オーベルジュ「神戸北野ホテル」で”世界一の朝食”と”水のフレンチ”を堪能する美食の旅

神戸の海を見下ろす高台に、かつて外国人たちが構えた邸宅が今なお残る北野の異人館街。その坂の途中に、異人館のひとつのように佇むレンガ造りの建築が「神戸北野ホテル」です。コンセプトは「美食を愛で、心豊かなひとときを過ごしていただきたい」。

フレンチの重鎮、ベルナール・ロワゾー氏を師匠にもつ山口浩総支配人・総料理長が手掛けるディナーを堪能し、英国のマナーハウスのような客室で眠りに就き、翌朝は「世界一の朝食」で1日をスタートする――。ここでしか体験できない、幸せなオーベルジュ(宿泊施設付きレストラン)ステイの様子をレポートします。

 

三宮・元町・北野異人館街に好アクセスの「神戸北野ホテル」

神戸北野ホテル

神戸一の繁華街・三宮と、旧居留地などがあり、レトロな雰囲気漂う元町。その2つの街のちょうど中間から、北野の異人館街に続く坂を上がっていくと、神戸北野ホテルがあります。神戸を代表する観光スポットに近く、観光の拠点としてもおすすめです。

ホテルまでは三宮駅からバスでもアクセスできますが、歩いても15分ほど。この日は天気もよかったので、異国情緒を楽しみながら、ぶらぶらと歩いて向かうことに。

神戸北野ホテル リニューアルしたロビー
神戸北野ホテル リニューアルしたロビー
神戸北野ホテル リニューアルしたロビー

レンガ造りの建物を入ると、赤とゴールドを基調にしたロビーが出迎えてくれます。入った瞬間、気持ちが華やぎます。このロビーは、2023年4月にリニューアルしたばかり。至るところにソファが置かれ、気に入ったソファに身を委ねてくつろぎたくなります。

 

英国のマナーハウスのような客室

館内で一番広い客室「プレジデンシャルツイン」

神戸北野ホテル 客室

今回宿泊したのが、一番広い約45平米の客室「プレジデンシャルツイン」。シングルベッドを2台備え、3名まで宿泊可能です。7室あるプレジデンシャルツインのうち1室だけ、ベッドに天蓋が付いています。
(天蓋付きの客室は予約完了後にリクエスト可能。ただし、予約状況により用意できない場合あり)

神戸北野ホテル 客室
神戸北野ホテル 客室

アンティークの家具や壁紙、壁を飾るアートなど、英国のマナーハウスを基調とした客室に、日本を離れて、ヨーロッパを旅している気分に。

神戸北野ホテル 客室

テーブルにはホテルオリジナルの焼き菓子のおもてなしが。さっそく、コーヒーとともに味わい、幸せなオーベルジュステイの幕開けを噛みしめました。

 

「プレジデンシャルツイン」以外の客室タイプも一部、ご紹介しておきましょう。

 

大きなバスタブ&ジェットバス付きの客室「デラックスバスツイン」

神戸北野ホテル 客室

神戸北野ホテルの全30室の客室は、1部屋ごとに趣が異なり、グリーン、ブルー、ピンク、モノトーンのいずれかを基調としています。先ほどの「プレジデンシャルツイン」はグリーン、この客室はピンクがテーマカラー。

神戸北野ホテル 客室
神戸北野ホテル 客室

約34平米で2名まで泊まれる「デラックスバスツイン」は、その名のとおり、バスルームに特徴があります。広々としたバスタブにジェットバス、テレビまで付いて、ラグジュアリーなバスタイムを楽しめます。

 

約30平米の客室「スタンダードツイン」

神戸北野ホテル 客室

こちらは約30平米のスペースに、シングルベッドを2台配した「スタンダードツイン」。2名まで宿泊可能です。インテリアは、白や黒で統一されたモノトーン。

スタンダードツインのほか、スタンダードタイプの客室には、キングベッドを1台配し、2名まで泊まれる約25平米の「スタンダードダブル」もあります。

 

神戸北野ホテル

客室のあるフロアからロビーやレストランがある1階に続くらせん階段も、赤いカーペットと白い壁が印象的。館内には写真を撮りたくなるスポットが多数あります。

 

ディナーはフレンチレストラン「アッシュ」で”水のフレンチ”を堪能

神戸北野ホテル レストラン

ディナーはフレンチレストラン「アッシュ」で。セミフォーマルのドレスコードを設け、利用を10歳以上に限った大人のためのラグジュアリーな空間でフレンチのコースをいただきます。

神戸北野ホテル 山口浩総料理長

総支配人で、総料理長でもある山口浩シェフは、厳格な審査をクリアした世界約65カ国のホテルやレストランが加盟する「ルレ・エ・シャトー」世界料理評議会メンバーに選出されたほか、フランス共和国「農事功労賞 シュバリエ」を受勲、日本の「現代の名工」や「黄綬褒章」も受章しています。

フランス修行時代には、「21世紀のフランス料理界の扉を開けた」と言われるベルナール・ロワゾー氏に師事。生クリームやバターを極力使わず、素材の持ち味を尊重する「キュイジーヌ・ア・ロー」(水の料理)の第一人者であるロワゾー氏。このエスプリが山口シェフの基盤になっていると言い、「アッシュ」でも「水のフレンチ」と称される料理を堪能できます。

神戸北野ホテル ディナー

コースの内容は時期によって変わりますが、前菜からはじまり、「走りの旬 明石の鰆と梨」が登場。山口シェフは兵庫の食材にこだわり、自ら生産者を訪ね歩き、話を聞き、仕入れているそう。この鰆も、神戸の隣に位置する明石市の明石浦で獲れたもの。

鰆の下に隠された梨やアーモンドとともに味わいます。添えられたマリーゴールドと小松菜のサラダが華やか。

神戸北野ホテル ディナー

料理の横には、なぜか香水のビンが置かれています。実はビンに入っているのは、マンゴーのビネガー。お好みで香水のようにシュッシュッとかけると、味と香りの変化を楽しめます。

神戸北野ホテル ディナー

そして、「未利用魚のグラタン仕立て」なるお料理が。「未利用魚(みりようぎょ)」とは、サイズがそろっていない、知名度が低くて人気がない、漁獲量が少なく商品にならないといった理由で、非食用にされてしまったり、低価格でしか評価されない魚のこと。

神戸北野ホテルでは、水産資源や環境を守っていくための活動にも力を入れていて、コースには未利用魚を活用したメニューが取り入れられています。また、未利用魚を適正価格で買い付けることで、漁師の皆さんの生活を守ることにも貢献しています。

神戸北野ホテル ディナー

この日の未利用魚はチヌ(クロダイ)。フランス料理は、新鮮な食材が手に入らなかった内陸で、その鮮度の悪さをソースなどで覆い隠したことが成り立ちとされています。チヌは雑食のため、食べているものによっては臭いが強いこともありますが、「フランス料理なら、それもひとつの個性として活かせる」と山口シェフはおっしゃいます。

グラタンになったチヌを実際に食べてみると、身は柔らかくて真鯛のよう。臭みはまったくありません。

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神戸北野ホテル ディナー

メインには神戸ビーフが登場。一見レアのように見えますが、56℃で7時間ほどかけて、ゆっくりと火を加えたウェルダン。ひと手間もふた手間もかけて作られています。

神戸ビーフの仕入れは、大正15年創業、3代続く老舗「旭屋」に任せているのだとか。それは、「どういうものがほしいかを伝えれば、旭屋さんならプロの目利きで選んでくれるから」。山口シェフも一緒にセリに行ったことがあるそうですが、プロの見る目はまったく違ったそう。肉は肉屋、魚は魚屋、それぞれのプロに任せていると言います。

また、たとえば牛肉の切れ端は捨ててしまわず、ソースに活用するなど、地元の豊かな環境に育まれた素材を大切にしていることがうかがえます。

神戸北野ホテル ディナー

コースを締めくくるデザートに選んだのは、ロワゾー氏のスペシャリテ「砂漠のバラ」。ロワゾー氏が新婚旅行でサハラ砂漠を訪れた際に見つけた、「砂漠のバラ」と呼ばれる砂の結晶にインスピレーションを得て、考案した逸品なのだとか。

薄く焼いたチョコレートのテュイルに、チョコレートのアイスクリームを挟み、砂漠のバラを表現。オレンジの皮ごとピュレにしたソースが、サハラ砂漠の砂を思わせます。チョコレートと甘苦いオレンジのソースが絶妙にとけ合うひと皿です。

神戸北野ホテル ディナー
砂漠のバラ

至極の料理の数々をじっくり堪能しても、胃もたれとは無縁なことに驚きます。「水のフレンチ」の真髄をしっかり体感しました。

 

ディナーの余韻に浸る夜のひととき

神戸北野ホテル 客室

お部屋に戻り、ディナーの余韻に浸りつつ、ゆったりとした夜の時間を満喫。そして、ジェットバスやテレビが付いたバスルームで、のんびりとバスタイムを楽しみました。

神戸北野ホテル 客室

ちなみに、プレジデンシャルツインの客室のなかには、こんなかわいいネコ脚のバスタブのお部屋もあるのだそう。

神戸北野ホテル アメニティ

プレジデンシャルツインはアメニティも特別。フランス生まれのスキンケアブランド「クラランス」のシャンプー、コンディショナー、ボディソープ、ボディローションが用意されています。

神戸北野ホテル アメニティ

シャワーブースには、ミキモトの真珠研究から誕生した「ミキモト コスメティックス」のバスアメニティも。これはプレジデンシャルツインだけでなく、全室に用意されています。

神戸北野ホテル アメニティ

さらに、クレンジング、洗顔料、化粧水、乳液とスキンケアアイテムもそろい、うれしい限り。

神戸北野ホテル アメニティ

また、プラスチック削減のため、ヘアブラシやコーム、カミソリはもみ殻を使用したものを、コットンやボディタオルは天然コットン100%のものを採用。アメニティにもサステナビリティへの意識の高さを感じます。

神戸北野ホテル 客室

贅沢なバスタイムを堪能し、「シーリー」社製のベッドで天蓋に囲まれて、姫気分で眠りに就きました。

 

オーベルジュだからこそ叶う「世界一の朝食」

神戸北野ホテル レストラン

そして、目覚めた翌朝。心待ちにしていた「世界一の朝食」の時間です。陽の光が差し込むダイニング「イグレック」へ。

「世界一の朝食」とは、神戸北野ホテルのオープンに際して、山口シェフが、師匠のベルナール・ロワゾー氏から公式に贈られたヨーロピアンスタイルの朝食。ディナーの余韻に浸り、ゆったりとした時間を過ごし、そして迎えた朝、唯一無二の朝食を味わう――。オーベルジュならではのこの一連のストーリーが、感動を生み出し、「世界一」たらしめるのです。

神戸北野ホテル「世界一の朝食」

テーブルにつくと、飲むサラダや生コンフィチュール、ポトフや半熟卵、パン、タピオカ・オ・レ、季節のフルーツなどが。彩り鮮やかな料理に、見た目からも元気をもらえます。

神戸北野ホテル「世界一の朝食」

まず目を奪われたのがたくさんのパン。クロワッサンやパン・オ・ショコラ、トースト、フィナンシェなど、ホテルメイドの焼きたてのパンが6種類も盛られ、さっそく幸せな気分に。

クロワッサンはフランス産の小麦やバターを使用し、サクサクの食感がたまりません。ただ、朝食でもバターは控えめにし、ポトフにはカツオと昆布の一番だしを使うなど、日本人にうれしい料理が並びます。

神戸北野ホテル「世界一の朝食」

ジャンボンブラン(ハム)は、ディナーの神戸ビーフと同じ、旭屋のもの。ジャンボンブランとたっぷりのバターをパンにのせて食べるのがおすすめと聞き、試してみると、これもまた絶品!

神戸北野ホテル「世界一の朝食」

そして、パンや自家製グラノーラ、ヨーグルトと一緒に味わいたいのが、旬のフルーツをふんだんに使った生コンフィチュール(ジャム)。この日はイチゴでしたが、季節によって、いちじくや桃、リンゴなどが登場することもあるそう。

鍋を使わない新製法で手間ひまかけて作られたコンフィチュールは、イチゴそのままの食感と最もおいしい瞬間を堪能できます。

そのほか、トマト・パセリ・プレーンの3種のバターや、兵庫県産の栗の花のはちみつ、アーモンドペーストなどが。すべて余すことなく味わいたくなります。

神戸北野ホテル「世界一の朝食」

さらに、旬の野菜やフルーツを、酵素を壊さないように低速ミキサーでしぼった「飲むサラダ」が4種も並びます。

内容は日によって変わりますが、この日の黄色のグラスはマンゴーやパプリカなど、緑のグラスは青りんごや小松菜、赤のグラスは紫キャベツやフリュイルージュ(フランボワーズなど、赤いフルーツの意)、オレンジのグラスは人参やパインなどを使ったジュース。朝から野菜やフルーツをたっぷり摂って、身体が心地よく目覚めるのを感じます。

神戸北野ホテル「世界一の朝食」

半熟卵は専用のエッグカッターを使うと、こんなきれいにカットできて感動! カフェ・オ・レは、ポットにたっぷり入った自家焙煎のコーヒーとミルクを、好みの割合でカップに注いで楽しみます。初めて体験するヨーロピアンスタイルの食べ方にもワクワクします。

半熟卵は丹波地鶏の卵に、兵庫・豊岡の「誕生の塩」が添えられ、タピオカ・オ・レは丹波の黒豆入り。カフェ・オ・レには丹波・但馬(たじま)の低温殺菌牛乳が使われ、地元のこだわりの食材が並びます。ヨーグルトも、コンフィチュールやはちみつとの相性を考えて開発されたホテルのオリジナル。

旬の食材で丁寧に作られたことが伝わる料理の数々に、「世界一の朝食」と称されるのも納得しました。うれしいことに、パンは食べ切れなければ持ち帰り可能。自宅でも「世界一の朝食」の余韻を楽しめます。

 

「神戸北野ホテル」といえば「世界一の朝食」。それを一番の楽しみに伺ったのですが、ヨーロッパを旅行している気分に浸れる客室や館内のしつらえ、フランス料理の伝統を継承しつつも、時代に即して進化し続ける「水のフレンチ」、海の資源や漁師の生活を守る取り組みなど、朝食以外も感動にあふれていました。

また、異人館街や三宮、元町に近く、港町・神戸を満喫できる立地も魅力。神戸旅行にはもちろんのこと、誕生日や記念日といった特別な日にも、美食を堪能するおこもりステイにもおすすめの一軒です。

 

神戸北野ホテル

住所
兵庫県神戸市中央区山本通3-3-20
アクセス
「三宮」駅より徒歩約15分、車で約5分
駐車場
2,500円/泊(予約不可)
チェックイン
15:00(最終チェックイン24:00)
チェックアウト
11:00

撮影:福羅広幸 取材・文:楽天トラベルガイド編集部


※この記事は楽天トラベルガイドによって取材・作成されたものです。

2023/6/2