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楽天トラベルトップ > 観光地を想うホテル・旅館の選択。  >  コウノトリが舞う空~いのちを育む兵庫県豊岡市の挑戦

コウノトリの舞う空

コウノトリが舞う空~いのちを育む兵庫県豊岡市の挑戦兵庫県の北部に位置する豊岡市。ここは1300年の歴史をもつ名湯・城崎温泉ほか、歴史的建造物が立ち並ぶ出石(いずし)城下町など魅力的なスポットが点在し、関西有数の観光地として日本はもとより世界各地から年間400万人もの人々が訪れます。
そして、同市は一度日本の空から姿を消した鳥「コウノトリ」を野生に復帰させる壮大なプロジェクトに取り組むまちとしても世界中から高い注目を集めています。

絶滅したコウノトリを自然復帰へ
世界でも例のないプロジェクト

「コウノトリは、江戸時代のころまでは日本各地の空を飛んでいました。しかし、明治時代の乱獲や第二次世界大戦下にコウノトリが巣をつくる松の木が燃料として伐採されてしまったことなどで激減し、とうとう1971年を最後に日本から姿を消してしまいました。豊岡市は野生のコウノトリが最後まで生息していた地なのです」。そう話すのは、豊岡市環境経済部大交流課の吉本努さん。
戦後すでに絶滅の危機にあったコウノトリ。豊岡市では最後の1羽が姿を消す6年前の1965年から絶滅を食い止めるべく、人工飼育に取り組み始めました。しかし、残念ながら1971年に絶滅してしまいます。その後も当時のソ連から幼鳥を譲り受けるなどして繁殖の研究は続けられました。そして約40年の苦難の道を経た2005年、ついに人工繁殖したコウノトリが豊岡の空に放たれたのです。以後、放鳥と繁殖は進み、現在では約100羽のコウノトリが自然の中で生息しています。
コウノトリは翼開の長さが2m近くもある日本最大級の鳥です。大きな翼を広げ、悠々と空を舞う姿は優雅であり勇ましくもあり、とても印象深いものです。

環境への努力を経済的利益に結び付けることが重要と語る吉本さん環境への努力を経済的利益に結び付けることが重要と語る吉本さん

農業を変えることで、
コウノトリが暮らせる自然環境を整える

さまざまな苦難を乗り越え、ようやく豊岡の空に放たれたコウノトリ。狩猟が禁止され、松の木も伐採されなくなったものの、羽ばたいたコウノトリが自然界で健やかに育っていくことは容易ではありませんでした。なぜならば、そこには「環境問題」が深く関係しているからだと吉本さんは言います。
「コウノトリが絶滅した背景には、もう1つ大きな理由があります。それは、『農薬』です。大型鳥類であるコウノトリは、水辺生態系の食物連鎖の頂点に位置しており、小魚、カエル、昆虫、ヘビなどをエサにしています。水田にまかれた農薬を口にした生物は次のエサとなり、さらにそのエサとなっていくため生態ピラミッドの上にいけばいくほど、農薬が体に蓄積されていきます。つまり、生態系の頂点に立つコウノトリは、蓄積量も最大なんです。戦後、農薬が広く使われるようになると、多くのコウノトリは農薬による内臓疾患で死んでしまいました。それが、絶滅に至った大きな理由なのです」。(吉本さん)
人工繁殖が成功しても生息していける環境が整わなければ、日本の空にコウノトリが戻ることはありません。また、「農薬」の害を被れば再び滅亡の道をたどってしまいます。そこで始まったのが自然環境への取り組みです。「コウノトリを再び大空に帰す」。その強い思いのもと、コウノトリが暮らせる環境づくりが始まりました。

生態系に配慮して整備された田園に舞うコウノトリ生態系に配慮して整備された田園に舞うコウノトリ

「環境を整えるうえで、まず向き合ったのが農薬の問題でした。今日、豊岡市では『コウノトリを育む農法』という無農薬や減農薬による農法が確立され、それにより収穫されたお米は安全なうえ味も良いと高い評価を得ています。しかし、ここに至るまでは当然、苦労もありました。農薬に頼らなければその分、手間がかかります。それにこれまでのような収穫量が得られるかもわかりませんから、生産者としてもすぐには踏み切れません。そういった中でも続けられた試行錯誤の末、多くの方の理解とサポートを得て、新農法は従来の農法よりも利益を生み出すまでになりました。努力と利益がきちんと結びついたことが大きな後押しになり、共感する生産者が増えていったのです」。(吉本さん)
豊岡市の水田は、一般的な農法では枯れ田になる冬期でも水が張られています。これはさまざまな生き物たちが卵を生む環境を残すため。年中水を張り、管理するのですから手間は多くなりますが、この努力のおかげで稲作の時期に成長した生き物がこれまで農薬で処理をしていた害虫を食べてくれるというわけです。
こうした努力のもと収穫された米「コウノトリ育むお米」はブランド米として成長を遂げ、豊岡市の経済を支える特産物のひとつにもなっています。

コウノトリが舞う環境を守るうえで電気自動車もその一翼を担っている コウノトリが舞う環境を守るうえで電気自動車もその一翼を担っている

CO2の削減と自然エネルギーを活用し、
自然と折り合う暮らしを推進

豊岡から羽ばたいたコウノトリが、日本全国の空を日常的に舞う。その日を目指して同市では、農業以外でも環境保全に力を入れています。中でも太陽光やバイオマスなどの自然エネルギーを活用していくこと。それに伴いCO2の排出を抑えて環境への負担を減らすことへ積極的に取り組んでいます。
そのような環境配慮の意識から豊岡市役所でも日産の電気自動車(EV)「e-NV200」を活用しているそうです。
「地域の方々との打ち合わせに出向くなど、市内を車で移動することは日常です。そういった短距離移動に私たちは電気自動車を活用しています。利用する最大の理由は、やはりCO2を出さず環境にやさしい点です。そのうえ走行のパワーもありますし、音も静か。短距離で活用する分には乗り心地や使い勝手も申し分ありません」。(吉本さん)
電気自動車は車体自体が高価であっても、燃料はガソリン車に比べて低コストです。長く、そして日常的に使うことを考えると経済的で、その点においても活用メリットは大きいと吉本さんは語ります。
「ただ、長距離移動となると燃料切れの心配が少ないガソリン車に頼らざるを得ないところもあります。今は両者を用途により使い分けて活用していますが、やはり環境保全に力を入れている豊岡市ですから『ガソリン車に頼らない』という意識はあり、できる限り電気自動車を活用するよう心掛けています。そして、いずれは電気自動車だけでも難なく長距離移動までできるようになることが、環境を守るうえでも理想的ですね」。(吉本さん)
今後、電気自動車が広く一般的に活用されていくことは、豊岡市はもとより「コウノトリが悠然と舞う日本」を取り戻すことへの大きな架け橋にもなるのではないでしょうか。
コウノトリの暮らしを守ることを根底に、環境保全活動に力を入れる豊岡市。それゆえに、豊かな自然、豊かな食材が溢れています。そして、コウノトリが大空を舞う姿もまた、見るものを魅了します。ぜひ、コウノトリが舞う郷・豊岡市へと足を運んでみてはいかがでしょうか?

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