やぶ塚温泉 開祖 今井館 |
開祖という名が示すとおり、この地で湯を脈々と守り継いできた宿である。今井館所蔵の古文書の中に、「薬湯渡世人天保二年夘月二月 弥右衛門」の文字がある。弥右衛門とは初代の主、今井弥右衛門のこと。天保2(1,831)年というから江戸時代末には、すでに薬湯という鉱泉宿を営んでいたことになる。
「初めて来られたお客さまは、『こんな近いところに、こんないい湯があるなんて』と驚かれます。お湯を知ったリピーターが多いのが、うちの特徴ですかね」と、9代目主人の今井和夫さん。
湯の効能については、代々先祖から言い伝えられてきた。
「昔から“おできは、やぶ塚に行けば治る”と言われています。皮膚病に特効があり、草津や伊香保で治らなかった人が、うちの湯に10日間入ったら治りました。吹き出物なら朝から4回入れば、1日で治ってしまいますよ」
まさに薬湯と呼ばれてきた逸話が、ご主人の口からぽんぽんと飛び出した。
その自慢の湯は、同館の裏山にある温泉神社のふもとから湧く。源泉名を「巌理水」といい、何百年もの間、村人たちが守り続けてきた霊泉である。
うっすら生成り色した湯は、ローションのようなこっくりとした浴感がある。湯舟から腕を出してさすると、手のひらがスルスルと摩擦なく滑っていく。濃くて、なめらかな湯だ。
温泉は天から与えられた限りある地球の資源である。加水をせずに100%の源泉を大切に利用したいからと、あえて露天風呂を造らず、内風呂に徹した湯守としてのこだわりが息づいている。日帰り入浴客をとらないのも、湯を求めて滞在する宿泊客への思いやりが感じられる。
。 |
|
 |
(C)2010 Jun Kogure / Hajime Kuwabara |
|
 |
 |
|
 |
 |
|
源泉名 |
藪塚温泉 巌理水 |
湧出量 |
測定せず(動力揚湯) |
泉温 |
15.3度 |
泉質 |
メタけい酸・炭酸水素ナトリウム含有 |
効能 |
疲労回復、病後回復期、健康増進ほか |
温泉の 利用形態 |
加水あり、加温あり、循環ろ過 |
|
 |
|
|