非日常を体験できる
歴史ある宿坊
宿坊 行学院 覚林坊(山梨県身延町)
由緒ある祈りの地で、
精進料理をいただき
朝のお勤めや
着物体験をする、日本文化三昧の旅
山梨県南部に位置する身延（みのぶ）町は、日蓮宗の総本山、身延山久遠寺（くおんじ）を中心に多くの寺院が点在する、山あいの寺町です。日蓮聖人は身延山の小さな庵に暮らしながら9年間に渡って門弟たちを指導。1281年の11月に身延山久遠寺を創建しました。それから約750年の間、久遠寺は祈りの地としての歴史を歩み続けています。そんな身延町の魅力を体感できるのが、宿坊での滞在。なかでも「覚林坊（かくりんぼう）」は、地元の食材をふんだんに使った創作精進料理や多彩な体験プログラムを楽しめるため、女性客や外国人旅行者にも大人気。非日常の時間を体験しに、身延町の宿坊に出かけてみませんか。
地元の味が満載の創作精進料理と
体験プログラムで宿坊ステイを満喫
身延山久遠寺の周辺には、32の支院（寺）があり、そのうち20ヵ所は宿坊として宿泊者を受け入れています。宿坊と聞くと、簡素で制約が多い宿をイメージしがちですが、実際にはサービスの行き届いた快適な所が多く、お寺の空間を使った体験プログラムを用意している施設も増えてきています。身延山の東谷エリアにある覚林坊もそんな宿坊のひとつです。
覚林坊は正式名称を「行学院 覚林坊」といい、約550年の歴史を持つ寺院。宿泊者向けの客室は20室あり、一間の客室と二間続きの客室があります。廊下と客室が襖で仕切られていること、そしてトイレと風呂が共同なのが、一般的な旅館とは違うところですが、部屋はゆったりと広く清潔で、浴衣や歯ブラシ、タオルも備えられています。画像は本堂の脇にある「テンプルルーム」。窓を開けると覚林坊の歴史ある門を眺められます。
夜には、覚林坊の入口で「お祭り体験」ができます。毎年10月11～13日に行われる「身延山御会式万灯（おえしきまんとう）行列」で、男性が披露する纏（まとい）の舞いを覚林坊の副住職、樋口是皐（ぜこう）さんが再現してくれます。参加者は「団扇太鼓（うちわだいこ）」を渡され、教えられたリズムに沿って太鼓を叩きながら、「そーれ！」と合いの手を入れるのですが、太鼓を打つリズムが2種類あることと、纏の迫力に圧倒されて、つい太鼓のリズムが乱れがちになることも。秋のお祭り本番を見に来たくなる、ワクワクする時間でした。
覚林坊での夕食は、女将、樋口純子さんの創作精進料理「湯葉御前」。湯葉は身延町の名物で、日蓮聖人の身体を気遣った弟子たちが栄養源として湯葉を用意したのが始まりとのこと。そんな伝統の味を、さまざまなアレンジで楽しめます。生湯葉のおさしみ、揚げ湯葉と身延町名産のあけぼの大豆を使った自家製納豆の和え物、トマトと豆乳の湯葉鍋など趣向を凝らした10品は、上品で味わい深いものばかり。カラフルなすももビールや、ご当地ビールの「寺（じ）ビール」と一緒にいただけば、大満足間違いなしです。（※お酒は20歳になってから）
「湯葉体験」を追加すれば、できたての湯葉が食べられます。食事の際、食卓の脇に湯葉を作る機械をセットしてもらえるので、豆乳が温まり、湯葉ができたタイミングですくって食べます。繰り返しすくううちに、おいしい頃合いが分かるようになりますし、団扇で表面をあおいで早く固めるなどコツもつかめます。ポン酢や醤油、ワサビなど、色々な味を試せば、気分はすっかり湯葉名人に。また、湯葉料理を気軽に楽しめるランチ「おてらんち」（2,500円・要予約）もあり、こちらも大人気です。
夜の楽しみはまだまだ続きます。お風呂はワインの名産地、山梨県ならではのワイン風呂。ワインを造る際に出たブドウの搾りかすを粉末にした入浴剤を入れているそうで、他ではなかなか体験できない、鮮やかなルビー色のお湯が楽しめます。お風呂はその日の宿泊状況にもよりますが、宿泊者ごと、あるいはグループごとで予約して利用します。
翌朝は7時過ぎから覚林坊の本堂で朝ヨガを体験。インストラクターは東洋医学を取り入れたヨガを教える松原愛先生。朝のきんと冷えた空気のなか、まずは足の指先をあたため身体をほぐしていきます。松原先生の穏やかな声に合わせてポーズを取るうちに意識が自分の呼吸に向いていくのが分かります。時折、御本尊が安置された須弥壇（しゅみだん）に光が当たる様子が目に入り、手を上に伸ばせば天蓋の飾りにふれそうになるなど、非日常が感じられるお寺でのヨガは、日々のあれこれを忘れ、心身ともにリフレッシュするのにぴったりの体験でした。
覚林坊の廊下には、あでやかな打掛が二十枚近く飾られています。これらは県内の貸衣裳店から提供されたもので、数百万の値が付く貴重なものも多数あるとのこと。覚林坊の宿泊者は、これらの中から好きな着物を選び、写真撮影用に着付けをしてもらうことができます。本来、打掛は小袖や振袖の上に羽織るものですが、この「着物体験」は普段着の上に羽織る簡易的な着付けのため、10分足らずで着物と髪のセットが完了。和の空間の中で、上質な着物に身を包む自分の姿に思わず気分も上がります。
宿坊 行学院 覚林坊
住所／山梨県南巨摩郡身延町身延3510
交通／中部横断自動車道中富ICから約20分、またはJR身延駅から山梨交通バス「身延山行き」で約12分、「身延山」下車徒歩約12分
チェックイン／15:00～17:00
チェックアウト／10:00
宿泊料／1泊1名15,000円～（税込み／夕食朝食付き／2名利用時）
料金／お祭り体験1,000円、湯葉取り体験2,000円、着物体験500円、朝ヨガ体験2,000円（各要予約）
読経が響きわたる朝のお勤めに参加して
熱気に満ちた祈りのパワーを体感
身延町を語るうえで外せないのが日蓮宗の総本山、身延山久遠寺です。身延山は1274年、日蓮聖人により開かれ、2023年6月で開創750年を迎えます。最初の堂宇が西谷に建立されたのは1281年のこと。日蓮聖人は身延山を「吹く風、揺るぐ木草、流れる水の音までもが、御題目に満ちている」と讃えられています。
境内に立つと、御堂ひとつひとつの大きさに驚かされますが、なかでも約1500人を収容できるという本堂は圧巻。天井画の「墨龍」は、日本画の大家、加山又造が11m四方23,000枚の金箔の上に墨で龍を描いたもの。総本山の威容を示す厳かな空間です。
身延山久遠寺では1日3回、お勤めが行われており、朝のお勤め（4～9月は5:30、10～3月は6:00）は一般参拝者も予約不要で参列ができます。お勤めが始まる30分前に境内に行くと、ちょうど鐘撞きが始まったところでした。衣姿の僧侶が、身体を勢いよく後ろに倒して撞木を引き、大鐘を撞いています。ぴんと張りつめた朝の空気を揺るがす鐘の音が、身体に染みわたっていくよう。やがて境内奥の御堂、仏殿から太鼓の音が鳴り、お題目の声が聞こえてきました。本堂に向かってくる僧侶たちの長い行列が見え、声がどんどん近づいてきます。早朝の境内で見る僧侶の行列はこの上なく荘厳な光景でした。
朝のお勤めは本堂から行われます。広々とした本堂で約30人の僧侶が一斉に読経する光景は、朝のお勤めでしか見られないとのこと。僧侶たちは毎月、約1ヵ月かけて法華経一巻から八巻を読み上げるそうですが、一緒に読経する信者も多く、この地で何百年も続く営みであることを実感させられます。参列者は焼香をし、導師の挨拶を聴いて、約40分の本堂でのお勤めが終了となります。
続けて隣の祖師堂に場所を移して約30分のお勤めが行われます。終盤は木鉦（もくしょう）の音が早まり、迫りくるように太鼓が打たれ、その振動が全身に伝わってくるほどの大迫力。線香の香り、絢爛豪華な天蓋などすべてが非日常の空間で、祈りのパワーを体感しました。（本堂内、祖師堂内は許可を得て撮影しています）
身延山久遠寺
電話番号／0556-62-1011
住所／山梨県南巨摩郡身延町身延3567
交通／中部横断自動車道中富ICから約20分、またはJR身延駅から山梨交通バス「身延山行き」で約12分、「身延山」下車徒歩約16分
営業時間／参詣自由（受付は4～9月5:00～17:00、10～3月5:30～17:00）
歴史ある邸宅の庭にたたずむカフェで
身延町の食材たっぷりのヘルシーランチ
身延町でのランチには「農カフェZencho」がおすすめです。山梨県内や身延町の旬の農産物を使った料理が味わえるのはもちろん、フルーツに関しては形の悪さや生産過多により廃棄処分されるものを地元の農家からもらい、コンフィチュールに加工して料理やスイーツに使っています。こうしたフードロスへの取り組みに加えて、ヴィーガン対応メニューがあったり、福祉施設で焼いているパンを使う試みも。メニューを見るだけで、さまざまな優しさと気配りが感じられます。
野菜たっぷりの料理は、思わず笑顔がこぼれる彩りの良さ。山梨の名物ほうとうを使った「ほうとうカルボナーラ」（1,400円）はコシのあるほうとうにソースがよく絡みます。また「Zenchoベジカレー」（1,400円）には、あけぼの大豆をはじめ、玉ネギ、セロリ、ニンジン、トマト、南アルプスのすももソースと地元食材がたっぷり。ごろごろとした野菜の食感とスパイシーさがたまりません。すももの実が入った「丸ごとすももサイダー」（600円）は、ストローで実をほぐせば、鮮やかなピンク色に早変わりする楽しい一品。シュワシュワの泡と甘酸っぱさに満たされます。
「Zencho」という店名は、かつての身延町の名士、望月善長（ぜんちょう）氏にちなんだもの。実はこのカフェは旧望月家邸宅の庭先にあります。築90年の豪邸は長年空き家になっていましたが、美しく改装され、2020年に一棟貸しの宿泊施設「迎賓館えびす屋」として甦りました。「えびす屋」の名は、望月家がかつて営んでいた酒蔵「蛭子屋（えびすや）」から取られています。そして、酒蔵の働き手の休憩場所だった建物が、このカフェに生まれ変わりました。店内には望月家にあった古い急須や湯呑みも飾られており、90年前にもこの場所でお茶を飲み、おしゃべりしていた人たちがいたことを伝えています。美しい日本庭園を見ながら、地元の野菜や果物を味わい、のんびりお茶をいただけば、この場所にじわりと親しみが湧いてきます。
農カフェZencho
電話番号／0556-64-8081
住所／山梨県南巨摩郡身延町身延3955
交通／中部横断自動車道中富ICから約15分、またはJR身延駅から山梨交通バス「身延山行き」で約９分、「元町」下車徒歩すぐ
営業時間／10:00～17:00
定休日／無休
富士山と富士川の壮大なパノラマが広がる
パワースポット身延山の空中散歩
身延山の中腹にある久遠寺と山頂にある奥之院思親閣（おくのいんししんかく）を結ぶのが、身延山ロープウェイです。1号車は仏教で「魔除け」を意味する朱色、2号車は「神秘」を意味する藍色でカラーリングされており、乗り込んだ1号車の天井には、久遠寺本堂の天井画「墨龍」を模した絵がありました。さすがパワースポットにあるロープウェイ。乗るだけでなんだか運気が上がりそうです。
ロープウェイは身延山の急峻を滑るように進み、高低差763mを約7分で結びます。身延山の森は、青い羽根と赤いくちばしを持つ絶滅危惧種の美しい鳥、ブッポウソウの繁殖地として国の天然記念物に指定されています。車内に流れる観光案内に耳を傾けていると、みるみるうちに周辺の山と谷が眼下に広がり、山あいを流れる富士川が見えてきました。ゆるやかに蛇行する富士川が陽射しを浴びて金色に輝く様子はまるで巨大な龍のよう。さらに進むと右手の窓に富士山の山頂が現れます。富士山と対峙する感覚を味わいながら、絶景続きの空中散歩です。
身延山頂（標高1,153m）に立つのが奥之院思親閣です。日蓮聖人は身延山で過ごした9年の間に幾度となく山頂に上り、故郷の房州小湊（現在の千葉県）の方角を眺めては両親や師匠を偲んで過ごされたとの故事にちなんで1665年に建てられました。階段の脇には樹齢700年越えの「日蓮聖人お手植え杉」が4本あり、静かな空間にそびえる堂々たる姿が、身延山の祈りの地としての歴史を伝えています。思親閣を囲むように配された４つの展望台をぐるりとめぐれば、富士山、駿河湾、南アルプス、八ヶ岳などの山並みが望め、天空の寺に来たことを実感できます。
身延山ロープウェイ
電話番号／0556-62-1081
住所／山梨県南巨摩郡身延町身延上の山4226-2
交通／中部横断自動車道中富ICから約20分、またはJR身延駅から山梨交通バス「身延山行き」で約12分、「身延山」下車徒歩約15分
営業時間／9:00(上り始発)～16:40（下り最終) ※上り最終16:00、時期により営業時間の変更あり。HPで要確認
定休日／無休
料金／中学生以上 片道960円・往復1,600円、4歳～小学生 片道500円・往復800円
宿泊施設の紹介
身延山にある「覚林坊」は約550年の歴史を誇る宿坊です。快適な和室が20室用意されており、日本庭園を眺めながら女将の創作精進料理を味わえます。また、湯葉取り体験や朝ヨガ体験などさまざまな体験プログラムもあり、身延の滞在を満喫できます。
宿坊 行学院 覚林坊
| 住所 | 山梨県南巨摩郡身延町身延3510 |
|---|---|
| 交通 | 中部横断自動車道中富ICから約20分、またはJR身延駅から山梨交通バス「身延山行き」で約12分、「身延山」下車徒歩約12分 |
| チェックイン | 15:00～17:00 |
| チェックアウト | 10:00 |
| 宿泊料 | 1泊1名15,000円～（税込み／夕食朝食付き／2名利用時） |
| 料金 | お祭り体験1,000円、湯葉取り体験2,000円、着物体験500円、朝ヨガ体験2,000円（各要予約） |
＜新型コロナウイルス対応＞
- ○スタッフ対応
- 手洗い・うがい・マスク着用
- 定期検温を実施
- ○除菌対応
- 定期的な館内の除菌清掃
- 客室の除菌清掃
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- 定期的な館内の換気
- 定期的な館内共有部分の換気
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