築約200年の「BYAKU Narai」で、奈良井宿の歴史を感じる非日常な滞在を

長野県の奈良井宿に佇む「BYAKU Narai」は、歴史的建造物を再生した宿泊施設や、ローカル・ガストロノミーレストラン、バー、温浴施設などを備えた複合宿泊施設。隣接して再生した酒蔵「suginomori brewery」もあります。2021年の開業時から、新たに2棟を改修し「プライベートサウナ付きの一棟貸し古民家」などの4室を増床して2023年8月にリニューアルオープンしました。今回は、約200年建物で体験する非日常な宿泊記をご紹介します。

 

 

奈良井宿に佇む「BYAKU Narai」

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

長野県塩尻市の南側に位置する奈良井宿。江戸と京都をつなぐ中山道の木曽十一宿に数えられた旧宿場町は、今もなお当時の面影を色濃く残し、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。

 

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奈良井宿は日本最長の宿場町。江戸時代には多くの旅人で栄え、「奈良井千軒」と讃えられていました。JR新宿駅からJR奈良井宿までのアクセスは、高速バスで約3時間50分。電車の場合は中央本線「特急あずさ」を利用すると塩尻駅まで2時間40分、中央本線・普通電車に乗り換えて約25分、乗り換え時間を合わせて約3時間30分で到着します。

 

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奈良井駅から徒歩約5分の場所にある「BYAKU Narai」は、公民連携の「奈良井宿古民家群活用プロジェクト」によって誕生した複合宿泊施設です。奈良井宿のシンボルでもあった創業1793年の「杉の森酒造」をはじめ、「豊飯豊衣民宿」「三澤漆器店」「寺前住居」といった、4棟をリノベーション。宿泊施設の他に、レストラン・バー・温浴施設・ギャラリーを備えて開業しました。

 

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歴史的建造物を再生するにあたり、それぞれの建物に新しい名前をつけるのではなく、江戸時代から伝わる建物の屋号(やごう)へと戻すことに。
現在は、本館の「歳吉屋(としよしや)」、「上原屋(うえはらや)」、「島茂屋(しまもや)」、「かね上屋(かみや)」と呼ばれる4棟から成る16室で構成されています。

 

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チェックインは、本館の「歳吉屋」で。築200年の元「杉の森酒造」母屋を生かした建物は、奈良井宿の典型的な建築様式。2階が少しせり出した「出梁(だしばり)造り」、趣のある窓の格子、白漆喰(しっくい)の袖うだつなどが施された外観が特徴です。

 

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のれんをくぐると、そこは宿泊施設のフロントを兼ねたラウンジ「玄 GEN」。「杉の森酒造」の歴史を物語る品々が、フロントを彩ります。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を
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杉の森酒造は惜しまれつつ2012年に蔵を一度閉じましたが、2021年に「suginomori brewery」として隣接する酒蔵に再生。創業時から受け継がれてきた「硬度25以下」の山水を原料としながらも、酒蔵製造面積を以前の約1/3のサイズに最適化し、設備も一新。杜氏(とうじ)や番頭も新たに、日本一標高が高い蔵元で醸造される日本酒「narai(ナライ)」を製造販売しています。

 

個性的で多様な客室

「かね上屋」のプライベートサウナ付き一棟貸切客室「百十六」

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2023年に新しく誕生した客室は、「かね上屋」1部屋と「島茂屋」3部屋。まずは、「かね上屋」の客室からご紹介しましょう。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

本館からすぐの場所にある「かね上屋」は、江戸時代から寺の参道脇に200年以上佇み、住職や僧官などの寺関係者が代々暮らしてきた寺前でした。2023年8月に新しい客室「百十六」として、一棟貸切サウナ付きの特別客室にリノベーションされました。

 

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広さ65平米の1棟貸切客室には、キングベッドルーム、リビング、表通りに面した2階の和室、プライペートサウナ、半露天風呂が用意されており、4名まで宿泊できます。悠久の時や伝統を感じる柱や梁はなるべく生かし、快適に過ごせるモダンな客室へと生まれ変わりました。

 

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ベッドルームの奥には広々としたプライベートサウナを備えており、セルフロウリュも楽しめます。

 

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山の湧き水を使用した水風呂と半露天風呂、2つも湯船を備えています。屋外でありながらプライバシーもしっかり壁で守られているので、お寺の石垣を眺めながら外気浴もできます。

 

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BYAKUならではの3種の天然入浴剤にも注目です。1つ目は「suginomori brewery」の生酒粕。2つ目は奈良井宿にも直営店を持つ「日野製薬」の「御嶽山入浴剤」。3つ目は「木曽五木」。

 

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優雅なくつろぎ時間が楽しめる、ワイヤレススピーカーや電気ポットも完備。豆から手動でひく本格的ドリップコーヒーや宇治茶もいただけます。木曽漆器のコーヒー茶碗やこだわりの茶器でいただく一杯に、心が癒やされるでしょう。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

お部屋にあるビール、サイダー、ミネラルウォーター、お茶はすべて無料。本館の「島茂屋」にも、おんたけ茶、信州りんごジュースや信州ぶどうジュースなどのフリードリンクが置かれており、自由に客室に持ち帰って飲むこともできます。サウナや入浴後の飲み物に、困ることはありません。

 

ゆったりとくつろげる「島茂屋」の客室「百十三」

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

本館「歳吉屋」より徒歩約2分の場所にある「島茂屋」は、小白木問屋として財を成した名家でした。近年は「三澤漆器店」として訪れる人々に木曽漆器の魅力を伝えてきましたが、2023年にリニューアルされて「百十三」、「百十四」、「百十五」の3つの客室に生まれ変わりました。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

「島茂屋」の表2階に位置する客室「百十三」は、漆器店の大切な客人を持て成す贅沢な造りの御座敷でした。書院造の端正な床の間が、歴史を忍ばせます。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を
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広さは約65平米、定員は2〜3名。和室8畳のリビングダイニングと隣接するキングベッドルーム、縁側、露天風呂、シャワールーム、水回りという間取りです。奈良井宿を行き交う人々を見下ろせる窓に情緒を感じます。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

木曽の山々を望む露天風呂テラスも、魅力のひとつ。昼間は太陽の光に照らされた美しい木々を、夜は星空を望めます。

 

築150年超の土蔵を生かした客室「百十五」

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3つ目の「百十五」は、奈良井宿でも類まれな大きさを誇る築150年超の土蔵を生かした客室。広さ約89平米の大空間です。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を
BYAKU Narai

1階は開放的なリビングダイニングと水回り、メゾネット式の2階はダブルベッドが2台置かれたベッドルーム。百五十年以上この家の歴史を見守ってきた、「島茂屋」を象徴する太い小屋梁も必見です。

 

また島茂屋の宿泊者は、夕食をお部屋でいただけるのも特徴です。プライベートな空間でゆっくりと夜を過ごせます。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

坪庭を配した露天風呂にゆっくり入れば、非日常感を存分に味わえることでしょう。

 

 

木曽の山々と庭園を望む本館・歳吉屋「百四」の客室

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

新たに誕生したどの客室も、奈良井宿の伝統的な建築や約200年以上も存続する建材を生かしつつ、現代的な素材や意匠を施しています。すべての客室はデザインや間取りが異なり、美しさと快適さを兼ね備えた空間へと再生されています。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

中でも人気なのは、「歳吉屋」の「百四」の客室で、広々とした庭園を望む縁側がしつらえられています。茶室だった空間は半露天風呂へと趣を変え、木曽の山々や美しい庭園を望みながら時がゆっくりと流れていくのを楽しめます。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

お一人で宿泊できるのもうれしいポイント。BYAKU Naraiは、歴史ある建物の中に身を置くことで、これまで建物が歩んできた歴史と幾つもの物語を体感できます。

 

山の湧き水につかる温浴施設「山泉 SAN-SEN」 

元酒蔵の一角には、温浴施設「山泉(さんせん)」が作られています。日本酒の仕込み水にも使われている、清らかな湧き水につかることができる温浴施設です。内装にはヒノキなどの木曽五木がふんだんに使われており、まるで森林浴しているかのような心地良さ。宿泊者は無料で「山泉」を利用できます。

 

地域の風土・文化を味わう食体験

レストラン「嵓」でディナー

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

夜も更けてディナーの時間です。BYAKU Naraiのレストラン「嵓(くら)」は、東京・外苑前「傅(でん)」店主・長谷川在佑氏が開業期のメニュー監修をし、BYAKU Narai 総料理長の友森隆司氏が腕をふるうローカル・ガストロノミーレストラン。「傅」は「ミシュランガイド東京」2つ星、「アジアのベストレストラン50」1位など、数々の賞に輝いたレストランです。

 

「杉の森酒造」の酒造りをする「蔵」として活気にあふれていた空間の一部を、レストラン「嵓(くら)」として再生。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

酒蔵とレストランは大きなガラスの仕切り1枚で隣接しており、普段見ることのできない酒蔵のタンクを間近に眺められます。食事と一緒に、この酒蔵で作られた日本酒「narai」を味わうのもおすすめです。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

ディナーでは奈良井の地域に根差した新しい食体験を表現。新しい郷土料理と、日本酒やワインなど地元のお酒をペアリングで。

 

1品目「清香」は、季節野菜のすり流し。長野の自然の中で培われた野菜の風味を堪能できます。その季節の最もおいしい素材の香りと、木曽漆器の温かみと口当たりを楽しめるように、お椀から直接いただきます。

 

BYAKU Narai

2品目の「暮らし」は、長野県の代表的な郷土食である「おやき」を、嵓の解釈でアレンジした一品。中の具材は季節に応じて変化します。モチモチの皮に旬の味わいがギュッと凝縮されたメニュー。

 

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3品目の「水明」は、長野県の名産「シナノユキマス」のお造り。他県ではほとんど味わえない幻の魚です。

 

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4皿目の「伝承」は、海のないこの地で古くから滋養強壮のためのごちそうとして親しまれてきた「鯉」を主材料としたメニュー。信州の清らかな水で育てられているので、鯉特有のくさみは全くなく、深いうまみが口の中に広がります。

 

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5皿目の「里山」は、山で採れた季節野菜や野草の嵓流炊き合わせ。煮る、生、乾燥など、さまざまな調理方法で仕上げていて、食材ごとに異なる食感と、甘さや苦さなどの変化に富んだ味を楽しめます。人参のピューレと味噌パウダーも秀逸です。

 

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6皿目の「嵓シシ」は、嵓おすすめの季節の肉料理。この日のメニューは、信州プレミアム牛を「含め煮」で調理したもの。低温で何回かに分けて絶妙な加減で火を入れ、しっとりと仕上げています。口の中でとろけるような柔らかさと、信州牛の肉本来の力強い味を堪能できます。

 

7皿目の「饗(もてなし)」は、土鍋の炊き込みご飯。奈良井川につながる木曽山脈水系と同じ湧水で育てた、無肥料自然栽培のお米と、その季節に最もおいしい食材を合わせて炊き上げます。

元酒蔵のレストランでいただく、地元食材の魅力を最大限に活かした贅沢ディナーに、おなかも心も満たされます。

 

 

食後はTasting Bar「杉の森」で

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

最後はバーで夜のひと時を過ごすのもおすすめです。同敷地内で醸造している「suginomori brewery」の日本酒「narai」も味わえます。時季により、さまざまなテイストの「narai」をご用意。ここでしか味わえない限定のにも出会えるかもしれません。

 

BYAKU Narai

他にも、世界的に評価の高い市内の16ワイナリーから厳選した「塩尻ワイン」や、県下で製造されているシングルモルトウイスキー、クラフトジン、クラフトビール、奈良井の恵みが詰まったオリジナルの果実酒など、多種多様な地産のドリンクを取りそろえています。

 

 

地元のお母さんが作る朝食

BYAKU Narai

朝食も本館のレストラン「嵓 kura」で。メニューは、地元のお母さんが作るお惣菜とご飯、味噌汁、香の物。この日のお惣菜は、春菊の酢味噌和えや「すんき」、木曽平川の野口豆腐店の豆腐に自家製しょうゆ麹、川中島納豆、ふわふわのだし巻き卵と信州サーモンの焼き魚など。

 

「すんき」は、長野県の木曽地方に古くから伝わる塩を使わずに赤カブの葉を乳酸菌発酵させた漬け物。カツオの削りブシを加えて、アレンジしています。朝食は伝統の木曽漆器でいただける、贅沢な時間。懐かしさを感じる優しい味付けに、心が温まります。

 

百の物語に出会う特別な宿泊体験を

BYAKU Narai

BYAKU Naraiには、日々の小さな季節の移ろい、歴史が息づく建物、江戸期から親しまれる工芸の美しさなど、普段の生活ではつい見逃してしまうような気付きが隠れています。

 

「奈良井宿での旅がより豊かになるように、町や建物に眠る百の体験や物語を体感できる宿づくりをしています」と、総支配人の高山恭平氏。百の体験をカードにつづった「百札」が、施設内の至る所にさりげなく置かれています。百札に書かれているのは、「夜の宿場町 静寂を楽しむ 特別な時間」、「水の音に心を研ぎ澄ませる」など、気付きを与えてくれる言葉たち。

 

築約200年の「BYAKU NARAI」で、奈良井宿の歴史を感じながら非日常な滞在を

宿の魅力や、食事のメニューを丁寧に説明してくれる、スタッフとの会話もこの宿の魅力です。「BYAKU Narai」で、あなたも百の物語に思いを馳せる、特別な宿泊体験をしてみてはいかがでしょうか?

 

BYAKU Narai

住所
長野県塩尻市大字奈良井551-3
アクセス
JR中央本線奈良井駅から徒歩約5分、長野自動車道・塩尻ICより約35分、中央自動車道・伊那ICより約40分
駐車場
あり 無料 要予約
チェックイン
15:00 (最終チェックイン:19:00)
チェックアウト
11:00
総部屋数
16室

 

撮影・取材・文/北川りさ

 

 

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※この記事は楽天トラベルガイドによって取材・作成されたものです。

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