- 入場料
- 無料 ※要予約
- アクセス
- 【電車】JR「大阪」駅から東海道本線「山崎」駅まで約25分、「京都」駅からは約15分。または阪急「梅田」駅から阪急京都線「大山崎」駅まで約35分、「河原町」駅からは約25分。山崎の両駅から徒歩約10分
- URL
- サントリー山崎蒸溜所公式ページ
山崎蒸溜所ツアー(有料)
- 開催日
- 年末年始、工場休業日をのぞく毎日
- 開催時間
- 9:50/10:30/11:00/12:20/13:30/14:50
※日によって、開催の無い時間がございます。
- 所要時間
- 約80分
- 参加費
- お一人様 1,000円
- 対象
- 20歳以上
- ツアーの詳細・予約
- サントリー山崎蒸溜所公式ページ
取材・撮影・文/藪内成基
※掲載内容は公開時点のものです。ご利用時と異なることがありますのでご了承ください。
※価格はすべて税込価格です。