沖縄のシンボルに想いを馳せて 首里城復興モデルコース

約450年に渡り存在した琉球王国時代、政治・外交・文化の中心として威容を誇った世界遺産・首里城。2019年10月31日に発生した火災により、首里城正殿を含む建物8棟が焼損しました。

しかし、2019年12月には敷地大部分への入場を再開し、復興を応援し見守る人々が今も変わらず訪れています。さらに「見せる再建」として新たな首里城めぐりのコースが登場したことも大きな話題に。この機会だからこそ、様々な想いと願いがつまった現在の首里城、そして古き良き城下町をめぐる旅へ出かけてみませんか?

悲しみを乗り越えて、再建への一歩を踏み出す

首里城の正殿 ※焼失前の写真

2019年2月には奥の世界、女性が中心の生活空間「御内原(おうちばら)」エリアが公開され、神秘的な空間としてコアなファンも訪れていた首里城。同年10月、琉球王国最大の木造建築物「正殿」が猛火に包まれる姿は、世界中に大きな衝撃をもたらしました。

隣接する北殿と南殿をはじめ、書院・鎖之間(さすのま)、黄金御殿(くがにうどぅん)、二階御殿、奉神門にも延焼したことで閉園していた期間もありましたが、現在は再建に向けた歩みを進めています。

首里城公園 ※焼失前の写真

提供/国営沖縄記念公園(首里城公園)

現在、無料エリアのみ開園している城内は、近隣住民のウォーキングルートとしても賑わっています。

周辺店舗を中心に、沖縄県内外で再建に向けた募金活動も行われる中、今後は南殿や北殿を解体し、2020年には正殿地下にある遺構の公開を目指しています。また、再建工事中の正殿周辺を除いた3つの「首里城復興モデルコース」が組まれ、それぞれの目的に合わせて楽しむことができます。

変わらぬ景色と今の首里城を見られるコース

首里城公園ビュースポット(90分コース)

提供/国営沖縄記念公園(首里城公園)

今回、3コースの中から、「東のアザナ外周」「西のアザナ」「京の内 物見台」など、東西南北の各所にある高台をまわる「首里城公園ビュースポット(90分コース)」をご紹介します。各ポイントまでは、ほとんどが2、3分で移動することができるので、約90分しっかり楽しむことができます!

高低差のある広大な敷地を歩いて進むため、事前準備はキチンとしておくのがベストです。軽装、歩きやすい靴はもちろん、紫外線対策も意識しましょう。

守礼門

最初に向かうのは、2,000円札の絵柄としても有名な守礼門。中国風の牌楼(ぱいろう)形式で建立された、煌びやかで代表的な門は南国の空に映えるきれいな朱色。守礼門の手前では、沖縄の伝統的衣装「琉装(りゅうそう)」のレンタル・撮影も行っているので、思い出に残る1枚をここでぜひ!

初めて訪れる方は、首里城の入口だと思ってしまいますが、実はまだ城外です。入る前から立派な門が出迎えてくれます。琉球王朝時代、外交や貿易が盛んだった証拠のひとつ。素敵なおもてなしの心を感じます。

園比屋武御嶽石門 園比屋武御嶽石門

門を抜けて見えるのは、国王が道中安全を祈り外出していたという石門「園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)」。実はこちらも世界遺産です。左の側面には世界遺産認定証があり、滅多に見られない貴重なものは写真に収めたくなります。

歓会門

守礼門からは約3分歩くと、訪れる人へ歓迎の意を込めて名付けられた首里城の正門「歓会門」が見えてきます。ここでは、休館日と悪天候時などを除いて毎朝、銅鑼(どら)の合図と発声で開門し、来客者を城内へと誘う「御開門式(うけーじょー)」を行っています。

左右の古風顔なシーサーは、首里城内を守護しているかのよう!周辺スタッフの皆さんも、琉球王国時代を再現した衣装を着用しているので景色と合わせてタイムスリップしたような感覚を体験できます。

ここで歓会門を進む前にぜひ見てほしい隠れポイント、それは「アカギの大木」。アカギは戦時中に焼けてしまったものの、枯れた幹に周りのアコウが寄生し、昔の面影をとどめています。アカギの大木前には解説付きの看板もあります。ガイドブックにも載っていないパワースポット的存在を見つけてくださいね!

久慶門 久慶門
銭蔵 銭蔵

「歓会門」同様、当時の最新技術で強度の高い石造アーチ門になっている「久慶(きゅうけい)門」を進むと、休憩所「銭蔵」が見えてきます。東屋と自動販売機があるので、ここでしっかり水分補給をしておくと安心です。

2020年3月~4月には、火災時の破損瓦等の処置の一環として、今後利活用の可能性がある瓦の漆喰はがしを行う「首里城赤瓦漆喰はがしのボランティア」を実施。県内外から1日100名近くもの参加者がいて、改めて多くの人々に愛されていたんだなと実感できるイベントでした。

北城郭 北城郭

古絵図資料を元に琉球王朝当時の植栽空間を再現した「北城郭」。観光客の休憩の場や、多目的空間として利用できるようにと整備され、2017年に開放されました。ここ北城郭と系図座・用物座手前、首里杜館前の芝生広場では、お弁当を持参してのピクニックもおすすめ。

東のアザナ外周からの景色 東のアザナ外周からの景色

公園東側にある高台「東のアザナ外周」は、コースに設けられた5つあるビュースポットのひとつです。

瑞泉門

約10分ほど歩くと、門へ向かう階段の途中右側にある「龍樋(りゅうひ)」で、王宮の大切な飲料水が湧き出していることから名前が付けられた「瑞泉門(ずいせんもん)」へ到着。

水が流れる龍の頭は中国からもたらされた、なんと500年前のもの!首里城スタッフも知らないうちに噂が広まり、お金を投げ入れる人が多くなったのだそうです。

ちなみに沖縄のお酒「泡盛」の歴史は、首里から始まっています。湧き水が豊富なこともあり、琉球の時代に唯一泡盛づくりが許されていたのが首里の酒造だったそう。その背景を感じながら、地域の泡盛も味わってみてくださいね。

龍樋 龍樋
漏刻門 漏刻門

櫓の中の水槽から漏れる水の量で時刻を計っていたとされる漏刻門。時間になれば役人が太鼓を打ち鳴らし、それを聞いた別の場所にいる役人が太鼓を叩いて、城内外に時刻を知らせていました。

火災を実感する正殿の姿

広福門 広福門
奉神門 奉神門
奉神門 奉神門

瑞泉門から歩くこと約2分。券売所として使用されていた「広福門」をくぐると、正殿のある「御庭」に続く「奉神門」があります。「歓会門」で行われる朝の「御開門式」は、火災が起きる前まではここで開催されていました。

奉神門の横側

「奉神門」をくぐることはできませんが、横からは正殿のある御庭の様子が伺えます。

焼失部分の修復作業風景 焼失部分の修復作業風景

荘厳な城門をいくつも通ると現れる、かつての「正殿」の周りには、たくさんの瓦礫をまとめた袋が積まれており、以前のイメージとは大きく変わっています。失われた風景と作業音を前に、来場した皆さんは静かに立ち止まり、真剣な眼差しを向けます。

火災のニュースが流れた当初は、言葉にできないほどの大きな悲しみに包まれ、現実を受け入れられず足が遠くなってしまった人もいました。あれから時が経ち、再建に向けて着実に未来へ進む光景が見られ、人々の心に強さと希望を与えています。

霊力ある聖地「京の内」と、2つの絶景スポット

京の内 京の内
京の内の中にある御嶽 京の内の中にある御嶽

城内最大の祭祀空間「京の内」は、聞得大君(きこえおおきみ)や神女たちが王家繁栄、航海安全、五穀豊穣等を神に祈っていた聖域。首里城内には、琉球の信仰における祭祀などを古来より行う「御嶽(うたき)」が10カ所もあり、なかでも京の内には、写真の他に3つあるといわれています。周りは木々が茂り、大自然に囲まれたような空気の澄んだ神秘的な道が続きます。

城内の南側に位置する「京の内 物見台」からは、家や建物など沖縄独特の風景が広がり、景色をバックに写真を撮る人もたくさんいます。

西のアザナからの景色 西のアザナからの景色

「京の内 物見台」とは対照的に、那覇港の様子が一望できる「西のアザナ」は、ツアーに含まれないことも多いという、首里城スタッフおすすめの穴場スポット。首里城内はもちろん、天気の良い時には慶良間諸島まで一望できます。天候によっては、色鮮やかな空のグラデーションと風景のコラボレーションが見られるかもしれません。

木曳門 木曳門
史跡 首里城跡 石碑 史跡 首里城跡 石碑

木曳(こびき)門は櫓のないアーチ門。首里城を修復するときのみ資材搬入に使用された門で、現在はバリアフリー対応コースとして活躍しています。石碑は外国人観光客に人気の撮影スポットです。

首里杜館 芝生広場

最終地点のインフォメーションセンター「首里杜(すいむい)館 芝生広場」に到着!大きなガジュマルのまわりにはベンチがあり、売店で販売しているアイスクリームやドリンクを片手に寛ぐ方や、これからまわる方たちの待ち合わせ場所にも利用されています。ここでしか購入できないお菓子やオリジナルグッズもある他、「首里杜館」内の情報展示室や総合案内、売店、レストランもチェックしてみてくださいね!

首里城公園

住所
沖縄県那覇市首里金城町1-2
営業時間
4~6月・10~11月:8:00~19:30
7~9月:8:00~20:30
12~3月:8:00~18:30
休場日
7月の第1水曜とその翌日
料金
現在は無料エリアのみ開園
アクセス
【バス】首里城下町線7・8番「首里城前」下車、徒歩約1分
【電車】ゆいレール「首里」駅下車、徒歩約15分
【車】那覇空港から約40分
駐車場
有料駐車場有り
公式サイト
首里城公園公式サイト

※ 記事内の情報は2020年4月時点のものです。最新情報は首里城公園公式ウェブサイトでご確認ください。

古都・首里にある名店で極上の味に出会う

首里城をたっぷり楽しんだ後は、おいしいものを堪能しましょう!「城下町」と呼ばれる城外周辺には、赤瓦に石畳、龍潭池(りゅうたんいけ)など、趣あるスポットがいっぱい。散策しながら気軽に立ち寄れる名店をご案内します。

160年に渡り愛される「山城(やまぐすく)まんじゅう」

山城まんじゅう6代目店主の山城秀史さん 6代目店主の山城秀史さん

琉球王国に献上されたことがあるというほど長い歴史を誇る「山城まんじゅう」は、首里城公園から徒歩約3分。食べ歩きにもぴったりな首里の名物を製造、販売しています。

「創業時は紅芋餡だったとの噂もありますが、戦後よりこしあんと粒あんを合わせた今の味を受け継いでいます」と話してくれたのは、6代目店主・秀史さん。無添加のまんじゅうは家族の誰もが食べることができ、行事の際には大量買いしていくお母さんたちの姿も見られます。

山城まんじゅう 山城まんじゅう(1個150円)

小麦粉と水のみで作るモチモチ生地から透けるほど詰められた餡は甘さ控えめで、男性にも好評!蒸す際にサンニン(月桃)の葉を敷くことでまとう独特な香りは、旅の思い出に色濃く残り、県外客のリピーターも多いそうです。

山城まんじゅう

冷蔵・冷凍保存も可能ですが、一番おいしいのはやはり出来立てすぐの状態で食べること。馴染みの味、唯一のおいしさを求めて、今日もたくさんの人がここを訪れています。午後には売り切れている場合もあるので、事前予約がおすすめです。

山城まんじゅう

住所
沖縄県那覇市首里真和志町1-58
営業時間
10:30~16:00(売切れ次第終了)
定休日
木・日曜
駐車場
有り
電話番号
098-884-2343

すーじ道(路地裏)に隠れた沖縄そばの名店「首里ほりかわ」

首里ほりかわ

細道を進むと見えてくるセンスの良い店構えの沖縄そば店「首里ほりかわ」。自宅をリニューアルしたそうで、テーブル、カウンター席、緑に囲まれたテラス席も人気です。キッズチェアもあるので、子ども連れでも安心!

「他にない沖縄そばを作りたい」と考案された一杯に、県内外から多くのファンを獲得し、押すに押されぬ人気店に。

ほりかわそば ほりかわそば(640円)

やんばる島豚とカツオをブレンドした白濁のスープは上品ながらも旨味が凝縮。コシのある手打ちの自家製の生麺と低温調理の柔らかいチャーシューは食べ応えも抜群です。

シークァーサージュース シークァーサージュース(150円)

ぜひ一緒に、とすすめられたのは、沖縄県北部・本部町より取り寄せるシークァーサージュース。甘さの調整はお好みで、濃厚な柑橘のおいしさが口いっぱいに広がります。

販売は食券スタイルで、「ソーキそばセット」や「じゅしぃ」の他に、人気豆腐店「岸本のやっこ」、「もずくかき揚げ」「あぶり豚ロース」「あぶりソーキ」も。どれもシェアできるボリュームでお得です。有料のコインパーキングを利用した際には、割引コインを配布してくれるサービスもあります。

首里ほりかわ

住所
沖縄県那覇市首里真和志町1-27
営業時間
11:00~15:45
定休日
木曜
アクセス
首里城から徒歩約1分
駐車場
無し(近くに有料コインパーキング有り)
電話番号
098-886-3032

 


 

首里城、そして首里の街は、美しい景観を「まもり・そだて・つくる」取り組みを続けています。沖縄のシンボルである首里城、風情溢れる街と人は、どれをとっても絵になる一大スポット。文化に歴史に沖縄情緒を堪能できるエリアで、素敵な旅の思い出を!

取材・撮影・文/真木未夢、上江洲有梨奈(おきなわ倶楽部)

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