知られざる日本の宝!日本遺産の魅力と楽しみ方

日本遺産の楽しみ方

歴史ある寺社仏閣、伝統工芸、郷土料理、祭りなど、日本には、各地域に脈々と受け継がれてきた貴重な文化遺産が数多く存在します。しかし、その価値が十分に認識されていない「隠れた宝」も少なくありません。

そんな地域固有の文化的資産を守り、より多くの人々に知ってもらうための取り組みとして注目を集めているのが「日本遺産」制度です。

「知られざる日本の宝」に触れられる、日本遺産の魅力とその楽しみ方について詳しく紹介します。

 

「日本の文化・伝統を語る 」日本遺産とは?

点から面へ、ストーリーで体感する日本の文化遺産

日本遺産の魅力と楽しみ方

日本遺産とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定する制度です。平成27(2015)年に創設されて以来、国内外に日本の豊かな文化を発信し、地域の活性化を図ることを目的としています。

有形・無形の文化財群を総合的に整備・活用することで、日本の豊かな文化遺産を後世に伝える重要な役割を果たしているのです。

2025年2月現在、全国で104件の日本遺産ストーリーが認定されており、各都道府県に最低一つのストーリーがあります。これにより、各地の歴史や文化が広く認知され、地域ごとの魅力が際立つとともに、観光客の増加や地域経済の活性化にも寄与しています。

全104件のストーリーについては、「日本遺産 ポータルサイト」で確認できます。

 

日本遺産の魅力と楽しみ方
「日本茶800年の歴史散歩」の構成文化財「石寺の茶畑」

日本遺産の最大の特徴は、単独の文化財を認定するのではなく、地域に根付いた歴史や文化を「ストーリー」として認定する点。一つの神社仏閣を認定するのではなく、ある地域の古い街並み、伝統工芸、祭礼行事、そして食文化など、さまざまな文化資源を一つの物語として紡ぎ、その地域ならではの魅力を浮きぼりにします。

具体例を挙げると、京都の日本遺産である「日本茶800年の歴史散歩」では、宇治茶をテーマにしています。京都・宇治は日本茶の発祥地とされ、日本茶文化の中心として栄えてきました。

宇治の茶畑や茶摘みの風景、茶問屋、抹茶を使った伝統料理、さらには茶の湯文化といった要素がストーリーとして構成されています。

点在する構成文化財を「面」として捉え、その地域の歴史や文化の深い理解へと誘う日本遺産。観光客は単に名所旧跡を訪れるだけでなく、その背景にある物語を追体験することで、より深い感動と学びを得られるのです。

 

世界遺産とどう違う?

旅館くらしき
「一輪の綿花から始まる倉敷物語」の構成文化財「倉敷川畔伝統的建造物群保存地区」

「遺産」と聞くと、「世界遺産」について思い浮かべる人が多いかもしれません。日本遺産と世界遺産は、どちらも文化や自然の価値を認定する制度ですが、その定義や目的に明確な違いがあります。

日本遺産は主に日本国内の文化的特性や地域の歴史を反映し、地域活性化や観光振興を目的としています。一方、世界遺産は国際的な基準に基づき、普遍的な価値を持つ文化や自然を保護することを目指しています。

また、認定の基準や手続きにも違いがあり、日本遺産は文化庁が地域の申請に基づき審査の上認定する一方、世界遺産はユネスコによる厳格な審査プロセスが設けられています。さらに、日本遺産は地域ごとの独自の特色を反映しているため、認定された日本遺産を知れば、その地域固有の文化や伝統をより深く理解することができます。

 

日本遺産を深く楽しむには?

日本遺産の魅力と楽しみ方
『藍のふるさと 阿波』の構成文化財「阿波踊り」

日本遺産は歴史的および文化的な魅力を持ち、各地域ごとに特色やユニークな点があります。これらを知るのに大切なのは、まず「ストーリーを深く知る」こと。各日本遺産にまつわる歴史的背景や逸話を掘り下げることが重要です。これにより、遺産を構成する文化財が持つ本来の価値や意味を理解できます。

また、日本遺産を訪れれば、地域固有の文化や伝統を直接体験できます。観光スポットを訪れるだけでなく、地元の祭りや伝統工芸のワークショップに参加することで、その地域ならではの歴史や文化を肌で感じられるでしょう。地域の人々とのふれあいが、歴史や文化への新たな視点を提供し、より豊かな旅の体験をもたらすはずです。

 

日本遺産のストーリー5選

これまで紹介したように、日本遺産では、歴史や文化の背景にあるストーリーに光を当て、それらを紡ぐことで地域の魅力をより立体的に伝えています。日本遺産に認定された104のストーリーの中から、5つを厳選して紹介します。各地に息づく歴史と文化の物語を、ぜひ体感してください。

 

『「鮭の聖地」の物語 ~根室海峡一万年の道程~』(北海道)

日本遺産の魅力と楽しみ方
根室半島チャシ跡群のヲンネモトチャシ跡

北海道最東端に位置する根室海峡沿岸地域は、一万年以上にわたり人々の生活が続いてきました。この地の暮らしを支えてきたのは、毎年秋に川を遡上する鮭であり、地域の生命と文化の源となってきました。

縄文時代から江戸時代にかけて、鮭を求めて多くの人々が集まり、異文化の交流や衝突が繰り返されます。やがて江戸時代になると、当地の鮭は高品質なブランド魚として将軍家にも献上されました。幕末には会津藩士が鮭資源に着目し、水産業の基盤を構築。明治以降、鮭資源の減少に伴い、人工ふ化事業や新たな産業の開拓が進められました。

日本遺産の魅力と楽しみ方
鮭とばを干す風景(イメージ)

現在でも、鮭は地域の基幹産業として全国の食卓とつながり、根室海峡沿岸は「鮭の聖地」として人々の誇りと文化を伝え続けています。この地域では、鮭を中心とした豊かな食文化が育まれ、鮭とばや山漬け、鮭飯寿司など、一尾を余すところなく活用する伝統が受け継がれています。

また、野付半島や標津遺跡群、チャシ跡など、鮭と人々の歴史を物語る文化財が数多く存在し、訪れる人々に一万年の物語を伝えています。根室海峡沿岸は、鮭とともに歩んできた歴史と文化を今に伝える貴重な地域です。

『政宗が育んだ“伊達”な文化』(宮城県)

日本遺産の魅力と楽しみ方
瑞鳳殿

伊達政宗は、戦国大名としての政治・軍事的な活躍だけでなく、文化人としても優れた才能を発揮し、仙台を自らの「都」として築き上げました。古代から東北地方に根付いてきた文化の再興を目指し、伊達家の伝統文化を基盤に、桃山文化の豪華さや海外文化の国際性を取り入れ、新しい「伊達」な文化を仙台の地で花開かせました。

政宗の文化に対する姿勢は、仙台藩二代藩主の忠宗、三代綱宗、四代綱村、五代吉村といった後継者たちにも引き継がれ、東照宮や瑞鳳殿、鹽竈神社などの建造物にその影響が見られます。さらに、松尾芭蕉が『おくのほそ道』で紹介した松島や多賀城碑などの歌枕の地は、政宗の文化的影響を受け、全国的に知られるようになりました。

日本遺産の魅力と楽しみ方
仙台張子の松川だるま

政宗が築いた文化は、庶民の間にも広がり、定着していきました。例えば、仙台藩の御用職人たちが手掛けた工芸品は、仙台平や仙台御筆、堤焼、仙台張子、仙台箪笥などとして発展し、現在でも伝統工芸品として受け継がれています。

このように、政宗が育んだ「伊達」な文化は、時代を超えて広がり、現在の宮城県に暮らす人々の生活の中にも深く根付いているのです。

『いざ、鎌倉 ~歴史と文化が描くモザイク画のまちへ~』(神奈川県)

日本遺産の魅力と楽しみ方
鶴岡八幡宮

鎌倉は12世紀末に源頼朝が幕府を開き、武家社会の始まりの地になりました。幕府による都市整備が進み、鶴岡八幡宮や若宮大路が造られ、禅宗寺院が保護されました。鎌倉幕府滅亡後も鎌倉は東国の拠点として繁栄しましたが、やがて衰退。戦国時代には静かな農漁村になっていきました。 

江戸時代には、徳川将軍家が源氏の聖地として鎌倉を重視し、社寺の復興を促進しました。やがて浮世絵などから庶民にも知られ、江戸近郊の観光地に。明治時代にはリゾート地としての価値が高まり、海水浴場や別荘地として栄えていくのです。政界・財界人の別荘建設が進み、近代都市化が進展する中で、鎌倉彫や御用聞きなどの商業文化も発展しました。

日本遺産の魅力と楽しみ方
旧華頂宮邸

さらに、多くの文人が鎌倉に移り住み、「鎌倉文士」として文芸活動を展開。彼らは地域の保存運動にも貢献し、鎌倉の歴史的景観を守りました。こうして鎌倉は、武家文化、宗教、観光、別荘文化、文学・芸術が融合し、モザイク画のように組み合わされた特別なまちとなったのです。

『飛騨匠の技・こころ ー木とともに、今に引き継ぐ1300年ー』 (岐阜県)

日本遺産の魅力と楽しみ方
安国寺経蔵

飛騨地方は、豊かな森林資源に恵まれ、古代より高度な木工技術が発展してきました。特に奈良時代には、全国で唯一、税の代わりに木工技術者を都へ派遣する「飛騨工制度」が実施され、飛騨の匠たちは都の宮殿や寺院の建設に携わりました。彼らの技術と実直な気質は、文学作品にも描かれ、『万葉集』には「かにかくに物は思はじ飛騨人の打つ墨縄のただ一道に」という歌があり、飛騨工の実直さが詠まれています。

日本遺産の魅力と楽しみ方
一位一刀彫の大黒天

このような技術と精神は現代まで受け継がれ、高山の文化の基礎となっています。市内には中世の社寺建築や近世・近代の大工一門の作品、伝統工芸品などが多く残されており、応永15(1408)年に建立された安国寺経蔵には、日本現存最古の輪蔵(回転式書架)があり、飛騨匠の高度な技術を今に伝えています。また、江戸時代には飛騨春慶や一位一刀彫などの伝統工芸が生まれ、これらも飛騨匠の技術の賜物です。

現在もさまざまな場所で飛騨匠の技と心に触れることができ、木と共に生きてきた1300年の高山の歴史を体感することができます。

『砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~』 (福岡県・佐賀県・長崎県)

日本遺産の魅力と楽しみ方
嬉野市塩田津

室町時代末期から江戸時代にかけて、西洋や中国との貿易を通じて日本に砂糖がもたらされました。特に、長崎と小倉を結ぶ全長約228キロメートルの長崎街道は、砂糖や外国由来の菓子が多く流入し、独自の食文化が発展したことから「シュガーロード」とも呼ばれています。

この街道沿いには、塩田津などの宿場町があり、江戸時代には砂糖問屋や菓子屋が軒を連ね、砂糖文化の中心地として栄えました。

日本遺産の魅力と楽しみ方
カステラ

また、長崎街道沿いの地域では、カステラや金平糖など、西洋や中国から伝わった菓子が独自に発展し、現在でも多彩な伝統菓子が受け継がれています。

さらに、長崎街道は人々や物資の往来だけでなく、文化や技術の伝播にも重要な役割を果たしました。オランダ商館長や中国商人など、多様な人々がこの街道を行き交い、異国の文化や技術が日本各地に広まりました。

現在、長崎街道「シュガーロード」沿いの地域では、伝統の味と技術を守りながら、砂糖文化を後世に伝える取り組みが続けられています。訪れる人々は、歴史的な景観とともに、個性豊かな菓子を楽しめ、400年以上にわたる砂糖と菓子の文化の歴史に触れることができます。

日本遺産には、日本各地に息づく歴史や文化の魅力が詰まっています。そこには、地域の人々が守り続けてきた伝統や、時代を超えて受け継がれる物語があります。観光地を巡るだけでは味わえない、日本ならではの文化や暮らしの深みを感じられるのが、日本遺産への旅の醍醐味です。知られざる日本の宝にふれ、歴史の息吹を感じる旅へ出かけてみませんか?

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