提供:ことりっぷ
愛知県安城市の小高い丘の上に作られた「丈山苑」。京都にある庭園の名所「詩仙堂」を模して造られた日本庭園と書院造の建物が広がっていて、散策したり、呈茶を愉しんだり、思い思いの時間を過ごすことができます。表情豊かな庭園は晩秋になると木々が色づき、鮮やかな色でいっぱいに。どこを切り取っても絵になる、四季折々の美しい景色を堪能できる場所をご案内します。
「石川丈山」生誕の地に作り上げた邸宅と庭園
愛知県安城市にある林の中にたたずむ「丈山苑」。江戸時代の武将であり文人としても活躍した「石川丈山」の生誕の地に作り上げた、日本家屋と庭園が広がる施設となっていて、丈山の書や掛軸など丈山ゆかりの品々が展示されています。
石川丈山は現在の愛知県安城市で生誕し、徳川家康にも使えた武将。その後、儒学や書を学び数多くの書や漢詩を残すなど、文人として活躍しました。茶道や作庭にも精通する彼が自ら作庭し、晩年を過ごしたのが「詩仙堂」と呼ばれる庵。今は曹洞宗の寺院となっていて、京都有数の名園として知られています。「丈山苑」はこの「詩仙堂」をはじめとする丈山の庭園や建物をイメージして地元愛知の職人たちが作り上げたものなのです。
建物に入ると、縁側までオープンになった書院の間があり、まさに庭園を望むための空間。ここからは「詩仙堂」を思わせる風景が目に飛び込みます。この庭は唐様庭園と呼ばれる中国式の庭園で、丸く刈られたサツキは山々を表現したもの。丈山が作庭した「詩仙堂」の庭が再現されています。
さらにその書院を廊下側から見ると、磨かれた板の間に庭園の木々の色が写り込み色鮮やかな景色が。春から夏にかけては床が緑に染まる「床みどり」、紅葉のシーズンならば床が赤く染まる「床もみじ」を楽しむことができますよ。
お茶をいただきながら、丈山に思いを馳せて
呈茶(和菓子付き500円)
「丈山苑」を訪れたら、ぜひ抹茶をいただきながら、庭を愛でるひとときを。季節の和菓子と抹茶には、新緑や紅葉の季節限定で床みどり、床もみじの風景を切り取って手作りした栞が添えられています(数量限定)。
秋から冬は特に日差しが縁側を超えて部屋の中まで入りこみ、ひなたぼっこをしながらお茶を楽しむことも。新春には茶会なども催され、季節を楽しむ場所としても親しまれています。
いろいろな場所から庭園を堪能してみましょう
書院から望む唐様庭園は雪駄を履いて回遊することができるので、庭へ降りて小路を歩いてみてください。ししおどしや野鳥の声も聞こえ、五感で庭園を感じることができます。
小窓からは反対側の枯山水庭園が
ほかにも、建物の北側には枯山水の庭園、そして建物の東側には、こちらも丈山が作庭したと伝わる東本願寺渉成園をイメージした池泉回遊式庭園が広がっています。
また建物には展望階「嘯月楼」へと続く階段があり、それを上ると庭園全体を一望できるようになっています。月を題材にした漢詩を数多く残した丈山。丸い窓から月を眺め、どんな思索を巡らせたのでしょう。紅葉シーズンは苑内が順番に色づいていく様子がここから一望することもできます。
紅葉シーズン限定ですが夜間開苑が行われ、ライトアップされ幻想的な雰囲気に包まれる夜の庭園も楽しむことができます。この時期は多くの人が訪れるので、ゆったりと過ごしたいならば平日の午前中がおすすめの時間帯ですよ。
四季折々に訪れたい、絵になる景色が広がる場所
建物に入るまでも小川が流れる紅葉の小路が広がり、季節ごとに美しい景色が広がる「丈山苑」。丈山の世界を体験でき、紅葉・新緑など季節の美しさを感じられる憩いの場所に、ぜひ足を運んでみてくださいね。
文:田口真由美