
梅雨の気配が近づく6月。雨に濡れた空気にふれるたび、肌も心も知らないうちに小さな疲れを抱えていることに気づきます。そんな季節に訪れたいのが天然温泉の湯気と湿度に包まれる「温泉サウナ」。高温の乾いた熱とは違い、温泉の蒸気が肌にやさしく染みわたり、心もふわっとととのっていくような感覚が味わえます。
今回は、全国各地のサウナを旅するしきじの娘・笹野美紀恵さんが、温泉のチカラを生かした3つのサウナ空間をご紹介します。湿度の違い、空間の美しさ、過ごし方の自由さ。今だから行きたいサウナの旅へそっと出かけてみませんか?
おとぎの宿 米屋(福島)
源泉の霧に包まれる“なにもしない”という美容

福島・須賀川にある「おとぎの宿 米屋」。ここで体験できるのは、日本初となる「源泉のみを使用したミストサウナ」。とろみすら感じる天然温泉がそのまま霧となって降り注ぎ、 肌の上に、やわらかく、あたたかく、しみ込んでいきます。


さらに全客室に温泉付き。部屋にこもり、雨の音を聞きながら、湯と湿度にくるまれる。 “なにもしない"という選択が、こんなにも心と肌にやさしいものだったのかと気づかされます。
食事は、無農薬・有機栽培の食材にこだわり、体の内側からも そっとととのえてくれるような味わい。“湿度にやさしく包まれる”というぜいたくをここでゆっくりと。
笹野さん:湿度に包まれると、肌がやわらかくなり、心もほぐれていく。源泉の霧が降り注ぐこの空間で、自分をいたわる時間を持てました。湿度の力を、あらためて感じるひとときでした。
おとぎの宿 米屋
- 住所
- 福島県須賀川市岩渕笠木168-2
- 総部屋数
- 17室
- アクセス
- JR「須賀川」駅から車で約10分、「須賀川」ICから国道118号線を会津方面へ約5分
小浜温泉 湯宿 蒸気家(長崎)
勢いのある湯気にふれて、頭の中も、体の奥も、じわっとほどけていく

「湯宿 蒸気家」は、源泉温度105℃と日本一の放熱量を誇る小浜温泉の蒸気を活用した、個室型の蒸し風呂が特徴の宿です。温泉成分を含んだ蒸気が全身をやさしく包み込み、短時間で発汗を促します。毛穴が開き、汚れが洗い流されることで、美肌効果も期待できます。


また、館内には11台の温泉蒸しかごがあり、宿泊客は無料で利用可能です。地元の新鮮な食材を持ち込み、温泉の蒸気で調理する体験は、まさにこの宿ならではの楽しみ方。自炊ができるキッチンも完備されており、 調理器具や食器類もそろっています。
客室は和室を中心に全18室。素泊まりプランが基本で、リーズナブルな価格設定も魅力の1つです。近隣にはコンビニやスーパー、食事処もあり、滞在中の食事には困りません。
笹野さん:湯気の濃さに最初は少し身構えていたのに、気がつけばその密度が心地よくなっていました。湿度にも、こういう“勢いのある優しさ”があるんですね。
小浜温泉 湯宿 蒸気家
- 住所
- 長崎県雲仙市小浜町北本町14-7
- 総部屋数
- 18室
- アクセス
- 長崎道「諫早」ICから約50分、長崎市街から約70分(島原街道沿い)
おちあいろう(静岡)
湯気までも設計された空間で、静けさと湿度に満たされながら、ととのう時間を

伊豆・天城湯ヶ島。山と川に抱かれるようにたたずむ「おちあいろう」は、 登録有形文化財にも指定された美しい数寄屋造りの宿です。この宿で味わえるのは、肌で、空気で、静かにととのっていくような、“湿度と美意識”が溶け合う滞在。


サウナは2つ。1つは天狗の湯の「天狗サウナ」。露天風呂に隣接した屋外サウナで、サウナストーブが温泉の湯面の上に設置された珍しい造りになっています。湯面から立ちのぼる蒸気がそのままサウナ室に広がり、熱の角が取れたような、まろやかな湿度が空間を満たしていきます。
もう1つは月の湯の「茶室サウナ」。茶室を思わせる静謐な内装で、温泉水を自らロウリュすることで湿度を調整できる、ととのう所作さえ美しさを意識させてくれるサウナです。
建物の中も外も、すみずみに美が息づき、廊下を歩くだけで呼吸がゆっくりと深くなるような時間。食事には、地元の恵みを繊細に引き出した会席料理が並び、自然のリズムに沿うように一日が流れていきます。
笹野さん:湯気に包まれる心地よさって、こんなにも設計によって変わるんだと感じました。湯の面から立ちのぼる蒸気が静かに広がってきて、呼吸するたびに体の中までやわらかくなっていくようでした。
おちあいろう
- 住所
- 静岡県伊豆市湯ヶ島1887-1
- 総部屋数
- 14室
- アクセス
- 「修善寺」駅より送迎車で約20分(要事前予約)
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温泉の湯気に包まれていると、少しだけ自分を大切にできている気がします。ただ座って、呼吸して、湯気を感じているだけなのに、がんばりすぎていたことや無理していた気持ちが、少しずつ静かにほどけていくのがわかります。そんな時間がときどきあるだけでいい。またふと訪れたくなるようなやさしい場所を、これからも旅の中で見つけていけたらと思います。