愛媛が誇る観光名所、道後温泉。シンボルの道後温泉本館をはじめとした3つの外湯では古きよき日本の温泉情緒が楽しめ、その徒歩5分圏内に広がるコンパクトな温泉街にはカフェやレストランにみやげもの店、さらにパワースポットまで揃っています。湯上りぶら歩きにピッタリな、道後温泉で行ってみたいおすすめスポットをご紹介します。
道後温泉ってどんなところ?
日本三古湯のひとつ、3000年以上の歴史を持つ愛媛県松山市・道後温泉。日本最古の温泉であり、一羽の白鷺がここの温泉で傷を癒していたのがそのはじまりとされています。『古事記』や『万葉集』にも登場し、夏目漱石の小説「坊っちゃん」の舞台にもなった場所です。
道後温泉本館を中心にコンパクトにまとまった道後の街は、おいしい愛媛特産グルメや土産物店にパワースポットまでが徒歩圏内。無料で利用できる足湯も10カ所以上あり、のんびりとした街歩きが楽しめます。
松山空港からバスで約40分!道後温泉へのアクセス
松山空港から道後温泉駅前まではリムジンバスで約40分。JR松山駅からは路面電車で約25分、広島・呉や九州・小倉行きのフェリーが発着する松山観光港からはリムジンバスで約35分です。
松山市内中心部の松山市駅からは、普通の路面電車の他に、1時間に1本程度の間隔でレトロなディーゼル機関車「坊っちゃん列車」も走っています。
道後温泉で3つの外湯めぐり
道後観光の中心「道後温泉本館」
公衆浴場として初めて国の重要文化財に指定され、経済産業省の「近代化産業遺産」にも認定されている道後観光の中心、道後温泉本館。
増築を繰り返し現在の姿に
明治27年の改築当初は北側(写真左)の神の湯棟だけでしたが、明治32年に皇室専用浴室の又新殿(ゆうしんでん)が東側に増設。その後、南から西側にかけて浴室や札場などが増築されて現在の本館の姿になりました。
このように増築を重ねていったため、館内は廊下や階段が複雑に入り組んでおり、スタジオジブリの映画『千と千尋の神隠し』のモデルになったともいわれています。
保存修理工事期間中はこちらが入口に
道後温泉本館は2019(平成31)年1月15日より7年間、2期に分けて保存修理工事が行われる予定です。
はじめの1期は、休憩室がある2階以上がすべて休館に。そして、現在男湯として使われている神の湯の2つの浴室のみが男女別浴室として入場(入浴)可能。明治27年の改築当時の3つある入口の1つを利用する形に戻した姿で営業します。
当時は札場だったこちらの場所。なるほど、よく見れば入り口だった時代のなごりがしっかり残っていますね。
※2021年7月に前期の工事が完了し、入り口が北側から東側に変更されています。また、浴室もこれまで入浴客を受け入れてきた「神の湯」から保存修理工事が完了した「霊(たま)の湯」に移行されました。定員は男性が20人、女性が40人となっていますが、新型コロナウイルス感染拡大の防止のため当面はそれぞれ半分の人数に設定されています。
漱石ゆかりの「坊っちゃんの間」
夏目漱石が通った頃の面影を伝える「坊っちゃんの間」には、漱石ゆかりの資料が展示されています。工事期間中はクローズされています。
道後温泉本館
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町5-6
- 営業時間
- 6:00~23:00(札止22:30)
- 定休日
- 不定休
- 料金
- 【利用料金】神の湯/大人(12歳以上)420円、小人(2~11歳)160円
【又新殿観覧】令和4(2022年)年1月以降を予定
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約5分
新しい道後の顔「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」
保存修理工事に入る道後温泉本館に代わって、新たな道後の顔となるのが2017年12月にグランドオープンした道後温泉別館「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」です。
飛鳥時代をイメージし、太古の昔から始まる道後温泉の歴史を、愛媛が誇る伝統工芸や匠の技を用いた内装で表現した飛鳥乃湯泉。
エントランスの天井に吊られたゼオライト和紙や階段奥の大きな湯玉を形成している和釘など、館内のいたるところに愛媛県産の工芸品が使われています。
浴室では、万葉集に詠まれた歌をテーマにした古代愛媛の風景を砥部焼の陶板壁画で表現。そしてこの壁画を背景に、季節の移ろいや水面を行く船などの4分ほどの幻想的なプロジェクションマッピングが30分毎に上映されています。
2階にある休憩室は60畳の大広間の他、今治タオルや伊予水引などの愛媛工芸で彩られた、それぞれ異なるタイプの個室休憩室が5つあります。
貴人気分を味わえる「特別浴室」
飛鳥乃湯泉には本館の皇室専用浴室「又新殿(ゆうしんでん)」を再現した特別浴室が2室あり、貸切で利用できます(要事前予約)。
なお利用には、予約時間の1時間前に飛鳥乃湯泉からかかってくる電話にしっかり出ておくことが必要。というのも各組ごとに温泉を入れ替えており、お客様に確認をとってから浴槽に新しく5トンの温泉を張り始めるのだそう。
本物と同じく、重厚な御成門をくぐって入る優雅なこの特別浴室(家族風呂)。貸切時間は1組90分。料金は大人(12歳~)1,690円、小人 830円+1組2,040円。
昔の貴人が入浴時にまとっていたとされる「湯帳(ゆちょう)」。
特別浴室では、最古にして最先端のコンセプトで復元した、このめずらしい湯帳を着ての入浴が体験できます。
天井に描かれた、道後を訪れた天皇ゆかりのものの絵を眺めながら、
古代の貴人になったつもりで入浴が楽しめますよ。
道後温泉別館 飛鳥乃湯泉
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町19-22
- 営業時間
- 7:00~22:00 ※コースによる
- 定休日
- 無休
- 料金
- 大人(12歳以上)610~1,690円、小人(2~11歳)300~830円 ※コースによる
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約3分
市民憩いの「道後温泉 椿の湯」
飛鳥乃泉の向かいには、松山市の花である椿をシンボルとした、姉妹湯の「道後温泉 椿の湯」があります。1953(昭和28)年の「第8回国民体育大会」時にでき、1984(昭和59)年に改築された温泉ですが、飛鳥乃湯泉オープンに伴って3カ月をかけて改装工事を行い、新しく生まれ変わりました。
道後温泉本館、飛鳥乃湯泉と同じく男女それぞれの大浴場を備えた無加温・無加水の「源泉かけ流し」温泉です。他の2館とは違って大広間などの休憩場所はなく、ローカルな雰囲気漂う松山市民憩いの温泉施設となっています。
道後温泉 椿の湯
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町19-22
- 営業時間
- 6:30~23:00(札止22:30)
- 定休日
- 不定休
- 料金
- 大人(12歳以上)400円、小人(2~11歳)150円
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約3分
湯上りのそぞろ歩きが楽しい「道後ハイカラ通り」周辺
湯上りのそぞろ歩きが楽しめるのがここ「道後ハイカラ通り」。道後温泉本館から道後温泉駅までをL字型のアーケードでつないでおり、250mほどの商店街には土産物店やカフェ、レストランなど60店舗あまりが軒を並べています。
ハイカラ通りをぶらぶら歩けば、
坊っちゃんだんごの形をした箸置きや、
温めぐりにピッタリな「あおゆかご」
デザイン豊富な愛媛県今治市の特産のブランドタオルに、
愛媛のゆるキャラ「みきゃん」が可愛いトートバッグ
などなど、愛媛らしいグッズがたくさん見つかります。
漱石先生に坊っちゃんとその仲間に会えるハイカラ通り脇の「坊っちゃん広場」には、湯上りにピッタリな飲み物と食べ物が。
ブルワリー直送の地ビール「道後麦酒館」
ブルワリー直送の道後ビールが飲めるのが「道後麦酒館」。スタウトタイプは「漱石ビール」、ヴァイツェンビールは「のぼさん(正岡子規)ビール」などの愛称がつけられています。もちろんテイクアウトもOK。
道後麦酒館
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町20-13
- 営業時間
- 11:00~22:00
- 定休日
- 無休
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約5分
「谷本蒲鉾店」の伊予名物じゃこカツ
伊予名物じゃこ天をフライにした「じゃこカツ」。湯上りに道後ビールとこのじゃこカツで一杯はたまりません!
肉厚でぷりっぷりのじゃこカツが食べられるのは、八幡浜市に本店がある老舗かまぼこ店「谷本蒲鉾店」。注文してから揚げてくれるので、サクサクのあつあつがいただけます。じゃこカツ1枚300円、じゃこ天1枚200円。
谷本蒲鉾店 道後店
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町20
- 営業時間
- 8:30~22:00
- 定休日
- 不定休
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約5分
愛媛柑橘果汁専門店「えひめ果実倶楽部 みかんの木」
「みかんの木」は愛媛のさまざな柑橘類とその加工品を販売する愛媛柑橘果汁専門店。旬の柑橘を使ったジュースやジェラート、ソフトクリームなどを求める人たちでいつも賑わっています。
愛媛の特産柑橘「愛南ゴールド」のジェラート(380円)。爽やかでさっぱりした甘さが人気のジェラートです。
えひめ果実倶楽部みかんの木 ハイカラ通り店
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町13-15
- 営業時間
- 8:30~22:00
- 定休日
- 無休
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約5分
道後温泉本館を眺めながらくつろげる「一六茶寮」
道後温泉本館正面にある「一六茶寮」。1階が一六本舗道後本館前店のお菓子売り場、2階が軽食・喫茶の一六茶寮となっており、窓からはこのような、迫力ある道後温泉本館の眺めが楽しめます。
一六銘菓セット(520円)は一六タルトに坊っちゃん団子、抹茶のセット。飛鳥乃湯泉で湯上りのお茶菓子として出される「道後夢菓子噺(どうごむかしばなし)」のお菓子が付いたセットもあります。
一六茶寮
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町20-17
- 営業時間
- 11:00~19:00(L.O18:30)
- 定休日
- 木曜日 ※祝祭日は変更の場合あり。1階の一六本舗は無休
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約5分
道後店限定のゆあがりけんぴが人気「芋屋金次郎 道後店」
湯上りのミネラル補給にぴったりな「ゆあがりけんぴ」は、ここ芋屋金次郎 道後店限定。愛媛南予産のホンダワラという海藻からとれる藻塩で味付けされており、藻塩のしょっぱさが芋けんぴの甘さをより引き立たせ、やみつきになるおいしさ。
また芋のホクホク感がたまらない「揚げたて ゆあがりけんぴ」は、店頭でのみ購入可。道後に来たら必ず食べて帰りたい一品です。
芋舗 芋屋金次郎 道後店
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町6-12
- 営業時間
- 【平日】10:00~19:00
【土日祝】9:00~21:00
- 定休日
- 無休 ※年末年始休業あり
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約2分
愛媛の郷土料理が集合!「 鱧めし イ〇(いまる)」
真鯛の養殖生産日本一を誇る愛媛の郷土料理「鯛めし」ですが、実は県内には2つの異なる鯛めしがあるんです。鯛のお刺身入り玉子かけごはんタイプの南予の郷土料理「宇和島鯛めし」と、炊き込みご飯タイプの中予の「北条鯛めし」。
両方一度に味わうならば、ハイカラ通りの「イ〇(いまる)」がおすすめ。鯛めしの他にも、伊予名物の鱧(はも)を使った「松山鱧まぶし膳」など愛媛の味が揃っています。
北条鯛めしと松山鱧まぶし膳。ともに魚のしゃぶしゃぶがついて1,800円。
愛媛の地ビールも、道後ビールと梅錦の2種類を揃えています。
鱧めし イ〇
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町12-34 2F
- 営業時間
- 【昼】11:00~15:00(L.O14:30)
【夜】17:30~23:00(L.O22:30)
- 定休日
- 不定休
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約1分
道後温泉のパワースポット
湯の守り神を祀った「湯神社」
湯の守り神を祀ったパワースポット「湯神社」は、道後温泉本館が一望できる冠山の上にあります。1707年の地震で温泉の湧出が止まってしまいましたが、湯神社で湯祈祷をしたところ再び湧き出し今に至るのだそう。
主祭神は道後温泉を開いたとされる、大国主命(おおくにぬしのみこと)と一寸法師の原型とされる小さな神様、少彦名命(すくなひこなのみこと)。病気になった少彦名命を大国主命が道後の湯に浸したところ、少彦名命は元気になって「玉の石」の上で踊りまわったと伝えられています。
湯神社
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町4-10
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約5分
温泉をかけると願いが叶う?「玉の石」
小さな神様、少彦名命が踊りまわったとされる「玉の石」がこちら。
道後温泉本館北側に奉られている石に、このように長い柄杓で温泉をかけて願い事をすれば、その願いは叶うといわれています。特に病気平癒、商売繁盛、縁結びにご利益があるのだそう。ちなみに石のへこみは少彦名命の足跡なんだとか。
玉の石
- 住所
- 愛媛県松山市道後湯之町5-6(道後温泉本館北側)
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約5分
浮気防止、夫婦円満にご利益あり「圓満寺」
道後温泉本館から徒歩5分程度のところにあるのは、近年恋愛のパワースポットとして知られる「圓満寺(円満寺)」。
高さ約3.7mの大きなお地蔵さまは、元々は火事除け地蔵として知られていましたが、火除けから浮気封じ、そして夫婦円満、恋愛成就のご利益がいただけるといわれるようになりました。
傍らにあるのは「火の用心~!(チャンチャン)」と使われる、お地蔵さまサイズの1.5mの特大寒柝(かんたく)。浮気封じにご利益があるとされる圓満寺の寒柝は、ひっそり鳴らせる小さなサイズも置かれています。
お結び玉祈願は縁結び、恋愛成就に特にご利益があるとされ、女子旅やカップルにも人気の良縁パワースポットになっています。
圓満寺
- 住所
- 愛媛県松山市愛媛県道後湯月町4-49
- 参拝時間
- 6:00~18:00
- アクセス
- 道後温泉駅から徒歩約7分
宵が華やぐ道後温泉
道後温泉のシンボル、白鷺が宵闇に美しくその姿を映し出し始める頃、道後温泉は湯あみ客のざわめきに包まれ、昼とはまた違う華やいだ雰囲気へと変わります。
手すりの透かし彫りと障子戸が影絵のように浮かびあがり、夜の道後温泉本館はとても幻想的。
白鷺が乗る赤いギヤマンガラスが入った振鷺閣(しんろかく)には時を告げる刻太鼓があり、朝6時・昼12時・夕方18時の1日3回打ち鳴らされます。その音は「残したい日本の音風景100選」に選ばれています。
家族みんなでのんびりできる道後温泉へ!
日本最古の温泉といわれる歴史を持ち、愛媛の特産品の食べ歩きが出来る道後温泉。今回紹介したところはすべて道後温泉本館から徒歩5分圏内。週末や連休は家族でのんびり温泉につかりながら、道後の街を歩いみてはいかがでしょうか。
取材・写真・文/林ぶんこ