旧遷喬尋常小学校(きゅうせんきょうじんじょうしょうがっこう)
明治40年建築の木造校舎は、完全なシンメトリー(左右対称)のデザイン。檜材を使い、二重折り上げで仕上げた洋風の格(ごう)天井、幅広の回遊式階段、大きなマンサード屋根(二重勾配)など細部にわたって工夫が施されることから全国版の建築専門誌には、「迎賓館を思わせる豪奢な洋風建築」、「木造ルネッサンス風小学校」と掲載。そんなモダンな佇まいは、映画のロケ地としても多数活用され、これまでも「ALWAYS 三丁目の夕日」、「火垂るの墓」、「大病人」などの名シーンが撮影されてきました。小学校としての役目を終えた平成2年に旧久世町指定文化財に、また平成11年3月校舎全体が国の重要文化財の指定。時を重ねた大人たちがふと少年時代へとタイムスリップする空間は、今もなおその輝きを失うことなく地元民に愛され続けています。
外観
校舎は完全なシンメトリー(左右対称)のデザインである。中央部は倍の厚みがあり、玄関左右を少し張り出して破風で飾り、その上に大きなマンサード屋根(二重勾配)がしっかり乗っている。正面左右の壁にはベネチア窓である飾り窓があり、軒下の壁に筋交いを組み化粧している。窓間の板壁は水平に下見板が張られ、窓下は垂直の縦羽目板である。一階と二階の間に胴コーニス(蛇腹)が入っている。校名
中国の古典、詩経の一説で「出自幽谷※遷于喬木」から明親館のつながりを持つ山田方谷が名付けた。ゆうこくよりいでてきょうぼくにのぼる(※うつるともよむ)。2文字をとって遷喬(せんきょう)とした。伐木(ばつぼく)という題の詩、全18行の2行目にある一節で、自然の情景を詩った場面であるが、ウグイスが深山の暗い谷間から飛び立ち、高い木に移ることに例えて、学問に励み立身出世することと解釈されている。鳥取市立遷喬小学校とは姉妹校の縁を結び交流を続けている。建築
2年間の工事期間をおき、明治40年(1907)7月20日に完成した。工事費は17,984円56銭で、当時の町予算(経常経費)の2.93倍もの巨額な費用を投じている。費用のうち11,500円は県からの貸し付けを受けている。設計は県の江川三郎八工手、建築材は真庭市木山国有林の優れた檜、杉材を選定し使用している。文化財
全国版の建築専門誌に「迎賓館を思わせる豪奢な洋風建築」「木造ルネッサンス風小学校」と紹介されている。ルネッサンス様式による明治の擬洋風建築と呼ぶことができる。長島茂雄の夢の学校CM、伊丹十三監督作品の映画、大病人の一場面などに登場し注目をあびる。昭和63年4月18日中央部を、そして平成2年7月19日両袖部を久世町文化財指定した。平成11年5月13日、校舎全体が国の重要文化財の指定を受ける。正式名称は、旧遷喬尋常小学校校舎。講堂
二階中央の講堂は、二重折り上げの洋風格(ごう)天井となっており、鏡板はすべて無節の檜柾目板である。透明ガラスは、角度によって景色が変わるものがあり、短い期間しか造られなかった貴重な手造りである。講堂の風格は訪れる者を圧倒する。教室棟
廊下は幅広く分厚い松材を使用している。戸の板壁は、全面無節の杉材で、その幅は一定ではない。まさに工匠たちの情熱と技術の結晶といえる作品である。校舎端のまわり階段は幅広くゆったりとしており、上下には橋の欄干を思わす細かい細工が施されている。フォトギャラリー