旅の楽しみ方

豪華な車内で絶品スイーツを堪能する、観光列車「或る列車」の旅

JR九州が誇る豪華スイーツ列車「或る列車」。海や田園風景などの美しい車窓を楽しみながら、一流シェフが手がけたスイーツのコースをゆったりと味わえます。そして、車内はまるで高級ホテルのようなきらびやかな空間。ここだけの特別な食と空間を体験しに、出かけてみませんか?

「或る列車」誕生の舞台裏

車内をご案内する前に、「或る列車」誕生の背景あるロマンあふれる物語をご紹介しておきましょう。

或る列車

「或る列車」のモデルは、明治39(1906)年に「九州鉄道」(JR九州の前々身)がアメリカのブリル社に発注した、当時の日本で最も豪華な客車「九州鉄道ブリル客車」。

この客車は、その後の九州鉄道の国有化に伴い、活躍する機会がないまま、幻の列車となってしまいます。正式な名前はありませんでしたが、鉄道ファンの間では長らく「或る列車」の愛称で語り継がれていました。

そんな幻の列車の模型を、生涯を通して鉄道を愛し、世界中の鉄道模型を収集・製作していた故・原信太郎氏が残していたのです。原氏は少年時代、操車場に打ち捨てられていた「或る列車」を発見し、夢中でスケッチをしに通ったそう。そのスケッチを元に、後年模型を作ったのです。

或る列車

「或る列車」車内に飾られている模型

クルーズトレイン「ななつ星in九州」なども手がけたデザイナー・水戸岡鋭治氏が、原氏の模型を元にデザイン・設計を担当し、2015年、「或る列車」は現代によみがえりました。鉄道少年の情熱が時代を超えて人の心を動かし、「或る列車」に命を吹き込んだのです。そんな誕生の背景を知ると、列車旅がますます特別なものに感じられます。

ではここから、「或る列車」での旅をご紹介します! 取材したのは、2019年12月の佐世保~長崎駅を走るコース。

外観からすでに豪華! ゴールドに輝く車体

或る列車

ゴールドとブラックを基調とした車体は、クラシックで華やかな雰囲気。駅のホームでひときわ存在感を放っています。

或る列車
或る列車
或る列車

車体にはハートマークがいっぱい! ロゴは、「SWEET TRAIN」の頭文字「S」と「T」をあしらったもの。画像右側のロゴは、星の中に「或」の文字が。

或る列車

ドアの前では客室乗務員さんがお出迎えしてくれます。

或る列車

ちなみに、チケットはこんな特別なクリアファイルに入れてもらえます。チケットには乗車開始時間(取材時は発車の約30分前)も書かれているので、早めに行って、発車まで外観とインテリアをたっぷり楽しみましょう!

では、いざ乗車! 「或る列車」のお楽しみのひとつ、豪華絢爛な車内をご案内します。

まるで高級ホテル! 車内はラグジュアリーな特別空間

或る列車

明治39(1906)年生まれの豪華列車を元にデザインされた車内は、当時を偲ばせるクラシカルでラグジュアリーな空間。足を踏み入れた瞬間から特別な時間を演出してくれます。

或る列車

窓や壁には、木工・家具の町として知られる福岡県大川市の伝統的な建具装飾技法「大川組子」の格子が。釘を使わず組み立てられた格子は、繊細で洗練されたデザイン。照明や窓の外の光が差し込むことによって、美しい影を落とします。ヨーロッパ風のクラシカルな雰囲気に、九州伝統の技が巧みに融合しています。

オープンタイプの1号車

或る列車 1号車

「或る列車」は2両編成で、1号車はオープンタイプ。2名席と4名席があります。クラシカルな照明やふかふかの絨毯、メープル材のテーブルなど、その調度品はまるで高級ホテルのよう。

或る列車 1号車

天井は、人気の豪華列車「ななつ星in九州」と同じ「格(ごう)天井」。四つ葉のクローバーを模したデザインです。よく探してみると、三つ葉と七つ葉が隠れていて、細部まで遊び心が感じられます。

個室タイプの2号車

或る列車 2号車
或る列車 2号車

そして、2号車は個室タイプ。各コンパートメント間は大川組子の扉で仕切られていて、プライベート感のあるつくりになっています。床にもふんだんにウォールナット材が使われ、木の温もりを感じられる落ち着いた空間が広がります。

或る列車 2号車

個室は、1名用と2名用の2タイプあります。一人旅でも気兼ねなく、この特別な時間を堪能できるのはうれしいですね。

通路まで豪華絢爛!

或る列車

1号車と2号車の間の通路も、格子とステンドグラスが美しいのでお見逃しなく。

或る列車
或る列車

原信太郎氏が作ったSLの模型も飾られています。

或る列車

ちなみに、お化粧室もラグジュアリー! ここが列車の中、しかもお化粧室の中だということを忘れてしまいそうです。

そして、豪華なインテリアと、もうひとつのお楽しみがスイーツのコース。発車してしばらくすると、コースのスタートです。

世界的シェフが手がけるスイーツコース

メニューは、東京・南青山のレストラン「NARISAWA」のオーナーシェフ・成澤由浩氏によるもの。成澤シェフは、“料理界のアカデミー賞”と呼ばれる「ワールド50 ベストレストラン」に10年連続で選ばれ、2019年のG20大阪サミット首脳晩餐会でも料理を担当したという、世界的に評価の高いシェフです。

或る列車 スイーツコース

テーブルの上にはその日のメニューが

九州の旬が味わえる! 毎月変わるオーガニック食材にこだわったお料理

使われる食材は、九州産の無農薬のものが中心。成澤シェフ自ら九州各地の生産者を訪ね歩いて厳選した、旬の食材で作るここだけのスイーツコースを提供してくれます。

また、「旬の一番おいしい時期にお届けしたい」というシェフのこだわりから、メニューは毎月変わります。いつ乗っても同じものがない、季節感のあるメニューが楽しめます。

そして、お料理だけでなく、ドリンク、器にいたるまで、九州のものでそろえるこだわりよう。九州の匠たちが手がけた器にもぜひ注目してみてください。

スイーツの前に軽食からコーススタート!

或る列車 スイーツコース

コースは、旬の食材を使った「NARISAWA“bento”」から始まります。木のお弁当箱を開けると、彩り豊かな3種のお料理が。気持ちまで華やかになります。

取材時は、福岡のブランドたまご「うちのたまご」を使ったオムライスとビーフシチュー、海の幸と大地の幸のサラダ仕立て、佐賀の地鶏「みつせ鶏」と鹿児島のさつまいもにエディブルフラワーが飾られた一品、スープは九州各地の冬野菜がたっぷり入ったミネストローネという内容。スパークリングワインを飲みながらゆっくり味わいたくなります。スイーツだけでなく、ちゃんと食事もいただけるのはうれしいですね。

お弁当箱とスープのカップは、由布院の老舗旅館の調度品も手がける「アトリエときデザイン研究所」のもの。天然木をくりぬいて作られた器は、カーブの曲線が美しく滑らか。柔らかい手触りで、心地よく手の中に収まります。

スイーツ1皿目「カクテルスイーツ」

或る列車 スイーツコース

「NARISAWA“bento”」の次は、いよいよスイーツコースのスタート。1皿目を飾るのは、佐賀県の「肥前びーどろ」のカクテルグラスに盛り付けられたカクテルスイーツ。

取材した12月は、コーステーマが「ホワイトクリスマス」だったため、熊本県産の和栗を使ったかわいいクリスマスリースが。心ときめく見た目、今まで味わったことのない食材のマリアージュ。これから続く成澤シェフのスイーツワールドへの期待が高まります!

2品目「スープスイーツ」

或る列車 スイーツコース

スイーツ2品目は、大浦天主堂のステンドグラス修復にも携わる匠が手がけた「長崎ガラス」の大きなスープ皿でサーブされます。取材時は、スノーマンの愛らしいスイーツが。

3品目「メインスイーツ」

或る列車 スイーツコース

3品目はいよいよメイン。ケーキやパンケーキなど、ボリュームのあるスイーツはここで登場します。福岡の苺「あまおう」のケーキに、雪の結晶が飾られた、季節感のある演出がうれしいですね。

お皿は、フォトジェニックなスポットが多いことで注目を集める福岡・糸島の窯元のもの。温かみのある白色と洗練されたフォルムが、スイーツを華やかに引き立ててくれます。

4品目「ミニャルディーズ」

或る列車 スイーツコース

コースの最後を彩るのは、かわいいミニャルディーズ(ひとくちサイズのお茶菓子)。おしゃれなデザインで人気の長崎・波佐見(はさみ)焼のハンドメイドのお皿で登場します。コーヒーや紅茶とともに、ゆっくりコースを締めくくりたいですね。

九州の素材にこだわったドリンクが飲み放題!

或る列車 スイーツコース

ドリンクも、お料理やスイーツとの相性を考えて、成澤シェフ自ら厳選した九州産のものが取りそろえられています。しかも、それらが何杯でもオーダー可能!
※3月14日~の新コースでは一部有料のドリンクもあり

アルコールは、宮崎のワイナリー「都農(つの)ワイン」のスパークリングワイン、大分・日田の「おおやま夢工房」の梅酒、熊本や宮崎のワイナリーの赤・白ワインが。ソフトドリンクは、宮崎の日向夏ジュースや、佐賀のみかんジュース、福岡・八女の「星野製茶園」の紅茶など、こだわりの逸品ぞろい。

或る列車 スイーツコース

コーヒーだけは九州ではなく、東京のスペシャリティコーヒー専門店「堀口珈琲」のもの。成澤シェフが惚れ込んだコーヒーで、東京の「NARISAWA」でも提供しているそう。ナッツを思わせる薫り高いコーヒーは、スイーツとの相性抜群です。

車窓からの眺めも最高!

或る列車

スイーツコースを心地よく演出してくれるのが車窓からの風景。海やみかん畑など、変わりゆく景色を楽しめるのは列車旅ならでは。高級ホテルではできない食体験がここにはあります。

ずっと続く大村湾の絶景

或る列車

今回乗車した佐世保~長崎のコースは、大村湾沿いを走るため、進行方向右手にずーっと大村湾の絶景が! 2020年5~6月に運行予定の佐賀~長崎~佐世保コースでも、この絶景が見られます。座席番号が奇数のほうが海側です。

「ハウステンボス」が見えたら、一気にヨーロッパ鉄道旅気分!

或る列車

途中、「ハウステンボス」横を通過します。川の向こうに見えるヨーロッパの古城のような建物は、ハウステンボスのオフィシャルホテル「ホテルオークラJRハウステンボス」。オランダのアムステルダム中央駅を模したもので、荘厳な雰囲気です。

ハウステンボス~博多コース(2020年3~5月運行予定)、佐賀~長崎~佐世保コース(2020年5~6月運行予定)、どちらのコースでもハウステンボス横を通ります。

すぐ目の前は海! 絶景駅「千綿駅」

千綿駅

長崎~佐世保を通るコースでは、すぐ目の前が海という絶景とレトロな駅舎が見られる「千綿(ちわた)駅」に停車します。(土曜日を除く)鉄道ファンの間では有名な絶景駅で、どの角度で切り取っても絵になります。

停車中はホームに降りることもでき、遮るものひとつない一面の海をバックに写真を撮るのもおすすめ。また、「或る列車」と海が並ぶ光景は、どこか心揺さぶるものがあります。

「或る列車」でしか買えないオリジナルグッズ

車内で使われている食器類やお茶は、購入することも可能。九州の匠たちが作るオリジナルの器を、旅の記念に連れて帰りませんか?

或る列車 グッズ

ドリンク用のグラス(6,000円)は、スイーツ2品目のスープ皿と同じ、長崎のガラス工房「瑠璃庵」のハンドメイド。輝くように光が反射するのが印象的です。

或る列車 グッズ

車内で提供している「星野製茶園」の紅茶(ティーバッグ20包入り 1,000円)、ミニャルディーズ用の波佐見焼のお皿(3枚セット・木皿付き 4,000円)ほか、運行4周年を記念したオリジナルマドレーヌ・フィナンシェ(5個入 2,000円)、「或る列車」ロゴ入りのキーホルダー(1,500円~)やボールペン(4,000円)、ステッカー(2枚組 1,000円)などもあります。

オリジナルグッズは、車内でしか購入できないので、乗った際は絶対にお見逃しなく!

或る列車

佐世保駅を出発して、「NARISAWA“bento”」と4皿のスイーツ、ドリンクをたっぷり堪能し、長崎駅に到着。約2時間30分の夢のような時間も終了です。

ラグジュアリーな車内、一流シェフが手がけるスイーツのコース、車窓から見える九州の絶景など、特別な時間を過ごせる「或る列車」。今までにない列車旅があなたを待っています。

この3月からは博多~ハウステンボスコースも登場するので、博多に入り、「或る列車」に乗って、「ハウステンボス」へ向かう、という旅行プランもおすすめです!

或る列車

或る列車 運行情報

★ハウステンボス~博多コース
運行日
2020年3月14日(土)~5月6日(水・祝)の金土日祝日(運休日あり)
運行時間
[午前便]ハウステンボス駅 11:05分頃発 → 博多駅 13:57頃着
[午後便]博多駅 14:58分頃発 → ハウステンボス駅 18:00頃着
★佐賀~長崎~佐世保コース
運行日
2020年5月15日(金)~6月29日(月)の金土日祝日(運休日あり)
運行時間
[午前便]佐賀駅 10:10頃発 → 長崎駅 13:11頃着
[午後便]長崎駅 16:29頃発 → 佐世保駅 18:45頃着
チケット
出発日10日前までに要予約
JR九州 WEB予約
TEL(或る列車ツアーデスク):092-289-1537(9:30~16:00/水曜日・年末年始休)
料金
26,000~38,000円/1人(車両や参加人数により異なる)
※スイーツコース、ドリンク代込(座席のみの利用は不可)
※10歳未満は申し込み不可

取材・撮影・文/横田ちえ
取材協力/九州旅客鉄道株式会社

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