茨城県のあんこうは、冬が旬の食材のひとつです。
ややグロテスクな見た目とは裏腹に、濃厚な味わいの「あん肝」やぷりっとした「淡白な身」がとてもおいしいと県内外で評判。特に、
最も脂がのる12月~2月にかけてのおいしさは格別です。
昔から茨城県で水揚げされるあんこうは「常盤もの」と呼ばれ、市場では高級魚とされてきました。茨城県のあんこうが特別なのは、漁獲される常盤沖の潮の流れに関係します。
親潮と黒潮がちょうど交わる常盤沖では、大量のプランクトンが発生します。すると、あんこうの餌となる小魚もそれを求めて集まるため、常盤沖では肝までまるまると太ったおいしいあんこうを獲ることができるのです。
ミニ知識
「暗愚」とはのろまで愚か者の意味。ぶよぶよして、太っている見た目が由来です。「あんぐうお」が「あんこう」に転化。
冬になると、茨城県内の旅館などで披露されるあんこうの「吊るし切り」。この独特のさばき方は、単なるパフォーマンスではありません。
身がやわらかく表面がヌメヌメとしたあんこうは、まな板の上ではとてもさばきにくい魚です。そのため、あごをカギに引っかけて吊るした状態で身をさばいていく、吊るし切りという技法が漁師たちにより生み出されました。
吊るしたあんこうは、まずヒレを切り落とします。そして口の周りに切れ込みを入れて皮をはがした後は、「
七つ道具(身・皮・胃・肝・卵巣・ エラ・ヒレ)」と呼ばれる各部位を次々と切り分けていきます。職人が手際よくあんこうを解体していく姿は、実際に目の前で見ると圧巻です!
かつて、漁師たちの貴重なスタミナ源として食されていたあんこうは栄養満点! 身は高タンパクで低カロリー、そして美肌効果が期待できるコラーゲンをたっぷりと含んでいます。さらに、肝には皮膚トラブルや風邪の予防、貧血、高血圧などに効果的といわれるビタミンAやビタミンB2、老化を抑える働きがあるとされるビタミンEも豊富。 鍋などにして野菜といっしょに食べると効率よく栄養が取れるので、特に 女性におすすめです。
茨城県の冬のごちそうといえば、あんこうの七つ道具と、白菜・春菊・きのこなどの野菜を、出汁のきいたスープで煮込んだ「あんこう鍋」。七つ道具それぞれの味と食感や、肝のうま味などが楽しめます。スープはみそ仕立てかしょうゆ仕立てのどちらかが一般的です。
あんこう鍋より、さらに濃厚に肝のコクやうま味を堪能できる「どぶ汁」という鍋料理もあります。どぶ汁は、かつて漁師たちが肝を鍋に炒りつけてみそと合わせ、あんこうと野菜の水分のみで煮て食べたのがはじまりです。 現在では、ほとんどのお店でスープや調味料を使い、食べやすいように味を整えて提供しています。宿によって味付けが違なるのも魅力。 辛党ならぜひ日本酒とともに味わいたい、ツウな一品ですよ。