工芸品に囲まれて
伝統建築に宿泊
Craft Inn 手〔té〕(福岡県八女市)
脈々と受け継がれてきた
手仕事の繊細さと
地域文化の豊かさを感じて
福岡県南部に位置する八女市は肥沃な大地と豊かな自然に恵まれ、八女茶をはじめとする農作物の生産が盛んな町です。八女市南東に流れる矢部川周辺で和紙の原料となる楮(こうぞ)がとれ、また、町を取り囲むように流れる筑後川が物流を担ったことから、昔から手漉き和紙、提灯、久留米絣、桶といった多種多様な手工芸(クラフト)作りが活発に行われてきました。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている八女福島をそぞろ歩くと、もの作りの気配や歴史の香りが漂います。
使う人の生活や心に寄り添ってくれる
クラフトのしなやかな魅力を体感
クラフトをテーマに、手仕事の美しさや温かみ、その魅力を多角的に伝えてくれる宿があります。明治期と昭和初期の歴史的建造物をリノベーションした「Craft Inn 手〔té〕(クラフト イン テ)」。用意された2つの部屋はそれぞれ「藍染め」と「竹細工」がコンセプトになっており、それぞれ職人たちが持てる技術を余すことなく注ぎ込んだ繊細なクラフトたちが出迎えてくれます。
フロントで印象的なのは、頭上に浮かぶ幻想的な照明。大小さまざまな提灯をカットし、ランプシェードにアレンジしたもので、懐かしくも新しい、不思議な空間を生み出しています。テーブルは筑後川の石を使って、左官に作ってもらったという特注品。八女のクラフト文化発展へと寄与した筑後川の歴史が感じられます。
藍染めをテーマにした「藍の部屋」では、久留米絣の織元「藍染絣工房」が大胆に織り上げたタペストリーが目を引きます。リネンだけでなく居間の木のテーブルまで藍染めだというから驚き。「ジャパン・ブルー」と称賛された、青よりも一段と深い藍の色が心を落ち着かせてくれます。
今では全国的にも数少なくなった木桶職人に九州の杉で作られた風呂桶です。杉の保温効果でゆったりと寛ぐことができます。
地元の野菜をふんだんに使った里山の朝ごはん。八女の木桶職人が杉と竹だけで作った桶を利用しています。(写真:藤本幸一郎氏)
「Craft Inn 手〔té〕」では、クラフトにこだわった部屋作りだけでなく、八女市内の工房を巡る街歩きや、久留米絣を体験できるような多彩なクラフトツアーが用意されています。一過性の滞在で終わるのではなく、包括的に八女のクラフトを体感して欲しいという思いの詰まった企画が目白押しです。
Craft Inn 手〔té〕
住所/福岡県八女市本町120-1
交通/九州自動車道八女I Cから車で約7分
チェックイン/15:00〜18:00
チェックアウト/10:00
宿泊料/1泊1名26,700円〜(税込み/朝食付き/大人2名1室利用時)
「染め」と「織り」で多彩な模様を生み出す久留米絣
お気に入りの柄でストール作り
せっかく八女に来たので、手仕事の凄みが感じられる体験へ。「Craft Inn 手〔té〕」を介すると、久留米絣の織元「下川織物」の工場見学とストール作りに参加することができます。「下川織物」は伝統柄の久留米絣を作り続けるだけでなく、海外のトップブランドとコラボしたり、ラグジュアリーホテルの内装に使われるものをデザインしたりと、革新的に挑戦し続ける織元。時代に合わせて柔軟に変化する久留米絣の大きな可能性に気付かされます。
工場の扉を開けると、ミシンの音を何倍にも拡大したような大きな音に驚かされます。ズラリと並ぶのは20台ほどの動力織機。糸が途切れないよう、また、織機に不具合がないよう、目を光らせて微調整を加える職人たちが、その間を通り抜けていきます。
久留米絣は糸の束をあらかじめ染めておき、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を編み上げて複雑な模様を表現します。模様といってもプリントのようにくっきりとした絵柄が現れるわけではありません。「染め」で表現される模様の輪郭は一部が掠れたり、じんわりと揺らいだりしています。しかしこの“ゆるさ”の中にあるほのぼのとした味わいこそが久留米絣の大きな魅力です。
工場見学の後は、好きな柄の生地を選んでストール作りに挑戦。用意されている久留米絣の生地は300種類以上と目移りしてしまうほどです。選んだ生地を適切な長さにカットしてもらったら、耳を適量ハサミで切り、緯糸を丁寧に抜いていきます。この箇所がストールのフリンジになります。フリンジはストレートのままでも、小さな束にして結んでもOK。自分好みの一枚を完成させましょう。
下川織物
電話/0943-22-2427
住所/福岡県八女市津江1111-2
交通/九州自動車道八女I Cから車で約12分
営業時間/平日14:00~16:00の2時間、土日10:00~12:00の2時間(ストール作り体験)
定休日/不定休
料金/下川織物見学と久留米絣ストール作り体験1人7,800円
※予約はCraft Inn 手〔té〕から(Craft Inn 手〔té〕予約時に要事前確認)
暮らすように過ごして
八女の豊かな日常に触れる
歴史の風情ただよう町並み、昔からの生業を継承して元気よく働く職人たち、おいしいお茶をすすりながら楽しくおしゃべりしている町の人々…何でもないようでとても豊かな八女の暮らし。その日常に触れ、街に溶け込むように旅をして欲しいという思いから生まれたのが2022年8月にオープンした宿「RITA八女福島」です。
ここは山産物の商屋だった築100年以上の歴史的建物を改築、再生した宿。釘を使わずに元の建材と新しい建材に凹凸を作ってはめ込む「継手」という伝統工法を多用するなど、大工技術の高さや美しさを目にすることができます。
チェックインの際に、フロントで旅の目的や興味のあることを伝えると、おいしいお茶屋や酒屋、体験スポットなどを教えてもらえます。地域の人たちとの交流が旅に加わると、旅の記憶はいっそう鮮やかなものに。
宿泊客から好評なのが、部屋で楽しめる「利き茶体験」のサービス。3種類のシングルオリジンの八女茶「つゆひかり」「おくゆたか」「さきみどり」を飲み比べできます。甘み、苦味、旨みといった味わいがそれぞれ全く異なることにびっくり。余ったお茶は好みの味にブレンドし、おみやげとして持ち帰ることもできます。
部屋のしつらえだけでなく、調度品やアート作品も注目して欲しいポイント。「巴(ともえ)」の部屋2階には、提灯屋「伊藤権次郎商店」と久留米絣工房「藍森山」の合作、久留米絣提灯が。和紙造りの提灯とは一味違った味わいのある灯りが部屋を温かく包みます。
広々とした「九城(くき)」の部屋は土と木の優しい香りが心を穏やかにします。季節によって表情を変える2つの中庭も備え、眺めている時間も贅沢です。さらに、桶職人が作った角の丸い檜風呂もあり、旅の疲れを流してくれます。酒粕や竹炭で作られた洗顔ソープなど、こだわりのアメニティもうれしいポイントです。
朝食は八女地域の食材を豊富に使用しており健康的なメニューです。伝統食をベースに彩り豊かに仕立てられ、ひと口すすると身も心もあたたまる八女の手作り味噌のお汁物、旬野菜で彩られる小鉢、はじめて食べる八女地域ならではの伝統食など、懐かしさと新しい出会いに心が動く朝食を体験いただけます。八女の暮らしの知恵が詰まった朝食時間をお楽しみください。
RITA八女福島
住所/福岡県八女市本町13-1
交通/九州自動車道八女I Cから車で約8分
チェックイン/15:00〜18:00
チェックアウト/10:00
宿泊料/1泊1名29,060円〜(税込み/朝食付き/大人2名1室利用時)
とっておきの八女茶を
歴史的建物のカフェでいただく
日本有数の高級茶の名産地としても知られている八女。観光客と地域住民の交流の場所として活用されている「八女市横町町家交流館」内にある「八女茶カフェ」では、八女茶の歴史や栽培方法などが詳しく学べる上、おいしい緑茶の淹れ方も教えてもらえます。
造り酒屋だった江戸末期の建物をリノベーションしたこの施設では、八女福島の町並みの様子や歴史などをパネルで詳しく紹介。町家にも「職人型」と「商人型」があって、窓の数や形状が違うなど、それぞれの特徴を町歩き前に見ておくと理解が深まります。
「八女茶カフェ」の「八女茶伝統本玉露」はお菓子付き。お茶は1煎淹れて終わりではなく、3煎ほど味わえます。1煎目はまろやかな甘みを、2煎目は甘さの後にやってくるすっきりとした渋味、3煎目はさっぱりとした味や香りを堪能。湯呑みと蓋の間から啜るように飲むと、お茶の味や香りがダイレクトに伝わってきます。また飲み終わった後の残った茶葉をポン酢に付けて食べることも可能。丁寧に心を込めて栽培された高級茶葉は食べてもおいしいのです。
八女茶カフェ(八女市横町町家交流館内)
電話/0943-23-4311
住所/福岡県八女市本町94
交通/九州自動車道八女I Cから車で約8分
営業時間/10:00〜17:00
定休日/月曜(祝日の場合は翌日)
料金/八女伝統本玉露体験(和菓子付き)1人1,100円
クラフトの「作り手」と
「使い手」が繋がる場所
福岡県内に4店舗ある「うなぎの寝床」は伝統工芸品を通し、地域文化の魅力を発信しているスポット。その土地らしさがあるもの、ストーリー性があるもの、作り手の思いが伝わるものなどを、福岡県を中心とした日本全国からセレクトし、使い手(生活者)に届けています。どれも日常に寄り添い、彩りを与えてくれるものばかり。実際に手に取ればその温もりが感じられます。中でも「旧寺崎邸」と「旧丸林本家」は、八女福島の地域性が感じられる店づくりでも楽しめるスポットです。
「うなぎの寝床(旧寺崎邸)」では、全国の伝統工芸品を扱っています。かつて商家だった建物を改築した「旧寺崎邸」には食器や調理器具といった台所用品や、生活雑貨、玩具などが並びます。実際に使いたくなるようなワクワクするものがたくさんあり、時間を忘れて見入ってしまいます。
また、「うなぎの寝床(旧寺崎邸)」から徒歩3分ほどの場所にある「うなぎの寝床(旧丸林本家)」では、作業着モンペを現代風にアレンジした200種類以上の「MONPE(9,900円~)」を販売。サイズはS 、M、 Lの3つで、種類によっては2L、3Lといった大きなサイズや子ども用のものも。形はシルエットがスタイリッシュな「現代風」と、昔ながらのゆったりとした「ファーマーズ」の2種類を展開しています。久留米絣の布地のほか、兵庫県の播州織、鹿児島県奄美の泥染、滋賀県の高島ちぢみなど種類も豊富に揃っています。生地によって肌触りや履き心地も変わるので、履き比べをしながら自分好みの一枚を見つけましょう。
うなぎの寝床
電話/0943-24-8021(旧寺崎邸)、0943-22-3699(旧丸林本家)
住所/福岡県八女市本町327(旧寺崎邸)、福岡県八女市本町267(旧丸林本家)
交通/九州自動車道八女I Cから車で約7分(共通)
営業時間/11:00〜17:00(共通)
定休日/火・水曜(祝日の場合営業)(共通)
豊かな大地で育まれた食材が
日々の健康と元気を与えてくれる
「八女サヘホ」では“食は体を作るもの”という考えのもと、薬膳の考え方や要素を取り入れた「楽ZEN」というスタイルの料理を提供しています。厳選した季節の食材をたっぷりと使用し、どのお皿の料理も彩り鮮やか。
店内はテーブル16席、カウンター4席。築90年の町屋をリノベーションしており、吊るしランプがどこか懐かしく優しい雰囲気を醸し出しています。
店主の中村忠和さんは2017年に関東からこの地に移住してきました。「これまで八女を訪れる機会が度々あったのですが、その度に“おかえり”と迎えてくれる八女の人々の優しさに惹かれて」とにっこり。
八女郡広川町の農薬不使用の野菜や、八女市上陽町でお茶やハーブを餌にして育てられた旨みの強い豚肉、筑後市でのびのびと育てられた牛肉など、メニューのほとんどは地元で作られた食材が使用されています。県産のオーガニック小麦粉と季節の野菜で作ったスイーツ類も人気。日常的に食べて欲しいと、昼定食(650円。写真はお茶とスイーツのセット+350円)など、値段もリーズナブル。モリモリ食べて体の内側から健康になりましょう。
八女サヘホ
電話/0943-41-0103
住所/福岡県八女市本町3-1
交通/九州自動車道八女I Cから車で約7分
営業時間/12:00〜13:30、15:00〜18:00(カフェ、月・木~土曜)、18:00〜21:30(予約のみ)
定休日/日曜、火・水曜ランチとカフェタイム、不定休あり
宿泊施設の紹介
歴史深い八女福島の街並みを散策したら、八女の伝統ある手仕事に触れる宿へ。藍染め、竹細工のコンセプトを持つ部屋で、匠の技に酔いしれることができます。八女和紙や名尾和紙を使ったオーナメントや版画のほか、クラフトを中心に集められた充実のライブラリースペース。用の美に彩られたクラフトの世界へと誘います。
Craft Inn 手〔té〕
住所 | 福岡県八女市本町120-1 |
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交通 | 九州自動車道八女I Cから車で約7分 |
チェックイン | 15:00〜18:00 |
チェックアウト | 10:00 |
宿泊料 | 1泊1名26,700円〜(税込み/朝食付き/大人2名1室利用時) |
八女福島の文化に溶け込むような旅をするなら、築100年以上の歴史的建物を改築した宿「RITA八女福島」へ。この土地が持つ風土と文化を伝えてくれます。釘を使わない「継手」という伝統工法の建物、味わいある灯りを生み出す久留米絣提灯、部屋で楽しめる八女茶の「利き茶体験」、そして薬膳の考え方を取り入れた朝食。心も体も満たされる滞在が楽しめます。
RITA八女福島
住所 | 福岡県八女市本町13-1 |
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交通 | 九州自動車道八女I Cから車で約8分 |
チェックイン | 15:00〜18:00 |
チェックアウト | 10:00 |
宿泊料 | 1泊1名29,060円〜(税込み/朝食付き/大人2名1室利用時) |
※掲載している観光情報は2024年6月時点の情報です。
※掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
※店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
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