日本の美意識が詰まった「The Okura Tokyo」プレステージタワーで安らぎの休日を
「世界の賓客を満足させる、日本らしいホテルを」。そんな理念から始まり、50年以上の時を刻んできた「ホテルオークラ東京」が、2019年9月、約4年の改装期間を経て「The Okura Tokyo」としてリニューアルオープンしました。
外資系ホテルとは一線を画する日本らしいおもてなしへの期待を胸に、「The Okura Tokyo」でのステイを体験してきました。
数々の賓客をもてなしてきた「The Okura Tokyo」の歴史
「ホテルオークラ東京」が開業したのは1962年。創業者・大倉喜七郎氏が目指したのは、「世界の一流ホテルと肩と並べる格式と居心地のよさ」でした。
和の優美さを意識した空間や細やかな接客、プライバシーやセキュリティに配慮した設備で、その理想を追求。国内外の賓客に愛されるホテルとなりました。1974年のフォード大統領から2009年のオバマ大統領までの歴代のアメリカ大統領、チャールズ皇太子とダイアナ妃などももてなしてきました。
そして2019年9月、「オークラ」らしさを受け継ぎつつ、新たな時代のスタンダードを取り入れた「The Okura Tokyo」として、ホテル名新たに開業。静けさと気品に満ちたオーセンティックホテル「オークラ ヘリテージ」と、上質な都市型コンテンポラリーホテル「オークラ プレステージ」の2ブランドで構成されています。
観光にもビジネスにも便利な虎ノ門エリア
超高層ビルが続々と誕生し、注目を集める虎ノ門エリアに「The Okura Tokyo」はあります。アクセスは、東京メトロ日比谷線・虎ノ門ヒルズ駅から徒歩5分ほど。
東京タワーにも、数々のショッピングスポットや新国立美術館などを擁する六本木エリアにもほど近く、観光の拠点としても、ビジネスでの利用にも便利な立地にあります。
和の美しさと気品に満ちたオークラを象徴するロビー
今回滞在する41階建ての「オークラ プレステージタワー」に入ると、「ホテルオークラ東京」本館ロビーで使われていた三波石(さんばせき)を配した生け鉢が出迎えてくれます。あえて日中に行われる花の生け替えは、和を感じられるパフォーマンスとして海外のお客様にも好評なのだとか。
そして、右手にはオークラを象徴するロビーが。かつての「ホテルオークラ東京」本館は、20世紀の日本を代表する建築家・谷口吉郎氏が手掛けた名建築として、多くの人に愛されてきました。このプレステージタワーのロビーは、それを忠実に再現。谷口吉郎のご子息・谷口吉生氏が設計を担当し、オークラの伝統美を表現しました。
本館ロビーでも使われていた漆塗りのテーブルを中心に並ぶ5脚の椅子は、梅の花に見立てたもの。和室のような静かで奥ゆかしい雰囲気に包まれます。
窓辺を飾り、やわらかく日ざしを遮るのは麻の葉文様の組子と障子。壁を彩る屏風風の装飾は、人間国宝・富本憲吉氏によるデザインです。
空間に絶妙な陰影を与えているのは、「オークラ・ランターン」と呼ばれる照明。金糸を挟み込んだ五角形のアクリル板を10枚つなぎ、古墳時代に首飾りなどに使われた切子玉をモチーフにしています。このランターンも本館ロビーで使われていたものをベースに改良、電球をLEDに変更して、ロビーを照らし続けています。
チェックインを済ませ、客室へ。廊下にも、創業当時から変わらぬ美意識を感じさせるしつらえが見られます。たとえば、廊下突き当りのタペストリーや、左右の市松模様をあしらった格子。どちらも本館を飾ったものをアレンジしています。
廊下で目を引くショーケース。1枚の銅板を打ってのばして作る新潟の「燕鎚起銅器(つばめついきどうき)」や、いぶして色付けをする滋賀県の「いぶし鬼瓦」など、日本各地の伝統工芸品が飾られています。日本の手仕事との出合いを演出する仕掛けです。
都心の大パノラマが広がる「プレステージルーム」
今回宿泊するのは、約48平米の「プレステージルーム」。プレステージタワーの28~36階にあり、どの部屋の窓にも都心の眺めがダイナミックに広がります。
客室の位置により、国会議事堂やレインボーブリッジ、新宿の高層ビル群などを望みます。なかには、東京タワーが見える客室も。
こちらは、国会議事堂と皇居の緑、その向こうに日本武道館を望みます。
広いリビングと大きな窓を備えた「プレステージルーム」ワイドリビングタイプ
ワイドリビングタイプの「プレステージルーム」は、広々としたリビングと、大きく取った窓が特徴。大きめのライティングデスクを備え、ビジネスユースにもおすすめの客室です。
バスルームもゆとりの広さ。テレビが据え付けられ、テレビを見ながら、くつろぎのバスタイムを過ごせます。
夜景とともにバスタイムを楽しめる「プレステージルーム」ビューバスタイプ
「プレステージルーム」にはワイドリビングタイプともう1タイプ、ビューバスタイプがあります。リビングはもちろん、バスルームからも都会の眺望を楽しめるのが特徴です。
非日常の時間を演出するアメニティー
ワイドリビングタイプとビューバスタイプのどちらにも、上質なホテルステイを叶えてくれるアイテムがそろいます。
ミニバーに用意されているのは、ネスプレッソや純スリランカ(セイロン)産にこだわる紅茶ブランド「Dilmah(ディルマ)」の紅茶、ほうじ茶、緑茶。
そして、トレーにはコーヒーカプセルやティーバッグなどがぴったりはまる凹凸が。生活感を出さない細やかな工夫にも、もてなしの心を感じます。
シンプルな白いコーヒーカップは、よく見ると、麻の葉文があしらわれています。亀甲紋なども館内随所で見られ、“隠れ文様”を探すのも「The Okura Tokyo」でのひそかな楽しみに。
バスアメニティーは、イギリスのメゾンフレグランスブランド「Miller Harris(ミラーハリス)」のもの。天然香料をたっぷりと使ったナチュラルな香りが特徴です。爽やかで穏やかなルバーブとピオニーの香りがバスタイムを彩ります。
スキンケアセットは、オーガニックな国産原料にこだわった「THREE(スリー)」。洗顔料、メイク落とし、化粧水、クリーム、石鹸、コットンが白いミニマルな箱に収められています。
すべての客室にウォークインクローゼットが備わり、生活感を感じない、非日常の時間を演出してくれます。クローゼットにかかるバスローブは、「The Okura Tokyo」特製の肌触りのよいもの。
最高の眠りに誘ってくれそうな上質なパジャマも用意されています。
夜景とライブ感もご馳走! 鉄板焼「さざんか」でディナー
ディナーはプレステージタワー41階にある鉄板焼「さざんか」へ。席に着くと出迎えてくれるのが、最上階からの夜景です。店内にはカウンター席のほか個室(有料)が5室あり、いずれも窓の外に煌めく都心の風景が広がります。
今回いただいたのは、魚介から和牛まで楽しめる「星コース」(21,000円)。内容は、前菜、さざんかサラダ、魚、かに、和牛、焼野菜、ガーリックライスと味噌汁、デザートとコーヒー。
素材はその日手に入る最上のものを厳選しています。この日は、鹿児島県産オナガダイ、カナダ産のカニ、熊本産のサーロイン、茨城産のフィレ。お肉はともにA5ランクの特選銘柄牛で、サーロインかフィレ、どちらかを選びます。
前菜「ドライフルーツとチキンのパイ包み」からコースがスタート。チキンのコクに、香ばしいパイ生地、マンゴーソースとバルサミコ酢がマッチするひと皿です。
続く「さざんかサラダ」はこのお店の伝統の一品。刻んだレタスやコリコリとしたクラゲの食感が楽しく、食欲を誘います。
鉄板焼では、目の前で焼いてくれる熟練の職人技、立ち上る香りや音も楽しみのひとつです。調理を担当するのは、サービス経験豊富なスタッフ。
「鉄板焼をホテルで提供するようになったのは、1964年の東京オリンピックの時。新しい日本料理のスタイルで、海外からのお客様を和牛でおもてなししたいと考え、取り入れました」と教えてくれました。「ホテルオークラ東京」は、いち早く鉄板焼を取り入れたホテルだったそう。
「The Okura Tokyo」では、ユネスコ世界遺産に登録されているフランス・シャンパーニュの「ポメリーメゾンカーヴ」に専用のエイジングセラーがあるそうです。そこで熟成したホテルオリジナルのシャンパーニュをおともに、魚やカニを味わいました。
ちなみに、グラスもハプスブルク家御用達、オーストリアのクリスタルブランド「ロブマイヤー」の特注品です。
お待ちかねの和牛は、肉の旨みを閉じ込めるため、最後はフランベ。目の前で立ち上る大迫力の炎に、釘付けに! サーロインは赤身の旨みと脂の甘みが口の中で見事に溶け合います。やわらかいフィレは、噛むほどに赤身の旨みを感じられます。
〆のガーリックライスも、目の前で作ってくれます。牛脂を熱し、半年間タレに漬け込んだ青森産ニンニクをご飯の上に乗せ、パラパラになるまで炒めます。一度お櫃に入れて蒸らし、適度にしっとりさせるのが「さざんか」流。
デザートは、シャーベット、クリームブリュレ、フルーツの盛り合わせなどから選べます。ソファーに席を移して、至福のディナーの余韻に浸りながら、ゆっくり堪能しました。
鉄板焼 さざんか
- 営業時間
- ランチ11:30~14:30
ディナー17:30~21:30(L.O.21:00)
※ドレスコードあり(スマートカジュアル)
夜のひとときはバーラウンジ「スターライト」で
夜の時間をもう少し楽しみたい…と足を運んだのは、「さざんか」と同じ41階にあるバーラウンジ「スターライト」。落ち着いた雰囲気のバーラウンジから眺める夜景は、客室やさざんかとはまた違った趣があります。
「スターライト」の自慢は、季節のフルーツを使ったオリジナルカクテルの数々。もちろん、ノンアルコールのモクテルも用意しています。
シェイカーを振るのは、シニアバーテンダーの中野賢二さん。ホテルバーテンダーの日本一を決める「H.B.A.CLASSIC 創作カクテルコンペティション チャンピオンシップ2021」で総合優勝した腕前の持ち主です。
スタンダードカクテル「コスモポリタン」を「スターライト」流にアレンジした一杯、「スターライト コスモポリタン」(3,000円)。フランス産シトロンウォッカをベースに、クランベリージュースと柚子ジュース、ラズベリーの果実などをシェイク。柚子の香りに和を感じる、甘酸っぱい味わいに酔いしれます。
「スターライト」ではスイーツも人気です。なかでも新しい名物になっているのが、季節のフルーツを使ったショートケーキ「ザ・ショートケーキ」(2,800円~)。心ときめく花のような生クリームの絞り方は、シェフパティシエ直伝の技なのだとか。なめらかなクリームとくちどけのよいスポンジが織りなす口福に、思わず笑顔がこぼれます。
使われるフルーツは季節に応じ、約2カ月ごとに変わります。人気なので、事前に予約しておくのがおすすめです。
また、「スターライト」は日中もラウンジとして使え、晴れれば富士山まで見渡せる眺望とともにアフタヌーンティーを味わうことも。旬の食材を使ったスイーツや、専属の牧場で育った「オークラ牛」のハンバーガーをはじめとしたセイボリー、オリジナルのモクテルなどが並びます。
バーラウンジ スターライト
- 営業時間
- 11:30~22:00
※17:00以降は20歳未満の利用不可
※17:30以降はカバーチャージが必要
※ドレスコードあり(スマートカジュアル)
ダイナミックな夜景と過ごすバスタイム
客室に戻ると、室内はターンダウンサービスで整えられていました。ベッドスプレッドやフットスローが外され、足元にはマットとスリッパが。枕元にはミネラルウォーターも用意され、すぐに眠れる状態はありがたいもの。
使ったタオルやコーヒーカップは新しいものに交換され、ネスプレッソやお茶なども補充されていました。チェックイン時のように美しく快適な状態に整えられ、ここにもオークラらしい心遣いを感じます。
都心の夜景を眺めながらのバスタイムは、ビューバスタイプの客室ならではの贅沢です。
そして、リビングの窓の外には、東京タワーがまるで宝石のように輝いていました。
焼きたてパンに和食まで種類豊富な朝食ブッフェ
ぐっすり眠り、朝焼けの都心の風景とともに目が覚めたら、朝食ブッフェへ。プレステージタワー 5階のオールデイダイニング オーキッドへ向かいます。
ブッフェ台に並ぶのは、洋食から和食まで100種類以上! 目の前でシェフがオムレツやポーチドエッグなど、好みの卵料理を作ってくれるサービスもあります。
なかでもパンの充実ぶりには目を見張ります。季節のデニッシュ、ハード系のパン、ドーナッツなど、すべてホテル内のベーカリーで朝、焼き上げたもの。
和食も充実しています。里芋煮やがんも煮からは、やさしい出汁の味を感じます。
どの料理も丁寧に作られていることがわかる味わいです。ドリンク類はジュース、コーヒー、紅茶のほか、フルーツが入った「オークラオリジナルプランテーションティー」などがそろいます。
ルームサービスや和朝食も魅力的
プレステージタワーに宿泊すると、「オーキッド」での朝食ブッフェのほか、日本料理 山里、ルームサービスも選べます。「ホテルオークラ東京」時代から受け継がれてきた伝統の味も、高層階からの大パノラマを眺めながら客室でいただく朝食も魅力的で、滞在するたび、違ったものを選びたくなります。
ヘルシーな滞在を叶えるフィットネス&スパ
27階には宿泊ゲストが無料で利用できるジムやプールがあります。自然光がたっぷり差し込む温水プールは、25mが5レーン。専任トレーナーが常駐するジムにはランニングマシーンやフィットネスバイクのほか、ヨガマットなども備え、さまざまなトレーニングが可能です。
さらに、木の香りに満たされたドライサウナやスチームサウナ、浴室には炭酸泉なども。汗を流したあとにうれしい、ハーブティーやドライフルーツを用意したリラクゼーションルームもあります。
ジム・プール・浴室・リラクゼーションルーム
- 営業時間
- 6:00~21:00(最終チェックイン 20:00)
- 料金
- 宿泊者は無料
宿泊者には「大倉集古館」の無料入場特典も
また、ホテル正面には、中国古典様式の建物が目を引く美術館「大倉集古館」があります。およそ3カ月ごとに入れ替えながら、着物や仏教美術など、さまざまな企画展を開催。宿泊者は無料なので、チェックアウト前に貴重な美術品を鑑賞してみては。
モダンでありながら和の意匠を取り入れたインテリア、あちこちに散りばめられたもてなしの心。「The Okura Tokyo」でのステイは、日本の魅力を改めて体感させてくれるものでした。のびのびとくつろぎながら凛とした美意識に触れ、感性までもリフレッシュできる。そんな体験を求め、また訪れたくなる場所です。
The Okura Tokyo
- 住所
- 東京都港区虎ノ門2-10-4
- アクセス
- 東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅 A1・A2出口より徒歩約5分
東京メトロ銀座線「虎ノ門」駅 3番出口より徒歩約10分
東京メトロ銀座線・南北線「溜池山王」駅 14番出口より徒歩約10分 - 駐車場
- 宿泊者は滞在中無料(予約不要)
- チェックイン
- 15:00(最終チェックイン29:00)
- チェックアウト
- 12:00
※営業時間は変更になる場合があります。最新の情報はホテル公式WEBサイトでご確認ください。
撮影:島田香 取材・文:仲川僚子