東京都三鷹市の井の頭公園内にある「三鷹の森ジブリ美術館」。世界中のジブリファンが訪れるこの聖地では、映画の舞台を彷彿とさせる展示や、ここでしか見られない短編映画、限定グルメ&グッズなどが楽しめます。この記事では、美術館を楽しむうえで押さえておきたい、見どころや隠れた魅力をご紹介します。
美術館へのアクセス
「三鷹の森ジブリ美術館」があるのは、「井の頭公園」と呼ばれ親しまれている東京都三鷹市の井の頭恩賜公園内。JR「三鷹駅」もしくは「吉祥寺駅」からバスで行くこともできますが、歩いて行くのがおすすめです。のんびりお散歩気分で歩いても約15分ほど。
ちなみに、美術館への案内役は、水先案内人をイメージし作られた「山猫(やまねこ)」。案内板の上からひょっこり顔をのぞかせているので、チェックしてみてくださいね。
美術館の敷地に入ると、トトロがお出迎え。でも、実はここはニセの受付。宮﨑駿監督が「大人も子どもも楽しめる美術館」を目指し、訪れる人にちょっとした驚きや笑いを提供する仕掛けとして作りました。
ニセの受付を通り過ぎて、周囲の森に溶け込むような、ファンタジックな建物が見えてきたら、ここが「三鷹の森ジブリ美術館」です。ジブリらしい大胆で多彩な色使いに気持ちが高ぶります。
入口からホールまでの見どころは?
洞窟のような入口を通って、いよいよ館内へ。本当の受付の天井には、色とりどりのフレスコ画が描かれており、心躍るような美しい空間。受付には、みんなが大好きなトトロもちょこんと座っています。
天井に描かれているのは、ジブリ映画に登場するキャラクターたち。トトロやホウキにまたがるキキ、ネコバス、ロボット兵などと一緒に、小動物も森の中を駆け回っています。
窓にはジブリ作品をモチーフにしたステンドグラスも。どんなキャラが描かれているのか、クイズ感覚で当ててみるのも楽しい時間です。
またステンドグラスは、天候や時刻によって見え方が変わるのも魅力。朝はやわらかく温かみのある色合いに、昼間は鮮やかで元気な雰囲気に、夕方になると少し落ち着いたトーンになり、幻想的な美しさを醸し出されます。
そして、もうひとつ注目しておきたいのが、入場引換券と引き換えにもらえるフィルム入場券。美術館内の 「土星座」(映像展示室)で短編アニメーションを見るために必要なチケットなのです。
実はこれ、歴代ジブリ作品の“本物のフィルム”を使った特別なデザイン。ジブリ作品のシーンが切り取られており、光にかざすと絵柄が浮かび上がる仕組みになっています。どの作品のシーンになるのかは来てからのお楽しみです。
本当の受付から続く階段を下りると、そこは吹き抜けの中央ホール。光が差し込むホールは、明るく開放感たっぷり。
美術館のキャッチコピーは、「迷子になろうよ、いっしょに。」。そのため、決まった順路はなく、館内を自由に歩き回ることができます。「これ、なんだろう!?」と興味深いスポットがあれば、館内を行ったり来たり……。迷子になることをとことん楽しんでくださいね。
ホールの天井は、ガラス張り。飛行機の翼のような天井扇がクルクルと回っています。天井に埋め込まれたフュージングガラスに彩られているのは、黄色いクジラや、ポニョと妹たち。見上げれば、太陽の光を受けて輝くポニョたちの姿にほっこり癒やされます。
訪れる人が「何だろう?」と顔をのぞかせる、この大きなオブジェは「ETORIN(エトリン)」といいます。中に置かれた革張りの椅子は、座ってもOK。椅子に座って上をのぞくと、のぞき絵のようなアニメーションが楽しめます。
映像展示室「土星座」で短編映画が見られるのは、1人1回のみ。見逃さないように、「土星座」へ行き、上映時間をチェックしておきましょう。
映画の内容は、「三鷹の森ジブリ美術館」または愛知県にある「ジブリパーク」でしか見られない貴重なものばかり。子どもから大人まで楽しめる、ジブリらしい温かみのある映像になっています。
不思議かわいいが詰まった「映画の生まれる場所」
ファン必見の場所といえば、こちら。常設展示室「映画の生まれる場所(ところ)」。展示室は5つの小部屋に分かれていて、順に回ることで、アニメーション映画がどのように生まれるのかを知ることができます。
たとえば「準備室(少年の部屋)」は、棚にぎっしり本が並び、まさに仕事部屋といった雰囲気。この部屋の持ち主の少年が好きそうな、飛行機模型や恐竜もつり下げられています。
宝箱のフタが閉まっていたら、ぜひ開けてみて。中には、少年が集めた大切な宝ものがたくさん詰めこまれています。
「世界をつくる所」には、過去のジブリ作品で実際に使われた背景画が、いたるところに散りばめられています。どの映画に使われた背景なのか、記憶の糸をたぐり寄せながら、じっくり眺めてみましょう!
机の上には、使いかけの絵皿やポスターカラー、筆が置かれ、今まさにここで部屋の主が背景画を描いているような臨場感があります。
そして「花の演出部」と呼ばれる部屋には、緑色の赤ちゃんっぽい妖怪「ジブリブリ」があちこちに!この妖怪は、仕事がはかどらない人の汗や冷気に集まり、肩こりなどで苦しめるのだとか。全部で10人いるので、探してみてくださいね!
灰皿にたまった大量の吸い殻、短いえんぴつの山……。ジブリブリがたくさんいるだけあって、この部屋の主は、イライラしながらも相当がんばって仕事をしている様子がうかがえます。
そしてこちらは、セル絵の具を塗る女性たちが壁に描かれた部屋。棚にはセル絵の具の瓶がずらり。細かい指示とともに彩色される、キキの貴重なセル画も飾られています。
出口付近では、編集作業にフィーチャー。自分の手で編集機器のフィルムを回すことができるんです!編集作業気分まで味わえるなんて、ジブリファンにとってはまさに夢のようなひととき。ジブリ作品の「作り手」の視点を体験できるのが大きな魅力です。
他にもたくさん!館内の見どころは?
常に子どもたちの明るく弾む声であふれているのが、ネコバスルーム。誰もが中に入って、もふもふしてみたいですよね。……でも、ここは小学生以下限定。大人は入ることができない、キッズの楽園になっています。
入口付近にある、みっしり置かれたマックロクロスケは、子どもたちの良き遊び相手。コロンと転がしたり、好きな形に並べたり。子どもたちが目を輝かせながらマックロクロスケを見つけて遊ぶ姿は、大人にとってもほっこりする瞬間です。
そして、本好きの人に立ち寄ってほしいのが、図書閲覧室「トライホークス」。店内には、宮﨑駿監督や美術館スタッフが選んだ図書などが並び、いくつかの本は、ここで実際に購入することもできます。
屋外も散策してみよう
ジブリ美術館の館内は、残念ながら撮影NG。ジブリらしい写真を撮りたいなら、らせん階段を上って、屋上のロボット兵に会いに行ってみて。どこか哀愁が漂うロボット兵は、美術館の守り神的な存在です。
ロボット兵の足元に、ひっそりとラピュタ王家の紋章も落ちています。こちらも探してみてくださいね。
さらに奥には、『天空の城ラピュタ』に登場するあのシーンを思い出させるような要石が置かれています。要石の表面には、くさび形の文字も。手を当てて「バルス!!」と声を合わせれば、まるでパズーやシータになった気分を味わえますよ。
屋外の見どころは、まだまだ他にも。パティオへ行くと、懐かしい手漕ぎポンプの井戸があります。ぐっと力を込めてポンプを漕げば、実際に地下水を汲み上げることもできます。※ただし、この水は飲むことはできません。
パティオに来たら、壁にも注目です。穴からこちらの様子をうかがっているのは、マックロクロスケ。「あっ、いた!」と発見する楽しさもジブリ美術館ならでは。見つけた瞬間、きっと心がほっこり癒やされるはずです。
テイクアウトメニューも充実のカフェ
美術館のさらなるお楽しみが、ここでしか食べられない限定グルメ。カフェ「麦わらぼうし」は、冬になると薪火が灯り、ホッとする温もりを届けてくれる癒やしのスポット。店内だけでなく、テイクアウト用のメニューも豊富に用意されています。
人気の定番メニューは「くいしんぼうのカツサンド」(850円)。こちらは、北海道の大地で元気に育った放牧豚の旨みが詰まったポークカツに、自家製のカツソースをたっぷりつけて、香ばしい胚芽パンではさんだボリューム満点のメニュー。パンに刺さっているジジの小旗も、なんともキュートです。
もっちり噛みごたえのあるパンに、ジューシーな北海道産の放牧豚ソーセージを挟んだ「麦わらぼうしのホットドッグ」(680円)。パンには麦わらぼうしの焼印入り。大きな口で、カブッとかぶりついてくださいね。
甘いものが食べたいときは、「ふぞろいイチゴのオムレット」(650 円)を。ふんわりたまごの香りのするスポンジ生地で、甘酸っぱいイチゴとたっぷり生クリームをやさしく包んだ、見た目もおいしいデザートです。
ビール好きなら、ドリンクはオーガニック麦酒「風の谷のビール(ピルスナー)」(850円)がおすすめ。スタジオジブリの映画監督・宮﨑吾朗さんが描いたラベルがポイント。飲み終わった瓶を持ち帰れば、とっておきのお土産になります。
また「麦こがしのラテ」(450円)は、冬に飲みたい一品。コーヒーは使用せず、ココアとローストした麦で出来ています。飲んでみると、香ばしく、ふわっとやさしい甘さにほっこり。心も身体もぽかぽかに温めてくれますよ。
ジブリの思い出を持ち帰れるショップ
お土産を買うなら、美術館オリジナルのグッズがそろうショップ「マンマユート」へ。ちょっと不思議なネーミングは、映画『紅の豚』に登場する空賊団「マンマユート団」にちなんだもの。
キーホルダー、ピンバッチ、ぬいぐるみ、ポストカード……などなど、店内で扱うほとんどのものが、ここでないと買えない特別なものばかり。
ジブリの思い出を形に残すなら、ぜひ「美術館オリジナル マックロクロスケ」(1,870円)を。愛でる、なでる、転がす。楽しみ方は無限大です。
最後にチケット情報をご紹介。美術館は、日時指定の完全予約制になっています。発売日は、毎月10日。入館時間は10:00、12:00、14:00、16:00の1日4回です。入館時間は決まっていても、退館は決まっていません。朝は混雑しやすいので、14:00以降の回で入館して、夕暮れ時やライトアップを楽しむのもおすすめですよ!
三鷹の森ジブリ美術館
- 住所
- 東京都三鷹市下連雀1-1-83(都立井の頭恩賜公園西園内)
- 営業時間
- 10:00~18:00(最終入場回:16:00)
- アクセス
- 三鷹駅南口から徒歩約15分、コミュニティバスで約5分
JR中央線・京王井の頭線吉祥寺駅、京王井の頭線井の頭公園駅から徒歩約15分 - 駐車場
- なし
- 公式サイト
- 三鷹の森ジブリ美術館
© 2023 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli © Museo d'Arte Ghibli
取材・写真・文/安藤美紀