提供:ことりっぷ
早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)は、早稲田大学の構内にある入館無料の文学館です。小説家・村上春樹さんの資料を収集する文学資料館ですが、展覧会などのイベントも活発に行い、訪れる人々の交流の場となっています。本を様々な場所で読めたり、レコードの音に耳を傾けたり、カフェでくつろいだりと、村上ファンならずとも楽しめるユニークな施設。日常をはなれて、トンネルの奥にある文学の世界をのぞいてみませんか。
居心地のよい空間が広がる大学構内の文学館
別世界へと読者を招く村上作品をイメージさせる、トンネルのデザイン
早稲田大学国際文学館、通称「村上春樹ライブラリー」は、2021年に大学の中にオープンしました。東京メトロ早稲田駅から大学構内を進み徒歩8分ほど。建築家の隈研吾さんによって大胆にリノベーションされた建物は、トンネルのような正面入口が印象的です。入館は無料で、誰でも利用可能。オープン当初は予約制でしたが、現在は20人以下の少人数であれば予約不要に。より身近になりました。
館内には本を読めるスペースがたくさん
童心にかえって、大階段に座って本を読むのもおすすめ。本棚にいるリトルピープルも探してみて
館内は地下1階がカフェと再現書斎など、1階は村上作品が並ぶギャラリーラウンジとオーディオルーム、2階には展示室や映像を視聴できるラボなどがあります。文学館のシンボルは地下1階と1階をつなぐ大階段「階段本棚」。両側の本棚には、村上作品の関連書籍と、世界文学を考えるための本をセレクト。階段のほか、カフェを含む地下1階フロアで読むことができます。
階段本棚には翻訳家の柴田元幸さんなどの選書による知的好奇心を刺激してくれる本がずらり 国内外の村上作品を一堂に集めたギャラリーラウンジ。オーディオルームを含めた館内1階でのみ閲覧可能
階段本棚のほかにも、本がたくさん。1階のギャラリーラウンジには様々な言語に翻訳された本も含めた村上作品が並びます。海外の翻訳本はタイトルが異なっていたり、装丁も違うので比べてみると面白いですね。オーディオルームでレコードを聴きながら、ソファでくつろぎながらなど、本を楽しむいくつもの場所が用意されています。
おこもり感で人気の読書スペースが1階にあるこちらの「コクーンチェア」 カフェとつながった地下1階のラウンジスペース。外の緑に癒されながら読書を
レコードの空間「オーディオルーム」や展覧会スペースも
レコードも村上さんから寄贈されたもの。音楽ジャンルはジャズやクラシックなどが多い
1階の「オーディオルーム」は、村上さんが好きだという北欧家具が置かれ、レコードから流れる音楽が心地よい空間。実際に村上さんが使っていたのと同様の高音質のレコードプレーヤーやスピーカーが置かれています。音楽に身をゆだねる贅沢な時間を過ごせる場所です。隣の「ギャラリーラウンジ」の本も持ち込めるので、音楽を聴きながら読書をしてみては。
「変身」するカフカ展。カフカ『変身』の日本語訳の比較や各国の装丁画の比較などが興味深い 村上さんと親交のある編集者・写真家の都築響一さんから寄贈された写真集や美術書も
2階には展示室があり、国際文学や翻訳文学に関連する企画展を開催。2024年4月26日(金)~9月16日(月)までは、文学者・フランツ・カフカ没後100年を記念して、『「変身」するカフカ』展を開催。おしゃれな展示方法にも注目です。 同フロアには、過去の作家同士のトークイベントの様子や、村上作品の朗読が聴けるコーナーもあるのでお見逃しなく。
ミュージアムカフェ「橙子猫(オレンジキャット)」で一息
2種のベリーのソーダ500円、シュガードーナツ300円。堀口珈琲のハンドドリップコーヒー500円もおすすめ
文学館の地下1階には、カフェ「橙子猫(オレンジキャット)」があります。こだわりのコーヒーやスイーツ、サンドイッチやドライカレーといった軽食もいただけるお店です。村上さんご自身が使われていたテーブルと椅子席もありますよ。
ユニークなのは接客から広報、商品開発、企画まで早稲田大学の学生が行っていること。学生ならではの発想力で企画する、音楽サークルのライブやアナウンス研究会の朗読会など、カフェを舞台にしたイベントも楽しみです。イベントの予定は公式インスタグラムをチェックして。
村上さんは大学時代にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を経営。その精神を引き継ぐ学生運営のお店 地下だが大きな窓があり、開放的で広々したカフェ。「ピーター・キャット」のピアノも置かれている カフェの一角にある文学館や展覧会のオリジナルグッズコーナー(グッズの扱いは不定期)
本やカフェ、展覧会やイベントなど、村上文学を通じてさまざまな楽しみ方ができる文学館です。大学構内には村上さんも通ったという「演劇博物館」や、美術品などを展示する「會津八一記念博物館」もあります。いずれも無料なので、併せて見学してみてはいかがでしょうか。
取材・文:金村朝実 撮影:依田佳子