
提供:ことりっぷ
名古屋市東区の“文化のみち”と呼ばれるエリアには、歴史的な建造物が多く集まっています。
テレビドラマや映画の撮影も多い資料館や、実業家の豊かな暮らしが感じられる邸宅など、見どころが豊富です。このエリアには、昭和から愛されるレトロな店内やケーキで人気の喫茶店もあるので、散策後のひと休みも楽しめます。
かつての名古屋の面影が垣間見られる、貴重なエリアを散策してみませんか。
近代化の歩みを伝える歴史遺産が多いエリア
文化のみちのなかでも、江戸時代の武家屋敷の面影が色濃く感じられる白壁・主税町(ちからまち)地区
“文化のみち”と呼ばれているのは、名古屋市中心部にある名古屋城から、かつては徳川家の屋敷だった徳川園にかけての一帯です。名古屋駅からこのエリアを訪れるなら地下鉄やバス、観光スポットをめぐるルートバス「メーグル」を利用すると便利ですよ。
貴重な建造物などの歴史遺産が多いエリアで、周辺を散策すると名古屋の近代化の歩みを感じることができます。趣ある街並みを散策しながら、建物の建築美を味わったり、展示されている貴重な資料から歴史をたどったり、楽しみが尽きません。
大通り沿いに立つ、カトリック主税町教会は、名古屋最古の教会堂
朝ドラにも登場した「名古屋市市政資料館」
華やかなレンガ造りの外観
地下鉄名古屋城駅から歩いて8分ほどの場所にあるのが「名古屋市市政資料館」。
1922(大正11)年に、当時の名古屋控訴院・地方裁判所・区裁判所庁舎として建築された建物で、1984(昭和59)年には国の重要文化財に指定されました。現在は名古屋市や司法の歴史を伝える資料館となっていて、無料で見学することができます。
大理石の階段やステンドグラスが見どころ
ネオ・バロック様式の外観をはじめ、華麗で厳かな雰囲気が漂う建造物。
映画やドラマの撮影に使われることも多く、最近ではNHK連続テレビ小説『虎に翼』や2024年のNHK紅白歌合戦にも登場しました。番組を見て、こちらの施設を訪れる人も増えているそうですよ。
資料に基づいて復原された、重厚感のある会議室
スケールの大きな建物で、館内の意匠は見どころが満載。じっくり見学したり、写真を撮影したりしていると、時間が経つのを忘れてしまいそうです。名古屋市や司法に関する展示も充実しているので、こちらもお見逃しなく。
館内には喫茶室、建物の周りにはベンチもあるので、こちらでひと休みするのもいいですね。
細部まで趣向を凝らした邸宅「旧豊田佐助邸」
石造りの門を抜け、アプローチを通って、洋館にある玄関へ
名古屋市市政資料館から東へ5分ほど歩いて、大正時代には起業家たちの邸宅が集まっていた白壁・主税町地区へ。その一角に今もほぼ当時のままで残っているのが、「旧豊田佐助邸」です。
トヨタグループの創始者、豊田佐吉の弟である豊田佐助が、大正時代から1962(昭和37)年に亡くなるまで暮らした邸宅。現在は、名古屋市が所有者から無償で借用して一般に公開しているので、予約不要で入館無料で見学できますよ。
優雅な雰囲気が漂う応接室
白いタイル張りの洋館と、落ち着いた和館で構成されているこちらの邸宅。高級な材と当時最先端の技を用いて作られた建物の細部をはじめ、和洋のしつらえの違いなども味わってみてくださいね。
入口を入ってすぐの応接室では、金具もランプ部分も当時のまま残っているシャンデリアが素敵。天井の換気口や地袋の扉など、意外な部分にも見どころがありますよ。
鶴や若松を描いた襖絵はもちろん、襖の引手のデザインもよく観察してみて
和館の和室にも、部屋ごとに異なる襖絵をはじめ、欄間や障子など、丁寧に見学したい見どころばかり。2階は客間としてさらに豪華な造りになっているので、見比べてみるのもいいですね。入口に置いてある見どころ案内を参考に楽しんでみてください。
また、火曜、木曜、土曜の 10時~15時30分にはボランティアさんが館内のガイドをしてくれるので、こちらをお願いするのもおすすめです。
ティールームもある「文化のみち橦木館」
洋館の2階には、陶磁器商らしくタイル張りの部屋もある
「旧豊田佐助邸」の1本南の通りにあるのが、「文化のみち橦木館」です。こちらは、陶磁器商・井元為三郎氏が大正時代末期に作り上げた邸宅。
100年以上前に造られた建物ですが、今も当時のたたずまいを残していることから、名古屋市の有形文化財、景観重要建造物にも指定されています。
さまざまな絵柄のステンドグラスが見られる
敷地内にはスパニッシュ様式の洋館、数寄屋造りの和館のほか、庭園、茶室などがあり、一部を除いて一般公開されています。
洋館では、扉や天窓などあちこちにステンドグラスがあしらわれているのが印象的。この館は海外の客人が宿泊するためのゲストハウスとして作られたものだそうです。井元氏の住居としても使われていた和館では、ゆらいだように見える板ガラスや木製の雨戸など、今では貴重となってしまった意匠も見られますよ。
自家製のティーソースを味わえる紅茶のクリームソーダと、パンケーキ
洋館の1階には、「SHUMOKU CAFE」があります。香り高いムレスナティーやパンケーキ、名古屋のジェラート専門店「ぼのむどぅねーじゅ」のジェラートなどがおすすめ。ドリンクやデザートを味わいながら、レトロな雰囲気や庭園の眺めを楽しんでみてはいかがでしょう。
大正ロマンの薫りが色濃い「文化のみち二葉館」
あざやかなオレンジ色の屋根が目印
文化のみちでひときわ目を引く華やかな外観の建物は、「文化のみち二葉館」。日本の女優第一号、川上貞奴が大正から昭和初期にかけて暮らした邸宅です。2005年に現在の場所に移築復元され、現在は、見学施設として公開されています。
大きなステンドグラスや螺旋階段がある大広間
川上貞奴は女優として海外でも舞台に立ち、“マダム貞奴”として有名になった人物です。また、女優を引退した後は事業家としても活躍。華麗な経歴を持つ貞奴の屋敷は、約2000坪もの敷地と建物の豪華さから、“二葉御殿”と称されました。
館内を見学して、貞奴がゲストをもてなした優雅なしつらえを確かめてみてくださいね。
貞奴の愛用品や活躍を伝える資料など、展示にも注目して
文化のみち二葉館は、洋風と和風の空間を備えた和洋折衷。移築された部分と復元された部分があり、建物中央の和室は創建当初のままで、国の文化財として登録されています。和室には調度品や愛用品の実物やレプリカが置かれ、当時の暮らしが再現されているので、こちらも見逃せません。
また、文化のみちの拠点施設としてこのエリアの情報提供も行っているほか、2階では郷土ゆかりの文学資料を閲覧することもできますよ。
昭和レトロな「洋菓子・喫茶ボンボン」で余韻に浸って
地下の工房で作られる30種類以上のケーキをはじめ、デザートも充実
文化のみちを散策した後で余韻を楽しむなら、「洋菓子・喫茶ボンボン」へ。今回ご紹介した施設からは、それぞれ歩いて10~15分ほどで到着できますよ。
現在の場所で70年近く営む人気店。世代を超えて通い続ける常連さんや、昭和レトロにひかれる若い世代など、さまざまな人でにぎわっています。
ほどよい照明で落ち着く店内
ボンボンの魅力の一つは、昭和レトロな気分に浸れる空間。革張りの赤いシートやシャンデリアなど、創業当時の雰囲気が保たれています。
純喫茶らしさが漂うシンプルなケーキやデザートなどがそろうのも人気の秘訣。トーストやサンドイッチもあるので、軽くおなかを満たしたいときにもおすすめです。
くまちゃんサブレ(左下)は、いろいろな表情やメッセージがある
ケーキのほか、焼菓子類も豊富なので、おみやげにするのもいいですね。
かわいいくまちゃんのロゴをあしらったパッケージやくまちゃんの形をしたサブレは、思わず笑顔になるかわいらしさ。くまちゃんはオリジナルグッズにもなっているので、こちらもチェックしてみてくださいね。
名古屋でレトロな建物をめぐるなら、文化のみちへ
「洋菓子・喫茶ボンボン」の喫茶店内にも素敵なステンドグラスが
にぎやかな名古屋でノスタルジックな気分を味わうなら、文化のみち散策がおすすめ。貴重な建造物や資料を見学して、素敵な写真を撮影したり、知識を深めたり、たっぷりと楽しめますよ。
昭和レトロな純喫茶もあるので、散策コースとしても充実した内容。ぜひ、おでかけしてみてくださいね。
文:豊野 貴子