カメラマンが教える絶景&撮影テクニック~春に奈良で見られる花の絶景~

吉野山

歴史豊かな奈良には花の絶景スポットが点在

もうすぐ待ちに待った春。古都奈良には、奈良公園と桜のコラボレーションや吉野山の千本桜など、数々の花の名所が存在します。そんな奈良の春の絶景スポットを、地元出身の写真家・高橋良典さんが撮影テクニックとともにご紹介。歴史と自然が織りなす奈良へ、心ときめく花の絶景を探しに出かけませんか。

 

写真家
高橋 良典(たかはし よしのり)さん

1970年、奈良県生まれ。2000年にフリーの写真家として独立し、写真事務所「フォト春日」を設立。風景写真を中心とした作品をカレンダー・観光ポスター等へ提供。また、写真雑誌や出版物への写真提供および原稿執筆を行う。生まれ育った奈良県の魅力と、国内各地にて自然の中に潜む「何か」のすみかをテーマに撮影を続けている。
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員

写真家 高橋 良典さん

 

おすすめの絶景スポット【1】奈良公園とその周辺

奈良公園

春になると奈良公園とその周辺では桜がいたるところで咲き、華やかな雰囲気に。写真撮影に特化するのであれば、観光客が増えてくる昼間よりも朝早い時間や夕方がおすすめです。遠方の方は1泊して夕方までゆっくり撮影し、翌日は早朝から出かけるのも良いですね。

奈良と言えば、まず頭に浮かぶのはやっぱり鹿ですよね。この時期ならではの桜とのコラボも狙ってみましょう。ここ数年以内に発売されたミラーレスカメラでは、動物認識AF(オートフォーカス)に設定すれば、フレーム内の動物に勝手にピントを合わせてくれる機能が備わっています(※動物が小さすぎると認識しないこともあります)。

フォーカスモードはカメラメーカーによって呼び名が異なりますが、「AF-C(コンティニュアスAF)」や「SERVO(サーボ)」に設定すると、被写体が動いてもピントを追い続けてくれますので、ぜひ活用してください。

 

浮見堂

奈良公園内にある鷺池(さぎいけ)に浮かぶ「浮見堂(うきみどう)」は、早朝からカメラを構える人が多く訪れる人気スポット。冷え込んだ朝には、気温と水温の温度差によって水面から霧が発生することがあります。さらに、無風で鏡のように浮見堂が映り込めば言うことなし! 運頼みではありますが、タイミングを合わせて訪れられるとベストですね。

霧を描くには光線状態が重要。逆光や半逆光、もしくはサイド光で撮影しましょう。太陽を背にする順光の場合、肉眼では霧が見えていても写真には思うように写ってくれません。上の写真は、右側からの光で撮影しています。

 

若草山

夕方のおすすめ絶景スポットは若草山です。眼下に東大寺、そして、点在する桜を望むことができます。暗くなってからは夜景も楽しめますよ。露出の難しい時間帯なので、特に初心者の方は明るさを変えて何枚も撮っておくと良いでしょう。

 

奈良公園

住所
奈良県奈良市春日野町、高畑町、雑司町など
アクセス
【電車】近鉄「奈良」駅より徒歩約15分
【車】西名阪自動車道「天理」ICより約20分
詳細
奈良公園

 

おすすめの絶景スポット【2】佐保川

佐保川の桜並木

南北約4キロメートルにわたって桜並木が続く佐保川(さほがわ)は、奈良市民の憩いの場です。人出の多いエリアと少ないエリアがあるので、時間が許せば「近鉄新大宮」駅から「近鉄九条」駅方面を目指して歩いてみましょう。

空の入る構図では、PLフィルターの使用がおすすめ。青空の色が鮮やかになるよう、回転枠を調整して撮影すればOKです。

 

佐保川

住所
奈良県奈良市大宮町~杏町にかけての佐保川沿い
アクセス
【電車】近鉄「新大宮」駅より徒歩約10分、「九条」駅より徒歩約20分
【車】西名阪自動車道「郡山」ICより約20分

 

おすすめの絶景スポット【3】藤原宮跡(醍醐池)

藤原宮跡

約1300年前に都が置かれていた「藤原宮跡(ふじわらきゅうせき)」。その北側に位置する「醍醐池(だいごいけ)」のほとりには、桜並木と広々とした菜の花畑があり、周辺に街があるとは思えないような風景が広がります。

上の写真は、朝日が昇るタイミングにレンズ交換式の一眼カメラで撮影したもの。空と地上の風景の明暗差が大きなシーンでは、空が肉眼に近くなるよう明るさを合わせると花畑が暗く沈んでしまいますし、花畑に露出を合わせると空が白飛びしてしまいます。そうならないため、朝日と花畑の両方が肉眼に近づくようハーフNDフィルターを使って撮影しています。

ところで、朝夕の風景をスマートフォンで撮影する場合、何もしなくても明暗差をおさめて肉眼で見たように写してくれますよね。それは、スマートフォンが自動で画像処理をしてくれているおかげ。実は、レンズ交換式一眼カメラの方が手間をかけて撮影する必要があると覚えておきましょう。

 

藤原宮跡

住所
奈良県橿原市醍醐町
アクセス
【電車】近鉄「耳成(みみなし)」駅、「畝傍御陵前(うねびごりょうまえ)」駅より徒歩約30分
【車】南阪奈道路「葛城」ICより約20分
詳細
藤原宮跡

 

おすすめの絶景スポット【4】石舞台古墳

石舞台古墳の桜

明日香村(あすかむら)と言えば、飛鳥時代の中心地として関西以外に住んでいる人も聞いたことがあるのではないでしょうか。村内には複数の桜スポットがあるのですが、おすすめは「石舞台古墳(いしぶたいこふん)」周辺です。特に桜の時期限定のライトアップは、幻想的な雰囲気になります。

夜空が入る構図では、撮影のタイミングが重要です。日没後、時間が経ちすぎると空が真っ黒になってしまい、奥行き感が失われてしまいます。シャッターチャンスは日没後15~30分くらい。暗くなるので三脚が必要です。

 

石舞台古墳

住所
奈良県高市郡明日香村島庄254
アクセス
【電車】近鉄「橿原神宮前」駅よりバス約20分、「石舞台」バス停下車すぐ
【車】南阪奈道路「葛城」ICより約30分
入場券
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詳細
石舞台古墳

 

おすすめの絶景スポット【5】唐古・鍵遺跡史跡公園

唐古・鍵遺跡の桜

「唐古・鍵遺跡(からこ・かぎいせき)史跡公園」は、奈良県の中でも比較的穴場の桜スポットです。唐古池に映り込む「復元楼閣(ふくげんろうかく)」と桜を対比させるようにまとめましょう。

うまくフレーミングするためには、まず枝ぶりの良い桜を探すことが大事。選んだ桜の形やボリューム感が良くないと、それだけでバランスの悪い写真になってしまいます。風景全体の様子を伝える写真では、手前から奥までしっかりとピントを合わせることが基本です。パンフォーカスになるようしっかりと絞って(F11~16程度)撮影しましょう。上の写真は、PLフィルターを使用しています。

 

唐古・鍵遺跡史跡公園

住所
奈良県磯城郡田原本町唐古50-2
アクセス
【電車】近鉄「石見」駅より徒歩約20分
【車】西名阪自動車道「郡山」ICより約15分
公式サイト
唐古・鍵遺跡史跡公園

 

おすすめの絶景スポット【6】又兵衛桜

又兵衛桜
又兵衛桜

戦国武将・後藤又兵衛の伝説から名前が付けられた「又兵衛桜」は、奈良県を代表する桜として毎年、多くの観光客が訪れます。樹齢300年とも言われる大木ですが、支柱に支えられることのない堂々とした立ち姿にいつも見とれてしまいます。

桜の正面から人を入れずに撮りたい場合は、早朝に訪れるのがベスト。部分切り取り的に狙うなら、どの時間帯でもOKです。周囲は360度回れるようになっていますので、お気に入りのアングルを探しましょう。

また、山あいのため晴れの日だけではなく、霧の立ち込める雨の日もおすすめです。上の写真が晴天、下の写真が雨天、いずれも早朝に撮影したものです。同じような場所からの撮影ですが、ずいぶん雰囲気が変わりますね。カメラが濡れないか気になるかもしれませんが、幻想的な風景が撮れる雨天は風景撮影にとって恵の雨とも言えるでしょう。

 

又兵衛桜

住所
奈良県宇陀市大宇陀本郷348
アクセス
【電車】近鉄「榛原」駅よりバス約15分、「大宇陀迫間」バス停下車、徒歩約20分
【車】名阪国道「針」ICより約30分

 

おすすめの絶景スポット【7】吉野山

日本を代表する桜の名所である吉野山(よしのやま)。標高によって分かれているエリアごとに撮影スポットをご紹介します。

下千本

下千本(しもせんぼん)は、吉野山の中で最も標高の低いエリアです。近鉄「吉野」駅を下車すると、すぐに「七曲り」と呼ばれる坂がありますので、そこを散策しながら桜を楽しみましょう。坂の終点から「下千本駐車場」方面に歩けば視界が開ける場所があり、歩いてきた「七曲り」の桜を展望することができます。

 

吉野山

車で訪れる方は、早朝から待機すれば朝日の差し込むシーンを撮影できます。桜が赤みがかった光に照らされ、より一層鮮やかさを増します。ホワイトバランスは太陽光に設定しています。

 

吉野山

「下千本駐車場」の前から撮影。日の出直後は対面の山が影になっており、ある程度太陽が高くならないと光が回りません。写真は9時頃に撮影しています。

 

中千本

中千本(なかせんぼん)は、総本山金峯山寺(きんぷせんじ)を中心としたエリア。金峯山寺では3月末~5月のGWにかけて、御本尊の「金剛蔵王大権現(こんごうざおうだいごんげん)」の特別御開帳が行われており、拝観が可能です。

道中はあまり桜が見えませんが、谷側のお店に入ると展望できますので昼食や休憩で利用するのも良いでしょう。街並みを抜けると中千本公園があり、一帯には多くの桜の樹があります。

中千本

中千本公園付近から撮影。幾重にも山並みが連なる吉野山に霧が立ち込める情景は一層、趣があります。

 

中千本

中千本公園から上千本(かみせんぼん)を望みます。手前の桜を取り入れて、パンフォーカスになるようしっかりと絞って撮影しましょう。

 

上千本

吉野山でいちばん桜の多い上千本エリア。金峯山寺蔵王堂を望む、吉野山を象徴する風景を撮影することができます。桜を楽しむには、中千本の「如意輪寺(にょいりんじ)」バス停から上千本へと続くハイキングコースを歩くのが良いでしょう。

 

上千本

ハイキングコースより金峯山寺蔵王堂を望みます。吉野山の桜はソメイヨシノと違い、花と葉が同時に出てくるヤマザクラ。PLフィルターを使用して、桜と青空を鮮やかに気持ちよく表現しました。

 

上千本

ハイキングコースより、桜を見下ろすポイントにて半逆光で撮影。手前と奥の桜に明暗差が生まれ、奥行きが出ました。どこで撮影するにしても、太陽の位置と光線状態には常に気を配っておきましょう。

 

吉野山

住所
奈良県吉野郡吉野町吉野山一帯
アクセス
【電車】下千本:近鉄「吉野」駅より徒歩すぐ 
    中千本:近鉄「吉野」駅より入り口まで徒歩約25分(桜の時期は臨時バスあり)
    上千本:近鉄「吉野」駅より入り口まで徒歩約40分(桜の時期は臨時バスあり)
【車】[下千本駐車場]南阪奈道路「葛城」ICより約50分

 

撮影・文/高橋 良典

 

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