義経北行伝説

義経北行伝説天に上る波動が写真に捉えられるともいう黒森神社。さて、あなたは何を感じますか？

義経北行伝説
伝説と現実の不思議で楽しいファンタジー

東北、特に岩手は伝説や民話に歴史のロマンなど
魅力的なファンタジーに溢れています。
宮沢賢治が描く世界・花巻、
かっぱや座敷わらしをはじめとする民話の世界・遠野に
早池峰山の伝承など、わくわくする冒険話から
ちょっと背筋が寒くなるような話まで
岩手各地に数多くの物語が残されています。
なかでも歴史ミステリーファンを引き寄せるのが
「義経北行伝説」でしょう。
かいつまんでアウトラインを紹介すると、
史実では源義経は奥州・平泉にて兄の頼朝の軍勢に破れ
自刃して果てたとされていますが
実はそこから逃れて、北へ逃れ、北海道に渡り…。
一説にはさらにモンゴルに渡りチンギス＝ハーンになった
というにわかには信じられないけれど
ちょっと楽しいストーリーも。
義経が名乗っていた判官から生まれた
「判官びいき」という言葉があるように
日本人はどこか弱い立場だけれど魅力的な人に惹かれて
応援する風潮があります。
しかも、義経が史実に刻まれている年数は
10年にも満たないもので
正確であろうという肖像画もあまり残されておらず
鞍馬寺、弁慶との出会い、合戦でのヒーロー的な活躍など
その存在自体がアニメや特撮のようにファンタジック。
この説も、そんな判官びいきなのか、
信じる、というよりも、信じてもいいなあ、
というお話なのかもしれません。

義経北行伝説今も静かな時間が流れる笛吹峠。ここから本格的な伝説の旅路のスタート。

さて、真偽のほどは定かではありませんが、
確かに義経主従に由縁のある史跡、寺社が
平泉から北海道へと続いています。
そのハイライトでもあるのが岩手・三陸です。
伝説をなぞれば、平泉から北上した義経主従は、
遠野から難所であった笛吹峠を超えて三陸へ。
追っ手、しかも手練の軍勢から逃げる道ですから、
誰もが容易に往来できる場所を選ぶ訳もありません。
困難な道のりを経て内陸の平泉から、
三陸に出た義経主従は、その青くキラキラと光る
海を見て何を思ったでしょうか。
兄・頼朝の挙兵の報を聞き駆けつけた駿河の海、
平家を追って暴れ回った瀬戸内の海、
それとも兄との関係を修復すべく向かった
運命の分かれ道、鎌倉、材木座の海…。
その後、数々の由縁と伝説を残しながら
主従は、三陸を北上していきます。

義経北行伝説宮古市・横山八幡宮の急峻な階段も、牛若丸時代を思い出して軽々駆けたのでしょうか…

この義経主従が歩んだ道は、歴史ファンでなくても
現代の旅人にとっても魅力的なルートです。
海岸線をのんびり車を走らせ、時折、伝説の残る森に入る。
釜石からほど近い大槌町には、
義経が馬をつないで休憩した場所といわれる駒形神社や
野宿した一行を偲んで建てられた宮ノ森判官堂があります。
そこからさらに北へ。宮古市には魅力的な
エピソードをもつ史跡が多く、いずれもパワースポット。
高齢のためこの地にとどまり神主になった
従者が開いたという横山八幡宮、
3年3か月篭って行を行ったという黒森神社には、
不思議な静寂、美しい緑の中の澄み切った池がありました。
森の陰から、主従とともにいた子供が、興味深そうに
私たちを見ているような幻想的な錯覚も…。
さすがフォークロアのふるさと、岩手。
ちょっとドキドキ、森の中で時間を忘れてしっとり、
きらめく海岸線を見ながらのドライブは好きな音楽をかけて、
三陸を義経とともに北上する。
伝説通りであれば、それは敗走ではなく、
豊かな北の大地を利しての再興のチャンスに賭けた
明日へ向かっての胸を張る旅でした。
さあ、そこにあなたが見るのは、どんな風景でしょうか。

義経北行伝説

歴史を辿るならレンタカー乗り捨てプランなどがおすすめ。一部カーナビの目的地表示が正確でなかったり、復興関連工事のため運転に注意が必要な場所もあります。史跡、寺社の石段や森の中での歩行には、路面の凍結などにも十分な注意を。
各地の詳細やここで紹介した以外の史跡については、岩手県県北広域振興局のWEBサイト「義経北行伝説ドライブガイド　義経は北へ」にわかりやくまとめられています。