全室オーシャンビュー!「五島列島リゾートホテル マルゲリータ」(五島・中通島)滞在記
2018年に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産に登録され、最近では朝の連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)の舞台としても注目を集める長崎・五島列島。
その列島のひとつで、十字架に似た形の中通島(なかどおりじま)北部の高台にある、海を望む小さなホテルが「五島列島リゾートホテル マルゲリータ」です。
水平線にとけこむような3階建ての建物内に、全室オーシャンビューの客室が29室。両側を海に挟まれているため、館内からは朝日と夕日、どちらも眺められるのが最大の魅力。この場所だけの癒やしのステイを叶えてくれます。
美しい海に囲まれ、潜伏キリシタンの信仰の歴史が息づく中通島
五島列島で福江島の次に大きな中通島。入り組んだリアス式海岸に囲まれ、蛤浜(はまぐりはま)海水浴場や高井旅(たかいたび)海水浴場など、白砂が広がる美しいビーチもあり、歴史と自然を堪能できる島です。
キリスト教徒への弾圧があった江戸時代、現在の長崎市からキリシタンが逃れて住んだ信仰の島としても知られています。島内には29の教会があり、なかでも頭ヶ島天主堂(かしらがしまてんしゅどう)は世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に含まれています。
中通島へのアクセス
中通島は長崎本土・佐世保の西、約55kmにあり、島へのアクセスは船のみ。島のなかほどにある鯛ノ浦港、有川港からホテルまでは車で30分ほど。有川港に着く特定の便に合わせて、ホテルまでの送迎サービスもあります(3日前までに要予約)。
- 長崎港から
- 有川港まで高速船で約1時間40分
鯛ノ浦港まで高速船で約1時間40分
奈良尾港までジェットフォイルで約1時間10分、フェリーで約2時間30分 - 佐世保港から
- 有川港まで高速船で1時間25分、フェリーで約2時間30分
- 福江島・福江港から
- 奈良尾港まで高速船で約30分、フェリーで約1時間30分
- 福岡・博多港から
- 青方港までフェリーで約5時間30分
高台から海を見下ろす、静謐なインテリアのホテル
「五島列島リゾートホテル マルゲリータ」に到着すると、春から梅雨入り前までは、ホテルの名前にもなっている可憐なマルゲリータ(マーガレット)の花が出迎えてくれます。
ロビーは天井が高く、全面に開けた窓の向こうには海が広がります。インテリアのテーマは、修道院と船。白壁にアンティーク風の家具類を配したロビーは静謐で、非日常の時間を予感させてくれます。海に向いて置かれたソファに座り、まずはチェックイン手続きを済ませます。
温かな笑顔で迎えてくれたスタッフのユニフォームは、マリンテイストのボーダー柄。潮風が吹き抜けるホテルの世界観が、こんなところからも感じられます。
ロビー横の階段を下りると、ライブラリールームがあります。窓から優しく日が差し込む空間は、船の中の隠れ家のよう。本棚には異国の文化から日本文化、旅などの本が並び、思わぬ出合いがあります。
船舶の照明に使われるマリンランプが灯り、浮き輪など船にちなんだオブジェが飾られた廊下を歩いて客室へ向かいます。
また、廊下の奥には、東側の海を望むデッキテラスがあります。デッキチェアに腰掛けて眺める空と海、島々が織りなす景観が、日常の喧騒を忘れさせてくれます。
昇る太陽とともに目覚め、海を眺めながら入浴できる客室「スイート」
「五島列島リゾートホテル マルゲリータ」の客室数は、実は島内にある教会の数と同じ、全29室。そして、すべての教会と同じく、海を向いて立っています。
館内に1室のみのスイートルームは、広さ約63.5平米、ベッドはハリウッドツインタイプで、2~5名まで宿泊できます。4名以上の場合は隣のスーペリアルームとつなげ、コネクティングルームとして利用可能。インテリアは修道院風で、温かみがあります。
大きな窓の外にはデッキテラスを備え、東側の海に面しています。プライベートな空間で誰にも邪魔されることなく、海と島々の風景を楽しむ贅沢が叶います。
くつろぎの時間のお供に、ミニバーには静岡県の「白形傳四郎(しらかたでんしろう)商店」の煎茶とほうじ茶のほか、スイート限定でハーブティーが用意されています。
ライティングデスクの引き出しには、ホテルのロゴをあしらった便箋や封筒、島内にある29の教会を描いたオリジナルの絵葉書などが。お茶を淹れて、海風を感じながら、旅先からの便りをしたためるのもおすすめです。
スイートのもうひとつの魅力が、このビューバス。お風呂に浸かりながら、ゆったりと眺める海の青さは格別です。
シャンプーやコンディショナー、ボディソープは南フランス産の植物エキスやオイルを配合した「PROVINSCIA(プロバンシア)」のもの。ラベンダーの柔らかな香りが広がります。
歯ブラシなどのアメニティは、スイートだけ特別に、ロゴをあしらったオリジナルの箱に収められています。
ルームウェアは全室にありますが、ふかふかのバスローブと、肌触りのよい綿素材のパジャマはスイート限定。肌寒い朝夕、テラスに出るときに重宝するストールもあります。
ベッドの上には、オリジナルのキャンディ、日没時刻と翌朝の日の出時刻、月齢が書かれたカードが置かれていました。
夕日と星空を堪能し、日の出を楽しみに眠りにつく――。そんなホテルステイをサポートしてくれる心遣いです。
そして、スイートにはミニキッチン付き。冷蔵庫や調理器具、食器が用意されています。観光の帰りに島の美味しい魚介や野菜、フルーツを買って帰り、お酒とともに客室で味わうことも可能。食の楽しみが広がります。
海の向こうに沈む夕日を望む、機能的な客室「スーペリア」
スーペリアルームは、31.1平米の客室に、ワイドシングルのベッドが2台とライティングデスク、サイドテーブルなどがそろっています。定員は2名。西側に窓が開け、海に沈む夕日を目にできます。
バスルームには眺望はありませんが、ゆとりの広さ。バスアメニティはスイートと同じ、「PROVINSCIA」のものが全室に用意されています。
ビューバスが付いた客室「デラックス」も
ダブルベッド2台を備えた38.6平米のデラックスルームもあります。基本の設備はスーペリアと変わりませんが、こちらはビューバス付き。バスタイムも海の眺望をたっぷり楽しみたい人にぴったりです。
ホテル目の前の海に沈む夕日を堪能
夕方、海にオレンジの道を作り、水平線の向こうに沈む夕日は、ロマンを感じます。西側の客室やエントランス前から見ることができます。
ディナーは五島の食材の魅力を引き出したイタリアンを
ディナーはホテル1階のレストラン「空と海の十字路」でいただきます。ここでは、客船を思わせるどこかノスタルジックな雰囲気のなか、五島産の食材をふんだんに取り入れたイタリアンのコース料理を楽しめます。また、初夏のディナータイムには窓の外に夕焼けが広がります。
今回は前菜からデザートまで、全6皿のコースをいただきました。和食のコースもあり、連泊の場合は和食も選べます。
旬の食材を使うため、内容は時期により異なりますが、この日の前菜は、五島で獲れたヒラマサとメジナ、水イカのカルパッチョ。
中央の一品は、トマトや玉ねぎ、キュウリなど、島内産の野菜の濃厚な味わいが鮮烈です。モロッコいんげんとキヌサヤ、スナップえんどうのリズミカルな盛り合わせも楽しいもの。五島産のさつまいもを使ったフラン(洋風茶碗蒸し)も付いています。
魚料理は、ひとつの鍋で魚介類を煮込んだイタリア・トスカーナの郷土料理「カチュッコ」。ブイヤベースのようなひと皿です。
トマトスープには、アサリや長イカ、ムール貝のうまみがたっぷり詰まっています。中央に配したハタには、タイのひれをフライにしたものをトッピング。白身魚のふんわりとした食感と、ひれのクリスピーさが対照的です。
続いては、見た目にも意外性のある栄螺(さざえ)のパスタ。トロフィエと呼ばれる短いパスタは自家製で、もっちりとした食感。そこに栄螺の肝をペースト状にした濃厚で少し苦みのあるソースがよく絡みます。
五島といえば、魚介のイメージが強いですが、実は肉も名産品です。肉料理には、年間数千頭しか飼育されず、島外にあまり出ることがない希少な「五島牛」が。グリルして焼き色をつけてから、オーブンでじっくりと火を入れることで、肉汁を逃さず、噛むほどに赤身のうまみが感じられます。
となりに並ぶのは、五島のブランド豚「五島美豚(ごとうびとん)」。脂が溶け出す融点が低く、慎重に火を入れ、脂身の甘さと赤身の柔らかさを際立てています。島内産の塩を使ったレモン塩やブラックペッパーといただきます。奥には、島内産の甘夏を使ったリゾットも。
魚介だけでなく、肉や野菜、フルーツまで、五島の豊かな食材をじっくり堪能しました。
夕食後は離島ならではの満天の星空を眺めて
夕食後、外へ出ると夕日が沈み、満天の星空が広がっていました。中通島の空気が澄んでいることや周囲に灯りが少ないことから、都会ではとても目にできない小さな星も肉眼で見ることができます。一日の終わりに星を見つめて、物思いにふける贅沢な時間です。
サンライズとともに始まる島の一日
東側の客室やロビー、デッキテラスからは朝日を見られます。少し早起きして、次第に明るくなる空を眺めながら、一日を爽やかにスタート。ちなみに、水平線から昇る朝日を見られるベストシーズンは冬だそう。
サイドメニューを無料で追加可能! 五島産食材をふんだんに味わえる朝食
そして、朝食の時間。ディナーと同じレストラン「空と海の十字路」でいただきます。和食と洋食、どちらかを選べ、和食は五島産のお米や生あおさの味噌汁、近海でとれた焼き魚、だし巻き卵、とろろなど、島の恵みが感じられるラインナップです。
洋食は、自家製のハムやソーセージ、島の新鮮な野菜などを盛り合わせたプレートと、自家製フォカッチャ、季節のポタージュのセット。
さらに、サイドメニューを好きなだけ追加できるうれしいサービスが。メニューには、島の名物「五島うどん」もあります。
麺を延ばす際に五島特産の椿油を使うのが特徴で、つるつるとした喉ごしのうどんを、さっぱりとしたあごだしでいただきます。
そのほか、ふんわりしっとりしたフレンチトーストや、フルーツグラノーラ ヨーグルト、シーザーサラダ、フレンチフライもラインナップ。
ドリンクも好きなだけオーダーでき、コーヒーや紅茶、ジュースに加え、五島つばき茶など、五島ならではのドリンクもそろっています。
五島の名産品やオリジナルグッズがそろうショップ
レストランの前には、お土産などがそろうショップが。香ばしいクッキーに、島内にある29の教会をあしらった「上五島29の教会クッキー」(1,490円)は、パッケージも愛らしく、お土産にすると島について話が弾みそうです。
五島列島名産の「五島うどん」(3食入り・あごだし付き1,080円)もホテルオリジナルのおしゃれなパッケージ入り。つるっとした喉ごしが魅力の五島うどんは、自分へのお土産にも最適です。
世界遺産の教会とエメラルドグリーンのビーチを巡る中通島観光
「マルゲリータ」をチェックアウト後は、島内観光へ。中通島には自然と歴史が感じられるスポットが多数あります。
蛤浜海水浴場
中通島でぜひ訪れたいのが、蛤浜(はまぐりはま)海水浴場。「マルゲリータ」からは、車で約20分のところにあります。
長く続く白い砂浜と淡いブルーの遠浅の海の美しさに思わずため息が漏れます。海水浴シーズンには、ビーチハウスやシャワーもオープン。秋冬も絶景を見にぜひ訪れたいスポットです。
頭ヶ島天主堂
江戸時代に多くのキリシタンが潜伏の地に選んだ中通島には、29の教会があります。教会を巡ることで島の歴史を知り、今も息づく信仰の心にふれることができます。
その代表的な教会が、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する「頭ヶ島(かしらがしま)の集落」にある「頭ヶ島天主堂」です。蛤浜海水浴からは車で20~30分ほど。
明治に入ってキリシタンの弾圧が終わり、頭ヶ島集落に戻ってきた信徒によって建てられたこの天主堂。近隣の石を切り出して信徒が運び、10年以上を費やして1919年に完成しました。丸みのある折上天井に椿があしらわれた愛らしい内装は、ぜひ見学したいもの。見学には事前予約が必要で、内部は撮影禁止です。
- 時間
- 9:00~17:00
- 料金
- 見学無料(寄付受付)
- 見学予約
- 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター
佐世保港への船が出る有川港は、頭ヶ島天主堂から蛤浜海水浴場方面に戻る途中にあります。五島列島で一番大きい島、福江島や長崎港への船が出る島南部の奈良尾港まで行く場合は、途中に「中ノ浦教会」などがあります。
中ノ浦教会
「中ノ浦教会」は、静かな入江にたたずむ木造の教会です。1925年に建てられ、1966年には正面の鐘塔が増築されました。すぐ横の海面に映る姿も美しいもの。内部は、椿の花をあしらった天井が特徴的です。
- 時間
- 9:00~17:00(日曜日午前中のミサなどの際は見学不可)
- 料金
- 見学無料(寄付受付)
海と空が織りなすダイナミックな景観に心洗われた「マルゲリータ」でのひととき
空と海をほのぼのとした色合いに染めながら昇る朝日、水平線に沈みゆく夕日を眺め、五島の恵みをたっぷり堪能した「五島列島リゾートホテル マルゲリータ」での時間。島内観光で見た美しいビーチや歴史を感じる教会などとともに、忘れられないものとなりました。
中通島を全身で感じ、心身ともにリフレッシュし、帰りのフェリーでは「来てよかった」「また来たい」という思いに満たされました。
五島列島リゾートホテル マルゲリータ
- 住所
- 長崎県南松浦郡新上五島町小串郷1074-1
- アクセス
- 鯛ノ浦港・有川港より車で約30分
有川港より送迎あり(3日前までに要予約) - 駐車場
- 無料
- チェックイン
- 15:00(最終チェックイン20:00)
- チェックアウト
- 10:00
撮影:福羅広幸 取材・文:仲川僚子