旅のスタイルや働き方の変化にともなって、いま「農泊」が人気を集めています。農泊とは、農山漁村に宿泊し、滞在中に豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」のこと。地域固有の風景や暮らし、地元の人々と交流することは、都市部にはない農泊地域ならではの宿泊体験です。
農泊地域には農業・漁業・酪農の体験プログラムをはじめ、気候と地形を活かしたアクティビティ、地産地消の料理など、懐かしくも新しい体験が盛りだくさん。知ればきっと好きになる、新たな旅のスタイルを楽しんでみませんか?
マイクロツーリズム
- 近隣への小旅行、新たな魅力を見つける気軽な旅 -
飛行機や新幹線を使わずに近場で楽しむ小旅行「マイクロツーリズム」は、3密を避けたい今の社会状況から注目される近隣地域滞在型の新しい旅のカタチです。マイクロツーリズムにぴったりのスポットや宿泊施設を、福井県・北海道・京都府からご紹介します。農泊地域の魅力を再発見しつつ近場で気軽にリフレッシュできる、新たな旅にでかけてみませんか?
福井県小浜市
伝統文化が息づく小浜で、五感を整えるマインドフルネス体験
山あいに小さな集落が点在する福井県小浜市の松永地区では、全5室の小さな旅館を中心に、多忙な日々で曇りがちな五感を整えるマインドフルネスな旅の体験プログラム「松永六感」を地区全体で体感できます。
福井県の国宝建造物で瞑想体験のできる「明通寺」をはじめとした寺社仏閣のほか、季節ごとの伝統行事、昔ながらの手仕事など、文化遺産が豊かに息づく山里の静謐(せいひつ)な雰囲気が大きな魅力。自然や食、歴史や文化を通して自分と向き合う、都会では得がたい、静かなひとときが待っています。
里に降る雨は、集落の先の山を境に一方は日本海へ、もう一方は太平洋に流れていきます。「とば屋酢店」は、この中央分水嶺に流れる清らかな水を求めてこの地に構え、創業300年になる老舗のお酢醸造所です。
江戸時代から変わらないお酢作りの現場を見学してみましょう。もみ殻に埋まった壺の中でゆっくり発酵・熟成したお酢は、酸味に深みと旨味を兼ね備えています。独特の香りに包まれながら見学を終えると、体全体がスッキリとした心地に。
見学の記念には、古代アステカ時代の甘味料であるマゲイシロップ「百年の蜜」と、看板商品の「壺之酢」をブレンドした飲む酢「百年のお酢蜜(1本1,404円)」はいかがでしょうか。冷水やソーダで割ると飲みやすく、幅広い年齢層に人気です。
とば屋酢店
- 住所
- 福井県小浜市東市場34-6-2
- 電話番号
- 0770-56-1514(見学希望の場合は要問合せ)
「とば屋酢店」から車で約5分。木造の分校跡を利用した「栗本家具工房」では、桜やクルミの木を使ったトレイ作り体験ができます。
小さな木の板に向き合って、丁寧にそしてひたすら掘っていきます。仕上げにクルミオイルを塗って染み込ませれば完成です(所要時間 約1時間)。手彫りの跡が柔らかなトレイは、日々の暮らしを豊かにしてくれるでしょう。
栗本家具工房
- 住所
- 福井県小浜市門前12-10-2
- 交通
- JR新平野駅から車で約8分
- 電話番号
- 080-4196-3427(体験希望の場合は要問い合わせ)
「栗本家具工房」から徒歩圏内。この旅の中心となる宿、「松永六感 藤屋」があります。国宝・明通寺の麓に位置する全5室の小さな旅館は、すべての部屋から庭を愛でられ、夜には幻想的なライトアップも。眺めの良い客室、囲炉裏のあるラウンジ、薪ストーブのそばなど、お気に入りの場所で思う存分やすらぎの時間を堪能しましょう。
松永六感 藤屋
- 住所
- 福井県小浜市門前9-4
- 交通
- 舞鶴若狭自動車道小浜ICから車で約10分、JR新平野駅から車で約8分
「松永六感 藤屋」の瞑想体験付きプランでは、早朝に国宝・明通寺での阿字観瞑想を体験して、朝粥と精進弁当の朝食をいただきます。風や鳥、川の流れの音に耳を澄ませ、雑多な情報から解き放たれる心を落ち着くひとときを感じてください。
明通寺
- 住所
- 福井県小浜市門前5-21
- 交通
- 舞鶴若狭自動車道小浜ICから車で約10分、JR新平野駅から車で約8分
マイクロツーリズム
- 近隣への小旅行、新たな魅力を見つける気軽な旅 -
北海道八雲町
農業・漁業・酪農の体験プログラムで、田舎暮らしの魅力を発見
八雲町は日本で唯一、日本海と太平洋の2つの海を持つまち。(出典:八雲町ホームページ)海山川の恵み豊かなこのまちは、一次産業の農業・漁業・酪農が盛んです。そして、開拓の歴史や文化が残されているまちでもあります。
ゲストハウス「古民家ゲストハウスSENTO」は、農漁業を通じて地元の人と交流できる「八雲体験プログラム」の窓口。土地の暮らしを体験することで、観光旅行では終わらない、田舎暮らしの魅力を発見する旅へ出かけましょう。
土地の個性や魅力を知るためには、歴史を知ることが大切です。まずは「八雲町木彫り熊資料館・八雲町立資料館」に立ち寄ってみましょう。誰もが知っている北海道の木彫り熊は、実は八雲町が発祥です。農村の生活の貧しさを救うため尾張徳川義親(よしちか)公が発案し、冬期間の農民の副業として作られてきました。
木彫り熊資料館とつながっている郷土資料館にも足を向けてみましょう。八雲町の開拓は北海道の他のエリアとは異なり、官費によらない民間資本によるものでした。歴史ファンはもちろん、そうでない人も魅力を感じられる展示です。
八雲町木彫り熊資料館・八雲町立資料館
- 住所
- 北海道二海郡八雲町末広町154
- 交通
- 八雲駅から車で約5分
四季折々の景観を楽しめる「梅村庭園」は、いろいろな種類のツツジのほか、四季折々の庭園の表情を楽しめる町民憩いの庭です。園内には梅雲亭(休憩施設)と、旧梅村邸の離れと蔵があります。
ふすまや欄間の模様や窓越しに見える景色が内観と調和して、ため息が出るほどフォトジェニック。カメラ片手にさまざまな角度から和のたたずまいを堪能してください。
梅村庭園
- 住所
- 北海道二海郡八雲町末町151-1
- 交通
- 八雲駅から車で約5分
八雲町ではその冷涼な気候を生かして、酪農業も盛んです。「北村牧場」では牛のお世話体験ができます。子牛にミルクをあげたり、牛たちにエサをあげたり。普段なら見るだけの牛のお世話を通じて、酪農の方だけが知っているその魅力を感じてみてください。
北村牧場
- 住所
- 北海道二海郡八雲町熱田
- 交通
- 八雲駅から車で約10分
- 電話番号
- 0137-66-5526(体験予約:古民家ゲストハウスSENTO)
八雲町の気候は軟白ネギの栽培に適しており、「森岡農園」では9~4月末のシーズンに収穫体験ができます。軟白ネギは普通の長ネギよりも白い部分が長く、生で食べられるほど甘みのある八雲町の特産品。農家さんと一緒に収穫したネギは、その場で焼いて食べても、持ち帰ってもOKです。
森岡農園
- 住所
- 北海道二海郡八雲町落部入浜
- 交通
- 八雲駅から車で約30分
- 電話番号
- 0137-66-5526(体験予約:古民家ゲストハウスSENTO)
ゲストハウスとレストランを兼ねる「古民家ゲストハウスSENTO」は、レストラン部分は銭湯だった建物を、ゲストハウス部分が築100年以上の民家をそれぞれリノベーションした施設です。「八雲体験プログラム」の窓口にもなっており、本記事に掲載したプログラム以外にも、通年・シーズン限定ともにさまざまな体験ができるので、ご予約前にチェックしておきましょう。
昼食・夕食ともに提供しているレストランは、湯船の中にテーブルを設置するなど、銭湯時代を思わせるユニークな造り。八雲の食材をふんだんに使った地産地消を体感できるレストランですが、まだまだ知られていない穴場スポットです。
古民家ゲストハウスSENTO
- 住所
- 北海道二海郡八雲町末広町30
- 交通
- 八雲駅から車で約5分
マイクロツーリズム
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京都府南丹市
古民家で見つける、自然と共生する里山の暮らし
のどかな田園風景が続くまち、京都府南丹市。この地域の魅力は、四季折々で表情を変える風景、レトロな茅葺屋根の家、ジビエなどの山の幸、それからなんといっても自然と共生する里山の暮らしです。日本の原風景を思わせる古民家で、のんびりとゆっくりと流れていく時間を楽しみましょう。
宿泊や自然体験もできるスローフードレストラン「田歌舎(たうたしゃ)」。建物もすべてセルフビルドで、冬には薪ストーブが暖かな炎を揺らしています。
提供される食材は、ほぼ自給自足でまかなわれています。野菜も米も施設の畑で作られ、猪や鹿肉はスタッフが狩猟・解体したものです。一番人気のランチメニューは、シシカバブを鹿肉でアレンジした「鹿カバブプレート」。一緒に提供されるパンも、古代米や国産小麦を使った自家製です。
宿泊・レストラン 田歌舎
- 住所
- 京都府南丹市美山町田歌上五波1-1
- 交通
- JR園部駅から車で約60分
地元の新鮮食材や特産品を見つけるのは旅の醍醐味のひとつ。道の駅「美山ふれあい広場」内にある「ふらっと美山」には、生産者の顔が見える採れたて野菜に果物、名産の鯖のへしこや、のしもちなど、魅力的な食材がどっさりと並んでいます。野菜や果物、新鮮な卵はあっという間に売り切れるので、お目当てがあるなら早めに訪れましょう。
ふらっと美山
- 住所
- 京都府南丹市美山町安掛下23「美山ふれあい広場」内
- 交通
- JR日吉駅から車で約25分
「料理旅館きぐすりや」は大正8年創業の老舗旅館。明治時代より薬商を営んでいたことが宿名の由来です。築130年以上の古民家は田畑や小川に囲まれ、裏にはかつて「鯖街道」と呼ばれた旧街道が当時の様子を残しています。
囲炉裏の炎を囲んでの地猪肉ぼたん鍋は、冬季だけのお楽しみ。春限定の山菜会席、夏は天然鮎、秋は松茸づくしと、四季折々で地産地消にこだわって、ひと手間もふた手間もかけた手料理が並びます。
朝を迎えたら、宿の畑でローズマリーやカモミールの収穫体験を。「料理旅館きぐすりや」では、ホタル観賞や川遊び、山菜採りに田植え体験と、季節に合わせた自然体験をさまざまに開催しています。 ※体験日時や内容は応相談
料理旅館きぐすりや
- 住所
- 京都府南丹市美山町鶴ケ岡今安8-1
- 交通
- JR日吉駅から車で約35分
日本を再発見する農泊×ワーケーション
- 仕事と余暇を楽しむ、新しいワークスタイル -
ワーケーションはワーク(働く)とバケーション(休暇)を組み合わせた合成語で、休暇をとりながら仕事もする新しいワークスタイルです。こちらでは農泊地域のなかから、仕事環境とリフレッシュの両方を兼ね備えたステイ例をご紹介。いつもと違う環境は新鮮で、仕事もリフレッシュもはかどります。
栃木県那珂川町
東京から車で約2時間半。清流のあるまちで人々の暮らしに溶け込むステイ
栃木県那珂川町は東京から車でわずか2時間半の距離にありながら、関東有数の清流・那珂川が町の中央を流れる山間のまち。長期滞在もできる古民家ホテル「飯塚邸」をはじめ、アートスポットや温泉、食事処が点在しており、マイクロツーリズムにも適したエリア。新たな魅力に出会うため、なつかしい里山の風景へ出発です。
「飯塚邸」は江戸時代に庄屋を務めた飯塚家の屋敷をリノベーションした有形文化財登録の宿泊施設です。日本の伝統的な建築に近代的な機能を備え、古民家でありながらも空調などは整えられておりとても快適。キッチンとダイニングテーブルを備えた客室もあります。(写真は本宅)
那珂川町では町全体をアミューズメント施設と捉え、宿泊機能以外のホテル機能は町の中に点在しています。食事や物販、体験施設も町の人が提供していて、地元の暮らしに溶け込む滞在型の旅をかなえます。程よい利便性を担保しつつ、緑に囲まれ集中して仕事に打ち込める環境です。客室にはコーヒー、紅茶など充実したドリンク類の他、フルーツや野菜スティックのプレートまで完備。庭園を眺めながら縁側でティータイムはいかがでしょうか?
※企業用ワーケーション特別プランあり。
飯塚邸
- 住所
- 栃木県那須郡那珂川町馬頭360
- 交通
- 東北自動車道矢板ICから車で約40分
「飯塚邸」では宿泊客にE-バイク(電動アシスト付きスポーツバイク)を無料貸し出ししています。坂道も長距離もすいすい、田んぼや雑木林を眺めながらサイクリングを楽しんで。
小砂焼の陶芸体験ができる「小砂焼体験センター 陶遊館」までは、「飯塚邸」からE-バイクで約40分。丁寧に教えてもらえるので初めてでも安心です。2度の焼成と釉薬がけは「陶遊館」で行われ、1~2カ月後に自宅へ届きます。思った通りに仕上がったのか、待つ時間も楽しみです。
小砂焼体験センター 陶遊館
- 住所
- 栃木県那須郡那珂川町小砂2712-15
- 交通
- 東北自動車道矢板ICから車で約60分
サイクリングを楽しんだ後は、日帰り温泉へ。那珂川沿いには数軒の温泉が点在する馬頭温泉郷があり、そのなかでも「元湯 東家」は、江戸時代に那珂川から湧き出した源泉を受け継ぐその名の通り元湯です。弱アルカリ性のとろりとしたお湯は「美肌の湯」と評判が高く、湯上がりの肌はつるりと滑らかになります。
元湯 東家
- 住所
- 栃木県那須郡那珂川町小口1652
- 交通
- 東北自動車道矢板ICから車で約35分
日本を再発見する農泊×ワーケーション
- 仕事と余暇を楽しむ、新しいワークスタイル -
神奈川県鎌倉市
おひとりさまも歓迎、鎌倉の古民家に泊まる非日常の時間
東京から約1時間半とアクセス良好の古都・鎌倉は、都心から近いリゾートとしてマイクロツーリズムでも人気のエリア。1名からワンルーム利用ができる材木座海岸の古民家「琥珀-AMBER-」を拠点に、土地の味覚やアクティビティを楽しんで。
材木座海岸の近く、鎌倉の寺院のなかでも最大級の格式の山門を持つ光明寺。慌ただしい日常から離れたこの旅では、心を落ち着ける写経体験がおすすめです。法話を聞いた後、お手本をなぞって阿弥陀経の一部を書き写します。静けさのなか一文字入れるごとに、ざわついた気持ちが凪いでいくようです。
光明寺
- 住所
- 神奈川県鎌倉市材木座6-17-19
- 交通
- JR・江ノ島電鉄鎌倉駅東口からバスで約10分、光明寺前下車1分、またはJR・江ノ島電鉄鎌倉駅から徒歩25分
宿泊先「琥珀-AMBER-」では食事がありませんが、オーブンやグリルを備えた本格的なキッチンで自炊可能です。地のモノを求めて直売所へ、食材探しに行ってみましょう。
※「琥珀-AMBER-」では調味料が備わっていないので、自炊する場合は持参するかお店での購入が必要です。
近郊の農家が生産する農作物を自ら販売する直売所では、鎌倉で採れた新鮮な野菜が並びます。食べ方に迷ったら、販売する農家の方に聞けば親切に教えてくれますよ。たくさんの品種から選びたいなら朝の時間帯がおすすめ。野菜がなくなり次第の閉店です。
鎌倉市農協連即売所
- 住所
- 神奈川県鎌倉市小町1-13-10
- 交通
- JR・江ノ島電鉄鎌倉駅東口から徒歩3分
海岸でランチを食べるのも、鎌倉らしい楽しみ方。鎌倉野菜、地元の魚介類、湘南豚、葉山牛など、地元名産の食材をフレンチで味わえる「ビストロ オランジュ」では、昼時にはテイクアウト用のランチボックスを提供しています。事前に予約しておけば、待ち時間がなくてスムーズです。
ビストロ オランジュ
- 住所
- 神奈川県鎌倉市御成町2-13
- 交通
- JR・江ノ島電鉄鎌倉駅西口から徒歩約2分
材木座海岸からすぐの「琥珀-AMBER-」は、築約100年の外観はそのままに、リノベーションを施した和モダンな古民家バケーションハウス。定員10名の1棟貸しですが、ひとりでゆったり滞在することも可能です。
キッチンやジャグジー付きのバスルームも備えたぜいたくな造りで、長期滞在でのワーケーションにも向いています。早朝、まだ人の少ない材木座海岸を散歩しながら、その日の予定を立てたり、仕事のアイデアを整理したり。鎌倉ならではのクリエイティブな時間を堪能してみては。
琥珀-AMBER-
- 住所
- 神奈川県鎌倉市材木座6-4-4
- 交通
- JR・江ノ島電鉄鎌倉駅からバスで約8分、材木座下車約1分、またはJR・江ノ島電鉄鎌倉駅から徒歩約20分