豊島の特等席にある
古民家宿
とくと・豊島(香川県土庄町)
瀬戸内海を見晴らす古民家に泊まり、
島の暮らしに触れる豊かな時間を過ごす
大小さまざまな島が連なる、瀬戸内海国立公園に位置する「豊島（てしま）」。3年に一度開催される「瀬戸内国際芸術祭」の舞台のひとつでもあり、アートと食の島として人気を集めています。島へは香川県の高松港または、岡山県の宇野港から家浦港へそれぞれ40分ほどの船旅。島の中央に標高約340ｍの壇山がそびえ、山肌の棚田では米をはじめとする農作物が育てられています。「田畑百町歩、古くから自給自足ができる島だよ」と島のおばさんが教えてくれました。海を見下ろす古民家「とくと」に泊まり、のどかな景色や地産地消のグルメと、島の魅力を満喫しましょう。
豊島の特等席にある宿で
島のテンポに身を任せる
家浦港から徒歩約10分。車一台がやっと通るような狭い路地を抜けた石垣の上に「とくと」はあります。築80年ほどの日本家屋をフルリノベーションした宿で、広い敷地に本館と別館の2棟があり、それぞれを1棟貸しで宿泊できます。宿主の濱中さんは、生まれ育ったこの島に戻った時に、この家屋が取り壊されるとうわさを聞いて訪れてみると、瓦の七福神に目が留まったそう。「これは壊したらダメ。きっとすばらしい宿になる」と直感して、この建物を宿にすることを決めたそうです。
本館は、縁側に沿って和室が2間と、キングサイズのベッドルーム、囲炉裏のあるダイニングルーム、キッチンを完備。ゆらりと歪んで見える波打つガラス窓に、昭和レトロな風情が漂います。随所に建てられた当時の建具が残されていますが、設備が整っているので、快適な滞在ができます。縁側から穏やかな瀬戸内海の景色を望むと、心身ともにリラックスしていきます。
本館のすぐ近くにある別館は、天井の高い開放的なオープンキッチンと、梁や欄間などの伝統的な建材がミックスした和モダンな造り。ベッドルームと和室があり、最大6名まで宿泊できます。機能的なキッチンはフル設備。料理をするのも楽しそうです。豊島では産業廃棄物の不法投棄が行われていたことがあります。その処理は終わっていますが、島の人たちは環境の大切さを痛感しています。そうした背景もあり「とくと」では、歯ブラシや歯磨き粉などの使い捨てプラスチック製品の用意がありません。また、生ごみなどは堆肥化、太陽光発電も取り入れるなど、環境への配慮をしています。
夕食は近くのレストランや飲食店へ。宿を予約する際に相談をしておくとスムーズです。朝食は、キッチンを利用してのセルフサービススタイル。近くに住む山田さんが毎朝焼くパン、レモンピール入りのグラノーラ、手作りのジャム、ヨーグルト、庭でとれた野菜や卵など、季節ごとの島にあるものを好きな時間にいただけます。
宿の裏手には畑や里山が広がり、野菜や果物を栽培し、鶏やヤギが飼育されています。「いつかヤギのチーズを作って提供したい」と濱中さん。
希望者には、ヤギの餌やり体験や、朝食用の卵をゲストが自ら取に行く卵取り体験も提供しています。近くで見る動物たちにちょっとドキドキしますが、ここならではの体験。ぜひチャレンジしてください。
とくと
住所／香川県小豆郡土庄町豊島家浦1577-2
交通／家浦港から徒歩約10分
チェックイン／15:00～18:00
チェックアウト／10:00
料金／本館1泊1棟35,000円＋1名につき5,000円（税込み／朝食付き）、別館1泊1棟25,000円＋1名につき5,000円（税込み／朝食付き）
地元の食材が詰まった手作り弁当を
瀬戸内海を望む棚田でいただく
瀬戸内海にある香川県内の有人島で、小豆島の次に大きな豊島。花崗岩の上に砂岩、その上に「豊島石」と呼ばれる石があり、島に降った雨がおいしい水となって集落に届けられます。唐櫃（からと）地区には、海を望む斜面に棚田が広がり、山からの清水を使った稲作が行われています。
棚田を見下ろすベンチで、ランチタイム。瀬戸内海を行き来する船を見ながら、豊島の幸が詰まったお弁当をいただきます。海からの風が心地良く、彩り豊かなお弁当に話も弾みます。
お弁当の内容は日によって異なりますが、この日の「豊島のお弁当」（1,800円）は、鯛の味噌漬け、豊島の天日塩の塩唐揚げ、ゴーヤの佃煮、野菜の揚げびたし、タコとキュウリの酢の物、野菜の煮物と卵焼き。おかずの下には豊島産のご飯が敷き詰められています。今日のお弁当は88歳のはんちゃんと72歳のひろちゃんが愛情たっぷりに作ってくれました。どれもほっこりとする優しい味わいです。「豊島に来たら、豊島のものを食べて帰ってほしい」との思いが詰まったお弁当に、お腹も胸もいっぱいになります。
豊島のおばあちゃんの店 うらら
電話／0879-68-2352
住所／香川県小豆郡土庄町豊島家浦2232-2
交通／家浦港から徒歩約5分
営業時間／完全予約制、テイクアウトのみ
海の上にいるようなテラス席で
瀬戸内の旬が満載のイタリアン
2013年7月のオープン以来、料理のおいしさとロケーションの素晴らしさで評判の「海のレストラン」。スロープを上がり、エントランスを抜けると目の前に瀬戸内海が広がります。設計はケース・リアルの代表、二俣公一氏。どの席からも海が望めますが、海のパノラマの魅力を最大限に引き出したテラス席がおすすめです。テラスの色は、瀬戸内海のブルーを強調するように、対照的な土に近い赤色になっています。
料理は、地元の漁師さんが届けてくれるとれたての魚や、農家さんが育てた野菜を使ったイタリアン。レストラン横にはスタッフの方たちが手入れをする、ハーブガーデンや菜園、果樹園があり、それらも料理に彩りを添えます。ランチ、ディナーともにアラカルトで提供。ランチには、瀬戸内海の魚介を使ったパスタが人気です。
「瀬戸内海の素材をできる限り使って、形がわかるものは崩し過ぎず。豪快さと繊細さのバランスを大事にしています」とシェフ。この日はディナーメニューから前菜に「鮮魚のカルパッチョ」（1,500円）と「原木しいたけと半熟たまご」（1,400円）を選びました。鯛のカルパッチョは、あっさりとした味わいでハーブや野菜との食感の違いが楽しめます。肉厚の原木しいたけは、卵と混ぜていただくと、しいたけの香りで口の中がいっぱいに。メインは「オリーブ牛のビステッカ」（4,000円）と「ホウボウのアクアパッツア」（3,800円）。柔らかくジューシーな牛肉は、添えられた豊島産の塩と生胡椒の塩漬けで。貝類や野菜のうま味と一緒にいただくホウボウもボリューム満点。瀬戸内の海を見ながら、ワインと一緒に楽しむのにぴったりです。（※お酒は20歳になってから。メニューの価格は素材や大きさによって異なります。）
海のレストラン
電話／0879-68-3677
住所／香川県小豆郡土庄町豊島家浦525-1
交通／家浦港から徒歩約15分
営業時間／11:00～15:30、18:00～21:00（夜は月曜休み、要予約）
休み／火・水曜（詳細はHPを確認）
観光MAPには載っていない
迷路のような路地をガイドとお散歩
朝の気持ちのいい時間に「とくと」の周辺を散歩するツアーがあります。ひとりでは迷子になってしまいそうな路地をガイドと一緒に歩けば、住人になったような気分に。地元の人とあいさつを交わすのも楽しい時間です。
まずは「とくと」から山の方へ。「とくと」よりさらに上に登るので、家浦の町並みを一望できます。近くにはため池があり「豊島には川はほとんどないので、雨水をため池で貯水します。なのであちこちにため池はあるんですよ」とガイドのまゆさんが解説してくれます。豊島には四国の八十八カ所札所巡りのようなミニ札所があること、また、豊島の中でも石垣の積み方が家浦と唐櫃では違うことなど、島人ならではの土地の話は興味深いものばかりです。
「とくと」に戻ったら、リラックスタイムです。途中の大師堂で汲んできた地元の人たちが日常的に使っているおいしい湧き水で、ツアーオリジナル焙煎「とくとブレンド」のコーヒーをいただきます。お散歩後にぴったりのすっきりとした味わいに、ほっとひと息。今後はツアー限定のケーキも用意する予定だそう。朝のひとときが有意義な時間になります。
てしまモーニングお散歩ツアー
電話／080-8161-3526（とくと）
集合場所／「とくと」または宿にお迎え
体験時間／7:00～11:00のうち約2時間。完全予約制
料金／2,500円（コーヒーまたはお茶付き）
地元漁師さんと協力して
絶景ビーチで地引網体験
瀬戸内の海の豊かさを実感できる「地引網」に挑戦です。祖父の代から漁師をしている、島一番の腕利き生田さんの船頭で、大漁を狙います。地引網はその日に一番魚が集まるビーチで行います。生田さんは小学生のころから海に出て、おじいさんの漁の様子を見ながら、その日その日で魚がいる場所を学んできたそうです。そんな生田さんを中心に、島の有志の方々と一緒に網を引きます。
一般的に地引網は30人以上で引きますが、豊島では2名から体験ができるようにミニ地引網を採用しています。一年を通じて狙うのは鯛。秋には、スズキやチヌ、タナゴ、ハネ、ベラなども網に入るそう。地引網で使う網も生田さんの自作です。「みんなで漁をして、鯛を食べてもらいたい。そして豊島の食の豊かさ、美しさをアピールしたい」と生田さん。網を引くのは思った以上に力がいるものですが、網の中に魚を見つけたときの嬉しさは格別です。
魚は持ち帰ることもできますが、その場で調理して食べることも可能です。炭火で焼いた魚は、柔らかくフワフワ。羽釜で炊いたごはんやお母さんお手製の惣菜なども用意され、ビーチサイドで豪華なランチタイムとなります。「島に来てくれた人が喜んでくれたらいいし、そのために自分たちができることをしたい。豊島にはそんなお接待をする文化が昔からあって大事にしているんだよ」とみなさんが話してくれました。鳥や虫の声で季節を感じるのが島の暮らし。都会にはない音や香りを満喫しに出かけましょう。
てしまの漁師さんと地引網体験
電話／080-8161-3526（とくと）
開催場所／日によって異なる
体験時間／10:00～16:00のうち1時間30分（食事なし）～3時間（食事付き）
休み／完全予約制
料金／2～10名66,000円（食事なし）、110,000円（食事付き）
宿泊施設の紹介
家浦の港や町並みを一望する高台にある古民家宿。80年ほど前に建てられた日本家屋をリノベーションしており、本館と別館の2棟をそれぞれ1棟貸しで利用できます。毎日手入れをしている枯山水をベースにした庭も見事です。周辺を散策したり、裏で飼育されているヤギや鶏と触れ合ったりと、ゆったりとした豊島ならではの時間を体感できます。
とくと
| 電話 | 096-234-8871 |
|---|---|
| 住所 | 香川県小豆郡土庄町豊島家浦1577-2 |
| 交通 | 家浦港から徒歩約10分 |
| チェックイン | 15:00～18:00 |
| チェックアウト | 10:00 |
| 宿泊料 | 本館1泊1棟35,000円＋1名につき5,000円（税込み／朝食付き） 別館1泊1棟25,000円＋1名につき5,000円（税込み／朝食付き） |
※掲載している観光情報は2024年6月時点の情報です。
※掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
※店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
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