
京都を代表する観光地・清水寺の麓、京都の歴史や伝統文化が色濃く残る東山五条。この地に、2022年4月1日、ライフスタイルホテル「NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO(ノーガホテル清水京都)」が誕生しました。
各分野の今を創るスペシャリストたちとコラボしたアート、食、音楽、エクスペリエンス――。こだわりづくしのスタイリッシュなデザインの館内は、ただ泊まるだけではもったいないほど刺激にあふれています。それでいて、1泊4,000円台~という手の届きやすい価格も魅力的。京都の歴史や文化、美意識とつながるきっかけにあふれた新ホテルでの1泊2日滞在記をレポートします。
清水寺のお膝元に開業したライフスタイルホテル「NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO」

「NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO(ノーガホテル清水京都)」は、「地域との深いつながりから生まれる素敵な経験」をコンセプトとする「ノーガホテル」の東京・上野、秋葉原に続く3号店で、関西初上陸となる施設です。「MEET HOT KYOTO.」のホテルコンセプトのもと、エンターテイメント、ウェルビーイング、サステナブル、エクスペリエンスの4つのテーマで、粋な京都、旬の京都を体現。デザイン性の高い空間やしつらえ、サービスなどで京都の伝統文化を伝えています。

アクセスは京阪電車・清水五条(きよみずごじょう)駅より徒歩約7分。京都駅からはタクシーで約10分。バスの場合は、京都駅前から市営バス206(東山通り・北大路バスターミナル行き)に乗り、約15分で最寄りの五条坂バス停に到着します。そこからホテルまでは徒歩5分ほど。

ホテルは五条通りに面し、町家建築を継承した外観で京の街に溶け込んでいます。ホテルが建つ前に存在した、京都市の歴史的意匠建造物指定の町家の一部が保存され、エントランスの両脇に見ることができます。
また、世界遺産・清水寺まで徒歩約10分のところにあり、人が少ない朝のうちに観光するのに便利な立地。京都観光の拠点としてもおすすめです。
音楽・食・アートへのこだわりを感じるロビーラウンジ

館内に入ると、木や石など自然の色を用いた居心地のよい広々としたロビーが。「和える」というコンセプトで設計され、古材を使った梁(はり)、現代的なモルタルの床など、新・古・和・洋が見事に調和しています。

ロビーに流れるおしゃれなラウンジミュージックは、unprivate acousticsの西原健一郎さんらがプロデュースしたオリジナル。珍しい縦型のスピーカーは、1点ずつ手づくりされた「Taguchi」製を採用しています。ホテルづくりにあたり、音楽・食・アートにこだわったというこのホテルの想いを感じ取れる空間です。



チェックインは緑あふれるレセプションで。スタッフのユニフォームは、日本の「粋」をテーマとする「junhashimoto(ジュンハシモト)」のデザイン。
ユニフォームも細部にまでこだわっていて、ポケットチーフは着物の端切れ、ネームプレートは革製品を製造する際に出た端切れを再利用しています。サステナブルで地球環境に優しいホテルづくりを推進するノーガホテルらしい取り組みです。

ポップなアートがかわいいルームキーは、京都で木版印刷の書籍を刊行する日本唯一の出版社「芸艸堂(うんそうどう)」とコラボレーションしたもの。京都出身の画家・神坂雪佳(かみさか せっか)さんの木版画などがデザインされています。

チェックイン手続きの最後に、「1枚どうぞ」と渡されたのがオリジナルのコイン。これはウェルカムドリンクの引換券で、ちょっとした遊び心を感じます。
ゆとりの広さと上質なアイテムがそろう客室「デラックスツイン」


客室への廊下は、四角、丸、八角形などさまざまな形をした明かりが灯り、神社の参道を思わせます。よく見ると、ライトの形に呼応するように、客室サインも同じ形。また、ホテルのある清水五条がやきものの町であることから、客室サインは陶器で作られています。


廊下を彩るアートにも目を奪われます。これらは、インテリアショップ「IDEE(イデー)」の創始者・黒崎輝男さんを中心とするキュレーションチームによって選ばれたもの。国内外合わせて8名のアーティストによる京都をモダンに解釈した作品は、感性を刺激されるものばかりです。

客室は全207室あり、今回宿泊したのは広さ約24平米、定員3名の「デラックスツイン」。グレーを基調としたシックな空間にアートがアクセントとなり、彩りを添えています。
ベッドのマットレスは、睡眠科学をもとに開発された「シモンズ」製。カジュアルでありながら、上質なものを提供したいというホテルの想いは、ベッドのみならず、客室内の至るところに見られます。

ボディソープ、シャンプー、トリートメント、ハンドソープは、天然由来原料を使用したスキンケアコスメブランド「OSAJI(オサジ)」。フローラルな香りに癒やされます。サステナブルを意識した取り組みは、ポンプ式ボトルのバスアメニティにも反映されています。

デラックスツインのバスルームはバスタブ付き。京都観光で歩き回っても、足を伸ばしてゆっくりバスタイムを楽しめます。

ルームウェアは肌触りのよいガウンタイプ。一流ホテルのファブリックを担当してきた「アトモスフェール・ジャポン」とコラボレーションしたアイテムで、清水焼でよく使われる藍色の顔料「呉須(ごす)」をイメージしたパイピングが施されています。
京都の文化や伝統工芸を散りばめたこだわりのインテリア
地域との深いつながりを大切にするノーガホテル。よく見ないと気付かないような細部にまで、京都の文化や伝統工芸が取り入れられています。

金箔・銀箔と和紙で作る西陣織の技法「引箔(ひきばく)」を継承する京都・西陣の「西村商店」が手がけたミニバーとヘッドボード。ミニバーの扉には薄い焼色を加えた銀の引箔が施されています。
ミニバー上のペンダントライトは、1922年創業の京焼・清水焼窯元「陶葊(とうあん)」製で、内側には花が美しく咲き乱れたような「花結晶」の模様が。


カップは、清水焼団地の陶房「TOKINOHA(トキノハ)」による手になじむデザイン。ハンガーは、日本の伝統や職人の技術を伝える生活日用品ブランド「SyuRo(シュロ)」のハンガーを、京都の「牧野漆工芸」が漆塗装で仕上げた唯一無二の逸品です。
客室でも感じるアートや音楽へのこだわり


音楽・食・アートにもこだわりを持つノーガホテル清水京都。そのこだわりは、Do Not Disturbカードとエコフレンドリー・カードにまで及びます。京都の新進気鋭のグラフィックデザイナー・三重野龍(みえの りゅう)さんの作品を採用し、ポップなブルーとピンクのカードがブラックのドアに映えます。
さらに、客室でも上質な音楽を楽しめるよう、全室に高品質のBluetoothスピーカーを設置。デラックスツインには老舗音響機器ブランド「Technics(テクニクス)」社製のものが備わっています。
客室でのエクスペリエンス、エンターテイメントも充実

エンターテイメント、ウェルビーイング、サステナブル、エクスペリエンスの4つのテーマで、粋な京都、旬の京都を体現するこのホテル。客室のテレビにも観光ガイドやオリジナルの音楽、館内アートの案内など、4テーマを体現するコンテンツが充実しています。
おすすめは、テレビでガイド動画を見ながら、好きなときに体験できる「セルフエクスペリエンス」。京都の日本茶専門店「YUGEN KYOTO」によるお抹茶体験(1,500円)や、スペシャリティーコーヒーロースター「Kurasu Kyoto」によるコーヒードリップ体験(1,500円)など5つを用意。メディテーション体験(無料)では、京都最古の禅寺である建仁寺の塔頭「両足院」の副住職・伊藤東凌さんによるガイドで心を落ち着かせ、リラックスできます。

また、京都でのエクスペリエンスをより充実させるには、ホテルオリジナルのガイドブックとマップも要チェック。スタッフが実際に足を運び、自信を持っておすすめできるスポットや飲食店、ショップなどを地元ならではの目線で厳選。これがあれば、ディープな京都を満喫できます。
リーズナブルに泊まれる「ダブル」の客室

客室はデラックスツインのほか全9タイプあり、なかでもリーズナブルな客室として人気なのが「ダブル」。約19平米と、このホテル内で一番コンパクトでありながら、設備やアメニティはデラックスツインとほぼ同じで、上質な京都の伝統文化を感じられます。

ダブルに設置されているスピーカーはスイスのオーディオメーカー「GENEVA(ジェネバ)」社製。クイーンサイズの大きなベッドでくつろぎながら、上質な音に耳を傾けるのも贅沢な過ごし方です。

ダブルにはバスタブはなく、シャワーブースのみですが、全室にレインシャワーを完備。やわらかく降り注ぐたっぷりのお湯で疲れを癒やしてくれます。これだけこだわりづくしの上質なものに囲まれて、4,000円台~(2名利用時)で泊まれるなんて信じられません!
ウェルカムドリンクを楽しみにレストランへ

ウェルカムドリンクをいただきに、1Fにあるレストラン「CICON by NOHGA HOTEL(シコン バイ ノーガホテル)」へ。ビール、スパークリングワイン、ソフトドリンクから好きなドリンクを1杯、チェックイン時にもらったコインと交換できます。この日は風が心地よく、テラスでゆっくり味わいました。



ホテル最上階にはルーフトップバーもあり、太陽の光を浴びながら過ごすのも幸せなひととき。周りに高い建物がないため、とても見晴らしがよく、東山の山並み、清水寺、京都タワーなど、360度京都市内を見渡せるベストスポットです。
ディナーは京野菜や京鴨に舌鼓。カジュアルに楽しめるレストラン「CICON」

ディナーはレストラン「CICON by NOHGA HOTEL」でいただきます。店内にはライブ感のあるオープンキッチンと、メインカウンターを囲むカウンター席やプライベート感のあるボックス席、テーブル席などが。まるで海外のレストランのような雰囲気があります。

料理は、カジュアルに楽しんでほしいとの想いから、コースではなくアラカルトで好きなものをチョイスするスタイル。ランチからディナーまで同じメニューを提供し、アヒージョやカルパッチョといったタパス、サラダ、種類豊富な生ハム、肉料理、パスタなどがそろいます。もちろん、カウンター席でビールと自家製フライドチキンだけ満喫、なんてカジュアルな使い方もOK。

レストランでぜひとも味わいたいメニューが、スペインから輸入した「ジョスパーオーブン」を使ったグリル料理。薪と炭で焼くことによって、食材が持つ本来のおいしさを引き出しています。
例えば、赤ワインと合わせた照り焼きソースでいただく「京都産 京鴨 ロース」(3,828円)は、ジョスパーオーブンの力で中はジューシーに、皮はパリッと仕上がっていて絶品! 「京野菜のグリルの盛り合わせ」(1,628円)は九条ネギ、赤水菜といった京野菜に薪の香ばしさがプラスされ、唯一無二の味わいです。
ディナーに付くパンは、ディナーのためにホテル内のベーカリーで焼いているそう。小麦や酵母の香り豊かなカンパーニュは、豆腐とサワークリームのペーストでヘルシーにいただきます。

料理にはソムリエが世界中からセレクトしたナチュラルワインを合わせて。ワインセラーには見たことがないようなおしゃれなラベルのワインも並び、センスあふれるラインナップです。

締めのドルチェもお見逃しなく。「バスク風チーズケーキ ゲランドの塩を添えて」(946円)は、濃厚なチーズケーキとミルク感たっぷりのアイスクリーム、そしてほどよい塩味という極上のハーモニーが広がり、口の中でとろけます。
CICON by NOHGA HOTEL
- 朝食
- 7:00~10:00(L.O.9:30)
- ランチ・ディナー
- 11:00~22:00(L.O.21:30)
おしゃれで開放的なルーフトップバーで京都の夜を満喫

ディナーの続きは、最上階のルーフトップバー「CICON ROOFTOP BAR」で。ライトアップされた夜のルーフトップバーはファイアーピットに火が灯され、非日常感にあふれています。

おすすめはバーテンダーが考案したシグネチャーカクテル。京都の伝統的な色「京紫」をバタフライピーで表現した「紫紺 Lemonade(シコン レモネード)」(1,100円)は、CICONオリジナルのリモンチェッロやレモネードシロップ、ハーブのウォッカ「ズブロッカ」ベースで、レモンが爽やかに香ります。音楽に身を委ね、揺らめく炎に癒やされつつ、清水寺や京都の夜景を眺める。新しい京体験が、そこにはありました。
CICON ROOFTOP BAR
- 営業時間
- 13:00~23:00(L.O.22:30)
メディテーションで心をととのえる朝

シモンズのベッドで熟睡し、すっきりと目覚めた朝。1日をさらに気持ちよくスタートするためにおすすめなのが瞑想。地下1階に、両足院の副住職・伊藤東凌さんがトータルプロデュースした「メディテーションルーム」があり、宿泊者は無料で利用できます。

中に入ってみると、そこはホテル館内とは思えない異空間。京都出身の陶芸家・谷口晋也さん作の水琴窟の音がやさしく響き、同じく京都出身のアロマ調香デザイナー・Tomoko Saitoさんがこの空間のために調香した香りに包まれます。

座禅を組み準備完了。すると、おりんの音とともにBGMが流れてきました。朝はお寺の庭を箒で掃く音など、心が浄化されていくような静かな音が。部屋の隅に置かれたランプは、ウェアブル端末「Fitbit(フィットビット)」と連動していて、脈に合わせて点灯し、心を落ち着かせてくれます。

メディテーションルームの前では、ホテル建設時に発掘された歴史的な石積を見ることもできます。平安時代後期から末期にかけて、この地に暮らしていた平家一門に関する堀と推測され、約1000年続く京の歴史に想いを馳せ、心をととのえるのも一興です。
メディテーションルーム
- 受付時間
- 7:00~22:00(最終受付21:00)
- 料金
- 無料
要予約、Fitbitの貸出あり
盛りだくさんのプレートと焼きたてパンの朝食

レストラン「CICON by NOHGA HOTEL」のテラスで、緑に囲まれながら朝食。ミート、またはフィッシュのモーニングプレート、チョップドサラダ、ジョスパーオーブンで焼いたクロックムッシュの4種類から選べます。

フィッシュのプレートはグリルサーモン、ミートのプレートはグリルベーコンやソーセージがメイン。どちらのプレートも京都産の旬の野菜のジョスパーグリルや、卵料理、スープなどが付いて盛りだくさん! この日の野菜のジョスパーグリルは、島にんじん、紫大根、新じゃが、ケール、スナップえんどうといった彩り鮮やかな野菜が登場しました。
ドリンクはコーヒー、愛媛100%みかんジュース、青森100%林檎ジュースなどを好きなだけいただけます。

さらにうれしいことに、ホテル内のベーカリーで焼いたパンがおかわり自由。パンの種類は日によって変わりますが、人気なのが「CICON」の刻印が入ったミニ食パン。外はカリッと香ばしく、中はモチモチの食感が絶妙です。
上質をお持ち帰り。ベーカリーやショップでお土産選び

11:00。チェックアウトの時間ですが、1階にあるベーカリーやショップを素通りするわけにはいきません。ベーカリーは工房を併設し、バゲットやハード系のパンから食パン、サンドウィッチ、惣菜パンまで、目移りするほど種類豊富なパンが並んでいます。朝食やディナーに登場したパンもここで焼き上げられたものです。

このベーカリーのこだわりは国産小麦を使うこと。シンプルな食パンでも風味豊かで、バターやジャムがいらないほどのおいしさです。朝食で気に入ったパンをお持ち帰りしてもよし、ランチに自慢のサンドウィッチをロビーラウンジで味わうもよし。近くの鴨川の河原で、ピクニック気分で味わうのもおすすめです。

そして、ショップでは清水焼のカップやルームウェアなど、客室にあったアイテムを購入できます。ラインナップには、今では珍しいカセットテープ(1,000円)も。ホテルオリジナルの楽曲や、京都を舞台にした芥川龍之介の小説『羅生門』などの朗読が収録されています。最後まで音楽・食・アートにこだわるノーガホテル清水京都らしさが感じられました。
京都の伝統文化を新しい角度で体験できる「ノーガホテル清水京都」。新しいライフスタイルホテルで観光もホテルも楽しむ、充実の京都旅行に出かけてみませんか。
NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO(ノーガホテル清水京都)
- 住所
- 京都府京都市東山区五条橋東4-450-1
- アクセス
- 京阪本線「清水五条」駅 4番出口より徒歩約7分
- 駐車場
- なし
- チェックイン
- 15:00(最終チェックイン24:00)
- チェックアウト
- 11:00
- 宿泊予約
- 楽天トラベル「NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO(ノーガホテル清水京都)」
取材・撮影・文:小浜みゆ