
1571年に開港し、鎖国時代においても海外の目新しい文化が伝来した港町「長崎」。深い歴史の中で、東洋と西洋の異文化が融合して形成された町の風景には、異国情緒を感じられるスポットが多く残されています。
「ホテルインディゴ⻑崎グラバーストリート」はそんな長崎らしい風景が色濃く残る南山手エリアに誕生した新しいライフスタイル・ブティックホテルです。築120年以上の伝統的建造物をリノベーションした館内で過ごす体験は、長崎旅行のハイライトになること間違いありません。長崎の文化を感じる客室でゆったりと過ごし、聖堂レストランで特別な食事を楽しむ、1泊2日の旅をお届けします。
目次
- ・アクセス・チェックイン
- ・客室
- ・館内やホテル周辺を散策
- ・夕食
- ・朝食
アクセス・チェックイン
れんが造りの美しいホテルへ

日本で5番目の「ホテルインディゴ」ブランドとして、2024年12⽉に開業した「⻑崎グラバーストリート」。ホテルインディゴは周辺の「ネイバーフッド」の魅力を映し出すブランドで、ホテルインディゴ⻑崎グラバーストリートは「時空を旅する和・華・蘭ラビリンス」をコンセプトとしています。
和・華・蘭(わからん)文化とは日本の「和」、中国の「華」、オランダなど西洋の「蘭」を掛け合わせた長崎独自のもの。ホテルでは館内のデザインや料理を通して、その歴史ある文化を随所に感じることができます。

アクセスは路面電車・長崎電気軌道大浦支線「石橋駅」より徒歩約12分。国宝「大浦天主堂」や「グラバー園」といった観光地を横目に坂の街を「さるく」と、煉瓦造りの美しいホテルに到着します。「さるく」とは、長崎弁で「ぶらぶら歩く」という意味。長崎空港から行く場合は長崎空港リムジンバスに乗って「新地中華街」で下車し、そこからタクシー(約5分)を利用すると便利です。

煉瓦造りの本館は1898年に建てられた、国選定重要伝統的建造物群保護地区の伝統的建造物。当時は修道院・児童養護施設として使用された建物で、修復・耐震対策など約3年の工事を施し、保存して再利用しています。
正面に飾られている「大天使ミカエル像」は、ホテルの前身であった修道院・児童養護施設に大浦天主堂が寄贈したもの。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に登録されているように、キリシタンの街としても知られる長崎の文化を感じられます。

建物は日本の大工が西洋の技術を取り入れた「擬洋風建築」。一見、洋風の建物に見えますが屋根は銅の瓦屋根となっており、和風の要素も垣間見えるのが特徴です。ちなみに1865年に建設された大浦天主堂も、同じく擬洋風建築の最初期の貴重な建物となっています。


「お荷物、お持ちします」とスタッフの丁寧な案内で導かれ、ロビーラウンジへ。出島の扇形からインスピレーションを得た「ラグ」や、長崎更紗(さらさ)のパターンがモチーフとなった「ヨーロピアンタイル」など、長崎貿易で伝来した西洋の品々を表現したデザインが随所に散りばめられています。

そのまま流れに沿って、フロントでチェックイン。女性スタッフの制服の首元には「尾曲り猫」のワンポイントがあしらわれています。尾曲り猫とはしっぽの曲がった長崎でよく見かける猫で、鍵のように「幸運を引っかけてきてくれる」と言われています。

フロント奥のラウンジは、ゆったりとくつろげるコミュニティスペース。ウェルカムティーとして、びわの葉とエルダーフラワーがブレンドされたホテルオリジナルティーも自由に飲むことができます。
客室
カピタンガーデンテラススイート

客室は伝統的建造物を再利用した「本館」と新設された「北館」にあり、今回は本館1階「カピタンガーデンテラススイート」に宿泊しました。お部屋に続くカーペットは、長崎の町並みにある「石畳」を表現したデザイン。ホテル周辺だけでなく、館内でも長崎を「さるく」体験をしてほしいという思いが込められています。

ルームナンバープレートは丸眼鏡がモチーフ。海外から伝来した長崎発祥のモノや文化は数えきれないほどあり、その一つである眼鏡製造に着想を得たデザインです。装飾には長崎県の無形文化財に指定されている「長崎刺繍」が施されています。本館は鍋冠山側にあるので、「山」をモチーフにした刺繍が特徴です。

カピタンガーデンテラススイートの「カピタン」とはオランダ語で、英語では「キャプテン」の意味。出島の館長が「カピタン」と呼ばれていたことからインスピレーションを得た客室です。広さは約67平米、定員3人。ホテル内に1室のみの特別なスイートとなっています。

白いアーチ窓は、伝統的建造物の面影を室内でも感じられる、本館の客室だけの意匠。窓の先には長崎湾や稲佐山が見え、長崎らしい風景を眺めることができます。

和・華・蘭を感じる客室のデザインにも注目。リビング&ダイニング・ベッドルーム・バスルームという全体的なレイアウトは西洋的ですが、ベッドルームには和の屏風、クッションには中国の陶磁器を思わせるアクセントが施されています。

ベッドサイドに置かれているのは、洋傘を肩にかける様子が表現されたランプ。日本の歴史において、洋傘も長崎発祥です。屏風をよく見ると、ホテルから見た山や街の風景が。グラバー園や大浦天主堂のほか、長崎貿易で伝来したオウムなどの鳥も描かれています。

室内着は上下にセパレートしたルームウェアが用意されています。そのほかバスローブもあり、自分好みのスタイルでくつろげます。

クローゼットのテキスタイルは出島のカピタン部屋一面に貼られていた「唐紙」から着想を得たもの。松や花菱などの模様がコラージュされています。

カピタンガーデンテラススイートには、プライベートガーデンがあるのも大きな特徴。パラソルの下でコーヒーや紅茶を飲みながら、優雅なひとときを過ごせます。

エスプレッソマシンで入れるコーヒーと、「ART OF TEA」のティーは全室共通アメニティ。ブラックティーやカフェインフリーのハーブティーなどを楽しめます。

長崎名物の「カステラ」は、スイート宿泊者限定のホテルからのプレゼントです。プレーン・ゆうこう・コーヒーの3種類のカステラが、ホテルの建物をデザインしたかわいいボックスに入っています。「ゆうこう」とは、全国的にも長崎の限られた地域にしか自生していない柑橘。隠れキリシタンが育ててきたという説もある、長崎の伝統的な果物です。

ゆとりのあるバスルームもスイートならではのぜいたく。ダブルシンク&トイレが独立したレイアウトのため使い勝手が良く、デザイン性の高さとともに快適性も兼ね備えています。



ホテルインディゴ⻑崎グラバーストリートは全室バスタブ付きです。手持ちシャワーに加えて、カピタンガーデンテラススイートの浴室にはレインシャワーも備わっているため、好きなシャワーで汗を流せます。

高機能な「ReFa (リファ)」のドライヤーも全室共通のアメニティ。竹製歯ブラシやシャワーキャップなどは「尾曲り猫」がデザインされたホテルオリジナルポーチに入っており、ポーチはお土産として持ち帰り可能です。
スタンダードツイン 北館

総数66室の客室は全10タイプから選ぶことができ、「スタンダードツイン 北館」は新しく建てられた「北館」にあるスタンダードタイプです。広さは約31平米・定員は3人(エキストラベッド追加可能)。

本館の客室と比べると、少しずつデザインが違うのもホテルのこだわり。北館は海側に面しており、屏風にはホテルから見える「海」の風景が描かれています。


バスルームはコンパクトながらバスタブ付き。坂の多い長崎をたっぷり歩いて帰ってきても、夜は湯船に浸かってゆったりと身体を癒やすことができます。
館内やホテル周辺を散策
中庭からの眺め

夕食までは館内で建築美を楽しんだり、周辺を散策したり。中庭からは本館の外観全体が見渡せ、特徴的な白いアーチ窓や瓦屋根の擬洋風建築を眺めることができます。

ホテルは高台にあるので、中庭から長崎湾と造船所、稲佐山、女神大橋などの長崎らしい景色を満喫。白いチェアに座ってここならではの眺めを楽しみましょう。
世界遺産「大浦天主堂」や「グラバー園」へ




長崎の世界遺産まで徒歩圏内で行けるのも、ホテルインディゴ⻑崎グラバーストリートの魅力です。「大浦天主堂」と「グラバー園」までは、ともに徒歩約7分。大浦天主堂は世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一つ、グラバー園内にある旧グラバー住宅は世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の一つです。
夕食
聖堂レストランで味わう和・華・蘭料理

ホテルに戻ったら、聖堂レストラン「Restaurant Cathedréclat(カテドレクラ)」でディナータイム。1898年に建てられた聖堂のデザインを活かした空間で、食事を楽しめます。
赤・緑・青・黄のカラフルなステンドグラスがきらめく天井高約10メートルの空間は、とても幻想的。天井は大浦天主堂と同じゴシック様式を代表する「リブ・ヴォールト天井」で、まるで教会で食事をしているかのような特別な感覚になります。

ディナーはコースもしくはアラカルトで、長崎や九州の食材を中心としたイノベーティブな和・華・蘭料理を味わえます。コースはシーズンによって変わり、この日のシグネチャーディナーコース「Blanche」はAMUSE「エイヒレとからすみのクリームチーズディップ/鯵と「じゃがたらいも」のロールフリット/水いかの炙り長崎みそ漬け黄身ソース」からスタート。
「じゃがたらいも」はじゃがいもが長崎へと伝来した当時の名前で、アジアンなスイートチリソースとともに揚げたてのフリットを楽しみました。

アルコール類は、シャンパン・白ワイン・赤ワインなどがそろい、ここでしか飲めないカクテルもおすすめです。「YUKOH 游香」は希少な五島列島福江島のクラフトジン「GOTOGIN」を主軸に、長崎の伝統柑橘「ゆうこう」を合わせたシグネチャーカクテル。椿の香りが華やぐジンとゆうこうの柑橘が軽やかに混ざり合い、食中酒にもぴったりな爽やかさでした。

HORS D'OEUVRE(オードブル)「とらふぐ昆布マリネ 長崎薬味ゆうこう胡椒ソース」は、長崎が養殖収穫量日本一のとらふぐを昆布でマリネした一品。見た目には洋風ながら、胡椒ソースは意外にも和を感じる味わいで、素材の良さとともに深く堪能できました。

長崎は収穫する「魚の種類」が日本一。そんな豊富な長崎の魚介をたっぷりと満喫できたのが、POISSON(ポワソン)「魚介のコトリヤード~白いブイヤベース~」です。アシアカエビ、タイ、アナゴ、サワラの幼魚・サゴシをフランス・ブルターニュの郷土料理で仕上げており、多種多様な魚をぜいたくに味わえる一皿。中華料理の調味料「海醤(ハイジャン)」が隠し味で、和・華・蘭料理ならではのソースもとてもおいしかったです。

魚だけではなく、肉もおいしい長崎。VIANDE(ヴィヤンド)「長崎和牛のパイ包み焼き赤ワインソース 五香粉の香り」は長崎和牛のサーロインの旨みがパイの中にギュッと詰め込まれています。五香粉のスパイシーな香り、そして赤ワインとともにマリアージュを楽しみました。

〆の一品として登場したのは、意外にも「塩サバの焼きおにぎり あごだし茶漬け」。実は長崎は「おにぎりで〆る」文化があり、トビウオの出汁「あごだし」とともにいただきました。身体に染み渡る和の味わいに、心もほっこりします。

最後はDESSERT(デザート)「スイートスプリングのブリュレ ラムレーズンアイス添え」です。長崎はみかんの生産も全国トップクラスで、スイートスプリングは温州みかんとハッサクを交配した品種。中をくり抜いたスイートスプリングの中にブリュレがあしらわれ、ラムレーズンアイスやスイートスプリングの果汁とともに楽しみました。
料理は最初から最後まで驚きのあるものばかり。日本人が初めて外国の文化と出会った当時の感動を得られるようなコースでした。
朝食
ステンドグラスの光が美しい、朝のレストラン

客室の窓の先にある稲佐山の夜景を見ながら眠りについた翌朝。国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている南山手エリアを軽く散歩して、朝食を食べに「Restaurant Cathedréclat(カテドレクラ)」へ向かいました。朝は太陽の光がステンドグラスから差し込み、より幸福感に包まれる美しさとなっています。


朝食は「アメリカンプレート」もしくは「和お重ボックス」の2種類から選べるセミビュッフェ。「長崎大村人参」などドレッシングが選べるサラダ、冷菜、フルーツ、シリアル、ドリンクはビュッフェスタイルで好きなものを取ることができます。

アメリカンプレートは卵料理(オムレツ、スクランブルエッグ、目玉焼き)をメインに、雲仙ハムや野菜を楽しめる一皿。オムレツはプレーンのほか、「角煮入り」が選択できます。長崎卓袱(しっぽく)料理の角煮をトロッと卵のオムレツで楽しめるのは、ホテルインディゴ⻑崎グラバーストリートならでは。
飲み物はフルーツジュースや牛乳のほか、コーヒーや紅茶がラインナップ。なかでも、長崎にコーヒーが伝来した南蛮貿易当時の味を再現したホテルオリジナルコーヒーがおすすめです。ナッツ系の香ばしさ、そして爽やかな柑橘を感じられる味わいとなっています。

和お重ボックスは、長崎産「つや姫」とともに長崎名物をたっぷり楽しめる和食。エビと魚のすり身をパンで巻き揚げた「ハトシロール」、五島列島に伝わるサツマイモと餅を合わせた「かんころ餅」、自家製角煮入り餡をかけた「だし巻き卵」など、郷土の味が詰まったボックスです。

歴史ある建物を生かした空間で、異文化を楽しむ喜びを感じられる「ホテルインディゴ⻑崎グラバーストリート」。特にステンドグラスがきらめく聖堂レストランで食事をする体験は、キリスト教との繋がりが深い長崎ならではです。もちろん、大浦天主堂やグラバー園へ徒歩で行ける利便性も魅力。異国情緒あふれる南山手エリアに泊まり、文明開化の時代へとタイムスリップする旅へと出かけませんか。
ホテルインディゴ長崎グラバーストリート(IHGホテルズ&リゾーツ)
- 住所
- 長崎県長崎市南山手町12-17
- アクセス
- 交通アクセス長崎空港から高速特急バスで約40分、バス停「新地中華街」で下車、ホテルまでタクシーで約5分 /長崎駅からタクシーで約8分
- 駐車場
- あり(先着順・2,200円/泊)※あらかじめホテルまでお問い合わせ
- チェックイン
- 15:00
- チェックアウト
- 11:00
- 総部屋数
- 66室
取材・撮影・文/小浜みゆ