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数々の映画の舞台にもなった情緒あふれる港町・広島県福山市鞆(とも)の浦と、島々と橋が織り成す風景を楽しむことができる尾道市の瀬戸内しまなみ海道。瀬戸内ならではの豊かな自然が生み出した絶景とココロとカラダが喜ぶ食を、潮風を感じながらのんびり楽しむレトロ旅へ。
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旅のはじめは、潮待ちの港として栄えた鞆の浦。渡船乗り場のすぐ近くの高台に建つのが「福禅寺對潮楼」です。對潮楼は、福禅寺の客殿として1694年に建立されさました。
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對潮楼の座敷から眺める景色は、木の窓枠が額縁となり、まるで絵画のよう。訪れた朝鮮通信使が「日東第一形勝(対馬から江戸までの間で一番美しい景勝の地)」と賞賛したというのが納得です。正面の窓枠3面が1年の暦を表すように設計されているそう。
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窓から見えるのは、正面の多宝塔のある島が弁天島、右側の半円径の島が皇后島、それ以外の島が仙酔島。渡船が行き交う姿も見ることができます。のんびりと流れる時間に、ココロがやすらぎました。
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車が通れないような細い路地を通りながら、歴史ある鞆の浦の街並みを散策。
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江戸時代、福山藩を代表する特産品として幕府へ献上されていた「保命酒(ほうめいしゅ)」。現在、鞆の浦には4軒の蔵元があり、そのうちの1つが明治12年創業の保命酒屋鞆酒造です。
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保命酒は身体のバランスを整える生薬16種を漬け込んでおり、トロリと甘いのが特徴。ロック、水割り、炭酸割りはもちろん、牛乳割りやヨーグルトのシロップとしてもおすすめだそう。
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続いて訪れたのは「村上製パン所」。地元の学校給食にも指定されているそう。
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アンパン、クリームパン、コッペパンなど、素朴で懐かしいパンがずらり。なかには「アブラパン」という気になる名前も!聞いてみると、こしあんが入った揚げパンだそう。
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昔から変わらないレトロなパッケージ。甘さ控えめのアンは、やさしい味がしました。
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次に向かったのは、町家風旅館「御舟宿いろは」。幕末、坂本龍馬と海援隊を乗せた蒸気船「いろは丸」が、紀州藩の軍艦と衝突して沈没するという事件があり、その談判の場として使われた町家だそう。
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レトロでかわいいステンドグラスが印象的な店内。宿泊だけでなく、食事処としてランチや喫茶も楽しめます。
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実は、プライベートで鞆の浦に訪れていた宮崎駿監督が、修復工事中だったこの場所にもよく訪れており、“このような建物が鞆の浦にできて欲しい”とデザイン画を描いてくれ、それを元に改装したそう。店内にデザイン画が飾られています。
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ランチは、鞆の浦の名物である鯛を使った「鯛づくし御膳」。瀬戸内の鯛を酒や昆布などに1日以上漬け込み熟成させた「鯛いろは漬け」と鯛のかぶと煮がついた贅沢な御膳です。
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「鯛いろは漬け」は、最初はわさびしょう油で、〆はごはんの上に鯛漬けをのせて出汁をかけて鯛茶漬けにしてと2通り楽しめます。瀬戸内の恵みを堪能しました。
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鞆の浦のシンボル、常夜燈を見に鞆港へ。そのすぐそばにあるのが、「鞆の浦 a cafe」です。
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築150年の長屋をそのままいかしながらも、モダンな雰囲気。2007年にグッドデザイン賞を受賞したそう。
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ドリンクやフードは地元の食材を多く使用しているそう。濃厚なチーズケーキとさっぱりとしたクランベリー・ティー・ソーダでほっと一息。
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店内で販売されているポストカード。保命酒や常夜燈など備後福山の名産をモチーフにしていてキュート。常夜燈は海中の基礎を含めた高さは10m以上にもなり、現存する江戸期の常夜燈では日本最大級。夕焼けを見ながら、常夜燈の灯りがともるのものんびり待ちました。
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常夜燈に別れを告げ、いざ尾道へ。この日宿泊したのは、日本で初めてレモンの栽培が行われ、いまや日本一の生産量を誇る瀬戸田町にある「旅館つつ井」。明治43年に創業し、100年の歴史を誇る老舗旅館です。
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瀬戸田レモンをふんだんに浮かべたレモン風呂。爽やかな香りに包まれ、旅の疲れを癒しました。
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旅館の目の前は瀬戸内海。早起きして散歩をするのにちょうどいい遊歩道も。
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旅館つつ井から車で5分程のところにあるのが、「耕三寺博物館」。華やかな本堂が目にとまります。
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耕三寺博物館が芸術活動の一環として取り組んでいるのが、「未来心の丘」。広さ5,000平方メートルにもおよぶ白い大理石の庭園は、広島県出身の彫刻家・杭谷一東(くえたにいっとう) 氏によるもの。
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丘にそびえ立つ大小さまざまなモニュメント。周囲の景色、風雨、光といったあらゆる自然との調和も考えて創られたアートな空間は圧巻です。
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白亜の大理石を惜しみなく使用した「カフェ・クオーレ」。ブラッドオレンジジュースをいただきながら、別世界に浸りました。
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島内をまわっていると、いたるところでレモンの木を目にすることができます。
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毎日作り立てのジェラートを販売している「ドルチェ 瀬戸田本店」へ。瀬戸田のレモンと瀬戸田のデコみかん(デコポン)のシャーベットはさっぱりしておいしい!
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瀬戸田街観光案内所の前には、大きなレモンなどのオブジェが。思わず一緒に記念撮影!
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島と島を結んだ海の道「瀬戸内しまなみ海道」を進み、生口大橋、因島大橋を渡って向島へ向かいます。
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車のすれ違いが難しいほどの細い山道を登っていった先に現れたのが、「USHIO CHOCOLATL」。立花自然活用村の2階にあるので、看板を見過ごさないように注意。
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薄暗い階段を登ると一転、窓から光が差し込む明るい雰囲気。かわいいオブジェが飾ってあるオシャレな店内です。
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カカオと砂糖のみで作られたチョコレートは、どれも味わいが違っていて食べ比べするのが楽しい。カカオ豆の産地ごとの特性を活かして、砂糖の量を調節しているのだとか。パッケージもオシャレでお土産にもぴったり。
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どのチョコレートにするのか迷ったら、笑顔がすてきなスタッフが丁寧に教えてくれます。チョコレートだけでなく、コーヒーやジュース、チョコレートドリンクなども。
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ソファに座りながら瀬戸内海の絶景を見ていると、ついつい長居してしまいました。
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この日のランチは、同じ向島にある「立花食堂」へ。目の前が海岸で広々としたお庭がちょっとしたリゾート空間のよう。
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併設している「life:style」は、こだわりの雑貨や洋服などを集めたセレクトショップ兼ギャラリー。思わず手に取りたくなる作家さんの作品が並びます。
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手作りのジャムやお菓子を販売している「コサクウ」も併設。ジャムで使っている八朔、レモン、柚子、花梨などは、広島県内の無農薬のものを使っています。パッケージもかわいい!
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大きな窓が心地よい「立花食堂」の店内。木のぬくもりがあふれるあたたかい空間です。
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減農薬の源五郎米あきさかりをはじめ、地元で採れた野菜を中心としたお昼ご飯は、素材を活かしたやさしい味。
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無料の足湯スペースには、レモンをはじめ柑橘類がぷかぷか。すっかりくつろいでしまいました。
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旅の最後は、本州に戻り「千光寺」へ。舞台造りの本堂から眺める尾道市外と尾道水道、そして瀬戸内海の島々を一望することができます。
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男性は白い紐、女性は赤い紐のお守りを持ち、相手が見つかった時に渡す「縁結び御守」。赤い紐は、恋文を結んだかんざしでお相手と固く結ばれ離れない幸せのお守り、白い紐は小判とお米が入っていて食べることに困らないようにという出世のお守りだそう。
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奇岩や奇勝など、本堂だけでなく見どころも多い千光寺。春は桜、秋は紅葉など季節ごとの姿も楽しめます。
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先代の住職。千光寺の歴史をお話してくれました。
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千光寺茶屋ではお抹茶やあま酒をいただきながら、景色を楽しむことができます。しょうが入りのあめ湯は懐かしい味でほっとしました。