
最近、朝を迎えるのが早くなりました。朝の空気は、少しひんやりとしていて、まるで肌をやさしくなでるようです。ふと早起きした朝には、湯気に包まれながら深呼吸したくなりませんか?夏の朝は、外の空気が格別に気持ち良い時間です。気温も湿度もちょうど良く、暑すぎず、寒すぎず。息を吸うたびに、体全体が軽くなるような感覚を覚えます。
そんな清々しい空気の中でサウナに入ると、肩の力が自然と抜け、心まで穏やかになっていくのを感じます。やさしい時間が、静かに流れ始めるのです。サウナから出た後、朝の光と風が心地よく、肌に残る湯気の温かさが旅先の朝を、ゆっくりと特別な時間に変えてくれます。
今回は、全国各地のサウナを旅するしきじの娘・笹野美紀恵さんが、夏の朝にこそ訪れたい、やさしく息をつけるようなサウナ宿を3つご紹介します。気持ちのいい朝に包まれて、心と体をやわらかくほぐす旅に出かけてみませんか?
ホテルグランミラージュ(富山)
朝6時、アートと湯気に包まれる、特別なスパ時間を

富山の街を少し離れた、落ち着いた場所にたたずむ「ホテルグランミラージュ」。その最上階にある温浴施設「スパ・バルナージュ」では、宿泊者限定で朝6時からサウナを利用することができます。街の喧騒から離れ、静かな朝を迎えるのにぴったりの環境です。まだ静けさの残る浴室に入ると、その空気ごとやわらかく整えられていくような感覚になります。
浴室には、レディー・ガガの靴も手がけたアーティスト・舘鼻則孝さんのアートが随所に取り入れられています。湯気の中に浮かび上がる造形や色彩が、日常の感覚をそっと切り替えてくれるようです。ただ整うだけではない、視覚からも満たされるような朝時間が、ここにはあります。


サウナ室は約90℃前後と、朝でも入りやすい温度設定。朝の涼しい外気と交互に浴びることで、体がやわらかく温まり、深い呼吸が自然とできるようになる。そんな心地よさがあります。
水風呂でひと息ついたあと、湯気をまとったまま窓辺に立つと、外の空気と肌に残る温かさがちょうどよく調和し、自然と意識がさえていく朝時間がそこにあります。ホテルステイに寄り添うようなこの朝のサウナ時間は、旅の1日を静かで、整った気持ちで始めたい方にぴったり。時間に追われないやさしい朝を、自分のペースで迎えられる場所です。
笹野さん:湯気の中にアートが浮かぶ、この空間を朝の静けさの中で体験できることに、改めて心がほどけるような心地よさを感じました。「温浴って、もっと自由でいいんだな」って。朝の時間に、そう実感させてもらいました。
ホテルグランミラージュ
- 住所
- 富山県魚津市吉島1-1-20
- 総部屋数
- 75室
- アクセス
- 「魚津」駅より徒歩約5分、北陸新幹線「黒部宇奈月温泉」駅から車で約20分
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香林居(石川)
朝7時、白山の香りと湯気に包まれる、感覚が目覚めるサウナ時間を

金沢の中心街からほんの少し歩くだけで、空気の匂いや温度がすっと変わるような、静けさに包まれた空間。香林居(こうりんきょ)の屋上にある「ルーフトップサウナ&バス」は、宿泊者限定で朝7時から利用できます。街が本格的に動き始める少し前、澄んだ空気とやわらかな光に包まれて過ごすこの時間は、まるで森の中にいるような静けさと清々しさに満ちています。


完全予約制のサウナ室は、4名までのフィンランド式。ロウリュには、白山の森林素材から抽出された自家製の芳香蒸留水が使われており、深呼吸するたびに、木々の香りが体の奥にまでしみ込んでいくようです。
湯気の中で感覚がひらき、外気浴では露天風呂と水風呂がやさしく体を包み込みます。風や温度、香り、音、光、それぞれが余白のある朝という時間と静かに調和し、気づけば、昨日までの疲れがふっとゆるんでいきます。視覚も嗅覚も心も、やさしく目覚めていくような、静かなサウナ体験。「香林居」の屋上には、そんな一日のはじまりにふさわしい余白が、そっと静かに広がっています。
笹野さん:朝7時の屋上は、空がちゃんと見えて、風がよく通る。この季節の金沢で、こんな気持ちいい朝を独り占めできる場所はなかなかないと思います。湯気のあとに浴びる朝の光と風が、ほんとうにちょうどよくて。ここはサウナ好きよりも、朝を大事にしたい人におすすめしたくなります。
香林居
- 住所
- 石川県金沢市片町1-1-31
- 総部屋数
- 18室
- アクセス
- JR「金沢」駅より車で約15分
郷音-G.O.A.T-(山梨)
目覚めてすぐ、薪をくべて、朝のサウナへ

山梨・都留の静かな森の中にたたずむ「郷音(ゴート)」は、サウナ付きの完全プライベート宿泊施設。自然エネルギーや地域との共生をテーマにしたこの場所では、滞在そのものがやさしく整っていくような感覚があります。目覚めたらすぐ、誰にも気をつかわずにサウナへ向かえる。そんな自由さも、ここならではの魅力。薪をくべて、自分のペースでじっくり室温と向き合う時間が、朝の空気とともにゆっくりと心と体を目覚めさせてくれます。


サウナ室のガラス窓からは、森の緑と空の色が刻々と変わっていく様子が見渡せて、ただそこにいるだけで気持ちがすっと静まっていく。ロウリュで立ちのぼる湯気の奥に、白く光る空が少しずつ広がっていくのを感じるこの時間が、私はとても好きです。
火照った体をまず冷やすのは、富士の地下水を汲み上げた清らかな水風呂。そして、目の前に流れるプライベート渓流にも飛び込めるというのが、この場所のぜいたくさです。澄んだ空気と朝の静けさに包まれて、サウナ、水風呂、渓流を自分のペースで何度も行き来できる時間。誰にも邪魔されない、自分だけの朝がそこにあります。「ととのう」ためだけじゃなく、自分の輪郭をゆっくり取り戻していくような感覚。自然に包まれながら、自分にまっすぐ戻れる場所。それが、郷音の朝のサウナです。
笹野さん:郷音の朝って、ほんとうにぜいたくなんです。空気が澄んでいて、肌にあたる風もやわらかい。サウナで温まって、外に出て、渓流の音に耳を傾けるだけで、身体の奥から力が抜けていくような感覚になります。ただ風にあたってるだけなのに、「あ、ちゃんと休めてるな」って感じられる。そんなふうに、自分と向き合える朝の時間を過ごせる場所って、ありそうでなかなかないと思います。
郷音-G.O.A.T-
- 住所
- 山梨県都留市朝日曽雌1343
- 総部屋数
- 1室
- アクセス
- JR「鳥沢」駅から車で約33分
夏の朝って、ほんとうに気持ちいいんです。日中ほど暑すぎず、空気が澄んでて、風が肌にすっとなじむ。湯気に包まれながら深呼吸するだけで、気持ちがリセットされていく感覚があります。サウナに入って、外に出て、風を感じて、ただそれだけで「今日をちゃんと始められるな」って思える。この時期だからこそ味わえる、やさしい朝の時間をもっと多くの人に体験してほしいです。