たとえば、熊肉などジビエを美味なアミューズにあしらう。あるいは旬のネギやカブが驚くほど甘いムースに変化する。里山が育んだ切り干し大根が、これまで味わったこともないフレンチのひと皿となる。
これらのミスマッチは、ミシュラン二つ星で修業を重ねた新しいシェフ・栗山昭の手腕が織りなす現実です。山岸裕一オーナーはしばらく包丁を置き、ディナーを栗山シェフに委ねます。では、山岸はというと、自慢の利き酒のノウハウを駆使し、ここでしか飲めない希少な新潟地酒を「調理」する役目に回り、栗山シェフが織りなす「里山キュイジーヌ」にペアリングを始めました。 この挑戦を見守ってください。味わいに来てください。
すでに世界中の目が、新潟県松之山温泉という小さな里山の宿に注がれつつあります。
雪国では、冬野菜は根菜が主役です。いろいろなカブやダイコンを、フレンチの技法でカブに仕立てました。小さなカブは、カブのムース。カブの葉と荏胡麻のソースで召し上がれ♪
地酒・鶴齢特別純米爽醇1年熟成酒をお薦めします。香りは穏やかに味わいは丸く変化した、やや低アルコールのお酒が根菜の旨味を驚くほど引き立てます。
里山の保存食文化を代表する切り干し大根をフレンチのひと皿にしました。クリーミーなスープで、感動的なほどに期待を裏切る旨味をお楽しみいただけます。
天神囃子特別本醸造生原酒を加水調整のうえで、ぬる癇に。どこか懐かしい味わいが切り干し大根の風味とマッチし、旅情をそそります。
新潟を代表する海の幸と言えば、南蛮エビ。旬を迎えたネギのシャキシャキ感と南蛮エビの甘みが合わさって、口中に幸せが広がります。
白瀧山廃純米吟醸酒。やや甘寄りで、乳酸の酸味が効いた地酒です。ネギのムースとのハーモニーが新しい味わいを醸してくれます。
旬のキノコとジャガイモをじっくりと焼き上げました。バジルを使ったソース。季節を感じるひと皿です。
松乃井特別純米無濾過生原酒2年熟成酒。熟成酒の香りと旨味がキノコの香ばしさを引き立ててくれます。お酒自体を美味しく感じるための組み合わせのひと皿です。ワインならカーブドッチワイナリー、くま2015。怪しい獣の香りをまとった旨味たっぷりのビオワイン。和の出汁のような味わいがキノコ料理とマリアージュします。
温泉をイメージしたフレンチのひと皿。ゴボウのスープ、チップと合わせて里山の温泉地をイメージしてみました。
苗場山純米酒を地元産の杉で造ったおちょこでいただきます。杉の香がほのかに移ったお酒とゴボウの香りのマリアージュはいかがでしょう。
鯛は皮をパリッと見はふっくらと絶妙な火入れをしています。ダイコンのソテー、春菊のソース、乾燥させた春菊とともにお楽しみください。
亀の翁純米大吟醸3年熟成酒。いまや入手困難な伝説のお酒、パーカーポイント日本最高得点(98点)の銘酒とのペアリングはいかがでしょう。3年の熟成を経て複雑味が増したお酒と鯛、少し癖のある春菊との相性は抜群です。
地元を代表するブランド豚、妻有ポークは脂の融点が低く、肉質も甘い。シェリーヴィネガーソースを合わせました。シンプルに肉の旨味をお楽しみいただけます。
阿部酒造のあべおうたむふぉりえいじ。極小の酒蔵が挑戦的な酒造りに取り組んでいます。酸味と旨味にフォーカスした旨口の無濾過生原酒がお肉をさらに美味しく変化させます。
冬ジビエ、あっさりヘルシーな鹿肉のローストを甘酸っぱいポルトワインのソースでいただくひと皿です。
合わせるお酒は、エリオ・グラッソのバローロ・ジネストラ・ヴィーニャ・カサ・マテ 2012。豊かな果実味とネッビオーロの鉄っぽいニュアンスがマリアージュします。
八海山の甘酒をふんわりとしたエスプーマにしました。下にはイチゴとホワイトチョコ、お米のパフが隠れています。
クエン酸がテーマの変わり酒。あべ酒造REGULUSにレモンの皮をアクセントにトッピングしました。
カルバドスで香り付けしたリンゴのコンポート、シナモンのフレーク、キャラメルアイス、胡麻のチュイル、リンゴのソース。
たかちよ無調整生原酒RED。リンゴを想わせる香りがデザートを引き立てます。
アミューズ
(熊肉のパテ、南瓜のケーキ、里芋)
冬のジビエ、熊肉は旨味がたっぷりと詰まったパテにしました。南瓜のパンケーキの中にはブルーチーズのクリーム。米どころ新潟を意識して里芋はおかき揚げにしました。
マリアージュ
シャンパーニュもいいですが、あえて地元の松乃井酒造・松乃井大吟醸無濾過生原酒あらばしりをお薦めします。1年の熟成を経て蜜のニュアンスが出てきたものをベースに使用し、同じ蔵の異なる日本酒をミックス、炭酸を注入した自家製スパークリングはいかがでしょう。