
新潟県の最西端に位置する、糸魚川(いといがわ)市。2009年に日本で初めて「世界ジオパーク」に認定された場所で、地形や地質の観点から世界的に注目を集めています。
「ジオパーク」という言葉はよく聞きますが、具体的にどういう場所を指すのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。実は知れば知るほど興味深い、魅力的なスポットです。
今回はそんなジオパーク・糸魚川市の魅力を存分に満喫できる1泊2日のモデルコースを紹介します。
目次
新潟県糸魚川市へのアクセス

JR「糸魚川駅」は、「東京駅」から北陸新幹線に乗って直通で2時間10分ほどの距離にあります。
「大阪駅」から目指す場合は、まずは特急サンダーバードに約1時間20分乗って「敦賀駅」へ。そこから北陸新幹線に乗り換えて、1時間50分程度で到着します。
また、「糸魚川駅」には、第三セクター鉄道の「えちごトキめき鉄道 日本海ひすいライン」も通っているため、これから紹介する市内の各スポットへは鉄道でも行くことが可能です。
車で向かう際は、北陸自動車道「糸魚川IC」を目指しましょう。そこから市内中心部の「糸魚川駅」までは7分ほどの道のりです。
ユネスコ世界ジオパークに認定された糸魚川

ジオパークとは、地球や大地を意味する「Geo(ジオ)」と、公園を意味する「Park(パーク)」を合わせて作られた造語。直訳で「大地の公園」とも呼ばれています。
「ユネスコ世界ジオパーク」は日本に10地域あり、その中で最初に認定されたのが、この糸魚川市。
認定された理由はいくつかありますが、日本列島形成において、非常に重要な役割を果たす「糸魚川静岡構造線」があることも大きな理由のひとつです。
「糸魚川静岡構造線」とは、新潟県糸魚川市から静岡県静岡市にかけて約300キロメートルにわたって延びる断層線のこと。この線を境目に日本列島を東西に分けることができます。古い地層と新しい地層が接する場所で、地震や火山活動の原因となる活断層が存在。地球の活動を目の当たりにできる世界的にも珍しい場所なのです。


そんなジオパークの魅力や見どころなどをわかりやすく紹介してくれるスポットが、「糸魚川駅」アルプス口1階にある「ジオステーション ジオパル」。

かつてJR大糸線を走っていた実車を使った「キハ52待合室」など、子どもから大人まで楽しめる展示も多く、ジオパーク観光のスタートとしてぴったりです。まずはここに寄って予備知識を仕入れましょう。

また、糸魚川市はその特別な地質から、市内の海岸にはたくさんの種類の石が転がっています。ブルーやグリーンなど旅の記念に持ち帰りたくなるようなきれいな石も多いです。


そこで、石拾いの際に持っておきたいのが「石ころ探索キット ひろっこ」(1,200円)。
のちほど紹介する「フォッサマグナミュージアム」の割引クーポン券も同封されているので、ここで購入しておくとお得に楽しめますよ。
ジオステーション ジオパル
- 住所
- 新潟県糸魚川市大町1-7-47
- 開館時間
- 8:30~19:00(ジオパーク観光インフォメーションセンター・キハ52待合室)
- 定休日
- 1月1日
- 入館料
- 無料
- アクセス
- 【電車】JR「糸魚川」駅から徒歩で約1分【車】北陸自動車道「糸魚川」ICから約10分
- 公式サイト
- 糸魚川観光ガイド
フォッサマグナミュージアム

糸魚川市への知識をさらに高めてくれるのが「フォッサマグナミュージアム」です。「糸魚川駅」からタクシーやバスで約10分の場所にあります。

糸魚川市といえば、宝石のヒスイの産地としても知られるエリア。
実は市内の海岸で拾える石の中に、ヒスイも眠っているのだとか。2日目にヒスイ探しに挑戦するので、成功させるためにもヒスイの原石がどんなものなのかを知っておくことが重要です。

「フォッサマグナミュージアム」には、約700点のヒスイが並ぶ展示室などがあるので、ここで特徴をしっかり頭に入れておきましょう。


また、館内では「そもそも糸魚川でなぜ多くのヒスイが採れるのか?」といった理由をわかりやすく説明した動画なども放映されています。
趣向を凝らした展示で、糸魚川市のことを深く楽しく学べるスポットです。
フォッサマグナミュージアム
- 住所
- 新潟県糸魚川市大字一ノ宮1313
- 開館時間
- 9:00~17:00(最終入館は16:30まで)
- 定休日
- 12〜2月の月曜・祝日の翌日、12月28日〜1月4日
- 入館料
- 大人700円、小中高生300円、未就学児無料
- アクセス
- 【電車】JR「糸魚川」駅から路線バスで「フォッサマグナミュージアム」下車すぐ【車】北陸自動車道「糸魚川」ICから約8分
- 公式サイト
- フォッサマグナミュージアム
えちごトキめき鉄道 日本海ひすいライン

「フォッサマグナミュージアム」を満喫したあとは、再び「糸魚川駅」へ。
そこから、えちごトキめき鉄道 日本海ひすいラインに乗車して「能生(のう)駅」へ向かいます。15分ほどの道のりで、車窓からの日本海を眺めていたらあっという間にたどり着きました。


ちなみに、えちごトキめき鉄道には観光列車の「雪月花」や「国鉄型観光急行」など面白い列車も走っています。気になる人はぜひチェックしてみてください。
えちごトキめき鉄道
- 公式サイト
- えちごトキめき鉄道
マリンドリーム能生でカニを堪能&お土産

「能生駅」で下車したら、そこからタクシー徒歩25分ほどの場所にある「道の駅マリンドリーム能生」を目指しましょう。

日本海の中には、「フォッサマグナ」と呼ばれる日本列島を縦に分けるような大きな地質的な裂け目があります。そのため、糸魚川の沖は、すぐに深い海になっていて、ベニズワイガニやアンコウなど、深海にすむ生きものを陸から近いところで取ることができるのです。
「道の駅マリンドリーム能生」では、そういった深海エリアの海の幸を楽しめます。

横丁内には7つのカニ専門店が軒を連ねており、店頭で取れたてのベニズワイガニを茹でて並べています。値段も1杯1,000円くらいから5,000円台までとかなり手頃です。

購入した茹でカニは、併設されている無料休憩施設の「カニかに館」でイートイン可能。発送もできるので、自宅用やお土産を買うのにもおすすめです。


また、「道の駅マリンドリーム能生」敷地内にある「地酒ショップ 丸富物産」では、糸魚川市内にある5軒の酒蔵の「飲み比べセット」(3,910円)も販売されています。
糸魚川静岡構造線を境に古い地層と新しい地層があるため、市内でもくむ場所によって地下水の硬度が異なるのだとか。水の硬さによって味わいやのど越しなども変わってくるので、飲み比べてみるのも面白そうですね。

さらに敷地内には2022年にオープンした新潟県立海洋高校のアンテナショップ「能水商店」もあります。

ここでの注目は、「最後の一滴」(864円)。地元の新潟県立海洋高校の生徒と先生が開発した鮭の魚醤です。
ほかにも、高校生のアイデアを生かしたユニークな商品や、アンコウを使ったバーガーなどのフードメニューも販売されています。ぜひチェックしてみてください。
道の駅「マリンドリーム能生」
- 住所
- 新潟県糸魚川市能生小泊3596-2
- 営業時間
- 9:00~17:00※一部店舗により異なる
- 定休日
- 1月1日※1~2月は能生産ベイズワイガニ禁漁期間
- アクセス
- 【電車】えちごトキめき鉄道「能生」駅から徒歩約25分【車】北陸自動車道「能生」ICから約5分
- 公式サイト
- 道の駅「マリンドリーム能生」
弁天岩で夕陽を眺める

「マリンドリーム能生」からタクシーを3分ほど走らせた先にある「弁天岩」でも、大地の成り立ちを読み解くことができます。
「弁天岩」とは、航海安全の神「市杵嶋姫命」(いちきしまひめのみこと)が祭られている岩礁のこと。約100万年前の火山噴火物によってできた岩礁が、水面上に出ることによってできたのだとか。

赤い欄干の「曙橋」で結ばれていて、歩いて渡ることができます。車で行く際は手前の国道の高架下に駐車場があるのでそこに停めましょう。

岩の頂上からは日本海が一望できます。ここから眺める夕日もとても美しいと評判です。

鳥居の後ろに立つ白いこぢんまりとした灯台は、ロマンスの聖地として「恋する灯台」に認定されています。
弁天岩
- 住所
- 新潟県糸魚川市大字能生
- 営業時間
- 24時間
- 定休日
- なし
- アクセス
- 【電車】えちごトキめき鉄道「能生」駅から徒歩で約20分【車】北陸自動車道「能生」ICから約5分
- 詳細
- 糸魚川観光ガイド
ご当地グルメ「糸魚川ブラック焼きそば」

1日目は、ご当地グルメ「糸魚川ブラック焼きそば」でしめくくり。
糸魚川でたくさん獲れるイカを使った名物を作ろうと、地元の有志たちでアイデアを出し合って、2010年に誕生しました。
イカとイカスミ、中華麺の3つを使うことが条件で、味付けなどは自由。市内で「糸魚川ブラック焼きそば」を提供している16店舗は、それぞれ個性的な一皿を提供しています。

「糸魚川駅」から徒歩約3分の「月徳飯店」は、ブラック焼きそばを考案したお店。ここの「糸魚川ブラック焼きそば」(950円)は、イカスミを使ったなソース味で、真っ黒な麺が目をひく一皿。

薄皮の卵焼きにマヨネーズとケチャップで美しい線を引いているのが特徴です。添えられた豆板醤を混ぜればピリッと味がしまり、変化が楽しめます。ぜひ一度試してみてください。

そのほか、「月徳飯店」では、あんに糸魚川で水揚げされる甘エビを使った五目あんかけラーメン「月徳え~ラーメン」(1,050円)も人気です。1日目はたくさん歩いたので、おいしい料理でエネルギーチャージしましょう!
「月徳飯店」の建つ「糸魚川駅」周辺には宿泊施設も多いので、お酒を飲んでも歩いて帰れるのはうれしいですね。
月徳飯店
- 住所
- 新潟県糸魚川市大町2-5-18
- 営業時間
- 11:00~14:30(14:20L.O.)、17:00〜21:00(20:30L.O)
- 定休日
- 月曜、一部の火曜(祝日の場合は翌平日。ほかに不定休あり)
- アクセス
- 【電車】JR「糸魚川」駅から徒歩で約3分【車】北陸自動車道「糸魚川」ICから約7分
- 公式サイト
- 月徳飯店
親不知海岸でヒスイ探し

2日目はヒスイ探しに挑戦!
市内にはいくつかヒスイを探せる海岸がありますが、中でも「親不知(おやしらず)海岸」がおすすめ。
「道の駅親不知ピアパーク」の目の前にあり、トイレやレストランもあるので、休憩を挟みながらじっくりヒスイ探しに取り組めます。
また、「石ころ探索キット ひろっこ」はここでも購入できるので、1日目に買い忘れたとしても安心です。

ヒスイ探しの前に「道の駅親不知ピアパーク」内にある「翡翠ふるさと館」にも立ち寄ってみてください。ここに置かれた、102トンもある巨大ヒスイ原石の展示は必見です。

海岸には色とりどりのきれいな石が見わたす限り広がっています。宝石のようにも見えるきれいな石が至るところに転がっていますが、本物のヒスイはごくわずか。
1日目に立ち寄った「フォッサマグナミュージアム」での解説によると、「ヒスイは探し慣れた人が一所懸命探して、1時間に1個見つかるかどうか」なのだとか。そう簡単には見つからないようです。

ひとつひとつ手に取って、じっくり観察してみましょう。見つからなくても、きれいな石たちを見ているだけで、心が躍りますよ。

「石ころ探索キット ひろっこ」には見分け方のコツや、ヒスイ以外に海岸で見つけられる主な石の紹介なども書かれています。ヒスイにこだわらず、自分の好みの石も探してみましょう。

見つけたお気に入りの石をキットに同封されたケースに入れれば、自分だけの“推し石”標本の完成です!

なお、拾った石は「フォッサマグナミュージアム」で、1グループ5個まで「石の鑑定」(無料)にかけることができます。
特定日のみの実施で、事前に配布される鑑定券を入手する必要がありますので、気になる人はミュージアムのホームページで詳細を確認してください。
道の駅親不知ピアパーク
- 住所
- 新潟県糸魚川市外波903-1
- 営業時間
- 翡翠ふるさと館は9:00〜17:00/4〜10月、それ以外は時期によって変動。その他施設は公式サイトで要確認
- 定休日
- 不定休【翡翠ふるさと館】火曜(祝日の場合は営業)、その他不定休あり
- 入館料
- 無料
- アクセス
- 【電車】えちごトキめき鉄道「親不知」駅から徒歩で約15分【車】北陸自動車道「親不知」ICから約2分
- 公式サイト
- 道の駅親不知ピアパーク
道の駅親不知ピアパークでランチ

お腹が空いたら、「道の駅親不知ピアパーク」内の「レストピア」でひとやすみ。

海風で冷えた体にうれしいのが「たら汁」(単品600円)。「たら汁」とは、スケトウダラを丸ごとぶつ切りにして味噌仕立てにした、糸魚川市の郷土料理です。

希望すると、コラーゲンたっぷりの頭入りにしてもらえます。骨が多くて食べづらいですが、きれいに食べた人には「お魚表」がもらえるそう。
ほかにもヒスイをイメージさせるような緑色の麺を使用した「ひすいラーメン」(850円)をはじめ、糸魚川名物の「かまぼこメンチ」や越後名物の「おぼろ汁」など、いろいろ食べてみたくなる逸品ぞろいです。
レストピア
- 住所
- 道の駅親不知ピアパーク内
- 営業時間
- 9:30〜17:00(11〜3月は10:00〜16:00)
- 定休日
- 木曜
- 公式サイト
- 道の駅親不知ピアパーク
親不知・子不知の絶景を堪能

旅の最後に「親不知・子不知(おやしらず・こしらず)海岸」へ。
「親不知・子不知海岸」とは、「青海駅(おうみえき)」~「市振駅(いちぶりえき)」間の約15キロメートル続く険しい海岸線の総称のこと。
「青海駅」から中心にある「親不知駅」までを「子不知」、「親不知駅」から「市振駅」までの海岸線を「親不知」といいます。

名前の由来は諸説ありますが、断崖絶壁と荒波が旅人の行く手をはばみ、波打ち際を駆け抜ける際に親は子を忘れ、子は親を顧みる暇がなかったことから、このような名前が付いたのだとか。
そんな旅人らを苦しめた風景が眺められる「親不知」へ向かいます。

展望台へは「道の駅親不知ピアパーク」からタクシーで約6分の無料駐車場から、1分ほど歩けば到着です。
親不知の海岸線は昔から交通が非常に困難だった場所で、何度も道路やトンネルが新しく整備されてきました。展望台からは、その中でも「天下の険」と呼ばれるほど特に険しい段壁を眺めることができます。

また、各世代の交通の難所の変遷も一望できます。
もっとも古い第1世代は波打ち際の海岸線。「親不知子不知」の由来になった断崖絶壁下の砂利浜です。
明治時代、難工事の末に拓かれた第2世代の旧国道は、現在は「親不知コミュニティロード」と名付けられ、遊歩道として整備されています。第3世代は現在の国道8号線、そして第4世代が北陸自動車道です。
新旧の道を見比べてみると、波間を徒歩でくぐり抜けた昔の旅人や、断崖絶壁に道を拓いた人たちの苦労がより伝わりますね。

なお、親不知コミュニティロードと旧北陸本線の「親不知レンガトンネル(旧親不知トンネル)」をつなぐ、1周約2キロメートルの散策コースもあり、トンネルは歩いて抜けることができます。
鉄道の歴史や明治時代の土木技術やその文化的価値を今に伝える貴重な建造物を、ぜひ間近で見てみてください。
親不知コミュニティロード
- 住所
- 新潟県糸魚川市大字市振
- 営業時間
- 24時間
- 定休日
- なし
- 詳細
- 親不知・子不知
大地の歴史や地球の面白さがよくわかる、ジオパークのまち糸魚川市。
地球が活動するおかげで、私たちは新鮮で豊富な魚を食べることができたり、きれいな水を飲むことができたりすることがわかり、日々の生活への感謝も生まれます。今回紹介した以外にも、魅力が満載のエリアなのでぜひ宿泊してゆっくり巡ってみてください。
取材・文・撮影/若井 憲